Destiny世界での出来事は今後幕間的な形で描写していく予定です
流転
『責任を負うものについて、話したことがありましたね。
あの時の私にはわかりませんでしたが……今なら理解できます。
大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。
それが意味する心延えも。
……。
ですから、先生。
私が信じられる大人である、あなたになら、
この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。
そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。
だから先生、どうか……。』
どこか人工的な匂いを感じた。
無限の森でのベックスとの戦いの日々では感じたことのない、微かに甘い木の香りが鼻を掠める。
意識がゆっくりと浮上する。
「ここは……どこだ……?」
直前まで、
ポータルの光がユメの傍で輝き、咄嗟に彼女の手を取った。だが光に飲まれる直前、ゴーストが私たちを呼ぶ声が聞こえて──。
「……ッ、ユメ!ゴースト!」
セイントは咄嗟に抱える腕を確認する。
そこには目をきゅっと瞑ったままのユメがいた。
安堵の息を吐き、声をかける。
「ユメ、もう大丈夫だ。」
瞳を伏せていたユメがゆっくりと目を開き、こちらを見上げる。
「セイント……さん?」
「怪我はないか?」
ユメは小さく首を振り、安堵したように笑顔を見せた。
「はい、大丈夫です。急に眩しくなって、意識が遠のいた気がして……ありがとうございます。また助けてくれたんですね。」
「気にするな。」
彼女がゆっくりと立ち上がるのを見届け、周囲を見渡す。
木目の机、淡い光が差し込む窓、壁にかかった額縁。
穏やかで静謐な空気が漂うが、見知らぬ部屋だった。
「ここ、どこでしょう。ベックスってこんな空間も作れるんですか?」
「いや……こんな景色は初めてだ。」
周辺のスキャンを試みようとするが、手が止まる。
そうだ、ゴーストがいない。
「そうだ、ゴーストちゃんは……?」
セイントは首を横に振った。
その仕草を見て、ユメの顔から笑みが消える。
「そんな……ごめんなさい、私が気を抜いたばかりに……」
一瞬、彼女の瞳に影が差した。
「気にするな。ゴーストとの繋がりは切れていない、少なくとも無事だろう。それにあの光には覚えがある。ベックスがポータルを発生させたのだろう。」
理由はわからないが、転移させられたのは間違いない。
だがセイントの胸には、もうひとつ引っかかるものがあった。
「ユメ。気を失っている時に、誰かの声を聞いたり、何かを見たりしたか?」
「え? いいえ……何も。」
やはり先ほどの“声”は、ユメには届いていなかったらしい。
あれは──夢か幻か、それとも。
セイントは静かに息を吐き、窓の外へと目を向けた。
その視界の先には、幾つもの高層ビルが立ち並ぶ街並みが広がり、その上には不可思議な模様が浮かぶ青空だった。
「…まさか、ここは」
とある可能性が頭に浮かんだと同時に、ガチャリという音が室内に響く。
セイントは咄嗟にショットガンに手をかけ、音のした方に振り返る。並び立つユメも警戒し、腰を低くして臨戦態勢をとる。
しかし、音の主はこちらに敵対心などを持ってはいなかったようで、むしろこちらの様子に驚いているようだった。
「驚かせて申し訳ありません、ノックをするべきでしたね。既にいらっしゃるとは思わなかったので」
そこには眼鏡をかけ、白い衣装に身を包んだ長い髪の女性が立っていた。
だが、それだけではない、セイントの目に映ったそれは、彼を驚かせるには十分なものだった。
「ヘイロー…だと?」
そう、その女性の頭上にはユメと同じような輝く輪が浮かんでいるのだ。
それはセイントのいる世界の人類にはない特徴でありながら、ユメにとっては一般常識となっているもの。
ユメもそれを確認したのか、驚愕の顔に染まっている。
「まさか、ここはキヴォトスなんですか…?」
その問いに対して、長髪の女性は首を傾げながら答える
「ええ、ここは学園都市『キヴォトス』です。より正確に言えば、連邦生徒会の施設になります。」
セイントとユメは顔を見合わせる、2人は
「何やら状況が把握できていないようですので、説明を開始してもよろしいでしょうか?」
長髪の女性が声をかけてくる。何の説明かはわからないが混乱してる現状の助けになるならと2人は頷いた。
「まずは自己紹介を、私は七神リン、連邦生徒会の幹部です」
そう静かに告げてくる彼女からはやはり敵意は感じない、名乗られたのであればこちらも返そうとした矢先に、気になる言葉が続いた
「そして貴方はおそらく、私たちがここに呼び出した先生…のようですが。」
おかしな話だった、2人はベックスのポータルによってテレポートさせられたはずである。
「待て、君が我々をテレポートさせてここに呼んだというのか?」
そう問うと、リンは疑問を隠さないといった表情で答える
「テレポート…、何の話でしょう?」
おかしい、明らかに状況がかみ合っていない。
「どういうことだ、先ほどの言葉は君たちが我々を招いたような口ぶりだったが?」
そう再度問えば、リンは申し訳なさそうな顔で答える。
「申し訳ありません、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないのです」
ますます事態がややこしい、聞けば彼女は連邦生徒会長と呼ばれる人物からここに訪れる「先生」を迎え、いくつかの説明をすることが役目なのだという。
つまりはここで彼女に質問をしても、欲しい答えは返ってこないということに他ならなかった。
こちらが現状に不満を抱いていると思ったのだろう彼女は謝罪をする。
「申し訳ありません、こんな状況になってしまったこと、私としても遺憾に思っています。」
「仕方あるまい、答えられぬ質問ばかりされても困るだろう。今は君が説明できる現状を教えてくれれば構わない。」
謝罪するリンを手で静止しながらそう返す。セイントとしてはまだ若い彼女にそう大きな負担を掛けたくなかった。詳しい説明のために場所を移すということなので、移動をしながら話すことにした。
「こちらが名乗るのが遅れてしまったな、私はセイント14。先生と呼ばれるようなことをした記憶はないが、よろしく頼む。」
「…セイント、ジュウヨン?それが名前なのですか?」
きょとんとした顔に苦笑いする、ひと月前にユメ自己紹介した時もそんな反応だった。
細かなことは後で説明すると伝え、「好きに呼ぶといい」と伝える。
一先ずは納得をしたようで、リンは「先生」と呼ぶことに決めたようだった。
セイントが自己紹介を終えると、彼女の視線はユメへと移る。
「それで…貴方は?私が聞いていた話では、ここに訪れるのは先生のみだったはずですが。」
どうやら、ユメの存在は不可解な現状でも彼女にとっては更にイレギュラーなものらしい。
どう説明をしたものかと考えているとユメが口を開いた。
「えっと、私は梔子ユメといいます。1ヶ月程前に先生に保護されて、面倒を見てもらっていました。」
ユメはそう説明をする。そうなるに至った経緯を省いた形にはなってしまったが、事実そのようなものだった。
「なるほど…先生はキヴォトスの外から来られる方と伺っていたのですが、あなたはこの1ヶ月外の世界にいたというのですか?見たところヘイローを持っていますし、キヴォトス人のようですが…」
「えっと、それはちょっと色々あって…」
そう口を開いたところだった。チンッという音を立ててエレベーターの扉が開く。
開けた視界の向こうからは喧騒が聞こえ、その中から一際大きな声が聞こえて来た。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
既にあるストーリーを組み替えていくのって難しいんですね、初めての体験で楽しいです。
今回からブルーアーカイブのチュートリアルに入っていきます。置いてけぼりになってしまう点もいくつかあると思いますが、後々説明を入れていく予定です