東方涙精潭   作:サラム

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 文字数の割りには結構速く書けたかな?(^_^;)
 その分、文章が荒れてなきゃいいけど(--;)



第22話 〜一生の不覚〜

◆一生の不覚 〜紅美鈴〜

 

 

 吸血鬼としての能力すら満足に発揮できない中、お見事ですお嬢様。

 すでに息絶えたハンターの亡骸の隣で、口元を紅く染めたお嬢様が佇んでいる。

 両腕を失いながらも、その姿は私も気圧される程の覇気に満ちていた。

 

「お嬢様……傷は大丈夫ですか?」

 

「大事ないわ…咲夜……貴女こそ怪我はしてないわね?」

 

「はい、おかげさまで…」

 

 そんな会話を交わす二人はどこか主従というだけでなく、親子のような、姉妹のような……。

 

 しかし、この紅美鈴…。

 不覚をとりました。 

 それも、一生の不覚…あってはならない、思い出すだけで苦々しい思いでいっぱいになる、それくらいの不覚です。

 

 まず聞こえたのは、パシッと何かが弾けるような音。

 

 そして、風切り音とともに、私を掠めるように何かが通りすぎました。

 

 それが矢だと気づいた時には、矢は私の届かぬ距離へ。

 

 狙いはお嬢様……その胸元。

 

 先に響いたパシッという……弩の発射音に気づいた咲夜さんは、私より速く動いてました。

 

 その身を盾に、お嬢様の前へ…。

 能力が使えない中、咄嗟にお嬢様を守ろうと思えば、それしかできなかったでしょう…。

 お嬢様の為なら命を惜しまない咲夜さんは、何の躊躇もなく矢の前に飛び出したのです。

 

 しかし、そんな咲夜さんを押し退けた方がいました。

 お嬢様です。

 両腕を無くしたお嬢様は、咲夜さんに体当たりをして突き飛ばしました。

 咲夜さんは驚いた表情でお嬢様を見て…、お嬢様はどこか優しげな微笑みを浮かべて……その身で矢を受け止めたのです。

 

 

◇割れたティーカップ 〜カヒライス〜

 

 

 お嬢様方に何か不測の事態が起きたことは、こあさんの報告と、メイド長、美鈴さんが飛び出していったことでわかっていた。

 わかっていたけど……生憎、私にはどうにかできる力はない。

 ただの妖精ですもん。仕方がないじゃない…。

 まあ、いざという時のために、紅魔館には武器庫もあるし、私たち妖精メイドも有事には鎧を着て、剣や槍や弓で戦うんですけどね。

 一応、訓練もしてますし……。

 ただ、その訓練の相手がメイド長だから、まあ強いのなんの…。

 能力なしで、あの強さは異常だわ。

 能力ありで、あのメイド長に勝てた博麗の巫女なんて、どんな人なのよ!?

 実物はまだ見たことないけど、きっと戦いを極めた、戦場帰りの傭兵のような眼をした人に違いない。

 教えてくれるのがメイド長なので、教わるのもナイフ投げやら、ナイフコンバットやら、メイド長の得意とするところだけど…。

 私が実戦で使えるのは、当分先のことになるだろう。

 

 そんなわけで、現状では役立たずな私は、メイド長がいない間に台所のお掃除です。

 働き者ね、私って☆

 …………やることが仕事くらいしかないなんて…。

 趣味のひとつでも持つべきだろうか?

 女子力アップも兼ねて、お料理とか……って、料理も仕事の内じゃぁぁっ!!

 ふぃ〜…久々に暴走した…あ〜スッキリ☆

 いや、何か最近、忘れられている感がしてたからね〜……何でだろ?

 

 そんなことを考えながら、食器棚の整理なんてやってたからだろう……ちょっと…ちょ〜〜っと手が滑った。

 

「のわぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 やってしまった……ティーカップをひとつ…粉々に…。

 しかも、これ……

 

「あらら、レミィのティーカップじゃない」

 

「どわぁぁぁぁっ!!?」

 

 パ、パチュリー様!?いつの間に背後に!!?

 

「急に大きな声を出さないでちょうだい?びっくりするじゃない…」

 

 いえ、私のほうがびっくりしてますから。

 なんてベタなやり取りはともかく。

 

「……レミリアお嬢様のって……高価な物じゃ…!?」

 

「そのティーカップ1つで、人里の人間なら3ヶ月分の収入になるかしら…」

 

「3………!?」

 

 ど…どどどどどうしましょう!!?

 人間の月収なんてわかりませんが、パチュリー様の口振りじゃ高価な物っぽいし……!はっ!?こんなことメイド長に知られたら…!!

