交差する運命   作:門の主トルネ

11 / 52
セイントのいる世界とは。Destiny世界の説明メインの回です。


追想─寝物語

ユメにこれまでの経緯を説明し終え、これからのことを議論することになった。

ゴーストが目下優先するべきことを整理する。

 

「まずは何よりも、ユメを元の世界に帰すことを考えましょう。私たちは専門家ではないので、効果的な治療は行えませんが、見知った景色を見ることも思い出すきっかけになるかも知れません。」

「でも、セイントさんたちが来た時も、突然の出来事だったんですよね?原因が分からないとどうしょうもないんじゃ…」

 

ユメの懸念ももっともだが、セイントたちにはベックスと戦ってきた経験があった。ベックスが大掛かりな事を成す時にはある特徴がある。

 

「ベックスは今回、世界を超えるようなテレポートを実現させました。これはベックスの通常個体だけでは実現できないものと考えられます。」

「それに砂漠に現れたベックスを倒しても、新たにポータルは現れた。つまりその様なテレポートを実現させるための特別なベックスが、まだ存在しているということだ。」

 

これは重要な手がかりだった。そのベックスがどこに居るのかまでは分からないが、その存在自体は間違いない。

 

「つまりはこの無限の森を探索し、そのベックスを見つけ出して、そのコアを解析することが、ユメを元の世界に帰す突破口になります。」

「その上ベックスは全ての個体含めて一つの意識を共有する特徴を持っている。時間は掛かるかもしれないが、倒したベックスの情報を少しづつでも集めることで、居場所などの特定も可能かもしれん。」

「いいアイデアですね、セイント。ベックスの理解が進んでいるようで何よりです。」

「伊達に数百年も戦っていないのでな。」

 

ガッハッハと笑い飛ばす。セイントは豪快ではあるが、頭が悪いわけではない。

ユメは無駄の無い計画を立てる2人に呆気にとられているようだった。

 

「すごい…2人とも息ぴったりですし、かっこいいです!」

 

2人は笑いながら「付き合いはながいからな」と言う。これが相棒と言うやつなのだろうか。

だがこれまでの話の中で、ユメには一つだけ思うところがあった。

 

「あの!なにか、私にも手伝えることはないですか!?」

 

ここまで2人はユメを帰すためのアイデアをだし、これからの行動目標を決めてくれた。もちろん、助けてもらった身であることは承知しているが。任せきりにするのは少しばかり心苦しい。

 

「それに、この無限の森を探索しているのには目的があるって言っていました。それの邪魔もしてしまっているんです。できることをさせてください!」

 

セイントは「私の目的など、大したことではない。気にするな。」というが、それは気を利かせた言葉なのはすぐに分かった。

 

「嘘です。だって、大した用事でもないのに数百年も同じ場所に籠もるわけないじゃないですか!」

 

頬を膨らませながら、むっとセイントに視線を送ってくるユメはどうやら思った以上に頑固であるらしかった。

少しの間、沈黙が続いたが、先にセイントが折れた。

 

「…ユメは、銃は使えるか?」

「銃、ですか?使い方は知っているので、多分…」

 

であるなら、セイントは言葉を続ける。

 

「私も君のことは全力で守る。だが、万が一ということもある。ならば君に銃を渡し、扱えるように訓練しよう。」

 

「基本は自衛のためだが…」とセイントは前置きをし、ユメをまっすぐに見る。

 

「もし君が実力をつけ、覚悟を決めたのであれば、ベックスと共に戦おう。」

 

思いがけない提案だった。あの恐ろしい機械と戦う。想像すると、少しの恐怖がユメを襲った。ゴーストがセイントに声を上げる。

 

「セイント、彼女の身体が頑丈なのは判明しましたが、それはあまりにも危険では?」

「だが、この状況下で自衛の手段を持たない訳にはいくまい。それに、だ。」

 

セイントは改めてユメと向き合う。

 

「自分だけ守られて何も出来ないのは、想像以上に辛いのだ。自身の無力に嘆くことになる。」

 

どこか確信めいた言葉を、ユメに告げる。セイントにも、その様な過去があったのだろうか。

 

ユメは想像する。自分があの紫の膜に守られながら、セイントがたった一人で戦っている姿を。

それはとても安全で、違う世界にいるという境遇を忘れてしまうくらいの安心感があるだろう。

 

しかし、ダメだと、心の中から叫びが聞こえる。

 

