交差する運命   作:門の主トルネ

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「接近戦では銃よりも拳の方が役に立つ」


ストライカー

 

 

タイタンとは、市民を守る壁だったのは言うまでもないが、それだけでが役割だったわけではない。

その力強さをもってして敵の牙城を崩すのも、タイタンの役割となっていた。

 

ガーディアンが光を授かり、それ扱う術を磨くうちに、いくつもの技術が確立された。

そのうちの1つが、『ストライカー』だ。

 

強大なアークエネルギーを纏い、その身をもってして敵へと突き進む様はタイタンの破壊力の象徴となっていた。

 

そしてその『ストライカー』とは何たるかを、レジル・アジールは体現していると、セイントは確信していた。

 

 

 

 

 

赤いアーマーを纏った巨躯がその身に似合わない速度で駆ける。レジルだ。

その視線の先には、大きなトサカのようなヘルメットと、リボンが結ばれたアーマーを身につけたセイントが、光によってできたバリケードを張って待ち構えている。

 

迎撃態勢が整っているセイントがはパーフェクト・パラドックスの照準をレジルに合わせる。障害のないこの状況下ではセイントに圧倒的な利点があるように見えるが、セイントは決して油断をせずに引き金を引いた。

 

バレルを通過した弾丸が、レジルに迫る。間違いなく直撃するであろうその攻撃に対して、レジルはスピードを緩めることなく突き進む。

 

弾丸がそのアーマーに突き刺さるであろう瞬間に、レジルの正面に張られた防御シールドによって弾かれる。

 

それを予測していたセイントは連続で引き金を引いてその防御を崩さんとするが、それよりもレジルがセイントに接近をする方が早かった。

 

牽制のようにローズを打ち込みながら、大きく跳躍してセイントめがけて飛び込んで来る。

肩にアークエネルギーを纏わせたショルダーチャージを仕掛けてきたのだ。

 

対するセイントはバリケードで銃弾を回避しながら自らの拳にアークエネルギーを集中させる。

レジルが眼前に迫った時に、下から振り上げるように拳を振りぬいた。

 

 

雷鳴のような衝撃と音が、周囲に響く。

 

 

互いに弾かれながらも、セイントはバリケードに移動してすぐにレジルへと照準を合わせようとする。しかしすでにレジルは自身の勢いを利用して遮蔽に飛び込んでしまった。

 

この戦いが始まってから幾度となく繰り返されたレジルの攻撃も、セイントが適切に対処をすることで決定打にはならない。

 

状況は拮抗していた。

 

「流石だわが友よ!さながら嵐の中にいる気分だ。お前はまさに稲妻と言っていい!!」

 

戦いの最中だというのにセイントはレジルの実力を賞賛した。

そこに皮肉などはありはしない。この戦友は正しくタイタンであると、自身の知る英雄と再び出会えたことを実感し、歓喜していたのだ。

 

「そう言うお前は、自慢の盾は使わないのか?俺を見下しているとしたら、容赦はしないぞ」

「お前相手に手加減ができるわけないだろう!ただお前と正々堂々と勝負がしたかっただけだ」

 

いささか棘のある返しにセイントはため息が出る。彼の知るレジルはここまで余裕のない人物だっただろうか?

戦闘の前に見せた様子からして、自分の知らぬ間に彼は変わってしまったのかも知れない。どうしてもその理由が知りたかった。

 

『望んだ通りに死んだのだ!』

『なぜ、私はのうのうと生きてこんなところにいる…ッ!!』

 

レジルがこぼしたその言葉はまるで自身の生涯を後悔しているようで、懺悔をしているようで、どうしても気がかりだったのだ。

 

「友よ、教えてほしい。一体何があったのだ?私にはお前が苦しんでいるように見えてならない」

 

セイントは懇願するように声をかける。友すら救えずに、誰を救うことができるのかと。

戦友の助けになりたいと心の底から思った。

 

「…お前は変わらないな」

 

ため息交じりに、レジルは答える。

レジルから見たセイントは、間違いなく英雄だった。

どのような時も決して引くことなく、人々を守り続ける。

 

彼と共に戦ったシックスフロントの戦いでも、一度もゴーストの蘇生を受けずに戦い抜いた彼にどこまで勇気づけられた仲間がいたことか。

 

だからこそ、自身は彼のような英雄ではないことがわかっていた。

 

「セイントよ、お前の友は、英雄『レジル・アジール』は死んだのだ」

 

レジルは闇のようになっていた物陰から、セイントの前に姿を現した。

 

「英雄は死に、『ドレドゲン・ヨル』という男が生まれた」

 

