交差する運命   作:門の主トルネ

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「ハイヴが神と崇める者を見た」


月光

壊れてしまった柴関ラーメンの片付けなどを便利屋と他の皆に任せ、セイントとユメ、そしてホシノはゲヘナ風紀委員の本部へと訪れていた。

ヒナが大将に頭を下げ、店の再会と当事者の謝罪を約束した後にセイントたちを連れて来た形だ。

アビドスについての今後の話もしたいということだったため、ホシノもこの場に参加している。

 

応接室に通され少し待つと、ホシノとゴーストを模したヘイローを持った少女が現れる。

アコに対して注意をしたりなど事後処理を済ませてきたようだ。

 

「改めて、ゲヘナ風紀委員へようこそ。私は風紀委員長の空先ヒナ。よろしく」

「連邦捜査部シャーレのセイントだ。一応「先生」と呼ばれているが、好きに読んでくれ」

 

セイントに引き続き、ユメとホシノも改めて自己紹介をする。事前に一方的に知られていたホシノは少し警戒気味ではあったが、ヒナはそれを気にしてはいないようだった。

 

残るはヒナに連れ立って来た少女のみだったが、彼女が口を開く前にヒナがセイントたちに確認をする。

 

「ここに先生とを呼んだのはこの子と会わせたかったから。それはそっちも察していると思うけれど、梔子ユメと小鳥遊ホシノを連れて来たってことは彼女達も事情を知っているのね?」

 

その事情というものがセイントにまつわる、正確に言えばセイントの世界に関わるものだということは察しがついていた。

ヒナが二人に視線を向ける。これからの話を多くの人の耳にいれるつもりはないようだ。

 

「問題はない。ユメはもちろん、ホシノも私が異なる世界から来たことを知っている。二人とも信頼できるだろう」

 

セイントがそう言えば、ユメは微笑みながら頷く。ホシノは「少ししか知らないですけど…」と少し困った様子だが肯定した。

 

それに満足すると、隣に座る少女に視線を向けて言葉を促した。

短い銀髪と角、そして薄緑色の瞳の少女はそれを合図に口を開いた。

 

「初めまして。私は栄樹(さかき)ルナ。今は風紀委員の1年生だけど、前はブリアって名前のゴーストだった」

 

セイントが予想していたとおり、マイカと同じくかつてセイントのいた世界でゴーストとして生きていたようだった。そして、彼女の発したブリアという名前には覚えがあった。

 

「その名前を覚えている。エリス・モーンのゴーストか?」

 

「正解、よく覚えてたね」

 

彼女はどこかダウナーな雰囲気を漂わせながらもニッっと笑って見せた。

 

彼女と共にいたガーディアン、エリス・モーンとは交流があった。

ガーディアンとしては若かったが、確かな実力を持ったハンターだった。

多くの危険を伴うアハンカーラの大いなる狩りにも参加し、イコラやウェイ・ニン、ザヴァラやシャックスなどの歴戦のガーディアン達と肩を並べて戦った。

 

思慮深さを持ちながら、型にはまらない大胆不敵な次世代のガーディアンだとセイントは期待をしていたものだ。

 

しかし、彼女がこの世界に存在するということは…そう考えてセイントは口を噤む。

その事実に加えて、彼女がゴーストとしての自身の過去をどうとらえているのか、場合によってはマイカのように苦しんでいるかもしれない。

 

そう悩んでいれば、「フフっ」と小さな笑い声が聞こえる。こぼしたのはルナだ。

 

「ゴメンゴメン、そんなに気にしなくてもいいよ。先生と…梔子先輩だっけ?もそんな顔しないでさ」

 

みればユメの顔を見ればそこには心配の二文字が顔に書いてあるような顔をしている。ルナに指摘をされてアワアワと取り乱し、その様子をみてルナはニヤニヤと笑っていた。ヒナが呆れたようにため息をついたところでルナは気を取り直して話を進める

 

「先生と初めて会ったのは大いなる狩りの時だっけ?同じファイヤーチームにはならなかったから最初は顔を合わせた程度だけど」

「そうだな、だが狩りの後の宴で共に杯を交わした。ザヴァラとシャックスがエリスの実力を賞賛していたのを覚えている」

「懐かしいね、エリスは『お褒めに預かり光栄だ』なんて言ってたけど、内心ではむさ苦しいタイタンに囲まれて鬱陶しそうにしていたよ」

「そうだったのか?全く失礼なやつだ!」

 

