東方涙精潭   作:サラム

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 他の方の作品に比べ、一話が短いようなので、少々頑張ってみましたが…やっぱり時間かかりますね(^^;
 今後はできるだけ長くしますが、話として切りが良いところで切っていきます。


第18話 〜一大事〜

◇ただやることもなく… 〜カヒライス〜

 

 

 あ〜…暇だぁ〜…。

 時刻はもうすぐ昼。

 メイド長と顔を合わさないように、紅魔館の一室で実質缶詰め状態の私。

 何故か一緒にいるパチュリー様は、持ってきた本を読み耽っておられるし…。

 まあ、それもお嬢様方がハンターを仕留めて、メイド長の運命を変えるまでの辛抱なんですけどね。

 いつもメイド長と一緒にバタバタと忙しい日々だったので、メイド長から隔離されているここ数日間は暇で仕方がない。

 仕方がないので窓から外を見て過ごす。

 ちょうど紅魔館の庭園と正門が見えるなかなか良い眺めだけど、数日間となるとさすがに飽きる。

 今日も美鈴さんは門前で立ったまま寝ているようだ。

 門柱の陰で、頭がこっくりこっくりと揺れているのがわかる。

 そこに、タイミング良く我らがメイド長が登場。

 ツカツカと正門へ向かうと、格子の門扉越しに美鈴さんが寝ているのを発見。

 門扉を開け、ナイフを取り出し…あとはそのまま、ナイフを美鈴さんの脳天に突き立てて起こす。

 それがいつもの光景。

 平和な紅魔館の日常なのだが……。

 今日はそうならなかった。

 

 

◆一大事! 〜小悪魔〜

 

 

 紅魔館まであと少し!

 霧の湖上空を抜け、正門で寝ている美鈴さんと、ナイフを振り上げている咲夜さんが見えた。

 

「咲夜さぁぁぁん!!美鈴さぁぁぁん!!!」

 

 急降下しながら叫ぶと、どうやら咲夜さんは気がついたようだ。

 こちらに顔を上げ、私と目があった。

 しかし、急いでいた私は、少しばかり速度超過気味だったようです。

 

「うわわわわわぁぁぁぁっ!!?」

 

 急降下の速度を押さえきれず、そのまま美鈴さんに突っ込み、背後の門柱ごと地面に穴を穿った。

 咲夜さんはスッと、僅かに体を動かしてかわすあたり流石です。

 

「う、うげぇぇ……さ、咲夜さん…もう少し優しく起こしてください…」

 

 私はなかなかのダメージを受けているのに、美鈴さんは絆創膏でも貼っときゃ治る程度の傷しかない。

 美鈴さんもある意味流石です。

 

「私じゃないわ。こあよ」 

 と、首根っこを掴まれて持ち上げられる。

 猫じゃないんだから、怪我人なんだから。

 あ〜…頭からマンガみたいに血が出てるっぽい。

 クラクラするぅ〜…。

 まあ、そんなことは日常茶飯事な紅魔館。

 咲夜さんは全く動揺などせずに

 

「どうしたのこあ?そんなに慌てて…」

 

 と、そう訊いてくるほどに冷静……流石やわぁ…。

 ただ私には冷たいとか、そんなことじゃないよね?

 そうだったら私、泣いちゃうから…!

 おっと、こんなことしてる場合じゃない!

 余計なこと考えていたら意識が遠退いてきた…。

 とにかく、意識を失う前に伝えねば…。

 

「も、森の入り口で…お嬢様たちがハンターに…」

 

 つ、伝えましたよ?意識が朦朧とする中、私は確かにそれを伝えると、あとはもう目の前が真っ暗になってしまいました。

 パチュリー様とのスキンシップは…もうちょっとお預けですねぇ〜…。

 

 

◇不測の事態 〜カヒライス〜

 

 

 な、何ですか!?

 ミサイルでも飛んできたんですか!?

