交差する運命   作:門の主トルネ

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便利屋に、レジルの影


便利屋

セリカの誘拐事件は一先ず幕を閉じた。

 

柴関ラーメンの大将からセリカと思わしき少女が襲撃されたとの連絡を受け、アヤネがセリカの家に行くとまだ帰ってこないことを確認。アロナの助けを借りてセリカの居場所を割り出し、現在位置がどんどん市街地から離れていることから異常事態と判断、すぐさま追跡を開始した。明け方にアビドス郊外の砂漠でトラックを発見、体当たりを仕掛け、その場に残された荷台の中からセリカを発見した。

 

最初は泣きはらした様子だったため心配をしたが、どうやら酷い扱いを受けたというわけでもないらしい。セリカを救出後、カタカタヘルメット団が奪還のために襲ってくるかとも考えていたが、そうはならなかったことに少し違和感を覚えつつ、学校へと帰還して事の詳細をセリカから聞くことなった。

 

曰く、今回の一連の事件は「ローズの旦那」ことレジル・アジールが提案したマッチポンプ計画だったということ。レジルを仲介人としている何者かが、アビドスの学校を潰さんと画策しているだろうこと。そしてこれからもその脅威は続くであろうと、カタカタヘルメット団の少女が教えてくれたのだという。

 

あの時話しをした少女の行動に感服する。人質誘拐を良しとしないという明確なルールを自らに課し、自分達の不利益も考慮しつつ、こちらへの最大限の助言をしてくれた彼女は、思っていた以上に成熟した考えを持っているのかもしれない。導く誰かが必要と思ったのは杞憂だったか、それとも既に誰かに導いてもらっているのか…、そう思い、今回の計画を提案した男が脳裏をよぎる。

 

「レジルの発案か…全く何を考えているのやら」

「ふふ、そう言う割にはセイントさんは少し嬉しそうですけど?」

 

口から漏れ出た言葉をユメに聞かれ、そう返されてしまう。

確かにレジルについては未だ謎が多い、なぜこちらを襲撃する主犯の仲介役などをしているのか、何が目的なのかは定かではない。しかし、カタカタヘルメット団の少女の心情や事情。そしてこちらの生徒の全てに対してメリットとなる計画を立案したのは事実だった。その手腕に対して感心するとともに、レジルがヘルメット団の少女たちに寄り添っているように感じられたことに嬉しさを覚えたのだ。

 

「ああ、以前に話したヘルメット団を導く者にば、レジルは既にそうなっているかもしれんと考えると誇らしい」

 

まだ彼には聞かなければならないことは多くある。変わり果てた様子についても問いただしたいが、少なくとも少女たちの力になるその献身さが失われていないことが分かっただけでも、今は十分だった。

 

「そうですね。おかげでセリカちゃんも無事ですし、ますますお会いしてみたくなっちゃいました」

 

その言葉に頷き、思考を切り替えてこれからのアビドスについてを考える。襲撃者の情報は今のところは少ないため、こちらから打って出ることができないことが歯がゆいが、そればかりは仕方がない。

残っている借金返済問題については、事件の後にセリカの様子を見に行った時に関わる許しを得られた。今回の事件が起きた際にすぐにセリカ救出に動いたことを皆が伝えてくれたことで、少し心を開いてくれたようだった。本人としてはいずれ借りは返すとのことだが、それは彼女たちの問題が解決した時に考えれば良い。

一先ずは明日、今後についての対策会議を皆で行うことで、何か進捗が得られることを期待しよう。

 

 

 

 

次の日、何故か対策委員会の面々とともに、再び柴関ラーメンを訪れていた。

視線の先には如何にも不機嫌ですとばかりにふくれっ面をしているアヤネにシロコがチャーシューを差し出したりして機嫌を取ろうとしている。

 

日中に行われた対策会議は、何か問題の解決になる糸口を見つけられたかと言えば、控えめに言っても何も見つけられなかった。

現在月の利息だけでも788万円となっている借金は、指名手配犯の確保等のこれまでの稼ぎだけでは追い付かなくなってきている。そこで新たな稼ぎの方法をという話になったのだが…

