東方涙精潭   作:サラム

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 いやぁ〜…おまたせしましたm(__)m
 今回は慣れないキャラをたくさん動かした結果、かなり遅くなりました。申し訳ありません(--;)



第26話 〜招待道中(命蓮寺編)〜

◇招待道中(命蓮寺編) 〜カヒライス〜

 

 

 さて、引き続き招待状配達です。

 時間もあまりありませんので、どんどんいきますよ〜。

 今回訪れましたのは、人里より程近い、命蓮寺というお寺。

 幻想郷に来てから日が浅いですが、人里などで信者を増やし、勢力としては軽視できません。

 紅魔館としても、無闇に敵に回すのは得策ではないでしょう。

 今回のパーティーは、まだ謎の多い勢力の内情を探る意味もありそうね…と、勝手に思ってみる。

 あのお嬢様方のことだ…本当にただパーティーをしたいだけという可能性が…。

 何てことを考えながら寺のなかなかに重厚な正門をくぐった…その瞬間。

 

「おはようございまぁぁぁすっ!!!」

 

 ……これを読んでいる皆さんは、元気の良い、朝の挨拶だとお思いだろう。

 しかし、この声の音量が常識はずれな大声だったならばどうだろう?

 それこそ、爆弾の炸裂音のような、衝撃波を生み出すほどの。

 犬のような垂れ耳を頭につけ、境内の掃除をしていた子と目が合ったと思ったらこれだよ。

 そのバカでかい声の衝撃波によって、私の体は吹き飛び、入ってきたばかりの正門を再びくぐって出ていき、さらに正門に至る石段を飛び越えて、頭に強い衝撃を受けた。

 そして、それを感じた瞬間、私の意識はぶっ飛んだ。

 

 

◆騒がしい朝 〜封獣ぬえ〜

 

 

 ぬえ〜ん…。朝早い命蓮寺での生活にも慣れ、朝の修行も一通り終え、お昼までまったりしてたかったのに…。

 

「だ、誰かぁ!だれかぁぁっ!!」

 

 という、“幽谷響子”の大声で叩き起こされた。

 あの子は正門で掃除をしていたはず……はて?何かあったのかな?

 

「いったい何事ですかぁ?」

 

 と、正門まで出てきたけど……誰もいない。

 見れば正門の石段の前に、響子が使っていた箒が転がっている。

 まさか、石段から転がり落ちたんじゃ…。

 嫌な予感がしたので石段の下を覗きこめば、その予感が当たっていたことを思い知らされた。

 ただし、下で伸びているのは響子ではなく、メイド服を着た妖精だったけど。

 

「なんでこんなことに…」

 

 私が呟くと、響子は何ともばつの悪そうな表情をした。

 

「さては……またやっちゃったの?」

 

「……はい…」

 

 半端ない大声を出せる彼女も、この時ばかりは消え入りそうな声だ。

 彼女は“音を反射させる程度の能力”を持つ山彦妖怪。

 元気の良い挨拶は良いのだけど、無意識に能力が出てしまうのか、自分の声を反射に反射を重ねた結果、常識はずれの大音量ボイスとなって相手にぶつけるから、妖精のような存在からして軽い者は簡単に吹き飛ばされてしまうのだ。

 

「とにかく、中に運びましょ…ここに寝転がしておくのは、仏の道に反するってね」

 

 普段は人と接するのが苦手な私だけど、聖が説く以上、仏の道というものから外れたことはしたくない。

 慣れないながらも、響子と一緒に妖精の両脇を抱え、私たちは石段を登っていった。

 

 

◇命蓮寺にて 〜カヒライス〜

 

 

 う〜ん……もう食べられにゃい……。

 たくさんのケーキに囲まれ、幸せ気分で見ている夢も、夢である以上は終わりが……目覚めの時が来る。

 願わくは、その目覚めが爽やかで、一日の活力にみなぎるものであってほしい……。

 だが、ここにいる一人の妖精…すなわち私に、その目覚めは訪れなかった。

 

「う〜ん……ふあ……?」

 

 ぼんやりとした眼にまず見えたのはピンク色の何か。

 

「なにこれ…?」

 

 手を伸ばしたけど何の感触もない。

 なんか、霧のような雲のような…。

 次第に視界がはっきりしてきて、それがピンク色の巨大な何かだとわかった瞬間、くるりとそれがこっちを見た。

 

「…!?ひにゃぁぁぁっ!!?」

 

 思わず悲鳴をあげた。

 だって、それは巨大な、髭面のおっさんの顔だったんですもの…。

 それも超至近距離。

 しかし、そのおっさん雲はなにも言わず、フワフワと部屋を出ていった。

 いったい、今のは何だったのか…。

 しばし放心状態でいたんだと思うけど、誰かが近づく足音で我にかえった。

 

「気がついたみたいね…具合はどう?」

 

 頭にフードというか頭巾というか、頭全体を布で覆った女性が話しかけてきた。

 その後ろには……で、出た!?おっさん雲!!

