その分、文章が荒れてなきゃいいけど(--;)
◆一生の不覚 〜紅美鈴〜
吸血鬼としての能力すら満足に発揮できない中、お見事ですお嬢様。
すでに息絶えたハンターの亡骸の隣で、口元を紅く染めたお嬢様が佇んでいる。
両腕を失いながらも、その姿は私も気圧される程の覇気に満ちていた。
「お嬢様……傷は大丈夫ですか?」
「大事ないわ…咲夜……貴女こそ怪我はしてないわね?」
「はい、おかげさまで…」
そんな会話を交わす二人はどこか主従というだけでなく、親子のような、姉妹のような……。
しかし、この紅美鈴…。
不覚をとりました。
それも、一生の不覚…あってはならない、思い出すだけで苦々しい思いでいっぱいになる、それくらいの不覚です。
まず聞こえたのは、パシッと何かが弾けるような音。
そして、風切り音とともに、私を掠めるように何かが通りすぎました。
それが矢だと気づいた時には、矢は私の届かぬ距離へ。
狙いはお嬢様……その胸元。
先に響いたパシッという……弩の発射音に気づいた咲夜さんは、私より速く動いてました。
その身を盾に、お嬢様の前へ…。
能力が使えない中、咄嗟にお嬢様を守ろうと思えば、それしかできなかったでしょう…。
お嬢様の為なら命を惜しまない咲夜さんは、何の躊躇もなく矢の前に飛び出したのです。
しかし、そんな咲夜さんを押し退けた方がいました。
お嬢様です。
両腕を無くしたお嬢様は、咲夜さんに体当たりをして突き飛ばしました。
咲夜さんは驚いた表情でお嬢様を見て…、お嬢様はどこか優しげな微笑みを浮かべて……その身で矢を受け止めたのです。
◇割れたティーカップ 〜カヒライス〜
お嬢様方に何か不測の事態が起きたことは、こあさんの報告と、メイド長、美鈴さんが飛び出していったことでわかっていた。
わかっていたけど……生憎、私にはどうにかできる力はない。
ただの妖精ですもん。仕方がないじゃない…。
まあ、いざという時のために、紅魔館には武器庫もあるし、私たち妖精メイドも有事には鎧を着て、剣や槍や弓で戦うんですけどね。
一応、訓練もしてますし……。
ただ、その訓練の相手がメイド長だから、まあ強いのなんの…。
能力なしで、あの強さは異常だわ。
能力ありで、あのメイド長に勝てた博麗の巫女なんて、どんな人なのよ!?
実物はまだ見たことないけど、きっと戦いを極めた、戦場帰りの傭兵のような眼をした人に違いない。
教えてくれるのがメイド長なので、教わるのもナイフ投げやら、ナイフコンバットやら、メイド長の得意とするところだけど…。
私が実戦で使えるのは、当分先のことになるだろう。
そんなわけで、現状では役立たずな私は、メイド長がいない間に台所のお掃除です。
働き者ね、私って☆
…………やることが仕事くらいしかないなんて…。
趣味のひとつでも持つべきだろうか?
女子力アップも兼ねて、お料理とか……って、料理も仕事の内じゃぁぁっ!!
ふぃ〜…久々に暴走した…あ〜スッキリ☆
いや、何か最近、忘れられている感がしてたからね〜……何でだろ?
そんなことを考えながら、食器棚の整理なんてやってたからだろう……ちょっと…ちょ〜〜っと手が滑った。
「のわぁぁぁぁぁぁっ!!?」
やってしまった……ティーカップをひとつ…粉々に…。
しかも、これ……
「あらら、レミィのティーカップじゃない」
「どわぁぁぁぁっ!!?」
パ、パチュリー様!?いつの間に背後に!!?
「急に大きな声を出さないでちょうだい?びっくりするじゃない…」
いえ、私のほうがびっくりしてますから。
なんてベタなやり取りはともかく。
「……レミリアお嬢様のって……高価な物じゃ…!?」
「そのティーカップ1つで、人里の人間なら3ヶ月分の収入になるかしら…」
「3………!?」
ど…どどどどどうしましょう!!?
人間の月収なんてわかりませんが、パチュリー様の口振りじゃ高価な物っぽいし……!はっ!?こんなことメイド長に知られたら…!!
「カヒ……貴女には失望したわ…」
「ひぃぃぃぃっ!!?お許しくださいメイド長!!」
………なんてことにぃぃ!!
