交差する運命   作:門の主トルネ

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「全ては光の意思だ」__ミスラックス__


運命の出会い

 ダンッ__!

 

 そんな着地音が3つ、空間に響く。モモイを傍らに抱えながらセイントは周囲を素早く見回し、皆の無事を確かめる。

 

「皆、無事か!?」

 

 そう声を上げながら見れば、ミドリを抱き上げたアヤメとユズを姫抱きにしたユメがいる。どうやら全員無事なようだった。

 

「ケガはない?ミドリ」

「大丈夫?ユズちゃん」

 

 2人に覗き込まれたミドリとユズは、突然の出来事への驚きと共に、彼女たちのその振る舞いにドキリとしてしまっていた。アヤメはもとより美形な上、最近は良くも悪くも繕わない表情をすることも増えたため、周囲を警戒する為に少し険しい顔をしている様子は、どこかキリッとした印象を受ける。そして同様にユメも目が少しばかり潜められ、いつもの朗らかな様子からはギャップを感じる。

 それらを自身を守るように抱かれたまま至近距離で目撃した2人は、落下の恐怖とはまた別の動悸を感じ、少しばかり顔を赤くしながらか細い声でお礼を言って自身の足を下ろす。恥ずかしいのか服の襟元に顔を少しばかり隠しているが、とりあえず問題はなさそうだ。

 

「先生もアヤメ先輩もユメも凄い!助けてくれてありがとう!」

 

 自身を軽々と持ち上げたセイントに少しばかりワクワクとした様子を見せながら、モモイは皆の無事に対して礼を言う。現状を考えると少しばかり気を抜くのが早いが、彼女のこういった振る舞いがゲーム開発部の皆を引っ張っているのだろう。

 彼女たちを過度に緊張させないよう振る舞いながら、アヤメとユメとの3人で彼女たちを守るように囲いながら、一度落ち着いてこの空間を調べることにした。

 

「まさか床が開くなんて、ここはどこなんでしょう……?」

「落ちてから短いし、そこまで地下ってわけじゃなさそうかな?」

 

 ユメとアヤメが互いの無事を確認し、周囲に意識を向けようとした時だった。

 

「えっ!?」

 

 モモイが驚いた様子で声を上げる。見れば何かを見つけた様子で、皆がその視線の先へと意識を向ける。そして同じように、驚きの声を上げるのだった。

 

 部屋の中央、地下だと言うのに太陽の光が入るようにわざわざ設置されたのだろう、上部の窓から落ちる陽光に照らされたそこには、1つの大きな椅子が設置されていた。そばにモニターが置かれたそれはやはりこの施設全体の印象と同じくどこか未来的で、セイントはどことなく地球に残された黄金時代の研究所を連想する。

 しかし、その思考も直ぐに止めざるを得なかった。そこに座る人影があったからだ。

 

 

 艷やかで、床に垂れるほどの長さの黒髪。一糸纏わぬ姿に見える体は、人肌というにはあまりにも美しく、陶器のような印象をうける。そんなどこか人間離れした、神秘的な少女がそこにいたのだ。

 

「お、女の子……?」

 

 モモイの呟きに、無意識に見惚れていた全員が我に返る。周囲を警戒しながら、その少女に近づいた。見れば見るほど美しいその少女は、やはりただの眠っている少女には思えない。その印象について、ミドリはこう表現した。

 

「なんだか、眠ってるって感じじゃなくて、電源が落ちてるみたい」

 

 その言葉に皆もなぜか納得してしまった。どこかマネキンのような、人工的な芸術作品のような彼女はやはり普通の人間ではないのだろう。しかしロボットというにはあまりにも人に近く、恐る恐る触れてみたモモイによると、肌のようにしっとりと柔らかいようだ。

 

 周囲に明確な脅威がないと判断したセイントたちも、モモイたちと同様に彼女を注意深く観察する。その時、モモイが傍に刻まれている文字を発見した。

 

「……アル、イズ……エ ー 、エル、アイ、エス?どう読むのか分からないけと、この子の名前?」

 

 

「……アリス?」

 

 

 それは、なぜかとても彼女に似合う名前だと、セイントは感じた。つられて文字を注意深く見たミドリは、書かれている文字は「ALIS」ではなく「AL-1S」ではないか? と意を唱えたが、どうにもそれはしっくりこない。まるで「アリス」こそが彼女の名前であることが正しいかのようだった。

 ひとまず、彼女がどのような存在なのか分からずともこのままではいけないと、どうやらモモイから廃墟に向かうと言われた時から用意をした着替えをミドリが着せ始める。皆がそれを手伝っている様子を見ながら、セイントは思案する。わずかな間だが、セイントは少女の様子を注意深く観察していた。それによって推察できることは大きく2つ。

 1つは、彼女は確かに呼吸をしておらず、その体は言葉通りの肉体ではないこと。そしてもう1つは、もし彼女が起動するとしたら__。

 

 ピピッ、ピピピッ。

 

 思考を、機械音が遮った。見れば少女の傍にいた皆が驚いた様子から、その音は少女から発せられたもののようだった。そして、それはさらに続いた。

 

「状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状第を解除します」

 

