交差する運命   作:門の主トルネ

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「あのトーメンターってのは何だ?ネザレクの同種なのか?」ーークイン・ラガーリーー


トーメンター

カイザー基地:地上

 

『便利屋のみなさんが敵の通信網を遮断しました!基地の見取り図も入手したようです!』

 

アヤネからの報告が無線に響く。便利屋とマイカは任務をこなし、作戦は計画通りに進んでいる。

その上基地のデータを取得することができた、ホシノの捜索に役立てることができるだろう。

 

「アロナ、見取り図を確認してくれ!」

「わかりました!!」

 

すぐにアロナがシッテムの箱に見取り図をダウンロードし、三次元的に表示、現在位置のマッピングを行なってくれた。見れば基地自体の規模も大きなものだが、調査したと思われる地下空間も広大だ。もしもホシノが捕らえられているとすれば、わざわざ地下の掘削区画に連れて行く意味は薄い。地上の捜索を優先するべきだと考えられる。

 

しかし、ホログラムで表示された一角が、セイントの目にとまった。

 

「この区画だけ異様に大きく、整備されているようだ。何かデータで分かることはあるか?」

 

アロナにいくつか回収したデータと照らし合わせて解析を依頼する。しかし彼女は申し訳なさそうに首を振った。

 

「あまり詳しくは、ただ物資の記録を見ると最初の整備にかなりの人員と物資を注ぎ込んでいますが、以降は人の出入りは最小限になっているようです」

 

妙な話だ。整備が行われているということは黒服が持ちかけたというカイザーが行っていた『宝探し』に何らかの成果があったということだが、それにしてはアロナの解析したデータでは最近の人の出入りが少なすぎる。

であれば可能性は2つ。発見したものが想定よりも価値の低いものだったか、もしくは、

 

秘匿するほど価値が高いものであるか、だ

 

とはいえそちらを調査するのはホシノの救出を終えてからであり、最悪は時間がそれを許してくれないかもしれない。

セイントがそう考えていると、新たな通信が割り込んで来た。どういうわけか、特定個人の無線にピンポイントで連絡を取ってくるらしいその相手は、黒服だ。

 

「興味深いですね、であるならそちらの調査は私が引き受けましょう」

 

その声は、実に愉快だという様子を隠していない。

そもそもが黒服が依頼した地下調査なのだ、そこに暗黒があることは想定していなかったと彼は言うが、だとすればその狙いが何だったのかは未だに分からない。レジルがマイカに存在を共有していなければ協力などはしなかっただろう。

 

しかし、現在の利害は一致している。暗黒を調べるには彼の助力は不可欠だ。

 

「ならば任せる、こちらはホシノを救出した後に定刻を過ぎれば撤退する。悪いが助けてはやれんぞ」

 

皮肉を込めてそう伝えれば、クックックと彼は笑う。

 

「ええ、お気になさらず。約束の通り、判明した事実は必ずお伝えします」

 

その態度は正直に言ってセイントは気に食わない。契約を守るという彼のスタンスのみを信用することにし、話は終わりだと通信を切ろうとする。

 

「黒服さん」

 

直前に、ユメが声をかけた。

その声は彼女にしてはどこか平坦なもので、言ってしまえばらしくない様子だ。

 

「あなたとは協力関係です、それは理解しています」

「それでも私はホシノちゃんを利用しようとしたことは許せません」

 

「もしもホシノちゃんが傷つくようなことがあれば、私は貴方を許しません」

 

彼女は明確な怒りの表明と、黒服への忠告をした。

セイントからしても得体の知れない相手に対して、それでも臆せずに宣言してみせた。

 

一時の沈黙が無線を支配したが、すぐに彼は返答した。

 

「ええ、肝に銘じておきましょう」

 

その声色は先ほどとは少し違うものだった。恐怖はしていないだろうが、そこにはある種の感服のようなものが混じっていたのかもしれない。

 

通信が切れれば、ユメはふうと息を吐いていた。

周りにいたシロコたちは少し心配そうな様子で彼女を見たが、それにすぐに微笑み返した。

 

「大丈夫、ほら!早くホシノちゃんを見つけよう!」

 

