出血描写もあるかもしれないので、付けた方がいいのかしら?(--;)
◆貴女だけは… 〜レミリア・スカーレット〜
何故……何故、貴女はここへ来てしまったの?
ここは貴女の死地。
だから今日、ここに、貴女だけは来てはいけなかったのに…!
普段は投げて使うナイフを握りしめ、ハンターに接近戦を挑む咲夜。
もう、この一帯で能力が使えないことはわかっているのだろう。
普段は時間と空間を操り、大量の投げナイフを駆使して戦う咲夜も、今はその腿のナイフホルダーにある3本のナイフで戦うしかなかった。
しかも、そのうちの1本は、すでに機先を制するために投げてしまった。
残り2本。
左手に逆手でナイフを構え、一気に間合いを詰める。
そこを狙うハンターは、構えた剣を咲夜に降り下ろした。
剣を受け止めるには華奢過ぎるナイフだが、咲夜は降り下ろされた剣をナイフで受け流し、その勢いのままに身体を回転。
背中をハンターに密着させて、その左脇腹にナイフを突き立てる。
しかし、ハンターの反応が僅かに速かった。
ハンターは咄嗟に左腕で咲夜の腕を押し止め、本来なら内臓に達したであろう刺突を筋肉までに止めた。
致命傷に至らないことを悟った咲夜はその場で逆回転。
右手の裏拳でハンターを牽制しつつ、今度は首筋を狙ってナイフを振り抜く。
それもまた、ハンターは身体を後ろに反らしてかわす。
ハンターは、咲夜がナイフを振り抜いた隙を逃すまいと、剣を構えようとするが、咲夜にとっては想定内だ。
そのまま左肩でタックルをして、ハンターを突き放す。
華奢な咲夜でも、体勢がまだ崩れたままの男に、それも体勢を崩しやすい箇所を的確に狙ったタックルならば、突き放すのは容易だ。
狙い通り、ハンターは後ろによろけるが、転ばずに踏みとどまったのは流石というところだろうか?
咲夜は無理に追撃せず、後ろに退いてナイフを構え直した。
「咲夜!下がりなさい!!」
グングニルを再構成しながら、私は命令する。
もちろん、咲夜の戦闘技能と力量を疑っているわけではない。
むしろ単純な技量や経験を考えると、能力を尽く封じられ、片腕を失った私より上だ。
だが、今回は咲夜には下がってもらう。
咲夜を少しでも死の運命から遠ざけねば…。
「聞こえないの咲夜!?下がりなさい!!」
咲夜は少し不満そうな表情をしたが、構えを解いて後ろに下がった。
「仰せのままに……しかし、必要ならば援護はさせていただきます…」
主人を守るは従者の役目…それに忠実であるがゆえの、咲夜なりのせめてもの譲歩だろう。
「わかったわ……まあ、貴女の出る幕はないわ…。ちょうどいいハンデもできたことだし、楽しい戦いができるわ」
腕の無くなった左肩を見て軽口を叩く。
無論、嘘だ。
それでも私は強くなければならない。
絶対的強者であり、常に余裕であり、常に傲慢であり、常に笑顔でなければならない。
故に強がらなくてはならない。
そして勝たねばならない。
「おやおや、お嬢ちゃん…召し使いに助けてもらわなくて良いのかな?」
先ほど咲夜に刺された脇腹を押さえながら、挑発めいた戯れ言を口にするハンター。
出血はしているが、やはりたいしたダメージではないようだ。
全く……人間でありながら人間の規格からは外れた奴だ…。
最も、だからこそ人外を狩ることを生業としたのか…。
しかし、霊夢のような秩序のある妖怪退治ではなく、単なる暴力、破壊衝動の捌け口として妖怪を選んでいるにすぎない連中なのは、こあからの報告で聞いている。
ならば情け無用、手加減無用。
そんなことをしては勝てない相手なのも充分、身を以て理解した。
失われた左腕も、破魔の加護や祝福儀礼済みの武器でやられたために再構成が遅い。
このままだと再構成に丸一日かかるだろう。
どうやら純粋に武芸の優劣を競う戦いを、片腕でやらねばならないようだ。
「くくく…」
私は笑った。
今までの強がりではない。
これは闘争の愉悦だ。
吸血鬼の血筋ゆえだろうか?