 それはもはや音声ではなく、声だ。内容は置いておくにしても、それには少女らしい高さと柔らかさがあった。そんな声を発した少女が目覚めたことに皆驚き、多少の警戒をするが、当の本人は周囲を見回し首をかしげている。

 

「状況把握、難航。会話を試みます……説明をお願いできますか?」

 

 そう言いながら、こちらへと現状の説明を要求してくる。そう言われても、と皆顔を見合わせた。ここにいる全員が、逆に説明をしてもらいたいくらいだ。その思いを代表してか、ミドリが彼女とこの場所についてを問う。しかし、期待した答えは返ってくることはなかった。

 

「本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認。データがありません」

 

 どうやら彼女自身、ここにいる理由どころか自分についての記憶を持ち合わせていないようだった。幸いなことにこちらへの敵対意思は無いらしく、モモイが親し気に話しかければ、機械的な返答ではあるがコミュニケーションをとってくれている。

 

「うわ、すこい! ロボットの市民ならキヴォトスによくいるけと、こんなに私たちに似るロボットなんて初めて」

 

 彼女との距離を縮めながら、モモイはそう言った。それは、まさしくセイントが考えていたことだ。このキヴォトスに来てからも普通に生活をするロボットを見かけてはいた。しかしそのどれもは見てロボットとわかる上、技術的に見ればセイントのようなエクソよりも劣っているものだった。

 けれど、彼女は違う。関節・皮膚・髪の毛などの全てにおいて他のロボットを、エクソを凌駕している。直感を含んではいるが、一目見てセイントはそう考えた。セイントのいた世界において、エクソとは黄金時代の奇跡とも呼ばれるものだ。かつての人類文明を破壊しつくした大崩壊により、その多くの技術は失われてしまったため、新たにエクソを作ることも困難なはずなのだ。

 

 だというのに、それ以上の存在が目の前にいるのはなぜだ?

 

 セイントはその疑問を無視することはできないと考えた。彼女と話をして、アヤメやユメも含めて皆敵意はないと判断し、これからの事を相談しているのを横目に確認する。どうやら何かモモイに考えがあるらしく、一度ミレニアムに帰る方向で話はまとまったようだった。そこで、セイントが1つ提案をする。

 

「彼女をここから連れ出すことには賛成だ。しかしこの地下をもう少しだけ調べてからにしよう。彼女についての情報も何かわかるかもしれん」

「そうだね、もしかしたら何かを思い出すかも!」

 

 セイントの言葉をモモイは好意的にとらえ、みなを導くように音頭をとる。ミドリはやれやれと呆れながらも賛同し、ユズは状況に多少困惑している少女の袖を控えめに引いて皆についていくように誘導する。きっと彼女たちは記憶を失くした少女を想ってこの後の調査を手伝ってくれるだろう。もちろんその考えもセイントにはあったが、それだけではなかった。そしてそれを察したのか、ユメとアヤメが並び立って声をかけてくる。

 

「彼女が何者なのか、調べないといけません。レディオラリアがあった工場ですし、ただのロボット……だとは片付けられません」

「だね、ユメは皆を見てて。もしまずそうな証拠とかあったら、私と先生で先に回収する」

「そうだな、今のところ敵意はない。良い関係を気づけるならそれに越したことはないだろう。不都合な真実があったとしても、精査してから伝えるべきだ」

 

 セイントが言えば、彼女たちは静かに頷いた。仮にあの少女に重大な秘密が隠されていたとしても、現時点では彼女自身その自覚がない。であれば、今の彼女の行く末は自然な流れに任せるべきだと判断したのだ。もし、不都合な事実が存在したとしても、それは彼女がより自身で判断できる材料が揃ってからか、可能であれば自主性を持ってからの方がよいとセイントたちは考えた。

 

 いわば生まれたばかりに近い彼女に、あり方を押し付けるわけにはいかない。

 

 そう決めたところで、セイントたちはモモイたちを連れ立ってこの部屋を後にした。地上へ向かう経路を探しつつ、地下の探索を開始した。

 

 

 ……しばらくの調査を続けたが、その成果はあまり出なかった。地上へ向かう通路こそ発見したため、帰ることは問題なさそうなのが幸いだったが、今のところ少女についても、工場についても大した情報は得られなかった。地下もそこまで部屋が多いわけでもなく、隠し扉でもない限りもう次の区画で最後になるはずだ。そう思ったときだった。

 

「断片的な記録と一致、必要情報取得のための行動を開始します」

 

 突然、少女が声を発して歩き出した。何かを思い出した、というほど具体的なものではないらしいが、デジャヴのような感覚があるらしい。皆で警戒しながらアリスの案内のもと、その区画を進んでいけば一つのコンソールを見つけることができた。

 それは、ここまでわずかな証明や非常灯以外はなかったはずの電源がつながっているらしく、今は何も映してはいないがわずかに光が灯っていた。それにアリスが近づけば、ピピッという電子音を皮切りにアナウンスが流れ始める。

 

 [Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しの項目を入力してください]

 

「ディビジョン、システム…?」

 