 そのくらいの衝撃が、窓ガラスをビリビリと振動させた。

 メイド長がいつものように美鈴さんを起こそうとしていたら、メイド長は何故か空を見上げ、次の瞬間には美鈴さんと、美鈴さんが寄りかかっていた門柱が消し飛んでました。

 まあ、美鈴さんはすぐに瓦礫の中から起き上がってましたので、たぶん無事でしょう。

 問題は、何が降ってきたのかですが……。

 あ、メイド長が瓦礫の中をゴソゴソと何やら引っ張り出しましたよ。

 黒いボロ切れのような……あれ?どこかで見覚えが……っていうか、こあさんじゃね?

 思わず口調が悪くなってしまいましたが、それくらいショッキングな姿になってましたので。

 ええ、何ならモザイクかけたくなるレベルで。

 

「あのぉ……パチュリー様…」

 

 あの音と衝撃でも平然と本をお読みになるパチュリー様に、恐る恐る声をかける。

 

「なぁに?」

 

 本から眼を離さず、気のない返事だ。

 

「ズタボロになって帰ってきましたよ?こあさんが…」

 

「そう…」

 

 倒置法で強調して言ってみるが、パチュリー様はまたしても気のない返事……と思った0.25秒後(カヒライス推測)

 たぶん、音速を突破した衝撃波だと思う。

 音を置き去りにしたパチュリー様は、部屋の窓をすべて粉々にして飛び出していった。

 まあ、私も一緒に粉々にされそうでしたが…。

 もう窓枠も残らない穴から外を覗くと、美鈴さんが凄まじい勢いで森の方へと駆けていくのが見えた。

 そしてズタボロのこあさんに泣きながら治癒魔法と、回復薬やらエリクサーやらぶっかけてるパチュリー様。

 そんなパチュリー様に何かしら告げると、メイド長も姿を消した。

 たぶん時間操作してどこかへ行ったんだろう。

 どこへ行ったのか……私は美鈴さんが森の方へと向かったのを思い出す。

 …………まさか…メイド長も……。

 どうやら、不測の事態が発生したようです。

 

 

◆苦戦 〜レミリア・スカーレット〜

 

 

 一閃――。

 

 二閃――。

 

 三閃――。

 

 グングニルが閃く度、ハンターの剣がそれに応じる。

 なかなかに、剣技に関してはハンターの方が上手か?

 グングニルの威力と、私自身の魔力、能力を過信し、槍術の研鑽を怠っていたのが仇となったか…。

 グングニルの切れ味は最早、普通の刀剣と変わらぬほどに落ち、弾幕も目眩まし程度だ。

 幸い、吸血鬼としての身体能力、再生能力は失われてはいないようだが、それも相手が振るう加護のかかった銀製の剣で斬られればどうなるかわからない。

 認めたくはないが、人間相手に劣勢だ。

 やはり、日中で、弾幕も能力も制限されて…というのはハンデが付きすぎた。

 

 と、ここまで考えて、私は自分を恥じた。

 ずいぶんと言い訳がましいことを考えていたからだ。

 どんな状況であろうとも、笑って苦境を楽しめるくらいでなければ、紅魔館当主、そして最高位のヴァンパイアなど務まるものか。

 私は意識して笑うことにした。

 相手の剣を切れ味をなくしたグングニルで受け止めながら、私は笑顔を作った。

 それはさぞ、愛らしさとは無縁の狂気の笑顔だったろう。

 だがそれでいい。

 強者は笑顔でいるべきだ。

 相手のハンターもその笑顔に気づき、訝しげな顔をした。

 

「何だ?何がおかしい?」

 

「いやなに…人間が…よくぞここまで…と、思ってな…」

 

「お褒めに預かり恐悦至極。ついでに、褒美としてその首も貰いたいねぇ…」

 

「首だけでいいのか?吸血鬼は首だけでもお前に噛みつくぞ?」

 

「もちろん、その平たい胸に打ち込む白木の杭も持参してますよ」

 

「まぁ…将来有望なレディに失礼な…」

 

「お前がむしゃぶりつきたくなる女に成長するまで、あと何百年かかる?俺はそこまで長生きじゃねぇし、お前もそこまで生かす気はねぇ…。お前の命運は今日、ここで尽きるんだからな!」

 

 鍔競り合いをしながら軽口を叩きあっていたが、ハンターは私を突き放し、横薙ぎに剣を振るった。

 重い音と共に弾き飛ばされるグングニル。

 元々魔力の塊だったそれは、空中で霧散した。

 

「貰った!!」

 

 ハンターは突きの構えから、剣を私の胸目掛けて突き出してくる。

 そのまま受ければ、恐らくは致命傷だろう。

 私が死んで、それで終わるならまだいい。

 だが、ハンター達が余勢を駆り、紅魔館に攻め入ればどうなる?