おそらくエリスの真似だろうセリフをわざとらしいくらいに恭しく言うと、セイントは豪快に笑って見せる。タイタンが全員同じ気質とは限らないが、セイントのような人に囲まれるのは少し、というよりかなり辛いかもしれない。

 

懐かしむようにいくつかの昔話に花を咲かせていた二人だったが、ルナが目を伏せて告げた言葉でふその雰囲気が変わった。

 

「本当に懐かしい。あの時はザヴァラとシャックスも仲が良かった、ウェン・ニンもいた」

 

「そうだな。大いなる狩りの後、ハイヴが我々を襲った。そして『大災害』が起こった」

 

先程まで話していた個人的な昔話ではないな、とホシノは感じた。なにかセイントたちのいた世界で大きな出来事が起こったのだとは察することが出来たが、詳細は分からない。その疑問を口に出すかを悩んでいた時、ユメが助け舟を出すかのように話を広げ、ルナが説明をしてくれた。

 

「ハイヴ、無限の森のシミュレーションでしか見たことはないですけど…初めて見た時は恐ろしかったです。人みたいだけど蟲のようで…」

「そうだね、あいつらは命を、光を喰らう種族だよ。こっちに嚙みついてきて、寄生して、吸い尽くしてくる。そんな連中が月の中心に巣を作って地球を狙ってることに私たちは気づいた」

 

ホシノからしてみれば、現実感のない話だ。夜空をに見える私たちを照らす月にそんな生物がいる。そして夜空からその脅威が降りてくることを想像し、悪寒が走る。

 

人々もその恐怖を感じたのだろう。セイントが当時を振り返る。

 

「我々はハイヴの脅威を排除し、月を取り戻すと決めた。ガーディアンであればそれが出来ると信じていた」

 

ホシノはセイントの実力を知っている。そして、彼のようなガーディアンがゴーストの力があれば不死の戦士として戦えることも聞いていた。であるならば不可能などないように思える。しかしその考えをルナが否定した。

 

「想像よりも遥かにハイヴは恐ろしかった。光を餌のように喰らい、自身の血肉としてその牙を、爪を、そして剣を鋭くした。私たちは負けて、月を放棄して封印するしかなかった」

「それが、『大災害』」

 

「奴らの武器と魔術について我々はあまりにも知らな過ぎたのだ。シャックスの警告を蔑ろにしなければ皆は死なずにすんだかもしれない、ウェン・ニンも…」

 

セイントの嘆きにルナも目を閉じて同意した。

ウェン・ニン、先程の昔話にも何度か名前が上がっていた。荒々しく騒々しいタイタンだったようで、女性ながらセイント達とも馬が合っていたという。

そのような仲間が、死んでしまった。

 

「彼女の死はエリスも悲しんでいた、でも誰より悲しんで怒ってたのはエリアナだった。彼女達は愛し合ってたから」

「エリアナは恋人を殺した存在を知った、ハイヴが神と崇めるもの、光を切り裂く剣」

「それは『クロタ』って呼ばれてた」

 

そこで一呼吸おき、話を区切った。

皆は黙って話を聞き続けるが、セイントはどこか俯いていた。

自分の仲間の死んだ話を聞いてるからだとも捉えられるが、何か違うような気がした。

その違和感も、その後の話を聞けば理由がわかった。

 

「だからエリアナとエリスは、クロタに復讐をすることにしたんだ」

「エリス、エリアナ、ヴェル、オマール、サイ、そしてトーランド」

「6人が、月の中心まで続く暗い穴に入っていった」

 

無茶だと、ユメもホシノも思った。その6人がどれだけ強いガーディアンだったとしても、相手は神と呼ばれる存在なのだ。そしてそれはセイントも分かっていた。

 

「…知っている。ハイヴの研究にのめり込んだトーランドに接触した時点で、バンガードもエリスたちの動向には気がついていただろう」

「本来なら侵入が禁止されている月に許可なく行くことは出来ない。だがバンガードはあわよくばファイヤーチームがクロタを打ち滅ぼしてくれることを期待したのだ」

 

苦々しげにセイントは続けた。それは同胞が死地に行くことを容認したという事実だった。

 

「私の知る限り、その穴から帰ってきたものはいない。ルナ、君は…」

 

「死んだよ、ブリアはそこでね」

 

わかっていたことだ。

あの世界での生を終えたマイカがこの世界にいるのなら、ルナがここにいる理由など1つしかない。

 