 

「この“雲山”がずっと看病してくれたのよ。貴女…響子ちゃんに吹き飛ばされたんですって?災難だったわね」

 

 ふぅん…あの雲、雲山っていうのか……ずっと看病って…内面は結構イケメン!?

 まあ、ジョークはこの辺にして、まずは状況把握したいところ。

 把握……したいんだけど……。

 

「あの子ったら元気が良いのは良いんだけど、ついつい能力が出ちゃってね。ああ、あの子っていうのは、ここに住み込んでる響子ちゃんって子でね。犬耳つけたかわいい子でね、この間も…」

 

 なんだ?この近所のおばちゃんみたいなマシンガントークは…。

 あまりに止まらない世間話に、口を挟む余地がない。

 とはいえ、このままでは日が暮れてしまいます。

 

「あ、あのう……貴女はどちら様で……それにここは……」

 

 なんだか絶好調に話しまくる女性に口を挟むのは気が引けるけど、そうは言っていられない。

 しかし、女性は気を悪くするわけでもなく、

 

「あら!ごめんなさい、私は“雲居一輪”。この命蓮寺に身を置かせてもらってるの」

 

 と、にこやかに答えてくれた。

 何ともサバサバした感じな肝っ玉母ちゃんみたいな人だわ…。

 

「で、貴女はここにどんな用件で?もしかして入信希望!?」

 

 ズイッと身を乗り出して訊いてきたところで悪いけど、そんな気はまったくない。

 一輪さんは悪い人じゃなさそうだけど、単純に宗教というものに興味がないだけだ。

 

「ああ、いえ…今日は命蓮寺の聖白蓮様に、紅魔館当主のレミリア・スカーレットより招待状をお届けに上がったのですが…お取り次ぎ願えますか?」

 

 私がそう告げると一輪さんは少し困った顔をする。

 

「あ〜…聖は今…お説教の最中だから…」

 

「お説教…?」

 

 私が不思議そうな顔をしていると、一輪さんは少し考え、

 

「まあ、いいか…とりあえず、聖のところまで案内するわね」

 

 そう言って、部屋の障子を開けた。

 

 

◆仏の眼差し 〜聖白蓮〜

 

 

 我が命蓮寺の本堂にて、いつもの読経をしている最中に、ぬえが慌ただしく飛び込んできたところから、私の静かな日常は崩れ去った。

 

「何ですか?ぬえ…騒々しい…」 

 とりあえず、礼節を欠いた行動をたしなめつつ、そうさせた理由を尋ねると、どうやら誰かを担ぎ込んできたらしい。

 すぐに部屋に上げて介抱するように一輪に指示し、事情を訊くために、当事者である響子を目の前に座らせ……現在に至る。

 

「確かに、戒律に“挨拶は心のオアシス”とあります。それを忠実に守ろうとする貴女の姿勢は素晴らしいと思います」

 

 目の前の響子は、力なく項垂れたまま、シュンとしている。

 

「ですが、過ぎたるは及ばざるが如し。自分の能力を考えなさい。そして、それをコントロールなさい。それができないが為に、今回もそうですし、以前のように参拝に訪れたお婆ちゃんを、心臓発作で極楽に導きそうになるのですよ?」

 

 響子は身をすくませ、プルプルと震えている。

 耳は完全に垂れて目には涙を浮かべている。

 

 かわいい……。

 

 はっ!?私としたことが……下賤な煩悩に囚われてしまった…。

 やはり私もまだ修行が足りないわ…。

 と、自らを戒め、再び響子に向き直すと、その響子の肩越しに私になにか言いたげな一輪の姿が見えた。

 

「どうしたの?一輪…」

 

 そう声をかけると、一輪は少し居心地の悪そうな表情を浮かべ、

 

「聖…先程の妖精が眼を覚まして…面会を希望しているのだけど?」

 

 と、後ろを気にしながら答えた。

 多分、もう後ろで待っているのだろう。

 寺の者が迷惑をかけたお客人を待たせるのも申し訳ない。

 響子にも直接謝ってもらわねばならないし…。

 

「いいわよ、お通しして…」

 

 そう告げると、一輪は障子を大きく開け、後ろで待っていた人物を本堂に迎え入れた。

 

「失礼いたします」

 

 西洋の給仕服に身を包んだ銀髪の妖精が、礼儀正しく一礼して入ってきた。

 

