東方涙精潭   作:サラム

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 気がつけば、紅魔館で留守番している主人公の存在を忘れていた(^_^;)
 そろそろ出さないとなぁ…(--;)


第21話 〜手を出すな!〜

◆手を出すな! 〜レミリア・スカーレット〜

 

 

 金属が打ち合わさる音。

 ハンターの剣と、私のグングニルの応酬の音だ。

 私の魔力の塊であるグングニルが、銀製とはいえ人間が扱う剣と同等の威力しかないのだ。

 だが面白い!

 どこぞの天人ではないが、追い込まれてみるのも悪くはないと思えるようになってきた。

 もっとも、勝つのは私だ!

 

「はぁっ!!」

 

 グングニルを突き出すが、それを打ち払われる。

 また取り落とさずに済んだが、代わりにバランスを崩す。

 片腕がないから、尚更バランスが悪い。

 よろけたところを斬りかかってくるハンター。

 倒れながらも、間一髪で私の切り返しが間に合い、剣を受け止めた。

 

「お嬢様!!」

 

 心配になったのか、咲夜が走り寄ってくるが…

 

「手を出すな!」

 

 声を荒げ、一喝した。

 咲夜の運命が変わった確証を得るまで、ハンター達の息の根を止めるまで、咲夜には一切の介入を許さない。

 訳を話すことはできないから、厳しく言いつけるしかないが、どうかわかってほしい。

 

「いや、楽しくてね…こんな楽しみは独り占めしたいだけよ」

 

 取り繕うように言葉を続けたが、まあ無理のある言い訳だ。

 むしろ、ハンターの方は面白くないようだ。

 自分との戦いを、余興程度にしか感じていない私の言葉が不満らしい。

 お前はもう少し敏感に察しろ。ただの強がりなんだから…。

 お前程度に気を使って、余裕もない声を出すわけないだろう…。

 等と、心の中で毒づいていると、離れたところから男の悲鳴が…。

 

「!?」

 

 斬り結んでいた相手を、互いに突き放すように私とハンターは距離をとる。

 そして、二人して悲鳴のした方に視線を向ければ、私は安堵の表情を、ハンターは苦々しい表情を浮かべることとなった。

 美鈴の足元に一人、そして少し離れたところにも一人、ハンターが倒れている。

 フランのほうは美鈴が何とかしてくれたようだ。

 残るは魔法使いと、目の前の剣士だけだ。

 

「形勢逆転といったところだな……」

 

 散々好き勝手をされた腹いせに、皮肉っぽくハンターに言い放つ。

 子供っぽいことだと思いながらも、見た目が子供なのだから良いだろうと自己弁護しておく。

 

「フ……フハハハハ…!」

 

 ハンターは急に笑いだした。

 どうした…?気でも触れたか?

 

「多少の犠牲は覚悟の上だったが…まさか紅魔館の誰一人討ち取れずにこのザマとはな…」

 

 自嘲気味に呟くハンター。

 だが、戦意は失っていなかった。

 改めてハンターは、その剣を構え直す。

 

「さすがにそれでは格好がつかんしな………お前の首だけは頂く」

 

 剣先を私に突きつけるハンター。

 咲夜が動こうとするのを、私は手で制する。

 咲夜は、私が少しでも危なくなれば介入する気だろう。

 ハンターも、咲夜が邪魔なら迷わず斬るだろう。

 それは避けたい。

 咲夜の死の可能性は、ほんの僅かでも残したくない。

 気休め程度にしかならないだろうが、私はハンターに、1つの提案をすることにした。

 

「……もし、私が負け、私の首が手に入ったのならば……他の者には手を出さないと約束できるか?」

 

「…なに?」

 

 怪訝な表情のハンター。

 当然の反応だ。

 

「その代わり、紅魔館の者は一切お前を攻撃しない。私の仇討ちや、追撃など一切させない。メイド長や、私の妹でさえな…」

 

 ハンターにとっては悪くない条件だと思う。

 私を仕留めたところで、その後はどうする?

