東方涙精潭   作:サラム

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 大変長らくお待たせしました(--;)
 年を跨いだのもありますが、身内に不幸があったため、執筆が止まっていましたm(__)m
 今後は元の投稿ペースを目指しますが、少し忙しくなるかもしれませんので、引き続き広い心でお願い致しますm(__)m


第14話 〜挑みし者達〜

◆挑みし者達 〜レミリア・スカーレット〜

 

 

 困った…。

 少し脅かしてやれば引き下がるかと思ったのだが、人里で剣を振るい、矢を放つ粗暴な振る舞いの割りには気骨のある連中だ。

 いや、ただバカなだけか?

 しかし、ヴァンパイアハンターだけに、吸血鬼との戦いの心得があるのは良いとしても、口振りから、咲夜の時間を操る能力に対しても対処手段があるのは厄介だ。

 しかも、日は傾いているとはいえ、まだ明るい。

 日が落ちきるまでにはあと半時は要すだろう。

 日傘を差したまま戦うのは動きづらくて嫌だが…ああ…こういうとき、あのスキマ妖怪が羨ましく思う。

 自分は動かずに、攻撃をスキマを使ってすべて受け流してしまうのだから。

 ここで無い物ねだりをしても状況は好転すまい。

 

「人里で戦うと、八雲紫や、霊夢…博麗の巫女まで敵に回すわよ?」

 

「そんなことを言って、戦いから逃げたいのかな?お嬢ちゃん」

 

 戦いから逃げたいというより、人里で戦うのは避けたかったのだが…。

 紫や霊夢の名を出して戦いの回避を試みたが、どうも見透かされたようだ。

 しかも、こんな挑発までされて引き下がっては、紅魔館の沽券に関わるし、そうなればこのハンター達と同じようなのが紅魔館に殺到しかねない。

 

「仕方がないわね…里に被害を出さないように…一撃で終わらせてあげる…反撃もさせてあげない」

 

「さぁて…果たして、そう上手くいくかな?」

 

 脅しに対して軽口で答えるハンター。

 もう言葉は無意味だ。

 己の内の魔力を増大させ、ハンター共に必殺の一撃を叩き込もうとしたとき…。

 

「待てぇぇぇぃっ!!」

 

 大音量の怒鳴り声で、私もハンター達も出鼻を挫かれた。

 

「貴様ら!ここで暴れるとは良い度胸だ!この“上白沢慧音”をそんなにも怒らせたいか!!?」

 

 また面倒なのが……しかし、この状況ではむしろ好都合だ。

 上白沢慧音…彼女は半獣の身でありながら、人里の治安維持と子供らへの教育に勤める稀有な存在だ。

 とりわけ、目の前のガラの悪いハンター共には煙たい存在だろう。

 

「慧音……お前まで興奮してたら、収まる話も収まらない…少し落ち着け…」

 

 長身の慧音に隠れて見えなかったが、その背後にもう一人。

 迷いの竹林で案内役をしている“藤原妹紅”が、静かな口調で慧音を落ち着かせる。

 妹紅は蓬莱の薬を飲んだ蓬莱人であり、永遠亭の輝夜や永琳と同じ不老不死の身だ。

 両者とも、人間からの信頼も厚く、また里を守るに値する実力の持ち主である。

 

「で、まだやるのか?お前ら…」

 

 妹紅は威嚇的な視線をハンター達と私達に向けてきた。

 

 

◆人里を守護する者として 〜上白沢慧音〜

 

 

 妹紅の問いに、紅魔館の主、レミリア・スカーレット嬢は肩をすくめて見せ、

 

「元より人里で戦う意思などないわ。かかる火の粉は払うけどね…」

 

 と、素直に矛を納めてくれた。

 吸血鬼という強者である彼女だが、彼女は比較的人格者だ。

 独特な美意識の持ち主でもあるため、人里で暴れるような無粋な事などしないのはわかっている。

 むしろ、事を起こしたのはその相手……。

 

「いいかげんにしろ貴様ら!いったいどれだけ騒ぎを起こせば気がすむ!?」

 

 私はヴァンパイアハンターの四人に怒鳴るが、当の本人達は何処吹く風といった様子。

 何せこの四人、人里での目に余る横暴に、彼岸にてあの閻魔を務めていらっしゃる“四季映姫”様がわざわざ説法を説かれに、何度も足を運んでらしたのに、改心どころか映姫様に罵詈雑言を並べる始末。

 もはや映姫様もお見捨てになり、地獄行きが確定した連中が、私の怒鳴り声で動じるわけがない。

 

「相変わらずうるせぇなぁ…牛女」

 

 私が最も言われたくない言葉は心得たものだ。

 肩身の狭い半獣の私にとっては、能力のことを馬鹿にされるのは一番傷つくのだが、コイツらはそれを知っているのだ。

 

「お前ら、余計なことを喋るな。生きたまま火葬にするぞ?」

 

 妹紅がその手に炎を迸らせながら、ハンター達に睨みを効かせると、ハンターは軽く舌打ちをして踵を返す。

 

「余計な邪魔が入った。今日のところは引き上げてやる…。だが、近いうちに……そこの姉妹の首はいただくぜ」

 

 ハンターは下卑た視線をスカーレット姉妹に向けるが、それを阻むようにメイドの十六夜咲夜が立ち塞がる。

 

「紅魔館にお越しの際は、心より“歓迎”致しますわ」

 

 皮肉を交えた脅し文句だが、彼奴らにはあまり効果はなさそうだ。

 むしろ、殺意を込めた視線で咲夜を睨み付けると、彼らはこの場を後にした。

 