どこまでも落ち着いた様子で、セイントへ話しかける。

セイントはその様子を黙って見ていた。しかし、言いようのない不安が襲ってくる。

この後の言葉を聞いてはいけないと、どこかから警告されているようだった。

 

「『ドレドゲン・ヨル』は力を求め、確かに強くなった」

「その力でガーディアンを殺せる程に」

 

セイントには信じられなかった。友が同胞を殺したことを。

 

「ガーディアンだけではない、民間人も殺した。多くの恐怖を「ふざけるな!」」

 

セイントはレジルが身につけている毛皮の首飾りをつかみ上げる。

 

「なぜだ、なぜ!そんなことをした!シティが、人々が宝だと言っていたお前が⁉」

「言ったはずだ、力を求めたと。その結果だ。」

 

セイントはその言葉を受けて拳を振るった。

鈍い音が周囲に響き、レジルがよろめいて数歩後ろに下がる。

 

それでも怒りが収まらないのか、セイントは唸り声をあげる。

彼の頭の回路が、ショートしているかのように理解を拒んでいる。

 

「…なぜ、力を求めた?」

 

何とか冷静になるように自身を律しながら、絞り出すように紡いだ。

 

「聞いてどうする。理由さえあれば俺を許すのか?誰よりもシティの人々を愛していたお前が?」

「それはお前も同じだったはずだ」

「それは俺の罪と関係があることか?」

「あるはずだ、私の知る友であれば」

 

「それに…」とセイントは続ける。いくらか冷静になった頭で考えながら、レジルと再会してからの事を思い出す。

ヘルメット団を支えたこと、セリカを助ける手筈を整えたこと、私の知る友が、そこには確かにいたのだ。

 

「お前は自身が生きていることに怒りを覚えていた。そして自分の過去を罪だと言った」

 

レジルは口を噤む

 

「私には友がいなくなったとは思えない」

 

ヘルム越しでも伝わるように、セイントはまっすぐとレジルを見た。

いくらかの沈黙が流れた後に、レジルはため息を漏らして言う。

 

「…クルーシブルには報酬がいるはずだ、だが報酬を支払うシャックスもここにはいない」

 

レジルは全身にアークエネルギーを纏わせ、臨戦態勢を取る。

雷と一体になったその姿は、正しく最強のタイタンの1人であることを示していた。

 

「お前が望む報酬をやろう。勝ち取ってみせろ」

 

それに答えるように、セイントも自身の体にアークエネルギーを浸透させる。

考えてみればまどろっこしい問答は自身にもレジルにも似合っていない。

 

互いにタイタンであるのなら、拳で口を割らせればいい。

 

「言ったな?タイタンならば約束を守ってもらうぞ!」

 

その言葉と共に、雷鳴が轟いた。

 

 

 

 

 

 

ユメを加えたアビドスの面々は、アルたち便利屋68ににじり寄っていた。

 

数で勝っていた便利屋だが、戦闘は膠着状態が続き、その上つい先ほど聞こえてきたチャイムで雇っていた傭兵たちがこれ幸いとばかりに引き上げてしまったのだ。定時であがるというその信念はとても硬かったのだろう。

 

数の利がなくなった便利屋は一転窮地に立たされる形となり、どうにかしてこの場を後にしなければならないが、ユメたちはその隙を一切見せることはない。

 

「ここまでです、アルさん。大人しく雇い主について話してください」

 

ユメがリトル・パラドックスを向けて警告する。アルも口でこそ依頼主を明かすことは出来ないと抵抗しているが、このまま逃げおおせれる可能性が低いのもわかっていた。

 

「ユメ先輩、ここは一旦捕えて後から話を聞きませんか?」

「ん、ふんじばってから吐いてもらう」

 

ホシノの提案にユメも考える。この襲撃を終わらせるための手がかりをみすみす逃がすつもりはないが、手荒なことをしたいわけでもない。ここからは交渉で事態を収めたいが、分かれて暫く経つ先生も心配だ。

 

アル達には悪いが大人しく捕まってもらうかーーと考えていた時、パチリという音が聞こえた。

同時に、なにか言いようのない予感がしてくる。髪の毛が逆立つような…そう考えたと同時に気づく、自身の髪が実際に広がっていることに。

それはまるで静電気で髪を広げているのと同じだ、そう思った時には大きな声で叫んでいた

 

「みんな!下がって!!」

 

ユメの声に危機感を覚えたのか、その場にいた全員が飛びのく。

 

 

ハボック・フィスト

 

 

その瞬間、雷が落ちてきた。

 