ホシノの提案は「バスジャックをして乗客の強制入学」、シロコは「銀行強盗」、ノノミは「スクールアイドル発足」(ちなみにユメも人気が出るから加入の方針とのこと)、そしてセリカは分かりやすいマルチ商法に引っかかって一攫千金を狙うなど、状況は混沌とした。最終的な案をこの中から選べと皆に迫られていた時に、アヤネが遂に爆発。対策委員会の机を綺麗にちゃぶ台返しして全員への説教が開始されたのだった。ちなみにユメも同時に説教をされ、「ひぃん…」と情けない声をだしていた。

 

そんな形で成果は得られず、柴関ラーメンを訪れてアヤネの機嫌を取っているのが現在である。

 

「うぅ…ひどい目に遭いました…」

 

となりのユメは泣きべそをかきながらラーメンをすすっている。アイドルの話題になった時に、一番人気が出そう、何なら写真集で稼げる、などの言葉で押し切られそうになり、服のサイズまで調べられそうになったあげくに「しっかりと断るなりしてください!」と説教をされてしまったのだ、流石に同情を禁じ得ない。

 

「アヤネもかなりヒートアップしていたようだな、許してやれ」

「わかってますよ~、でも考えてみれば何ですかアイドルって、一番人気が出そうって何なんですかぁ…」

 

そういいながらチャーシューをかじっているユメだが、その意見はあながち悪くはないとも思っていた。

 

「アイドルというものに詳しくはないのだが、悪くない案だったのではないか?ユメとても可憐だ。」

 

その言葉にユメは盛大に咽て、急いで傍らのお冷を流し込む。落ち着いた後に顔を赤くしてこちらを見やる。

 

「セ、セイントさん…?私がかわいい、って…じゃなくて!アイドルって正気ですか⁉」

「あれ?先生もアイドルいいって思ってくれていたんですね、嬉しいです☆」

 

ユメの言葉を聞きつけたノノミが発言し、皆の視線が集まる。誰かからぼそりと「先生にもそういう趣味が…意外…」などと聞こえてきたが、何のことだろうか?

 

「歌は良いものだ、聞けば心を変えてくれる。娯楽として良いものだ。私もよく子供たちに歌を歌って貰ったものだ。戦いの日々を癒してくれた」

「…何か、孫の歌を聞くおじいちゃんみたいな理由ね」

 

セリカが「そういう理由…?」とどこか眉をひそめながら言っているが、あながち間違いでもない。

 

「ハッハッハ、すまないな、若い感性には取り残されまいとは思うのだが、私は君たちに比べればおじいちゃんなのでな!」

「うへ~、そう言えば先生っていくつなの?ロボットだから見た目でわかんないだよねぇ」

 

その言葉に少し考え込んでしまう、実際の年齢となると既に数えなくなってから久しいからだ。

 

「既に千に近いか超えてるのではないか?少なくとも数百年以上の時を過ごしている」

 

その言葉にユメを除いた全員が驚愕の声を上げる。当たり前だ、そもそもの人類の寿命としてキヴォトスとは3倍ほどの差があるに加えて、自身はガーディアン。トラベラーから光を与えられた不死の戦士なのだ。あまりにも尺度が違いすぎる。

 

「ふむ、そう言えばここ数百年はあまり歌を聞いていなかったな、今度君たちの歌を教えてくれ。歌ってくれてもいい。」

「あ、ならアイドルやるならこんな曲って思ってた曲があるんです!今度みんなで歌いましょう☆」

 

ノノミがそう提案し、また皆の間で会話が始まる。小さく「流石に恥ずかしい」「せめてアイドルソング以外を…」などと聞こえるが、いつか彼女たちの歌を聴けること楽しみにするとしよう。

その様子を見守っていると、チリンチリンと入店を表す鈴が鳴る。

 

扉の方を向けば、紫髪の少女が顔をのぞかせていた。

 

「あ、あのう…こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」

「いらっしゃいませ!一番安いのは――五百八十円の柴関ラーメンです! 看板メニューなので、おすすめですよ。」

 