その頼もしさに皆で頷くと、素早く行動を再開した。

まだ確認していない建物に向けて移動を開始した時__

 

 

ズンッ――

 

 

そんな音と共に地面に亀裂が走り、そして振動と共に広範囲が瞬間的に沈み込んだのだ。

不意の出来事に、そして一瞬だけ中に身体が浮いたことでノノミとセリカは身体を地面についてしまう。

シロコとユメはなんとか耐えたものの、その様子は無防備だ。

 

何かしらの攻撃か、セイントは反射的に中に浮いた身体を勢いよく捻りながら周囲を確認する。

こちらの体制を崩す攻撃だとすれば追撃が来るはず。そう警戒したが、敵の影は確認できなかった。

 

であるなら、先ずは体制を整えるべきだと判断して、地に足がついた瞬間皆に集まるよう指示をかけようとしたその時―

 

 

ズガンッ!!

 

 

沈んだ大地から何かが飛び出した。

 

それは黒服が目撃したという理事を飲み込んだ暗黒

 

まるで死神と見紛うソレが宙を舞う

 

その暗さは恐怖とともに晴れているはずの空を暗く染めているような―

 

 

セイントの直感が、それの危険性を嫌というほどに訴えた。

 

「散開しろ!!」

 

想定していた指示をすぐさま変更し、ノノミとセリカを乱暴に掴む。

なんとか対応したシロコとユメと共にその場を飛び退いた。

 

ソレは鎌を地面に突き刺すかのように地面に叩きつけた。

 

その衝撃波に直接巻き込まれることはなかったが、『光』が少し奪われるような感覚がセイントを襲った。

これがホシノの意識を奪ったという一撃なのだろう、立ち上がったユメたちも顔を顰めた様子だ。

 

幸いそこまで広範囲の攻撃ではない、武器も鎌なのであれば数の差を活かして距離を保ちつつ攻撃するのみだ。

 

「取り囲み、ありったけの弾丸を撃ち込むめ!」

 

セイントの言葉に皆すばやく反応し、怪物の周囲を等間隔で囲み、銃弾を浴びせた。

 

ソレに銃弾は大した効果を与えてはいないようだった。しかし、その輝くスリットを左右に何度も振り、多方面からくる攻撃の対象を迷っている様子を見せる。

 

この隙に有効打の模索を、とセイントが考えた時だった。

 

それは自身の持つ鎌を天に掲げ、素早く回転させる。ヤツの頭上に紫の輪が浮かび上がった。

そしてシュルシュル—と回転音を鳴らした後に、いくつもの斬撃が飛び出してくる。

それらは取り囲むシロコたちに向かって動き、なおかつ回避行動を取った彼女たちを追尾した。

 

「ぐッ!!」「きゃあッ!!」

 

セリカとノノミが斬撃に吹き飛ばされる。痛みに倒れる2人は無防備だ。

シロコはすぐにフォローに入り、セリカを立たせる。服が少し破れているようだが、出血にはいたっていないようだ。

そしてもう1方、ノノミに対してヤツは狙いを定めた。まだうずくまっている彼女に大きな音を立てて迫る。

 

ノノミが顔を上げたときには、襲い来るソレが眼前に迫り——

 

ガキィィィン!!

 

その間に素早く体を滑り込ませたセイントが、左腕に展開したセンティネルシールドを振り抜いた。

 

攻撃を防ぎつつ相手を後退させることに成功したセイントはそのまま距離を詰め、近接戦闘に以降する。

 

鎌と盾がぶつかり合い、互いに譲らぬ攻防が繰り返される。

 

ユメはその様子を注意深く観察した。コレまでの銃撃、そしてセイントの攻撃は決定打になっていない。

何か打開策になるものは、接敵からの変化はないか——

 

その時、怪物の両肩が目に止まった。

これまでの銃撃はその黒い体に弾かれるか、まるで暗闇に飲み込まれるように消えていった。

しかし、まるで何かの種のような見た目の両肩にのみ銃弾が突き刺さり、いくつかの罅を入れていたのだ。

 

ユメはすぐさま駆け出した。セイントによって釘付けにされているソレの背後から、その側面に飛び出すようにスライディングしつつ狙いを定める。

 

ダダァン!!