「助かったわ…礼を言う」

 

 ハンター達が去った後、レミリア嬢は私達にそう言うが、不敵な笑みとどこか傲慢な態度は変わらない。

 まあ、これがスカーレット家当主として相応しい姿なのだろうと、私は気に留めないでおく。

 一方の妹君、初めて会ったが、この子は人見知りしながらも、素直に頭を下げてきた。

 かわいい……実にかわいい……できることなら私の寺子屋に招きたいくらいだ。

 

「それにしても、面倒なのに目をつけられたわね」

 

「そんなに面倒な連中?」

 

 レミリア嬢は、たいして気にも留めていない様子だが、彼奴らは腕は確かなのだ。

 スペルカードルールが普及する以前の幻想郷ならば、一角の勢力を持ち得たかもしれない。

 

「昔の戦い方なら、そこそこやるわよ?彼奴らは…」 

 とりあえずそれだけ伝えるが、レミリア嬢は少し思案して。

 

「それは“先代の巫女”くらいの実力なのかしら?」

 

 懐かしい名だ。

 先代の巫女とは、そのまま先代の博麗の巫女のことだが、スペルカードルールが確立される以前の混沌とした時代に、己が拳と体術で妖怪達を制した最強の巫女だ。

 今、幻想郷で影響力を持つ有力者達にも、彼女と戦って叩き伏せられた者も多い。

 そんな巫女と、彼奴らが同等?

 

「馬鹿な。比べ物にならん」

 

「でしょうね」

 

 レミリア嬢も意見は同じだったようだ。

 

「あの巫女と直接戦ったことはないけど…吸血鬼異変の時に、多くの吸血鬼が敗れ、滅びたのを見てきたわ…でも、負けたとて…滅びたとて、憎らしい気持ちにはならない…むしろ清々しさが、あの巫女の戦いにはあった」

 

 陶酔した表情で語るレミリア嬢。

 だが事実だ。

 地底の鬼達ですら彼女との戦いを所望し、そして敗れて逝ったのだから。

 

「あのバカ共の恐さは、その狡猾さだ。先代のような正々堂々とした戦いではなく、魔法やら陰陽道やらで相手を罠に嵌め、なぶり殺しにする」

 

「美しくないわね」

 

 レミリア嬢はそう評すが、同感である。

 戦略や戦術、知謀策略を巡らせて勝利するのは良い。

 だが、彼らの戦いはあまりに惨いのだ。

 おかげで、この人里で彼奴らを制することができる人間などいなくなってしまった。

 彼奴らの戦い方は、人里の人間を恐怖させるには充分だったのだ。

 

「まあ、私にかかれば大したことは…」

 

 レミリア嬢がそう言いかけたとき、レミリア嬢の眼が何かを捉え、その表情が一変した。

 

 

◇遂にこの時が… 〜カヒライス〜

 

 

 ああ…まずい……遂にこの時が来てしまった…。

 止まらない涙をメイド長に見られないように隠しながら、私は途方に暮れていた。

 

「おい」

 

 背後からレミリアお嬢様の声がする。

 咄嗟に振り返ろうとするが、無理やり頭を押さえつけられて止められた。

 

「おい…例の……アレ?」

 

 お嬢様は耳元で、確認するように尋ねる。

 私はただ、首を縦に振って答えた。

 

「そうか……」

 

 お嬢様は静かにそう呟き…

 

「なにっ!?腹痛!!?それはいけないわね〜早く診てもらわないと〜!!!」

 と、わざとらしく大きな声をあげる。

 

「咲夜〜。私はカヒを永遠亭に連れていくから、貴女はフランと紅魔館に戻りなさい」

 

 お嬢様は私の手を取り、メイド長にそう告げた。

 

「お嬢様…でしたらカヒは私が…」

 

「咲夜、これは主命よ」

 

 有無を言わさずメイド長に命じるお嬢様。

 ここまで言われてはメイド長も従わざるを得ず、

 

「かしこまりました、お嬢様…」

 

 と、深々と頭を下げ、フランお嬢様を連れてその場を後にした。

 

「永遠亭に行くなら案内するが?」

 

「大丈夫よ、また必要な時にお願いするわ」

 

 妹紅さんの申し入れも断り、慧音さんに会釈をすると、お嬢様は私の手を引っ張ってズンズンと人気がない方へ…。

 ちょっと、お嬢様…痛いですって!?

 私の声無き抗議に反応したのか、人が完全にいなくなった路地裏で、私は塀に身体を押し付けられるように立たされる。

 そして、私の顔のすぐそばで、お嬢様の手が塀を叩いた。

 いわゆる、壁ドン状態なわけだが、普通ならキュンッとなるのかもしれない。

 だが、相手が吸血鬼のお嬢様だと殺気しか感じない。

 木の板でできた塀だが、表面の板は完全に割れてしまったし…。

 つまりはそれくらい苛立っておいでなのだ、お嬢様は。

 

「カヒ……いったい何を見て泣いていた?」

 

 お嬢様は鋭い視線を私に向ける。

 正直、言うのが恐ろしいが、それでも言う。

 それがメイド長を守るために与えられた使命なのだから。

 そう…今回の涙は誰のためのものか……それは……

 

「メイド長です」

 

 お嬢様はそれを聞くと、その真紅の瞳に剣呑な光を宿らせた。

 




 書いては止まりの繰り返しでしたので、口調や細かなところで統一感がないかも…(--;)
 さて、咲夜さんに直接的な命の危機が訪れたところで、次回に続く!
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