交差する運命   作:門の主トルネ

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各々の事情と、限りある救い、そして、堕ちた英雄。


かつての戦友

『ヘルメット団は建物の奥へと逃げています!』

 

通信越しに聞こえるアヤネの声に従い、全員で追い込むように建物を進んでいく。

 

ヘルメット団への襲撃は、想定通り相手の準備の時間を与えることなく行えたらしく、順調だった。

 

慌てふためくヘルメット団を、個々の実力のあるアビドスの面々が追いやっていく。

 

「ちくしょう、引け!引け!」

「なんだよ!アビドスだけじゃなくて他にも強いやついるし!?」

 

総崩れになったヘルメット団を見て、直ぐに制圧が出来るだろうとセイントは考えていた。しかし、

 

「おい!あの人から指示だ!」

 

その言葉がヘルメット団から聞こえてから、彼女達の動きに統率がとれ始めた。無論、こちらもそれに対応して追い込んでいく。こちらが優勢であることは変わりがなかったが、予想よりも制圧に時間がかかっていたのは確かだった。

 

ヘルメット団は建物の奥の大きな扉に逃げ込み、恐らくバリケードを作っているだろう音が聞こえる。少々強行突破するには骨が折れる状況になった。

 

「うへぇ、どうする?」

「ん、ちょっと面倒。」

 

ホシノとシロコも現状が膠着状態に近くなったと理解したようだった。彼女たちとしてはヘルメット団が今後しばらく学校に襲撃をしてこなければ目標が達成となるため、ここからさらに追い込みをかけるかは判断が難しいのだろう。

 

しかし、セイントにとってはある意味好機だった。

 

「ちょうどいい、この状況なら扉の向こうからもそう手出しはできまい。少し話をつけてこよう。」

 

ユメが気にしていた、ヘルメット団が学校を襲撃する理由。それを聞き出す絶好のタイミングといえる。

 

「ちょ、先生!?あんな奴らと話をするなんて危ないわよ!?」

 

セリカが止めに入るが、セイントはそれを手で制した。

 

「実際、先生としていい機会なのだ。彼女たちのような子供たちが何故そのような境遇に身を置いているのか、知る必要がある。」

 

そう、セイントはまだこの世界について知らないことが多すぎる。外敵のいないこの世界で、ヘルメット団のような不良集団がどのようにして生まれるのか、もし彼女らが救いを求めているのであれば、それも救ってみせるのが役割だと、セイントは考えていた。

 

「なら、私も彼女たちと話をさせてください。聞きたいと言ったのは私ですから。」

 

ユメがそう申し出てくる。断ろうかと思ったが、彼女の目は既に決意を決めたと物語っていたため、許可をする。

 

「2人とも物好きだねぇ~。私たちは周りを警戒してればいいかな?話は通信越しに聞いておくよー。」

 

ホシノの言葉に頷き、話し合い中の警戒は彼女たちに任せ、ユメと共にヘルメット団が立てこもった部屋の扉へと近づく。近づくまでに攻撃を仕掛けられないか警戒をしていたが、それはなかった。

 

扉の前に少しの距離を置いて並ぶ。

向こう側からは物音はするが、特にアクションは起こさなかった。

セイントは扉越しにも伝わるように声をかける。

 

「カタカタヘルメット団よ!少し話がしたい!我々は連邦捜査部『シャーレ』だ!」

 

少しの沈黙が流れる。はたして彼女たちは応えてくれるだろうか…と待っていると、返答が聞こえてきた。

 

「…なんだよ、話って。」

 

その言葉に、ユメと顔を合わせて頷く。ユメはすこし緊張しながら彼女たちに聞いた。

 

「あの、聞きたいことがあります!あなたたちは何故、アビドスを襲撃してるんですか?」

「それ、襲撃者本人にこんなふうに聞くのか?」

 

呆れたような様子で声を返してくる。

 

「あのさ、そんな事聞いてどうすんの?アンタたちって、少なくとも今はアビドスの味方なんでしょ?私たちなんてとりあえずとっちめれば良いじゃん。」

「そんな、それで良いわけありません!理由が答えられないなら考えなくちゃいけないですけど、でも事情があるなら、それを解決できることがあるなら、聞きたいです!」

 