それじゃあ、ダメダメで頼りない私のまま(・・・・・・・・・・・・・)だと、私の知らない私が声を荒げた。

 

心当たりのない焦燥感、それが私を突き動かした。

 

「やります、やらせてください。セイントさん。」

 

真っ直ぐと、セイントを見つめて答える。彼はゆっくりと頷いてくれた。

 

「だが、全ては明日からだ。怪我をした上に予想外のことだらけだっただろう。今はゆっくり、休むといい。」

 

今後の方針が決まった後に、洞窟を野営地として拠点とすることにした。

その時にいくつか問題が起こったりもしたが、ここでは割愛する。

 

しばらくして、ユメは用意してもらった寝床に横になる。快適とは言い難いが、この状況下でこれだけの物資があるのは幸運だった。

 

だが、ユメは眠ることができなかった。空っぽな自分に押し寄せるような様々な情報が頭の中で錯綜し、ぶつかり合い、自身の感情と混ざって落ち着かない。

 

ゴーストは眠る必要が無いからと、洞窟の入口で周囲の警戒に当たっている。寂しさを紛らわすために彼を呼ぼうかと考えた時、ゴーストと話していたセイントがユメの傍に近づいてきた。彼も眠ることなく活動をする事が可能なようだった。

 

「寝付けないか?」

「はい…、なんだか私だけ眠るのも申し訳ないですし…」

 

そう言うと、セイントは何度言ったかわからない「気にするな」とユメに伝える。

だが、ユメにとってはそうも思えない、自分がいなければ彼らは今も自分達の目的のために行動出来るはずだ。それこそ、寝る間も惜しんで。

 

「眠ることは良いことだ、人間の営みとして、大切なことだ」

 

セイントはそう力強く言ってくる。

ユメは思う。この人は、どうしてそこまで人のことを、ましてや人類全体なんて単位で考えることが出来るのだろう。

 

──知りたい。

 

セイントの事を、彼にとっての世界を、知りたいと、そう思った。

 

「セイントさん」

「どうした?」

 

もぞりと寝袋の中で寝返りをうって、セイントを見上げる。少し手を伸ばすと、答えるように手を握ってくれた。

 

「どうして、セイントさんは戦っているんですか?どうして、セイントさんは優しいんですか?セイントさんにとって、この世界はどんな世界なんですか?」

 

「そうだな、」と少し考えてセイントは話を続ける。

 

「戦う理由は、話すと長い。我々の世界の現状をある程度話す必要もあるだろう。しかし、夜は長い。機会も多いだろう。これから少しづつ、寝物語として教えよう。」

 

そうしてセイントは、穏やかな口調で語りだす。

 

 

 

 

 

──はるか昔、人類は宇宙に進出した。

 

地球の大地から羽ばたき、希望を持って、新たな開拓のための道を歩み始めようとしていた。

 

そうなるまでにどのような歴史があったのかは、私にもわからない。しかし、その歩みが運命を変える新たなる出会いをもたらした。

 

火星という、乾燥した空気と砂で覆われた惑星に足を踏み入れた人は、その地に雨を降らす存在と出会ったのだ。

 

小さな惑星のような形のそれは大いなる機械の神とも言える存在だった。

 

我々は、それを『トラベラー』と呼んだ。

 

その出現は、我々を永遠へと変えた。

 

ある惑星には偉大な都市が築かれ、ある惑星は豊穣の地となり、人類の寿命は、3倍に延びた。これが、人類の黄金時代の始まりだ。

 

──3倍、すごい変化ですね…

 

──ああ、奇跡の時代だったと言えよう。その時代には多くのものが生み出された、私のようなエクソもその一つだ。

 

銀河を眺め、他の星の光の中を歩むのが、運命としてあった時代だ。

 

しかし、我々にそんな変化をもたらした『トラベラー』には、敵がいたのだ。

 

それは、長い間宇宙の深淵の中を追ってきた、『暗黒』だった。

 

黄金時代が始まってから何世紀も経て、『暗黒』は我々を探し当てた。

 

それが、全ての終わりだった。

 

かつて繁栄した文明は滅び、多くの犠牲が出たのだ。これを、『大崩壊』という。

 

──そんなことが、あったんですね。

 

──ああ、繁栄の終わりであると同時に、人類の戦いの始まりでもあった。

 

『トラベラー』は滅びかけた人類を守るために抵抗をし、一度は暗黒を退けた。

 

しかし、そこからトラベラーは沈黙した。

 

一度『暗黒』を退けても、多くの勢力が人類を襲ってきた。

 

