そろそろ出さないとなぁ…(--;)
◆手を出すな! 〜レミリア・スカーレット〜
金属が打ち合わさる音。
ハンターの剣と、私のグングニルの応酬の音だ。
私の魔力の塊であるグングニルが、銀製とはいえ人間が扱う剣と同等の威力しかないのだ。
だが面白い!
どこぞの天人ではないが、追い込まれてみるのも悪くはないと思えるようになってきた。
もっとも、勝つのは私だ!
「はぁっ!!」
グングニルを突き出すが、それを打ち払われる。
また取り落とさずに済んだが、代わりにバランスを崩す。
片腕がないから、尚更バランスが悪い。
よろけたところを斬りかかってくるハンター。
倒れながらも、間一髪で私の切り返しが間に合い、剣を受け止めた。
「お嬢様!!」
心配になったのか、咲夜が走り寄ってくるが…
「手を出すな!」
声を荒げ、一喝した。
咲夜の運命が変わった確証を得るまで、ハンター達の息の根を止めるまで、咲夜には一切の介入を許さない。
訳を話すことはできないから、厳しく言いつけるしかないが、どうかわかってほしい。
「いや、楽しくてね…こんな楽しみは独り占めしたいだけよ」
取り繕うように言葉を続けたが、まあ無理のある言い訳だ。
むしろ、ハンターの方は面白くないようだ。
自分との戦いを、余興程度にしか感じていない私の言葉が不満らしい。
お前はもう少し敏感に察しろ。ただの強がりなんだから…。
お前程度に気を使って、余裕もない声を出すわけないだろう…。
等と、心の中で毒づいていると、離れたところから男の悲鳴が…。
「!?」
斬り結んでいた相手を、互いに突き放すように私とハンターは距離をとる。
そして、二人して悲鳴のした方に視線を向ければ、私は安堵の表情を、ハンターは苦々しい表情を浮かべることとなった。
美鈴の足元に一人、そして少し離れたところにも一人、ハンターが倒れている。
フランのほうは美鈴が何とかしてくれたようだ。
残るは魔法使いと、目の前の剣士だけだ。
「形勢逆転といったところだな……」
散々好き勝手をされた腹いせに、皮肉っぽくハンターに言い放つ。
子供っぽいことだと思いながらも、見た目が子供なのだから良いだろうと自己弁護しておく。
「フ……フハハハハ…!」
ハンターは急に笑いだした。
どうした…?気でも触れたか?
「多少の犠牲は覚悟の上だったが…まさか紅魔館の誰一人討ち取れずにこのザマとはな…」
自嘲気味に呟くハンター。
だが、戦意は失っていなかった。
改めてハンターは、その剣を構え直す。
「さすがにそれでは格好がつかんしな………お前の首だけは頂く」
剣先を私に突きつけるハンター。
咲夜が動こうとするのを、私は手で制する。
咲夜は、私が少しでも危なくなれば介入する気だろう。
ハンターも、咲夜が邪魔なら迷わず斬るだろう。
それは避けたい。
咲夜の死の可能性は、ほんの僅かでも残したくない。
気休め程度にしかならないだろうが、私はハンターに、1つの提案をすることにした。
「……もし、私が負け、私の首が手に入ったのならば……他の者には手を出さないと約束できるか?」
「…なに?」
怪訝な表情のハンター。
当然の反応だ。
「その代わり、紅魔館の者は一切お前を攻撃しない。私の仇討ちや、追撃など一切させない。メイド長や、私の妹でさえな…」
ハンターにとっては悪くない条件だと思う。
私を仕留めたところで、その後はどうする?
咲夜は当然、ハンターを消しにかかる。
フランも同様だ。
美鈴もその辺りは義理立ててくれると思う。
紅魔館の3人の追撃をかわして逃げ切れるか…あるいは全員倒すことができるか…。
今、生き残っている二人のハンターが協力して、それが可能か…。
ハンターは黙ったまま考えているようだが、その思考に、更に追い討ちをかけてくる声が…。
「お姉様ぁぁぁっ!」
フランが勢いよく飛んできた。
美鈴も一緒に。
どうやら、あの魔法使いはもうこの世にはいないらしい。
つまりは、残るは目の前の剣士だけだ。
「悪くはなかろう?私の首と、命が手に入るんだ。私に勝てばな……」
私は相変わらず隻腕で、身体がまだ重く感じることから、例の能力封じも解けてはいないだろう。
今ならば、ハンターにも勝ち目は残されている。
無論、私も負ける気などない。
ただ、不用意に咲夜が介入しないように釘を刺すことと、他の者を傷つければ約束を反故にされるかもしれないとハンターに思わせるのが目的だ。
「どうする…?」
念を押すように訊く。
「その約束が守られる保証はあるのか?」
まあ、当然の質問ね…。
「神は願いを“聞く”だけだが、悪魔は契約という約束なら必ず守るわよ?」
「契約ねぇ……なら、契約書でも交わすかい?」
「必要ない。私の言葉は契約書よりも重いわよ?レミリア・スカーレットの名に於いて、約定を違えることはないわ」
まあ、あくまでも私に勝てればの話だけど…。
悪魔の契約の代償は、その魂と相場は決まっている。
私に勝てなければ、その魂だけ頂くわ。
「なるほど…要は勝てば良いわけだ……お互いにな…」
ハンターは納得したようだ。
「そうだ……お前が勝てば、私を殺したという名誉と命の保証。私が勝てば、お前の命と我が身の平穏…」