 

2発の銃弾がその左肩に突き刺さり、それを粉々に砕いた。

 

それを受けて初めて怪物は痛みに悶えるような金切り声をあげる。耳をつんざくようなそれに顔をしかめながらも、その隙にセイントに並び息を整えた。

 

「でかしたぞ!よく見ていた!」

「いえ、ですがもう片方も壊せばもっとダメージを与えられるはずです」

 

セイントとユメは揃って標準を合わせる。このまま畳み掛けようとした時、怪物はゆらりと体を前に倒した。

 

両手を地面につけたその様子に、想定よりも痛手を与えられたのかもしれないと考えた時だった。

 

それは両手両足を力一杯地面に叩きつけ、天高く跳躍した。

それはセイントとユメを狙うには高すぎるもの、狙いは——

 

「まずい!!」

 

セイントは素早く反転し、再び盾を展開して駆け出した。

向かう先にいるのは、セイントたちの攻防の隙に合流し、治療して体制を立て直そうとしていたシロコとたち。

 

自身に黒い影が差したことに気づいてシロコは素早く振り返り銃を構えるが、それではヤツを止められない。

 

目を見開く3人の前に、渾身の力で飛び出したセイントが踊りでた。

 

ドゴォォン!!

 

大きな音と共にセイントが3人を巻き込んで吹き飛ばされる。建物の外壁に叩きつけられて巻き上げられた粉塵により、3人の様子はわからない。セイントのおかげで直接の被害は避けたようだが、それでも状況は最悪だ。

 

ユメはすぐさま引き金を引き、怪物の気を引こうと行動を開始する。

幸いヤツはぬらりとこちらに体を向けてきたため、姿の見えない3人への興味は失ったようだ。

 

ドス、ドス、とゆっくりこちらにヤツは近づく。それにユメは冷やせが背中を伝うのを感じた。

どれだけ1人で持ちこたえられるかはわからないでもセイントなら無事なはずだ、せめて戦線に復帰する時間か、シロコたちが逃げる時間は稼がなければ——

 

そう思考を巡らせたとき、ガコンッ!というどちらかがが発したものでもない音が、近くで響いた。

ユメも、怪物もそちらを見る。

 

それはこの基地にいくつも設置された扉だ、広大になった地下へのアクセスを容易にするための侵入口。

それが内側から殴られるような音を響かせている。いくつかの音が鳴った後に、少しだけ空いた隙間から手のひらが扉を掴んだ。

 

その手は、よくみた大きさの手のひらは、あのグローブは…

 

そう思ったとき、まるで怪物が新たな獲物を見つけたとばかりに駆け出した——

 

「いけないっ!!」

 

ユメは僅かに遅れて駆け出した、このままでは___

 

 

 

 

 

カイザー基地:地下出入口

 

ホシノの視界が土煙から晴れたとき、眼前の土でできた通路は土砂で塞がってしまっていた。

助けてくれたレジルの安否は、わからなかった。

 

僅かにうつむき、唇を噛む。互いに危険性は分かっていた、けれど私だけが助かった、助けられてしまった。

 

もう、何が何だかわからない。あの囁きを聞いてから、ずっと頭の中がうるさいのに、もっとぐちゃぐちゃになってしまった。

 

「…そとに出なくちゃ」

 

ゆらりと立ち上り、階段を登っていく。

足元を照らすのは非常灯だけで、少し心もとない。恐らく地下に仕掛けた爆弾によって電源が

切断されたのだろう。

 

少しすれば、金属製の扉が目の前に現れた。

こちらも電気が止まったせいか動かない。横にあるコンソールも無反応だ。

 

かなり頑丈に作られているため簡単には開けられなさそうだが仕方がないと、ホシノは力任せにその扉を盾で殴った。

考えればもう少しやりようはあったのかもしれないが、ホシノは八つ当たりのように何度も殴った。

 

少しすれば、扉に隙間が生まれた。そこからは外の光が差し込み、砂塵が吹き込んでいる。

あまり回らない頭で、その隙間から扉を両手で掴み、力一杯横に動かそうとした。

 