「ようこそ命蓮寺へ…。私が住職の聖白蓮です。そして…こっちが…」

 

「幽谷響子です!さ、先程は…すいませんでしたぁぁっ!!」

 

 半泣きながら、今度は能力を抑えて謝ることができた。

 それだけでも褒めるに値するだろう。

 響子の頭を撫でながら、目の前の妖精に視線を戻す。

 

「これはご丁寧に…紅魔館の使いで参りましたカヒライスと申します」

 

 再び一礼して、顔をあげたカヒライスと目が合う。

 

 その瞳を見た瞬間、言い様のない憐憫の念を感じた。

 私が彼女自身を憐れと思ったのではない。

 彼女の瞳が、映るもの総てを憐れんでいるかのようなのだ。

 しかし、それは悪意からなる憐れみではなく、優しさや愛情からなる憐れみなのだ。

 それは、仏が民草に向ける眼差しに等しい。

 だが、当の本人は全くそんな気などないのか、不思議そうに私を見ている。

 

「あ…あの…聖様……どうかされましたか?」

 

 いけない……迷いが出たようね…。

 やはり、私も修行が足りないわ…。

 妖精は純粋な種族と聞き及びます。

 その純粋さが、瞳に現れたのでしょう。

 そう結論付けて、私はカヒライスに向き直った。

 

「ごめんなさい、何でもないわ。それで……用件というのは?」

 

 すると、カヒライスは1通の書状を取り出し、私に差し出してきた。

 

「紅魔館当主レミリア・スカーレットより、宴の招待状でございます。聖白蓮様を是非ともお招きしたいと、我が主、レミリアより言付かって参りました」

 

「これは御丁寧に…」

 

 恭しく差し出された招待状を受け取る。

 紅魔館と言えば、幻想郷では一大勢力。他の大きな勢力と比較すれば、早期に幻想郷に移った勢力で、影響力も強いと聞く。

 先日、当主のレミリア嬢が大怪我を負ったと聞いていたけど…。

 

「レミリア嬢のお加減はよろしいのですか?」

 

「はい、宴までには治すと、意気込んでおりました」

 

 瀕死だと聞いていたのに、2週間で完治させる気なのね…流石は吸血鬼ということか。

 とにかく、新参の命蓮寺としては、古参の紅魔館と親交を深めるのも悪くはない。

 当初は悪魔の類いと嫌煙していたけど、噂に聞く限り、極悪な所業などは全く聞かれなかったのだし…。

 

「わかりました。喜んでお受けいたしますと、レミリア嬢にはお伝えください」

 

 私がそう伝えると、カヒライスは柔らかな笑みを浮かべた。

 

 

 

◇ご本尊はいずこ? 〜カヒライス〜

 

 

 ひじりん、ゲットだぜぇぇぇっ!!

 と、別に聖さんをボールに閉じ込めて持ち運んだりしないから。

 まあ、とにかく…招待を受けてくれて助かった。

 気絶してまで来たのに、断られたら嫌だしね…。

 

「では、お待ち申し上げておりますので」

 

「はい、当日は命蓮寺の本尊と共に、お邪魔させていただきますね」

 

 ……ん?今、本尊って言った?

 本尊って言ったらお寺で奉られている仏様よね?

 まさか、仏像を担いでくるんですか?

 いや、まさかまさか…。

 そういやここ、本堂だというのにご本尊が見当たらない…。

 

「あのぅ…そのご本尊はどちらに…」

 

「ああ…、探し物があるとかで、出掛けたままですね」

 

 出掛けた!?ご本尊が!!?

 私の頭の中では、仏像が草むらを必死に掻き分けながら、何かを探している様子が思い浮かんだ。

 

「当分はかかると思いますので、お茶などいかがでしょう?」

 

 聖さんはお茶を薦めるが、残念ながらゆっくりしている暇はない。

 

「いえ、まだ行くところがありますので…では」

 

 そう告げて、私は命蓮寺を後にした、その道中…。

 

「ん?」

 

 金髪で、虎柄の服を着た女性と、ネズミのような耳をつけた女の子が、草むらの中で何やらゴソゴソやっている。

 怪しいことこの上ないが、生憎これ以上は寄り道できない。

 私は無視して、そのまま次の目的地へと向かうことにした。

 

 

「ナズー……見つかりましたかぁ〜…?」

 

「まだ見つからないよ。まったく…ご主人!いったい宝塔をどこでなくしたんだい!?」

 

「覚えてないよ〜」

 

「早く見つけないと、聖のお説教がパワーアップしてゆくだけだよ?」

 

「わかってますよぉ〜…」 

 

 

 




 さて、次回はもっと早く出せるように頑張らなきゃ…(^^;
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