ベックスをはじめ、カバル、ハイヴ、フォールンなど、様々な種族と人類は戦うことになる。

 

しかし、沈黙した『トラベラー』は再び力を貸してくれた。

 

ゴーストを生み出し、『トラベラー』の力、『光』を武器として扱えるパートナーとなる者を探させた。それが、我々『ガーディアン』だ。

 

──『ガーディアン』…

 

──ああ、今の『トラベラー』に変わって人類を守る者たちだ。

 

我々『ガーディアン』は、再び訪れるであろう『暗黒』に備えながら、人類を守っている。

 

今の人類のほとんどは、我々が作り上げた壁に囲まれた最後の都市、『シティ』に住んでいる。

 

──『シティ』は、まだまだ不完全な状態だ。しかし、私の目標に少しずつ近づいている。

 

──目標、ですか?

 

──子供たちが外で遊び、武器を持たなくても安心できる場所だ。かつて私の命が失われそうになり、失意の念に苛まれた時に助けてくれた友であり、師であるガーディアンが見せてくれたもの、目指すべき未来の姿だ。

 

私は、我々『ガーディアン』は、そんな未来のために、戦っているのだ──

 

 

 

 

人類の繁栄と衰退、何世紀にわたり起こった壮絶な出来事だった。

ユメは、セイントが背負っているものの大きさを理解した。

そして、そんなセイントの足枷になっている自分に歯噛みしそうになる。しかし、そこでセイントから思いも寄らない言葉を受け取った。

 

「だからこそ、ユメに出会えたことは幸運だった」

 

何故だろう、セイントを見やる。彼は穏やかな表情でこちらを見つめる。

 

「私はガーディアンで、なおかつエクソだ。エクソのルーツは人間であるが故に、食事も睡眠も出来るようになっている。しかし、必須ではない。」

 

「私の名前の数字の意味を教えよう」そう言ってセイントは自身の胸に手をやる。

 

「この数字は、この身体で精神が終わりを迎えた回数だ。これまでこの身体で14の意識が産まれ、生き、死を迎えて再起動した。残ったのは、この心だけだ。」

 

エクソというものの構造はわからないが、それはユメにとって衝撃の事実だった。言葉だけを聞けば、機械のデータを削除して再起動しているということに他ならない。それが、命と呼べるものなのか、ユメには直ぐに答えを出せなかった。

 

「しかしだな、」とセイントは自身の考えを教えてくれる。

 

「この心は今も燃えている。人々を守ることが、使命だと。愛する者を愛することが、生きることだと叫んでいるのだ。」

 

それでもセイントは『生きている』のだと胸を張って答えた。ユメにはそれが眩しく、どれだけ強く映ったことだろう。

 

「そんな私でも、生きる事について考えが軽薄になることがある。ましてや長い間戦いつづけているとな。」

 

だが─と、首を振り、今度は嬉しそうな顔でユメを見つめる。

 

「君に会えて、起きて眠る、食べることを当たり前に行う君をみて、私は私の守るものを再び確認することができた。」

 

「礼を言う。」そう言いながらゆっくりと、セイントはユメの頭を撫でた。

 

機械であるはずのその手のひらが、どうしようもなく温かかった。彼の人々に対する愛とその大きさが伝わってくるようで、その強さを、分けてもらえているようで。

 

その温かさに包まれて、ユメの瞼は少しずつ下がっていく。

何かを伝えようとする口が少し動くが、それは言葉になることなく、すぅすぅと息をする音が聞こえてくるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝息が、あの日と同じ様に聞こえてくる。

違うのは、少し窮屈な野営地ではなく、オフィスのソファから、であるという点だろうか。

 

セイントは、思いにふけっていた思考を現実へと引き戻す。

視線の先には、だらしのない顔でソファに沈むユメの姿があった。

 

その様子に笑みをこぼすと、起こさぬようにユメを抱え、仮眠室へと運んでいく。

そんな中、彼女の口から寝言が漏れた。

 

「…セイントさぁん…ありがとうございまぁ…」

 

そんな彼女をベッドに横たえ、あの時のように頭を撫でる。

 

「もう、寝物語は必要ないな?」

 

眠ったままそう問われた少女の顔は、あどけない笑顔だった。




ちょっと時系列も混ざるし語りも入るしで分かりづらくなかったでしょうか…?
Destiny本編で描写されてない部分も考えて描いているので、もしかしたらツッコミどころあるかもしれませんがご容赦を!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。