 心当たりのない名称をユズが復唱する。誰もがこの名の意味を知らず、少女自身も分からないといった様子だ。この工場、ひいてはそれらの名称なのだろうか、とセイントが思考を巡らせているとき、何かを確かめるように少女はそのコンソールに手を伸ばした。

 

 その時、画面を不規則な文字列が覆い尽くし__沈黙した。

 

「こ、壊れた?いったい何をしたの!?」

「否定、本機はまだ行動を起こしていません」

 

 モモイが少女に問い詰めようとしたが、彼女も分からないといった様子で否定する。セイントも端末の様子を確かめようと少女のそばに並んでキーボードに手を伸ばそうとした時だった。

 

「……あなたはAL-1Sですか?」

 

 まるで、何かを確かめるような問いが画面に浮かぶ。問われた少女は、困惑した様子で声を漏らした。

 

「本、機は……」

 

 まだ記憶を取り戻していないためか言い淀んだ言葉であったが、その声をコンソールは認識したようだった。状況についていけていない彼女を置いて、文字が更新されていく。

 

 [音声を認識、資格が確認できました。おかえりなさいませ、AL-1S]

 

 どうやら音声認識機能まで備えていたようで、システムは彼女をAL-1Sと判断している。しかし少女は自分という知らない情報を受けて、少しばかりうつむいた。彼女の情緒がどのようなものかは未だ判断しかねるが、それでも何かを押し付けられるというのは苦痛なのだろう。うつむいたまま、彼女はコンソールに問いかけた。

 

「あなたは私を、AL-1Sについて知っているのですか?」

 

[そうで]

 

 返答を表示したかと思えば、文字が途中で止まってしまっている。まるで古いコンピュータが処理落ちをしているかのようだった。しばらく様子を見守ると、表示内容が大きく切り替わる。

 

[緊急事態発生。電力限界に達しました、電源が落ちると同時に消失します]

[残り51秒]

 

 突然のカウントダウンに皆が慌てる。ようやく何かしらの手がかりを得られたと思えばこれだ、どうにかしたくとも方法が分からない。

 

「そんなぁ!?この子のことも分からないし、G.Bibleも見つかってないのに!?」

 

 モモイが悲嘆に暮れた声を上げると、カウントダウンが続くなかでシステムがその言葉を拾い上げた。

 

[あなたが求めているのは、G.Bibleですか?<YES/NO>]

 

 その表示にモモイは驚いたが、すぐさまミドリが返答した。

 

「YES!!」

 

 その言葉を聞いてか、画面の表示が変化する。カウントダウンは止まらない。

 

「G.Bible、ライブラリ照合。発見、登録ナンバー193、廃棄対象データのためバックアップなし。電源の消失と共にデータが削除されます」

「保存が必要であれば、保存媒体を接続してください」

 

「保存媒体…お姉ちゃん何かない!?」

「え、急に言われてもガールズアドバンスSPのメモリーカードしか…」

「貸して!」

「ケーブル、接続する…!」

 

 ワタワタとゲーム開発部が動き出す。モモイが持っていたゲーム機をコンソールに繋ぎ、G.Bibleとやらを保存しようとしているらしい。どうやらその際にゲームのセーブでを削除されたようでモモイが悲鳴を上げている。

 そんな様子の中でも、カウントダウンは進んでいた。気がついたときにはその数字は0に切り替わる瞬間だった。

 

__沈黙。

 

 セーブデータを犠牲にしながら、何も得られなかったのかとモモイが泣き出しそうになったとき、ゲーム機の画面が灯った。

 

[『G.Bible.exe』ダウンロード完了]

 

「や、やった……!」

 

 多くのトラブルがあったとはいえ、彼女たちは本来の目的であったG.Bibleを手に入れられたことにへたり込む。モモイが早くそれが本物かを確かめるためにファイルを実行しようとしたが、セイントはそれを一旦止めてミレニアムに帰って安全を確保してから行うように勧めた。少女を早く連れ出すという目的もあったため、皆それには直ぐに頷く。

 

 結局のところ、少女についての情報は得られなかったが、新たな出会いと宝物を手にした彼女たちは嬉しそうだった。ユメも「良かったね」と笑い、アヤメもそれを見守りながら彼女たちをミレニアムに帰るように先導する。

 

 セイントはその殿を務めながら、最後に何も表示しなくなったコンソールを見た。

 

 この場所には、彼女には一体どんな秘密が隠されているのか。そしてそれは、喜ばしいものだけではない。そう戦士の直感を感じながら視線を彼女たちに戻し、その後に続いた。

 

 

 




 我々にとって、それは必然であり、運命なのだ

 アリスと出会い、G.Bibleを回収したセイントたちはミレニアムに帰還します。アリスがいた工場にあったと思われるレディオラリアは、このキヴォトスで何に使われていたのか。また、Divi:SionSystemは何を知っていたのか。この世界とセイントの世界にいくつもの共通点があるのはなぜか?少しづつ、紐解いていきましょう。

 最近は更新が遅くなってしまって申し訳ないです。(Destinyの最終アプデ満喫中)この小説の世界、実はかなり設定を練っていますので、時間はかかるかもしれませんが絶対に描ききってやります!!
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