そんな私の狼狽ぶりに、パチュリー様もため息をひとつ。
「ほんと……嫌ねぇ…」
「はうぅ…申し訳ありませんパチュリー様ぁ!」
私はもう涙目である。
「やめてちょうだい、貴方に泣かれると心臓に悪いわ。それに、ティーカップを割ったことを責めている訳じゃないわ…。ただ、縁起が悪くてね…」
「縁起……ですか?」
パチュリー様は割れたティーカップの破片を手に取り、見つめる。
「レミィ愛用のティーカップが割れる…。何か良くないことが起きてなければ良いのだけど…」
◆よかった… 〜レミリア・スカーレット〜
矢がこの身を貫き、矢に封じ込められた陽の気が、体内から私を焼く中、私は不思議と痛みも、恐怖も感じなかった。
まだ息のあった弩使いからの、殺気に満ちた視線に気づいた時には、すでに矢は放たれてしまった。
気づいた咲夜が私の前へ…。
ダメだ!それだけは…私が垣間見た、あの運命通りにだけは、絶対にさせない!!
咲夜の死だけは…許さない!
そう思った時には、すでに咲夜を押し退けていた。
そして、今こうして…私は滅びを迎えようとしている…。
だが、そんなことはどうでもよかった…。
咲夜が……紅魔館の皆が無事でいるのだ……運命なんてものを相手にしたにしては上々の結果だ…。
「お嬢様!お嬢様ぁ!!」
咲夜…そんなに泣くな…。
あ…ああ……声が出ない……肺も焼かれて…。
「早く!早く!!お嬢様をパチュリー様の元に!!咲夜さん!!!」
「お姉様ぁぁぁぁっ!嫌だ…嫌だよぉぉぉっ!!」
フラン……そんなに泣かないの……喧嘩の時は殺意むき出しだったじゃない…。
美鈴も…フランをよろしく頼むわ…。色々手のかかる子だけど…貴女ならできるはず…。
ああ……目蓋も重くなって……これが見納めね…咲夜……貴女を守れて…よかった……天寿を…全うなさい…。
◆報道管制 〜射命丸文〜
いや〜…これは大スクープですよ!?
怪しげな人間たちを尾行てみれば、いきなり幻想郷屈指の実力者、スカーレット家の…それも姉妹揃って!
ああ、これは人間たち…一瞬でミンチですね。記事にもなりゃしない…。
……なんて思ってたら、大番狂わせのスカーレット姉妹苦戦!?
人間たちは能力や弾幕を封じる方法を開発!!?
スペルカードルールに警鐘か!?
人間が妖怪を駆逐する時が来たのか!!?
紅魔館当主、レミリア・スカーレット重体か!?生死不明!!
……と、どんな見出しで新聞の一面を飾ろうか、迷うくらいのネタの嵐でしたねぇ…。
「これはやはり、能力を封じる方法を探るのが面白いですかねぇ…。ああ、でも死んだ魔法使いが考案者なら、インタビューはできませんね…。他にいれば良いのですが…」
「考案者は他の人物よ」
「おおっ!それは良かった!!」
………ん?今の声…つい返事をしてしまいましたが……はて?どなた…?
「久しぶりね…新聞屋さん…」
「あやややや…」
嫌な相手に見つかってしまいました…。
幻想郷の実質的管理者。
隙間と呼ばれる空間から身を乗り出して、私を見下ろす大妖怪“八雲紫”です。
相変わらず、胡散臭い笑みを浮かべていますが、少しでも隙を見せれば命を取られそうな危険性を感じます。
しかし、私はジャーナリスト!ジャーナリズムの崇高な理念と、文々゜新聞の講読者獲得のため!この大妖怪からの情報収集を敢行致します!!
「考案者が別にいるというのは本当でしょうか?」
恐る恐るではありますが、毅然として切り出しました!私ってカッコいい!!
「ええ、本当のことよ」
なんともあっさりした返答。
しかし、これはイケる!
このまま考案者の氏名、住まいを聞き出し、突撃インタビューを敢行!