 場所や時間こそ違え、結局は咲夜の命が…。

 それに私が死ねば、忠義心の厚いあの娘の事だ。仇討ちなど言い出して、無茶をしかねない。

 ならば、私は死ねない!

 

 咄嗟に左腕で防御。

 

 左腕に剣が突き刺さり、銀と剣にかかった破魔の力が、私の左腕に流れ込んでくる。

 

「くっ…!」

 

 肉が焼ける臭いと共に、私の左腕が蒸発した。

 ハンターは剣を引き戻し、二の太刀を振るおうとした時。

 

「むっ!?」

 

 ハンターは何かに気づき、飛び退いた。

 そのハンターの鼻先を、煌めく何かが掠める。

 ナイフだ。

 銀色の、繊細な細工が施されたナイフ。

 しかし、今ここで、それを見ることなどないはずだった。

 

「ご無事ですか?お嬢様…」

 

 ここで聞くはずのなかった、瀟洒な美しい声。

 

「咲夜……」

 

 私は絶対の信頼を寄せる、美しい従者の名を呟いた。

 

 

◆もっと強く… 〜フランドール・スカーレット〜

 

 

 お姉様が押されている。

 すぐにでも助けに入りたい。

 でも、私も攻撃にさらされて、それはできそうにない。

 相手は三人。

 中心の魔法使いはマジックウォールで守りを固め、残る弓と弩の射手は巧みに位置を変え、互いをフォローしながら矢を射かけてきて隙がなかった。

 マジックウォールを壊そうにも能力は使えないし、レーヴァテインは威力が落ちてるし…。

 今は三人の眼を引き付けるしか、お姉様の助けとなる手はなかった。

 

「もっと…私が強ければ……」

 

 能力が…とか、魔力が…とかじゃない。

 戦うための技術、経験…そういったものが、私には圧倒的に足りなかった。

 

「何とか……あの魔法使いだけでも…」

 

 そう、能力を封じる魔法使いさえいなくなれば、断然私たちが有利になる。

 戦闘能力を封じられたお姉様が気になり、つい視線をそちらに向けると…。

 何てことだろう…!?

 お姉様の左腕が…蒸発していく!?

 人間相手なら、傷ひとつつかないお姉様が、身体の一部を失っている!

 そんなショッキングな光景に、私は自分が空中で静止していることに気づかなかった。

 射手にとって、空中で浮かぶだけの私は、練習用の的にも等しい存在だったろう。

 矢が2本。

 私が一際強い殺気に振り返った時には、もうかわすには間に合わない距離に矢が迫っていた。

 お姉様のように、せめて腕や足で防御して、急所だけは守るべきだったんだろうけど、身体が動かない。

 やっぱり経験不足だったんだろうな…。

 もう矢の先端が、私の胸に触れ、私の肉を引き裂きながら、体内から私を滅ぼす。

 服越しに鏃の感触を感じながら、そんな想像をした瞬間。

 

「え…?」

 

 私が気づくより速く、鏃が私の肌に触れるより速く、私を貫くはずだった矢が吹き飛んだ。

 続く2本目の矢も同様に。

 矢は、私の服を僅かに切り裂いただけに終わった。 瞬きよりも短い、一瞬でそれらの事が起きて、私は完全に呆けていたんだと思う。

 

「ご無事ですか?妹様」

 

 そう声をかけられて、ようやく私は、私の前に誰かがいることに気づいた。

 背を向けているが、その燃える炎のような赤く長い髪、そして何より、この先は何者も通さぬと言わんばかりに力強い背中で、誰なのかわかる。

 

「め…め―りん……」

 

 我ながら情けない、泣きそうな声で、紅魔館の門番の名前を呼んだ。

 

 

 




 ハンターが完全にチートになってるけど、そうでもしなきゃスカーレッツは追い詰められないしなぁ〜…(--;)
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