東方涙精潭   作:サラム

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 前回の老人といい、今回のヴァンパイアハンターといい、オリジナルの、それも一時的なゲストキャラクターは、性格付けや口調に困りますね(--;)
 ともあれ、お待たせいたしましたm(__)m


第13話 〜狩る者と狩られる者〜

◆狩る者と狩られる者 〜レミリア・スカーレット〜

 

 

 私としたことが、フランとの約束の時間に遅れてしまった。

 それというのも…。

 

「お、お嬢様…メイド長……ま、待ってぇ〜…」

 

 荷物持ちのカヒの、想像以上の体力の無さである。

 

「あ〜…荷物持ちとしてはまるでダメね。咲夜」

 

「はい」

 

 咲夜は持っていたバッグに、カヒが抱えていた荷物を次々に放り込む。

 だが、咲夜のバッグは膨らまない。

 咲夜自身も重さなど感じていないようだ。

 まるで咲夜のバッグは、異次元にでも繋がっているかのように…。

 私にも、この咲夜の“マジック”の種はわからない。

 カヒもこれには眼を丸くして見入っている。

 

「さあ、これで楽になったでしょ?早く行くわよ」

 

「は、はいぃ〜…」

 

 私に急かされ、カヒがフラフラ〜っとついてくる。

 フランとの待ち合わせ場所に到着したのは、約束の時間から5分遅れてだ。

 しかし、フランの姿はどこにもない。

 

「あの子ったら、遊ぶのに夢中になっているのかしら?」

 

 私達も遅れてしまったから文句は言えないけど、時間を忘れてしまうのは考えものだ。

 一言フランには言っておかねばならないか?

 私がそう思ったその時。

 

「キャァァァァッ!!」

 

 若い女の悲鳴。

 フランの声ではないが、声がした方から人々が駆けてくる。

 何かあったのか?

 もしやフランが何かしたのだろうか?

 

「何かあったのですか?」

 

 咲夜が男を呼び止めて事情を訊く。

 

「ヴァンパイアハンター共が、四人がかりで吸血鬼の女の子を襲ってるんだ!あいつら、里の中じゃ争いは御法度だってぇのに、やたらに矢を放ちやがって!!」

 

 ヴァンパイアハンター!?

 人里では戦ってはならないのが、幻想郷の人妖問わずの共通認識だと油断していた!

 強力な吸血鬼を滅ぼすことが名声を高める近道と思い込んでいる奴等が、フランほどの吸血鬼を見逃すはずがない。

 その場が人里であってもだ。

 

「咲夜!」

 

「御意!」

 

 名を呼ぶだけで心得たと言わんばかりの咲夜の瞳は、瞬時にして一流の戦闘者の輝きを宿し、次の瞬間には姿を消していた。

 その後を追うように、私も悲鳴が聞こえた方へと急行した。

 

 

◆約束という枷 〜フランドール・スカーレット〜

 

 

 

 矢が迫る。

 その鏃は対吸血鬼用の銀製の矢だ。

 当たれば滅びるまでにはいかなくとも、かなり手痛いダメージを受けることになる。

 それを回避したところを、今度は大男が銀製の剣を振りかぶって襲ってくる。

 それから逃れて上空へと間合いを取ろうとすれば、今度は魔法使いが逃がさないとばかりに、上空から雷を落として私を叩き落とそうとする。

 たまらず高度を落とせば、また矢が…。

 これを繰り返すように、私は人里を逃げ回っていた。

 本当なら反撃したかった。

 でも、ここは人里。

 お姉様から、「人里では絶対に戦ってはいけない」と約束しているのだ。

 それがこの幻想郷のルール。

 でもあいつらは、それを無視して攻撃してくる。

 

「くっ!こんなときは……どうしたらいいのよぉ!!」

 

 文字通り矢継ぎ早に放たれた矢が、とうとう私の身体を捉えようとした、その時。

 

「こんなときは、戦って良いのですよ」

 

 私の耳に、そう告げる声が聞こえた。

 

「え?」

 

 私が反応したと同時に、私を貫くはずだった矢が、尽く打ち落とされた。

 打ち落としたのは、美しい細工の投げナイフ。

 咲夜の愛用品だ。

 それがわかると同時に、咲夜が私の身体を抱えあげ、一足でハンター達との間合いを取る。

 いや、たぶん時間を止めて、その隙にあいつらから離れたんだろう。

 

「ただし、正当防衛で言い訳できる程度ですが…」

 咲夜がそう言うと同時に響くハンター達の呻き声。

 

「くっ!?あ、脚が…!!」

 

 ハンター達の脚には、それぞれ一本ずつ、咲夜のナイフが突き刺さり、ハンター達の動きを封じていた。

 

「何も見えなかったぞ!?いったい何をされたんだ!!?」

 

「おそらく、時止めの一種だろうが…」

 

「対策は!?」

 

「能力封じの結界で弱体化はできる」

 

 ハンター達の中では冷静そうな魔法使いは、自分と仲間達の脚を治癒しながら結界魔法の詠唱に入ろうとするけど

 

「神槍、スピア・ザ・グングニル!!」

 

 道の真ん中、ハンター達と私達が対峙する、その中央に紅い光の槍が地面を抉るように突き刺さり、舞い上がった粉塵がハンター達の視界と詠唱を邪魔する。

 

「私の妹に、よくもちょっかいを出してくれたな…愚か者ども…」

 

 日傘を差しながらだったけど、宙に浮かび、明らかに不機嫌な表情のお姉様の姿は、私の眼にも迫力がある。

 

「レミリア…スカーレット……!?」

 

 お姉様の名前を呟くハンター。

 それも驚愕の表情で。

 

「ほほぉ…私の名は知っているのか…。天狗の新聞も役に立つものだな…」

 

 そういえば紅霧異変のすぐ後に、天狗が取材に来てたもんね。

 お姉様、結構ノリノリで取材されてたけど…。

 

「私を知っているなら、これも肝に命じておけ!貴様らが襲ったのは我が妹、フランドール・スカーレットなるぞ!!今、命があるだけありがたいと思うがいい!!」

 

 うわ…お姉様マジお怒りモードだぁ…。そこまで心配されると嬉しいやらむず痒いやら…。

 

「なるほどなぁ…道理で見た目に反して強力な気配だと思ったぜ…。まさかスカーレットだったとは…」

 

 ハンターの一人が納得したように呟いた。

 

「我らに手を出すことの愚かしさ…理解したか?理解したなら早急に去れ!!」

 

 お姉様は悪魔の翼を羽ばたかせ、ハンター達を威嚇する。

 普通のハンターならこれで退散してしまうのだけど…。

 

「面白い…」

 

 ハンターは確かにそう言った。

 

「…私の聞き間違いか?今、面白いと…ずいぶんと威勢の良い言葉が聞こえたが…?」

 

 お姉様の皮肉めいた問いに、ハンターは笑って答えた。

 

「ああ、言ったとも…。こちとら相手が強ければ強いほど燃えるんでねぇ。かの紅霧異変の首謀者、レミリア・スカーレットを討ち取ったとなれば、さぞ名前の売れることだろうよ」

 

 そんなハンター達の言葉に、お姉様は深いため息をついた。

 

「救いようのない凡愚どもが…そんなに死に急ぎたいのかしら…」

 

 憐れむような視線でハンター達を見下ろしながら、お姉様はまたひとつ、ため息をついた。

 

 




 本来は次回分と合わせて一話で終わらせる予定だったのですが、予想以上に文字数を使ったので人里でのゴタゴタは次回まで延びますね(--;)
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