 咲夜は当然、ハンターを消しにかかる。

 フランも同様だ。

 美鈴もその辺りは義理立ててくれると思う。

 紅魔館の3人の追撃をかわして逃げ切れるか…あるいは全員倒すことができるか…。

 今、生き残っている二人のハンターが協力して、それが可能か…。

 ハンターは黙ったまま考えているようだが、その思考に、更に追い討ちをかけてくる声が…。

 

「お姉様ぁぁぁっ!」

 

 フランが勢いよく飛んできた。

 美鈴も一緒に。

 どうやら、あの魔法使いはもうこの世にはいないらしい。

 つまりは、残るは目の前の剣士だけだ。

 

「悪くはなかろう?私の首と、命が手に入るんだ。私に勝てばな……」

 

 私は相変わらず隻腕で、身体がまだ重く感じることから、例の能力封じも解けてはいないだろう。

 今ならば、ハンターにも勝ち目は残されている。

 無論、私も負ける気などない。

 ただ、不用意に咲夜が介入しないように釘を刺すことと、他の者を傷つければ約束を反故にされるかもしれないとハンターに思わせるのが目的だ。

 

「どうする…?」

 

 念を押すように訊く。

 

「その約束が守られる保証はあるのか?」

 

 まあ、当然の質問ね…。

 

「神は願いを“聞く”だけだが、悪魔は契約という約束なら必ず守るわよ?」

 

「契約ねぇ……なら、契約書でも交わすかい?」

 

「必要ない。私の言葉は契約書よりも重いわよ?レミリア・スカーレットの名に於いて、約定を違えることはないわ」

 

 まあ、あくまでも私に勝てればの話だけど…。

 悪魔の契約の代償は、その魂と相場は決まっている。

 私に勝てなければ、その魂だけ頂くわ。

 

「なるほど…要は勝てば良いわけだ……お互いにな…」

 

 ハンターは納得したようだ。

 

「そうだ……お前が勝てば、私を殺したという名誉と命の保証。私が勝てば、お前の命と我が身の平穏…」 

 あと、口には出せないが咲夜の命も…。

 

「ふむ、その傲慢な約定…負けて後悔するなよ…」

 

 ハンターは剣を振り回して威嚇する。

 どうやら上手く乗せることができたようだ。

 

「聞いたわね?咲夜……手出しは絶対にするな!私が倒れてもだ!!」

 

 厳しい口調で念を押す。 

「貴女たちもよ!フラン、美鈴!!」

 

「お姉様……大丈夫なの?」

 

 不安げな表情を浮かべるフラン。

 

「大丈夫よ。もとより負ける気はないわ。気まぐれの思いつきと思ってちょうだい」

 

 そう言いながらフランの頭を撫でると、ハンターへと向き直る。

 

「フフフ……さあ、踊りましょう……命尽きるまでね…!!」

 

「あいにく、ダンスは苦手なんでな…一人で踊ってろ!!」

 

 そんな皮肉を言い合いながら互いに斬りかかる。

 そしてそのまま、激しく火花を散らす一騎討ちが始まったのだ。

 

 ハンターの剣が私の頬を掠り、切り傷を作る。

 

 浅い。たいした傷ではない。

 

 私のグングニルがハンターの腕を浅く斬り、ハンターの服を赤く染める。

 

 ダメだ。あの程度の出血では、貧血にもならない。

 

 幾度となく打ち合う両者の得物。

 

 火花を散らす度に、ハンターの剣の刃はこぼれ、グングニルは魔力を消耗していた。

 

 互いに致命傷を与えられぬまま、時間だけが過ぎてゆくが、必ず限界は訪れる。

 一番最初に限界を迎えたのは、グングニルだった。

 

「くっ!?」

 

 私の苦悶の声と共に、グングニルが霧散した。

 

 そして、ハンターの剣が今度は私の右腕を斬り飛ばした。

 

「うあぁぁぁぁっ!!」

 

 焼けつく痛みに、思わず悲鳴をあげ、片膝を地につく。

 

「お嬢様ぁぁっ!?」

 