 

「カヒ……貴女には失望したわ…」

 

「ひぃぃぃぃっ!!?お許しくださいメイド長!!」

 

 ………なんてことにぃぃ!!

 そんな私の狼狽ぶりに、パチュリー様もため息をひとつ。

 

「ほんと……嫌ねぇ…」

 

「はうぅ…申し訳ありませんパチュリー様ぁ!」

 

 私はもう涙目である。

 

「やめてちょうだい、貴方に泣かれると心臓に悪いわ。それに、ティーカップを割ったことを責めている訳じゃないわ…。ただ、縁起が悪くてね…」

 

「縁起……ですか?」

 

 パチュリー様は割れたティーカップの破片を手に取り、見つめる。

 

「レミィ愛用のティーカップが割れる…。何か良くないことが起きてなければ良いのだけど…」

 

 

 

◆よかった… 〜レミリア・スカーレット〜

 

 

 矢がこの身を貫き、矢に封じ込められた陽の気が、体内から私を焼く中、私は不思議と痛みも、恐怖も感じなかった。

 まだ息のあった弩使いからの、殺気に満ちた視線に気づいた時には、すでに矢は放たれてしまった。

 気づいた咲夜が私の前へ…。

 ダメだ!それだけは…私が垣間見た、あの運命通りにだけは、絶対にさせない!!

 

 咲夜の死だけは…許さない!

 

 そう思った時には、すでに咲夜を押し退けていた。

 そして、今こうして…私は滅びを迎えようとしている…。

 だが、そんなことはどうでもよかった…。

 咲夜が……紅魔館の皆が無事でいるのだ……運命なんてものを相手にしたにしては上々の結果だ…。

 

「お嬢様!お嬢様ぁ!!」

 

 咲夜…そんなに泣くな…。

 あ…ああ……声が出ない……肺も焼かれて…。

 

「早く!早く!!お嬢様をパチュリー様の元に!!咲夜さん!!!」

 

「お姉様ぁぁぁぁっ!嫌だ…嫌だよぉぉぉっ!!」

 

 フラン……そんなに泣かないの……喧嘩の時は殺意むき出しだったじゃない…。

 美鈴も…フランをよろしく頼むわ…。色々手のかかる子だけど…貴女ならできるはず…。

 ああ……目蓋も重くなって……これが見納めね…咲夜……貴女を守れて…よかった……天寿を…全うなさい…。

 

 

◆報道管制 〜射命丸文〜

 

 

 いや〜…これは大スクープですよ!?

 怪しげな人間たちを尾行てみれば、いきなり幻想郷屈指の実力者、スカーレット家の…それも姉妹揃って!

 ああ、これは人間たち…一瞬でミンチですね。記事にもなりゃしない…。

 ……なんて思ってたら、大番狂わせのスカーレット姉妹苦戦!?

 人間たちは能力や弾幕を封じる方法を開発!!?

 スペルカードルールに警鐘か!?

 人間が妖怪を駆逐する時が来たのか!!?

 紅魔館当主、レミリア・スカーレット重体か!?生死不明!!

 ……と、どんな見出しで新聞の一面を飾ろうか、迷うくらいのネタの嵐でしたねぇ…。

 

「これはやはり、能力を封じる方法を探るのが面白いですかねぇ…。ああ、でも死んだ魔法使いが考案者なら、インタビューはできませんね…。他にいれば良いのですが…」

 

「考案者は他の人物よ」

 

「おおっ!それは良かった!!」

 

 ………ん?今の声…つい返事をしてしまいましたが……はて?どなた…?

 

「久しぶりね…新聞屋さん…」

 

「あやややや…」

 

 嫌な相手に見つかってしまいました…。

 幻想郷の実質的管理者。

 隙間と呼ばれる空間から身を乗り出して、私を見下ろす大妖怪“八雲紫”です。

 相変わらず、胡散臭い笑みを浮かべていますが、少しでも隙を見せれば命を取られそうな危険性を感じます。

 しかし、私はジャーナリスト!ジャーナリズムの崇高な理念と、文々゜新聞の講読者獲得のため!この大妖怪からの情報収集を敢行致します!!

 

「考案者が別にいるというのは本当でしょうか?」

 

 恐る恐るではありますが、毅然として切り出しました!私ってカッコいい!!

 

「ええ、本当のことよ」

 

 なんともあっさりした返答。

 しかし、これはイケる!

 このまま考案者の氏名、住まいを聞き出し、突撃インタビューを敢行!