あと、口には出せないが咲夜の命も…。
「ふむ、その傲慢な約定…負けて後悔するなよ…」
ハンターは剣を振り回して威嚇する。
どうやら上手く乗せることができたようだ。
「聞いたわね?咲夜……手出しは絶対にするな!私が倒れてもだ!!」
厳しい口調で念を押す。
「貴女たちもよ!フラン、美鈴!!」
「お姉様……大丈夫なの?」
不安げな表情を浮かべるフラン。
「大丈夫よ。もとより負ける気はないわ。気まぐれの思いつきと思ってちょうだい」
そう言いながらフランの頭を撫でると、ハンターへと向き直る。
「フフフ……さあ、踊りましょう……命尽きるまでね…!!」
「あいにく、ダンスは苦手なんでな…一人で踊ってろ!!」
そんな皮肉を言い合いながら互いに斬りかかる。
そしてそのまま、激しく火花を散らす一騎討ちが始まったのだ。
ハンターの剣が私の頬を掠り、切り傷を作る。
浅い。たいした傷ではない。
私のグングニルがハンターの腕を浅く斬り、ハンターの服を赤く染める。
ダメだ。あの程度の出血では、貧血にもならない。
幾度となく打ち合う両者の得物。
火花を散らす度に、ハンターの剣の刃はこぼれ、グングニルは魔力を消耗していた。
互いに致命傷を与えられぬまま、時間だけが過ぎてゆくが、必ず限界は訪れる。
一番最初に限界を迎えたのは、グングニルだった。
「くっ!?」
私の苦悶の声と共に、グングニルが霧散した。
そして、ハンターの剣が今度は私の右腕を斬り飛ばした。
「うあぁぁぁぁっ!!」
焼けつく痛みに、思わず悲鳴をあげ、片膝を地につく。
「お嬢様ぁぁっ!?」
咲夜の焦りも露な叫び声。
ハンターは肩で息をしているが、その顔に忌々しい笑顔を浮かべながら、もはやボロボロの剣を私に突きつける。
「俺の勝ちだな…」
「さあ……どうかしらね…」
「武器を失い、両腕を失い、片膝をついていながら、まだ強がるか…ならば、その首切り落とし、心臓に白木の杭を打ち込んでも…まだ強がれるか試してやる…」
ハンターは己の勝利を確信し、大仰な動作で、ゆっくりと大上段に剣を構えた。
「彼岸を渡ったら、閻魔によろしく言っといてくれ。クソつまらん説教をありがとよってな」
おそらく、四季映姫のことだろう……まあ、彼女の話がつまらんことには同意するが……生憎、まだ地獄に逝く気はない。
すでに無抵抗な私の首筋に、剣を振り下ろそうとした瞬間…。
そう、それを待っていた。
グングニルをわざと消し、腕を斬らせたのも、片膝をついて見せたのも、お前が傲慢と共に油断を見せるのを待っていたからだ。
お前は、私に武器はもう無いと思っているのだろうが、吸血鬼最大の武器を見落とすとは、ヴァンパイアハンターとしては致命的だったな。
「滅びろ!吸血鬼がぁぁっ!!」
そんな勝利の叫び声とともに剣は振り下ろされ……なかった。
「ぐ……この…!?」
ハンターは剣を振り下ろせなかった。
何故なら、剣を大上段に構えて、がら空きになった懐に私が潜り込み、剣を持った腕に噛みついているから。
吸血鬼最大の武器、それはこの牙だ。
相手の血を啜るために鋭さを増した牙は、噛みついた獲物は放さない。
「このっ!離れろ!!」
ハンターのゴツい拳が、私の顔を殴りつける。
それでも放さない。
「くそったれが…悪あがきを!」
ハンターは持っていた剣を、噛みつかれていない左手に持ちかえようとした。
だが、私はそれを許さない。
噛んだまま、思いっきり引っ張り、引きずり回す。
「ぐっ!?こらっ!放せ!!」
吸血鬼の力に振り回され、ハンターの身体が軋みをあげる。
ミシミシと、骨が軋む音。
私はお世辞にも優雅ではないが、肉食の獣のように獲物に噛みつき、振り回しているのだ。
そして、そんな獣に狩られた獲物の身体がどうなるか…それと同じことがハンターの身に起きる。
「ひっ!?ぎぁぁぁぁぁっ!!?」
嫌な音とともに、悲鳴をあげたハンターが私から離れた。
私が放したわけではない。
私の口は、依然としてハンターの“腕を噛んでいる”
ただ、その先はなかった。
「く…くそがぁぁっ!俺の…腕を……腕をぉぉっ!!」
夥しい出血をしながらのたうち回るハンター。
彼のもの“だった”剣を掴んだままの腕を捨てると、口の中に残った血液も残らず吐き捨てた。
不味い血だ。
普段の行いが味に出るのか?
こんな血を飲むのは、いくら吸血鬼でも願い下げだ。
「ピーピー喚くな。たかが腕一本千切れただけだろう?私は両腕だぞ?」
「て、てめぇ!卑怯だぞ!!油断させといて…」
「私を相手に、油断する方が愚かなんだよ!」
ハンターの顎を蹴りあげる。
骨の砕ける音と、くぐもった呻き声。
「さて、契約内容は覚えているな?お前が勝てたら、私の首をやると…。だが、負けたら……」
「う……うぅぅーーっ!」
顎を砕かれて、まともに喋れないらしい。
呻き声をあげるばかりとなったハンターが、何とも哀れに思えた私は、最高の慈悲をハンターに与えることとした。
これ以上苦しまぬように、一撃でトドメを刺してやったのだ。
主観視点で戦闘シーン……難易度が高すぎました(-_-;)