 咲夜の焦りも露な叫び声。

 ハンターは肩で息をしているが、その顔に忌々しい笑顔を浮かべながら、もはやボロボロの剣を私に突きつける。

 

「俺の勝ちだな…」

 

「さあ……どうかしらね…」

 

「武器を失い、両腕を失い、片膝をついていながら、まだ強がるか…ならば、その首切り落とし、心臓に白木の杭を打ち込んでも…まだ強がれるか試してやる…」

 

 ハンターは己の勝利を確信し、大仰な動作で、ゆっくりと大上段に剣を構えた。

 

「彼岸を渡ったら、閻魔によろしく言っといてくれ。クソつまらん説教をありがとよってな」

 

 おそらく、四季映姫のことだろう……まあ、彼女の話がつまらんことには同意するが……生憎、まだ地獄に逝く気はない。

 すでに無抵抗な私の首筋に、剣を振り下ろそうとした瞬間…。

 

 そう、それを待っていた。

 グングニルをわざと消し、腕を斬らせたのも、片膝をついて見せたのも、お前が傲慢と共に油断を見せるのを待っていたからだ。

 

 お前は、私に武器はもう無いと思っているのだろうが、吸血鬼最大の武器を見落とすとは、ヴァンパイアハンターとしては致命的だったな。

 

「滅びろ!吸血鬼がぁぁっ!!」

 

 

 そんな勝利の叫び声とともに剣は振り下ろされ……なかった。

 

「ぐ……この…!?」

 

 ハンターは剣を振り下ろせなかった。

 何故なら、剣を大上段に構えて、がら空きになった懐に私が潜り込み、剣を持った腕に噛みついているから。

 吸血鬼最大の武器、それはこの牙だ。

 相手の血を啜るために鋭さを増した牙は、噛みついた獲物は放さない。

 

「このっ!離れろ!!」

 

 ハンターのゴツい拳が、私の顔を殴りつける。

 それでも放さない。

 

「くそったれが…悪あがきを!」

 

 ハンターは持っていた剣を、噛みつかれていない左手に持ちかえようとした。

 だが、私はそれを許さない。

 噛んだまま、思いっきり引っ張り、引きずり回す。 

「ぐっ!?こらっ!放せ!!」

 

 吸血鬼の力に振り回され、ハンターの身体が軋みをあげる。

 ミシミシと、骨が軋む音。

 私はお世辞にも優雅ではないが、肉食の獣のように獲物に噛みつき、振り回しているのだ。

 そして、そんな獣に狩られた獲物の身体がどうなるか…それと同じことがハンターの身に起きる。

 

「ひっ!?ぎぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 嫌な音とともに、悲鳴をあげたハンターが私から離れた。

 私が放したわけではない。

 私の口は、依然としてハンターの“腕を噛んでいる”

 

 ただ、その先はなかった。

 

「く…くそがぁぁっ!俺の…腕を……腕をぉぉっ!!」

 

 夥しい出血をしながらのたうち回るハンター。

 彼のもの“だった”剣を掴んだままの腕を捨てると、口の中に残った血液も残らず吐き捨てた。

 不味い血だ。

 普段の行いが味に出るのか?

 こんな血を飲むのは、いくら吸血鬼でも願い下げだ。

 

「ピーピー喚くな。たかが腕一本千切れただけだろう?私は両腕だぞ?」

 

「て、てめぇ!卑怯だぞ!!油断させといて…」

 

「私を相手に、油断する方が愚かなんだよ!」

 

 ハンターの顎を蹴りあげる。

 骨の砕ける音と、くぐもった呻き声。

 

「さて、契約内容は覚えているな?お前が勝てたら、私の首をやると…。だが、負けたら……」

 

「う……うぅぅーーっ!」

 

 顎を砕かれて、まともに喋れないらしい。

 呻き声をあげるばかりとなったハンターが、何とも哀れに思えた私は、最高の慈悲をハンターに与えることとした。

 これ以上苦しまぬように、一撃でトドメを刺してやったのだ。

 

 

 




 主観視点で戦闘シーン……難易度が高すぎました(-_-;)
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