この苦境にあって、片腕を失った状況にあって、能力を封じられた状況にあって、私は楽しんでいる。
ようやく理解した。
吸血鬼というものを、500年経て、ようやく…。
今の私は、昔のフランより狂っているのかもしれない。
そう思えるくらいの笑みが、自然と零れた。
「今度は何がおかしい…?そんなボロボロの姿で…」
「ああ、ボロボロにしてくれて、感謝の極みだ人間よ…お陰で眼が覚めた…」
「何…?」
そう、幻想郷で暮らすこと、フランが幸せに暮らせるように友好関係を築くこと、幻想郷を安住の地とするために、私としたことが吸血鬼の本質を忘れていた。
それは恐怖させること。 恐怖に怯える相手の命運を握り、それを無造作に奪うことだ。
目の前のハンターは、今までの経験からか私に恐怖していない。
ならば恐怖させてやろう。
吸血鬼の闘争を語るのはそこからだ。
◆久々に… 〜紅美鈴〜
こあさんからの報告で、お嬢様方の身に危険が迫っているのはわかりました。
ですが、幻想郷でも一角の勢力を成す紅魔館の主が、そう簡単に危機に陥るか眉唾でしたが……なるほど、そろそろ森を抜け出るかというところで、気の流れが異常なのがわかりました。
正確には、気を操る程度の能力を持つ私が、気を読めなくなりました。
「どういうことなの?」
不意に咲夜さんが現れ、戸惑いの表情を浮かべた。
「時間を止めてお嬢様方の下へ向かっていたのに……勝手に時間停止が解除されたわ…」
咲夜さんは自分の能力を確かめるように、いつも持っている懐中時計を見つめた。
「咲夜さん……私も気が操れません…」
「何ですって?」
咲夜さんは怪訝な表情を見せたが、すぐに状況を把握したようだ。
「能力が制限されている?だからお嬢様方も苦戦を…!?美鈴…急ぐわよ!!」
咲夜さんと森を走り抜け、森を抜けたところでまず眼に入ったのは、片腕を今まさに失ったレミリアお嬢様の姿だった。
「お嬢様!!」
悲痛な響きの叫び声とともに、咲夜さんがナイフを投げた。
間一髪でレミリアお嬢様を斬ろうとしたハンターの動きを封じ、そのままハンターに斬りかかっていく。
あちらは咲夜さんにお任せして良いでしょう。
あとは妹様を……ああ、いたいた…って、まったくの無防備じゃないですか!?
ああ……片腕を失ったレミリアお嬢様にショックを受けているのですか…。
って、そんなことより下!ハンターに狙われています妹様!!ああもぅ!今行きますよぉ!!!
「妹様ぁぁぁっ!!」
弾幕は!?
弾幕も出ない!?ならばっ!!届け拳よぉぉぉっ!!!
「はぁぁぁぁっ!!」
妹様を狙う矢に……届いた!
弾け飛んでゆく矢。
まだ!もう一本!!
振り向き様に、裏拳で飛来する矢を殴り飛ばす。
「ご無事ですか?妹様…」
背後から視線を感じ、肩越しに無事を確認する。
「め…めーりん…」
泣きそうな妹様の声。
ひとまず無事のようだ。
「めーりん…もうね、弾幕も役に立たないし、能力も使えなくって…」
とうとう泣きながら、状況を伝えようとする妹様。
こういうところはまだ子供らしくて可愛いんだから…。
「あっ!お姉様!!お姉様は!!?」
「大丈夫です、咲夜さんが行ってますから」
それを聞いた妹様の顔が、なぜか真っ青になった。
「めーりん駄目ぇ!咲夜が死んじゃう!!」
「…はいぃ?」
思わず聞き返してしまいましたが、そこへ飛んでくる矢と魔法弾。
「話は後です妹様!まずはあいつらを蹴散らしますよ!!」
さて…能力がダメ、弾幕もダメとなると……拳しかありませんねぇ……。
フフフフ……むしろ熱烈歓迎!!
久々に…カッコいいとこ見せましょうかね。
さぁて、美鈴さんの格闘描写……書きたかったけどハードル高いなぁ…(^^;