「エリス以外の皆が死んだ後、エリスと隠れてた時に気づいたんだ、ハイヴは私の光を狙ってるって」

「だから、私はエリスを置いていった」

「彼女が逃げられるように、遠くに、遠くに」

「そして私は捕まって、砕かれた」

 

彼女は静かに語った。どこか寂しさや悲しみを含んでいたが、彼女の内心までは読み取れない。

 

「ルナ、君はその記憶に苦しんではいないか?」

 

セイントのその疑問に、彼女はゆっくりと首を振った。

 

「私にとってこの記憶は、物心ついたときからあったもの。本の物語を知ってたようなのと変わらない」

「この世界でも友達がいる。皆に相談もしてたから、私は大丈夫」

「確かに先生がこの世界に来たときは、この記憶は本物だったんだって痛感したし、動揺もしたけど…」

「支えてくれる人たちがいるから、平気」

 

ちらりとルナは横に座るヒナを見る。視線を向けられたヒナは優しく微笑み返し、それを見て彼女もまた笑みを浮かべた。

 

「それにマイカから聞いたんだ」

「エリスは、タワーに帰ったって」

「私の初めての友達を守ることもできた、ブリアに悔いはなかったよ」

 

彼女は誇らしげに胸を張る。エリスに似て強い少女だと感心した。

 

「なら、良いのだ」

 

「エリスを守り抜いた君に、ブリアに敬意を表する。その勇敢さと献身は紛れもない英雄たる証だ。君と再び、そして新たな絆を紡げることを嬉しく思う」

 

かつての友に思いをはせ、新たな出会いに心からの敬意と感謝を。

 

「改めて、これからよろしく頼む。ルナよ」

 

 




後書き兼小ネタ紹介
今回からは詳しいdestiny用語やキャラクター紹介を後書きに書いていこうかなと思います。
エリス・モーンのゴースト、ブリアこと栄樹ルナの登場です。

■ブリア
エリス・モーンのゴースト。
エリスをガーディアンとして蘇生したゴースト。本編での描写はなく、DLC「影の砦」(不死のシーズン}の伝承「ゴースト破片」にて名前が記載されています。
エリスのファイアーチームがクロタを倒すためにヘルマウスに突入したが、エリスを除く全員が死亡。その後デスシンガーの歌によってエリスが正気を失いかけた時には、エリスに仲間を思い出させて支え続けた。
ヘルマウス内で身を潜めている際に、ハイヴがゴーストの光を感知してエリスの居場所がばれてしまう事を危惧し、自らエリスから離れることを選んだ。
彼女の亡骸は月のゲートハウスで見つけることができる(DLC影の砦、「行方不明のゴーストの行方」クエストより)

■エリス・モーン
destinyではハイヴ関連のクエストによく出てくるキャラクター。
かつてヘルマウスでハイヴから逃げていた時に自身の瞳をハイヴの三つ目に置き換えることで生き延びることに成功した。
魔女のような言動に緑に輝く三つ目の見た目は見るからに怪しく、ゲーム内ムービーやトレーラームービーでは毎度意味深かつ不穏な雰囲気を漂わせるが、一貫して主人公と人類の味方。
かつてのアハンカーラの大いなる狩りにも参加している記述が伝承にあるが、その出自としてガーディアンになる前のエリスが本編より300年以上前の「シティ」で生まれ育った民間人という記述{放浪者のシーズン伝承「盗まれた情報」より)があるため、「シティ」創設~destiny本編300年前までにゴーストに蘇生されたということになり、比較的若いガーディアンということになる。
クロタを倒すという目的はdestinyの主人公(プレイヤーキャラ)によって果たされた(destiny1DLC「地下の暗黒」)が、その後もハイヴに対しての執着はなくならず、一時は彼女自身が「復讐」を司るハイヴの神になるストーリーなども展開された。
最近は放浪者というキャラクターとの仲が進展したようで…?

■ウェン・ニン
古いタイタンでいくつかの伝承に記載があり、卓越したストライカーとしての描写が多い。
仲間のタイタン達には「肉体こそが最大の武器であり、勝利のためには常に危険に真っ向から突撃するべきだ」と教えるなどの肉体派(頭タイタン)
エリスと共にクロタを討ちに向かったファイアーチームの1人であるエリアナ3と交際していた。(destinyに何組かいる同性カップルの1組)
「大災害」と呼ばれた作戦では「クロタ」と直接対峙し、その剣に貫かれた。
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