あまりにも殴りすぎて変形してしまったのか、上手く動かない。

 

もう一度、両足を踏みしめて全体重を乗せた。

 

ガコン!という音とともに扉が一気に開かれる。

光がホシノを包み込み、ようやっと視界が、そして思考が澄んだ気がした。

 

 

そしてすぐに、その視界を黒が覆った。

 

あっけに取られたホシノは反射的に盾を構えたが、ソレは盾ごとホシノを鷲掴みにして地面に叩きつけた。

 

「かはッ!!」

 

肺から空気が抜ける、頭を打ち付け視界がブレる。

なんとか自身を襲った脅威を確認すれば、それは黒服の部屋で、そして地下で出会ったあの怪物だ。

 

それが自身を片手で押さえつけ、もう片方で鎌を逆手に持っていた。

まるで、盾からはみ出たホシノの頭を首からきり落とさんとばかりに——

 

 

あぁ、なんだ、だめだったんだ。

 

 

まるで他人事のように、ホシノはそうとしか考えられなかった。

ただ呆然と、それが自身を刈る瞬間をながめ続けた。

 

ごめん、

 

そう口にしようとした時、自身と大鎌の間に、美しいシアンが割り込んだ。

 

グザッ、という音とともに、そのシアンのの隅から赤がこぼれだす。

それは、梔子ユメは、自身の腹で鎌を受け止め、その柄を握りしめて立ちふさがっていた。

 

「ホシノちゃ…んは、やらせない…ッ!!」

 

多くの血をながしながら、彼女はホシノを守っていた。

 

「あ…ユメ先ぱ、ユメせんぱいっ!?」

 

嫌だ、いやだ、どうして、なんで私なんかを守っているんですか、どうしてあなたが傷ついているんですか、また、私は…

 

ホシノの声を聞いたためか、ユメは少しだけ顔をホシノへ向けた。

その口の端からは血が溢れ出ているが、その形はホシノを安心させるように微笑んでいた。

 

「だい、じょうぶ。ホシノちゃんはわたしが、まもるから」

 

そう言う間も、怪物は鎌を持つ手に更に力を込めていた。

少しずつ、ユメのからだの傷を深くしていき、血がホシノの頬に、地面に垂れる。

 

「だめです、逃げてください!!嫌だ、やめて!!!」

 

ホシノは可能な限りそう叫んだ。しかし、ユメは逃げなかった。

それどころか、彼女は足と手には、更に力がこもる。

 

その目には、炎が宿っていた__

 




ユメから舞う鮮血、それでも彼女は大切な人を守り抜く

アビドス2章も大詰め(終わる終わる詐欺中)、奮闘するユメは暗黒に勝つことができるのか、まて次回!!

今回カイザーの理事が飲み込まれて変化した姿は、Destiny2に存在するトーメンターという敵としています。独自設定が含まれていますが、楽しんでいただければ。
それと虐めてごめん、ホシノ…

Destinyネタ解説
■トーメンター
 Destiny2のDLC「光の終焉」より登場した中ボス的存在、ゲームプレイとしてはその両肩がバリアを発生としており、当てにくいそれらを壊さなければダメージが入らない厄介な敵です。鎌から発生する斬撃は追尾昨日を備え、斬撃を断続的に発射特殊なサークルを作り出す事もできます。加えて、トーメンターが時折放つ衝撃波は一次的に光の能力(ゲームプレイ的にはスキル)を使えなくする効果も持っており、その強さがうかがえます。
 その誕生は暗黒によるものとされていますが、今でも不明点がのこっています。目撃者と呼ばれるボスが暗黒と光の両方を使って生み出したドレッドと言われる種族の1つとされている描写もありますが、このトーメンターと呼ばれる存在が初めて現れたのはその種族の誕生前です。
 また、このトーメンターに似たレイドコンテンツのボスとして、太古から存在する苦痛の神「ネザレク」が存在しています。今回の前書きに書いたように劇中のNPCからはトーメンターはその神のクローンなのか?という疑いも上がっています。

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