まずは考案に至るまでの経緯や、幻想郷のルールに一石を投じることへの感想などを訊いて…
「でも…その考案者なら、もういないけどね…」
付け足すように、八雲紫が言った言葉に、私の思考が止まる。
「え……それはどういう…」
思わず、そう訊いてしまったのがいけませんでした。
「私ね……どうしても許せないことが3つあるの……1つ目は幻想郷のルールを破壊しようとすること……。2つ目はルールを破壊するための手立てを作ったり持ち込んだりすること……。そして3つ目は……」
とびきりの笑顔を見せる八雲紫(年齢極秘)
嫌な予感しかしません。
「3つ目はね……そういうことを皆に知らせたがる、お節介な鴉天狗のことよ…」
や、やっぱり…?
ピンポイントで私じゃないですかぁ!?
しかし、私もブン屋の意地があります!
こんな美味しいネタ…書かずにいられるかぁぁっ!!
「しかしですねぇ…ネタ不足の私が、こんなビッグニュース書かないわけが…」
「いいえ…貴女は書けないわ……書けるわけないもの…」
八雲紫は凄まじいプレッシャーと共に断言しました。
「なぜ?」とは聞けませんでした。
想像ができるし、口に出して問えば、その場で実行されかねません。
私だって、命は惜しいんですと言い訳をしておきます。
「う……わ、わかりました……この事は貸しですからね!今度いいネタがあったら書かせてもらいますからね!!」
この大妖怪の前では、これだけ強がるのが精一杯でした……。
この射命丸文……報道管制に屈するとは……無念!!
◆幻想郷のルール 〜八雲紫〜
私の愛する幻想郷にも、頭痛の種は存在する。
ひとつは河童。
好奇心旺盛な彼らは、常に技術に飢え、外の世界の技術を得ようと躍起だ。
ひとつは天狗。
階級による統制、それによる集団行動を重んじ、独自の社会を築く天狗は、その支配域を幻想郷全体に及ぼすかもしれない。
そして、もうひとつが…人間。
妖怪にとって、人間は狩られるだけの弱い存在だった。
そんな人間を守護し、妖怪に対抗できるだけの力を身に付けた者が“博麗の巫女”であり、妖怪と人間のバランスを担う者だ。
しかし、それとは別に、独自の対抗策を講じ、人間のみの安息を求める者が現れた。
中には、外の世界から強力な兵器を持ち込んだり、狂暴な怪物を連れ込もうと画策した者さえいた。
私は幻想郷の管理者として、そうした者たちは徹底的に排してきた。
今回もまた同様に…。
「藍……」
私の式の名を呼ぶと、式神、八雲藍は静かに姿を現す。
「御前に……」
「報告を……」
それだけ命じると、藍は淡々と報告を始める。要点を踏まえ、簡潔に。
「当該術式を組んだ術者の無力化、隠蔽は完了。現在、橙に術式を知った者が他にいないか探らせています」
「レミリア・スカーレットは?」
「例の術式の効果範囲より離脱後、レミリア・スカーレットと十六夜咲夜が姿を消しました。おそらく、能力を行使して紅魔館へ運んだものと思われます。生死については不明ですが…探りますか?」
「いえ、充分よ……事後処理を続けてちょうだい…」
「御意…」
私の有能な式は、現れた時と同じように、静かに姿を消した。
何とも味気ないやり取りだこと…。
しかし、藍の忠誠心と有能さに疑念を挟む余地はない。
私は全幅の信頼を藍に寄せている。
それにしても気になるのは、スカーレット姉妹の今朝の動向だ。
吸血鬼にとっては活動時間とは言えない朝日の射し込む中、紅魔館の外で、メイドも門番も護衛につけず、わざわざ襲撃者を出迎えるような真似を…何故したのか…。
「事前に……襲撃を知っていた…?」
運命を操るレミリア・スカーレットなら可能だろうが、それでは姉妹が出ていく理由にはならない。
レミリア・スカーレットには、自分で戦わねばならない理由があったのか…それとも、誰かを戦わせたくなかったのか…。
思考は巡る。
巡れども答えは出ない。
出ない答えを考えても仕方がないが、疑問を疑問のままにしておくのも心地悪い。
「……藍には充分と言ったけど……事後処理が片付いたら、探りを入れてもらいますか…」
気まぐれな主人だと思われるだろうが、いつものことだ。
文句を言わずにやってくれるだろうと期待をしつつ、私は隙間の中へと戻った。
出したかった御方、八雲紫様の登場でございます(^_^;)
いや、基本的には全キャラ出したいですけど、知識にムラがあるので、出せるだけのイメージが湧かないキャラも何人か……できるだけ頑張りますけどね(^_^;)