ユメは、本心でそう思っているのだろう。対策委員会の皆だけでなく、ヘルメット団も、争わずに解決できるのであれば、そうしたいし助けになりたい。そしてそれはセイントにとっても同じだった。

 

「…アンタ達、いい人だね。」

 

そう少し小さな声が聞こえたと思えば、向こうからもはっきりと返事をしてくる。

 

「アタシたちに依頼してきたヤツがいるんだよ、流石に依頼主までは話せないけどさ。単純な話、食い扶持のためってやつ。」

 

それは少し気になる話だった。ヘルメット団が学校を我が物にするためならば話が早かったが、アビドスになくなって欲しいと依頼をかけるような存在がいるということだった。

 

「そもそも、なぜそのような形の稼ぎが必要なのだ?ヘルメット団という形で君たちが行動している理由はなんだ?」

 

セイントがそもそもの疑問を口にする。彼女たちが依頼でアビドスを襲撃する理由はわかった。しかしその理由に至る根本原因のほうを、セイントは聞きたかった。

 

「ははっ、それこそ聞いてどうするのさ!悲惨な境遇だから助けてくださいとでも言えば助けてくれるのか?」

「無論、力になろう」

 

セイントさんは躊躇うことなくそう返す。再びの沈黙、しかし長くは続かなかった。

 

「…ハァ、お人好しだね。シャーレのセイント14先生、だっけ?あの人の言った通りだな」

「私のことを知っているのか?」

 

彼女たちにはまだ名前を告げていないはずである。しかも番号を含めた自己紹介は最近していない。すこし違和感を覚える。

 

「まぁ、ちょっとね。とりあえず、そんな先生に免じて答えるよ。私たちの境遇は、良くはないのは確かだね。学校が閉鎖になるからってそれに反発したやつが学籍なくなって集まったり、上手くやれなくて退学になったはみ出し物だったり、まぁ色々さ」

 

「学籍がないって困るんだよ、いろいろと。」と投げやりに答えられるとセイントは顎に手を当てて考える。

 

確かに、このキヴォトスでは学籍というのは重要だ。なければバイトをすることや住居を借りるのも大変だと聞く。そのような状況にあれば、学校襲撃の依頼を受けるのも、少々納得がいった。

 

「であれば、我々になにか出来ることはあるか?」

 

セイントは彼女たちには助けがいると判断した。それは横にいるユメも同じようで、彼女たちの返答に期待しているようだった。

 

「いらないよ、先生達の助けなんてさ。」

 

「え、どうしてですか!?」とユメが叫ぶ。思ってもみない言葉だったのだろう。しかし、相手は譲らなかった。 

 

「シャーレって、「生徒」を助ける所だろ?私たちは生徒じゃない。そんな奴ら、どうやって助けるんだ?無理に助けようとしたって、シャーレの立場としても良くないだろ。」

 

セイントはそれに直ぐには返せなかった。彼女の言う通り、今の状況でシャーレとして彼女たちを助ける方法があるわけではなかった。だが、自分達の立場が多少悪くなるくらいであれば、と口を開こうとした時。

 

「アタシたちみたいなはぐれものを受け入れてくれる学校だってないしね。それに、元々は私たちのちっぽけなプライドとか癇癪のせいなんだ、新しく誰かの迷惑をかけながら助かりたいなんて、思っちゃいないしさ。」

 

「まぁ、襲撃で迷惑かけてるのは悪いと思ってるけどさ。」と続ける彼女に、何も言えなくなってしまう。これがヘルメット団の、引いてはキヴォトス全体で起こっている問題なのだろうか。

 

「アンタら優しいからどうにか出来ないか考えてくれてるんだろ?ありがとな。でも、アタシたちはアタシたちなりに生きてくから、そんなに気にしないでよ。」

 

ユメはその言葉に悲しげに俯く。セイントは、この世界の根深い問題を直ぐに解決できないことに歯噛みした。

 