 まずは考案に至るまでの経緯や、幻想郷のルールに一石を投じることへの感想などを訊いて…

 

「でも…その考案者なら、もういないけどね…」

 

 付け足すように、八雲紫が言った言葉に、私の思考が止まる。

 

「え……それはどういう…」

 

 思わず、そう訊いてしまったのがいけませんでした。

 

「私ね……どうしても許せないことが3つあるの……1つ目は幻想郷のルールを破壊しようとすること……。2つ目はルールを破壊するための手立てを作ったり持ち込んだりすること……。そして3つ目は……」

 

 とびきりの笑顔を見せる八雲紫(年齢極秘)

 嫌な予感しかしません。 

「3つ目はね……そういうことを皆に知らせたがる、お節介な鴉天狗のことよ…」

 

 や、やっぱり…?

 ピンポイントで私じゃないですかぁ!?

 しかし、私もブン屋の意地があります!

 こんな美味しいネタ…書かずにいられるかぁぁっ!!

 

「しかしですねぇ…ネタ不足の私が、こんなビッグニュース書かないわけが…」

 

「いいえ…貴女は書けないわ……書けるわけないもの…」

 

 八雲紫は凄まじいプレッシャーと共に断言しました。

 

 「なぜ?」とは聞けませんでした。

 想像ができるし、口に出して問えば、その場で実行されかねません。

 私だって、命は惜しいんですと言い訳をしておきます。

 

「う……わ、わかりました……この事は貸しですからね!今度いいネタがあったら書かせてもらいますからね!!」

 

 この大妖怪の前では、これだけ強がるのが精一杯でした……。

 この射命丸文……報道管制に屈するとは……無念!!

 

 

◆幻想郷のルール 〜八雲紫〜

 

 

 私の愛する幻想郷にも、頭痛の種は存在する。

 ひとつは河童。

 好奇心旺盛な彼らは、常に技術に飢え、外の世界の技術を得ようと躍起だ。

 ひとつは天狗。

 階級による統制、それによる集団行動を重んじ、独自の社会を築く天狗は、その支配域を幻想郷全体に及ぼすかもしれない。

 そして、もうひとつが…人間。

 妖怪にとって、人間は狩られるだけの弱い存在だった。

 そんな人間を守護し、妖怪に対抗できるだけの力を身に付けた者が“博麗の巫女”であり、妖怪と人間のバランスを担う者だ。

 

 しかし、それとは別に、独自の対抗策を講じ、人間のみの安息を求める者が現れた。

 中には、外の世界から強力な兵器を持ち込んだり、狂暴な怪物を連れ込もうと画策した者さえいた。

 私は幻想郷の管理者として、そうした者たちは徹底的に排してきた。

 今回もまた同様に…。

 

「藍……」

 

 私の式の名を呼ぶと、式神、八雲藍は静かに姿を現す。

 

「御前に……」

 

「報告を……」

 

 それだけ命じると、藍は淡々と報告を始める。要点を踏まえ、簡潔に。

 

「当該術式を組んだ術者の無力化、隠蔽は完了。現在、橙に術式を知った者が他にいないか探らせています」

 

「レミリア・スカーレットは?」

 

「例の術式の効果範囲より離脱後、レミリア・スカーレットと十六夜咲夜が姿を消しました。おそらく、能力を行使して紅魔館へ運んだものと思われます。生死については不明ですが…探りますか?」

 

「いえ、充分よ……事後処理を続けてちょうだい…」

 

「御意…」

 

 私の有能な式は、現れた時と同じように、静かに姿を消した。

 何とも味気ないやり取りだこと…。

 しかし、藍の忠誠心と有能さに疑念を挟む余地はない。

 私は全幅の信頼を藍に寄せている。

 それにしても気になるのは、スカーレット姉妹の今朝の動向だ。

 吸血鬼にとっては活動時間とは言えない朝日の射し込む中、紅魔館の外で、メイドも門番も護衛につけず、わざわざ襲撃者を出迎えるような真似を…何故したのか…。

 

「事前に……襲撃を知っていた…?」

 

 運命を操るレミリア・スカーレットなら可能だろうが、それでは姉妹が出ていく理由にはならない。

 レミリア・スカーレットには、自分で戦わねばならない理由があったのか…それとも、誰かを戦わせたくなかったのか…。

 思考は巡る。

 巡れども答えは出ない。

 出ない答えを考えても仕方がないが、疑問を疑問のままにしておくのも心地悪い。

 

「……藍には充分と言ったけど……事後処理が片付いたら、探りを入れてもらいますか…」

 

 気まぐれな主人だと思われるだろうが、いつものことだ。

 文句を言わずにやってくれるだろうと期待をしつつ、私は隙間の中へと戻った。

 

 

 




 出したかった御方、八雲紫様の登場でございます(^_^;)
 いや、基本的には全キャラ出したいですけど、知識にムラがあるので、出せるだけのイメージが湧かないキャラも何人か……できるだけ頑張りますけどね(^_^;)
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