セリカがそう答えると、少女は「あ、ありがとうございます」と答えてから店先にいる数人の人影に話しかける。するとすぐに、少女は3人の人影を連れて店へと入ってくる。

その様子はどこか嬉しそうな─1人はどこか頭が痛そうな顔をしているが─様子だった。

 

「えへへっ、やっと見つかった、六百円以下のメニュー!」

「ふふふ、ほら、何事にも解決策はあるのよ、全て想定内だわ」

「そ、そうでしたか、流石社長、何でもご存知ですね」

「はぁ……」

 

少女たちはそれぞれ言葉をこぼしながら、セリカに案内されて席につく。流石にジロジロとみるわけにはいかないと視線を外そうとした時、セリカの驚く声で再び視線が戻ることになった。

 

「ま、まさか一杯を4人で分け合うつもり⁉」

 

セリカがそう口にすれば紫髪の少女が頭を下げてセリカに謝っている。

 

「ご、ご、ごめんなさいっ、貧乏ですみません! お金がなくてすみません!お金がないのは首が無いのも同じ、生きる資格何てないんです、虫ケラにも劣る存在なのです!虫けら以下ですみません…!」

「……ちょっと声でかいよハルカ、周りに迷惑」

 

白と黒の髪をした少女がそれを窘めているが、その様子をみるにどうやらそれなりに逼迫した状況のようだった。その様子に少し手助けが必要かと考えた時、セリカが声を上げる。

 

「違う! お金が無いのは罪じゃないよ! 寧ろ胸を張ってッ!」

「へ? ……えっ、はい?」

 

その様子に紫髪の少女に加えて他の3人もキョトンとした表情を浮かべる。しかしセリカはお構いなしに話しを続ける。

 

「お金は天下の廻りものって云うし、そもそもまだ学生だし、それでも小銭を搔き集めて食べに来てくれたんでしょ⁉そういうのが大事なんだよっ!もう少し待っててね、すぐ持ってくるから!」

 

そうまくし立てて、セリカは厨房へと向かっていく。呆気にとられた少女たちは、とりあえず案内された席に腰を下ろした。

 

その席では「何か勘違いされてる」や「アルちゃんのせい」などの会話がなされている。どうやら社長と呼ばれる少女が何やらやらかしたような話しのようだが、その少女たちの視線がこちらに向く。そしてその視線に何か含みがあるのが見て取れた。

 

流石に不躾に見すぎたかと思い、非礼を詫びる。

 

「すまない、少し気になってな。嫌な思いをさせたなら詫びよう」

 

「あ、いや…」と彼女たちは顔を見合わせてからこちらに返事をしてくる。

 

「いえ、こちらこそごめんなさいね。少し知り合いに似ていたから…」

 

その言葉に少し思案する。自分はこのキヴォトスではかなり珍しい風貌をしている。エクソの体の人間はこのキヴォトスではそもそも他に存在しないはずである。それでもなお似ていると言える存在がいるとすれば…思い当たるのは1人のタイタンだ。彼はエクソではないものの、そのアーマーを纏った姿がはセイントと重なる部分もあるだろう。

 

「知り合い…レジル、いやローズのことか?」

「あら、ローズの知り合いなの?」

 

赤みがかったピンク色の髪の長い少女が意外そうに返してくる。もしかするとレジルについて何か話しを聞けるかもしれない。それにこの時期にレジルと繋がりがあるとすれば…そう思いチラリとホシノを見れば、彼女も何か思い当たったようで、細めた目を少女たちに向けていた。最近までヘルメット団にアビドスを襲わせる依頼の仲介をしていた彼と関わりがあるとすれば、今後何か問題に発展する可能性がある。

であればここで出来るだけの話を聞き出すべきだと判断して少女たちに返答する。

 

「ああ、古い知り合いでな。最近こちらにいるのは知ったんだが、改まって話す機会がなくてな」

 

そういいながら少女たちに名を明かし、挨拶をする。彼女たちの名前はアル、ムツキ、カヨコ、ハルナというらしい。何かしら会社の経営のようなものをしているようだが、詳細までは話さなかった。

 

「今はローズと名乗っているのも最近知ったところだ。なぜ本名を名乗らないのか、事情などが全く分からなくてな」

 