「それに、こうして話してる間にも準備させてもらったしさ!大丈夫だと思うけど、左の壁から距離取ったほうがいいよ!!」

 

『皆さん気をつけて、建物の外からミサイル…いえ、これは…?』

 

建物の外、彼女達が言うには左側の壁から何か来るのだろうと警戒し距離をとる。ホシノ達も距離をとりつつセイントのもとへ集まってきた。そこで、アヤネからの通信が再度聞こえる。

 

『ありえません…人が、ミサイルみたいにその建物に向かって─』

 

瞬間、壁が轟音と共に破壊される。壊れた壁はバチバチと電気を放ち、まるで雷が直撃したかのようだった。

 

「サンキュー旦那!シャーレの先生たちも、気にしてくれてありがとな。あとアビドスはごめんなー!」

 

空いた大穴から部屋に立て籠もっていたヘルメット団の面々がまとめていたであろう荷物をもって外に出る。恐らく交渉をしてくれていたリーダー格と思わしき少女は、ヘルメットのバイザーを上げながらこちらに、笑顔を向け、手を振りながら逃げていった。

 

元々逃走用で、こちらへの攻撃が目的ではなかったであろう衝撃では誰もケガをすることはなかった。

しかし、出来た大穴の向こうからの逆光でシルエットしか見えない新たな脅威の出現に警戒していた。

 

それは、大柄な男のようだった。

セイントのような、物々しいアーマーを全身に纏ったその男は、右手に拳銃と言うにはいささか大きなリボルバーを、左手には先ほど壁を破壊したであろう攻撃の名残か、バチバチと電気が走っていた。

 

その両手にあるものに、セイントは見覚えがあった。ユメも左手のそれを見て察したらしく、声をあげる。

 

「それって『光』の…!?」

 

そう、セイントが、セイントの世界のガーディアンが使える『光』、その一端であることがわかったのだ。

 

そしてセイントはその右手にある銃『ローズ』を見た。その銃を使っているタイタンを一人、知っている。

 

「お前は…レジル・アジール!!」

 

男は静かに答える。

 

「久しぶり、だな。セイント14。」

「まさかこんな場所で出会うとはな、兄弟。彼女たちとの関係を聞きたいが──」

 

セイントがそう気さくに声をかけると、パァン─と銃声が響いた。その弾丸はセイントの足元直ぐに着弾する。

 

「─なんのつもりだ。」

「俺は、もうレジル・アジールではない。ドレドゲン・ヨルの名を知らないのか?」

「どういうことだ、何を言っている!?」

 

セイントが事情を知らない様子をみたレジルと呼ばれた男は、再び銃をセイントに向ける。

 

「お前は此処に来ても変わらないな、セイント。此処には守るべきシティもない。それでも、お前は変わっていない。」

「そういうお前は変わってしまったようだな、ともに戦った英雄はどこへ行ってしまったのだ?」

 

セイントの問いに、男はうつむくと一言だけをつげる。

 

「そのような英雄は元から存在しないか、死んだ。」

 

次の瞬間、男は地面に素早くスモークを叩きつける。煙が立ちこめる中、全員で周囲からの攻撃に備えたが杞憂に終わり、それが晴れる頃には男の姿はなくなっていた。

 

『ヘルメット団は建物から撤退していったようです!内部の状況はわかりませんでしたが、皆さん大丈夫ですか!?』

 

アヤネの通信が入る。「大丈夫だ」と返すと、皆に撤収の指示を出す。セイントとともに戦った英雄、その言葉に皆が引っかかっていたが、セイントさんの様子を見て、それを聞くことはしなかった。

 

いつもの彼の背中が少しだけ悲しく、小さく見えた。




Destinyより新キャラ、レジル・アジールの登場です。
かなりマイナーな人選にDestinyファンの方でも驚くんじゃないでしょうか?(知らない人すらいそう…苦笑)正直登場させたはいいもののこれから大丈夫かは不安です笑

次回はセイントから見たレジル・アジールの話やアビドスの借金についてなどの話になると思いますー。
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