光りが迸り、つんざく雷鳴が聴覚を狂わせる。

何とか回復した視界の先、落雷が落ちた場所を見てみれば、巻き上げられた砂塵の中に二つの影が見える。

 

次の瞬間、再度衝撃が発生して影の周りに漂っていた砂が吹き飛ばされた。

 

そこにいたのは、互いに電気を発しながら戦いを繰り広げているセイントとレジルだ。

 

互いに稲光を走らせながら拳を振るい、互いの体が弾かれたと思えばミサイルのような勢いで膝蹴りを繰り出すなど、キヴォトスの常識を超える戦いが繰り広げられていた。

 

「みんな大丈夫!?」

「大丈夫だけど…何なのよアレ!?先生なの!?」

 

全員無事に退避できたようだが、セリカの言葉通り目の前で行われている攻防に呆気に取られていた。

その目には驚愕だけではない、恐怖すら浮かんでいるかもしれない。

 

「これが、ガーディアン同士の戦い…」

 

かく言うユメも、この戦いに目を奪われていた。

セイントが光を使う場面は何度も見てきたが、同等の相手との戦いの苛烈さは予想を遥かに超えていた。

これが、人類を背負って戦ってきたガーディアンなのだ。

 

ユメはその光に魅せられたのか、自分の中に何かが灯った気がした。

それが何かは分からない、言い表せない上に、まだ小さくて火とも呼べない小さな灯火が、心の中に生まれた気がした。

 

 

その本質を知りたいという欲が沸いた時、先ほどまで戦っていた二人が動きを止めた。

 

 

「…潮時だな」

「そのようだ」

 

二人は纏わせていたアークエネルギーを霧散させ、静かに周囲を見渡す。

様子をうかがっていたアビドスや便利屋の面々を一瞥し、安堵か不満か、どちらともとれるため息を吐きながら続ける。

 

「これ以上は彼女たちに被害が及ぶ、惜しいが報酬を受け取るのは別の機会に取っておこう」

「そう簡単には取らせないが、ここは引き分けだ。クルーシブルにガーディアン以外を参加させるわけにはいかない」

 

 

先ほどまでの空気が霧散したことで、ようやく呆然としていた意識を戻し声を駆かける

 

「セイントさん!大丈夫ですか⁉」

「問題はない、そちらは上手くいったようだな?」

 

私たちの消耗具合といたはずの傭兵達がいないことから現状を察したらしいセイントが穏やかな声で返してくれる。

 

「ん、こっちは大丈夫。あとはあいつらを縛って情報を吐かせるだけ」

「とは言っても、捕まえる状況でもくなってしまいましたが…」

 

セイントが帰ってきたが、向こうにもレジルが合流した。流石にこれ以上の戦闘をするのは骨が折れる上に、セイントとレジルも既に戦う雰囲気ではない。

 

「ごめんなさい、ローズ。こっちは失敗したわ…」

 

アルがレジルに向かって誤っている。彼も自分が合流する前の戦況は分かっているようだった。

 

「であるなら撤収だ、今後の依頼についてはまた後で話そう」

「ちょっと⁉なに帰ろうとしてんのよ!タダで返す訳ないでしょ!!」

 

セリカが食ってかかる。ラーメンの恩を仇で返された挙句に、もう少しで捕まえられそうだったことを考えると当然のことかもしれない。

 

「レジル、彼女たちは戦いに勝った。それ相応の報酬があってしかるべきではないか?」

「そうそう、依頼主を教えてくれると助かるんだけどね~」

 

その言葉にアルは助けを求めるようにレジルを見る。恐らく依頼主側であるレジルの前で情報吐くことも出来ないし、別に払える報酬もないのだろう。

その様子にレジルは何度目かのため息をつきながらこちらを見やる

 

「ブラックマーケットだ」

 

レジルはそう言うと近場にあった何かの破片を手に取り、セイントへと放り投げる。

キャッチしたセイントがそれを見てみると、壊れたハンドガンのようだった。

 

「それのシリアルナンバーを調べろ、これ以上は言わんぞ」

「わかった、それで手を打とう」

 

「いいな?」とセイントがホシノたちを見るが、とりあえず手がかりを得たことで渋々納得してくれたようだ。

 

その様子を見て、レジルは便利屋を連れてこちらに背を向けて歩き出す。

セイントはその背中を少し見つめた後、ユメたちと共にアビドスの校舎へと向かって行くのだった。

 

 

 




戦闘描写ってどうすればいいんだっけ…?

レジルが使うストライカーのスキルにはDestiny1時代にあったダッシュ中のシールド「ジャガーノート」などの要素が含まれています。
覚えている人いるかな?笑
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