その言葉にアルが少し考えたようにした後に答える。

 

「私たちにも本名は教えてはくれないわね、何なら自分に『名はない』なんて言ってたわ」

 

などとどこかワクワクした様子で答える彼女は、レジルに対しての印象は良いようだった。

 

「ただ、最近仕事を回してもらった時に、やっぱり呼び名が無いのは不便だって言ったら、『ローズ』と呼ばれてるって言ってたわ。銃の名前だって言ってたけど、何かカッコイイわよね!」

 

そのようなレジルの様子がどこか気にいったのか、アルの目が輝いているのがわかる。どのような経緯であれ、友が慕われて悪い気はしない。

 

「ふむ、彼には確かに名乗る名があったはずなのだが、何か事情があるのか…君たちは何か知っているか?」

 

そう問いかけると彼女たちは顔を見合わせて考え出す。しかし、その事情までは知らないようだった。

 

「ごめんなさい、そこまでは分からないわ。ただ、どこか仄暗い印象ね。何か抱えてるんだろうなってことは会えば私たちにもわかったわ」

「それに~、なんか諦めたっていうか、空っぽな感じ、相当な訳アリと見たよ、あの渋いおじ様は。」

 

ムツキがレジルについての印象を補足してくれる。確かに口数が多いような人間ではなかったが、その様な印象は以前のレジルには無かったものだ。

 

「やはりか…どこかで会って話をしたいのだが、ツテはあるか?」

 

その言葉に、アルは少し考えるそぶりをみせると「ごめんなさい」と断ってくる。

 

「連絡が全く取れないってわけじゃないけれど、取引先の情報を勝手に教えることはできないわ。」

 

それもそうだ、これに関しては彼女たちに非はない。少し残念に思った時、「だけど、」

と言葉を続けてくる。

 

「今度もし連絡を取るようなことがあれば、あなたのことを伝えるわ。友達が探していたってね」

 

そう言う少女の笑顔には隠し切れない人の良さがにじみ出ていた。まだ少ない会話だが、アルという少女の人となりがなんとなくわかったような気がしてくる。そんなやり取りを横で聞いていたカヨコに、「公私は分けなよ…」などと呆れながら小言を言われているが、そう言うカヨコや周りの少女たちにとってはアルのその振る舞いはいつもの事なのだろう、アルが「わ、わかっているわよ!」と返事をするのを笑って受け入れている。

 

「ありがとう、恩に着る」

 

そう頭を下げれば、アルは「いいのよ。」と言いながら、慌てる。大男に頭を下げられるのは少し緊張するだろう。そう思っていると、横からムツキが提案をしてくる。

 

「なら、お礼が欲しいってわけじゃないけど。ローズのおじ様のことを教えてよ!からかい甲斐がないからさ、ちょっとどんな人なのか知りたいんだよね~」

「ちょっとムツキ…」

 

カヨコに窘められるが、どこかカヨコもレジルについては興味ありげな様子だった。それにアルも便乗してくる。

 

「確かに、ちょっとローズのことは知りたいわね。ただならぬ雰囲気だし、ハードボイルドって言うよりかはダークヒーローみたいな感じがしてカッコイイと思っていたのよ!」

「わ、私も知りたいです…」

 

友のことを知りたいと言われれば、こちらとしては断る理由もない。レジルには小言を言われるかもしれないが、事情も話さずに辛気臭い雰囲気を振りまいている罰ということにでもすればいい。

 

「いいだろう、食事の足しになるかはわからないが、我が友について話そうではないか」

 

そうして話を始めようとするタイミングで、セリカがテーブルにラーメンを持ってくる

 

「お待たせしました!お熱いのでお気を付けて!」

 

ドンッとテーブルにそれが置かれた時の音は、かなりの重量を感じさせる。それもその筈だ。

 

そこに置かれたのはざっと10人前程度はありそうな、どんぶりに山盛りになったラーメンだった。




ちょっとブルアカのストーリーを楽しみながら根幹設定を練っていたらまた更新がgggg
Destinyも運命の境界が配信されて、武器配給やら夏季の宴やらでやることが…やることが多い…ッ!
もう少しテンポよく話を進められるように頑張ります!
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