決済やら新年度やら、仕事が忙しすぎるのは勘弁していただきたいんですけどねぇ…(--;)
◇招待道中(白玉楼編) 〜カヒライス〜
「白玉楼?あそこに貴女が行くのは、やめといた方がいいわね」
白玉楼への行き方を知らないのでメイド長に訊いたら、返事がこれですよ。
いや、配達は私に任せるって…そう可愛らしく頼んだのはメイド長ですよ?
「まあ、白玉楼は冥界にあるから……余程我が強くないと、お化けの仲間入りしちゃうわよ?」
両手をだらんと下げて、舌を出して言うメイド長。
すいません、怖くないです。むしろ可愛いです。
「それじゃ、この西行寺幽々子様には招待状を届けられませんが…」
「大丈夫よ、当てがあるから…」
「当て……ですか?」
「ええ、よく人里に“魂魄妖夢”という半人半霊の女の子が買い物に来るから、その子に渡しなさいな」
メイド長にそう言われ、再び人里に出掛けることにする。
と、その前に、パーティーに備えて各部署の様子を見ておきますか…。
メイド長の補佐役ですから、それくらいはしないと。
まずは私の古巣、オールワーカー達。
「あ、カヒ。いらっしゃい」
オールワーカーの時の同僚が、にこやかに迎えてくれた。
「パーティーの準備、捗ってる?」
「うん、会場の設営と紅魔館周辺の警備だって。こあさんが陣頭指揮を執ってるよ」
「こあさんが?警備なら門番の美鈴さんの仕事じゃ…?」
「美鈴さんはその日、会場内の警備に回るんだって」
はて?なら、こあさんが会場内の警備をしたほうが……。
「こあさんは、戦い方がどうだとか…って、パチュリー様が言ってたけど…詳しい話はわかんない」
こあさんが戦うとこは、あんまり想像できないけど…小悪魔らしくえげつないことでもするんだろうか?
オールワーカーは順調なのがわかったので、今度は衣服やシーツの洗濯、裁縫などを担当しているランドリーメイド達だ。 パーティー当日のテーブルクロスなどはもちろん、必要ならパーティードレスの貸し出しも行う。
それも、着用者に合わせてサイズ調整もその場でしてしまうという、何とも無茶な早業をやってのけるメイド達だ。
「パーティーの準備?こっちは万全さ。今、100人くらい客が来ても、対応してやるわ」
この何とも頼もしい事を言ってくれているのが、ランドリーメイドの責任者だ。
洗濯して水気を吸った洗濯物は重いらしく、それを何度も外に持ち出しては干しているうちに、身体は筋肉質になり、肌は日焼けして小麦色と、まるでアスリートのような体つきになっている。
それに加えて、この姉御肌な語り口だ。
男だったらモテるんだろうなぁ…。
当の本人はまったく気にしてないようだけど。
ランドリーメイドも、この様子なら大丈夫だろう。
さて、次に向かうは私が今いるパーラーメイドだ。 パーティー当日は、もちろん接客がメインとなる。
先輩方の部屋を覗けば…おお、所作の確認中でした。
それにしても容姿のみならず、身のこなしや言葉遣いまで、メイド長に負けず劣らず綺麗ですなぁ…。
お嬢様の口添えがあったとしても、私が所属しているのが恥ずかしいくらいです。
「あら?カヒじゃない…どうしたの?」
おや、先輩に見つかってしまいました。
まあ、後ろめたいことなど何もないから良いのですが。
「パーティー準備の進捗状況を見にきただけです〜」
「そう、ご苦労様。カヒも所作くらいは確認しなさいよ」
「あ〜い」
先輩とあって、こういうことを言われると弱いな…後で練習しとこう。
最後はここ…厨房にいるはずのキッチンメイド達ですが……すでに扉の隙間から負のオーラが漏れ出ています…。
先日、キッチンメイドさんが西行寺幽々子さんの名を見て気絶したのが気になり、メイド長に訊いてみたのですが、「キッチンメイドにとって、幽々子は天敵だから…」とだけ仰って、あとは沈黙していましたねぇ…。 いったい、過去に何があったのかは知りませんが、この扉を開けるのが恐ろしいです。
「こんにちわ〜…」
意を決して扉を開ければ、中は恐ろしく静まり返っており、一瞬、不在なのかと思ったほどでした。
「誰もいませんか?……うわっ!?」
あまりに静かで気がつきませんでしたが、黙々と料理を作っている方が…。
「あのぅ…パーティー準備の進捗状況を……」
と、訊ねますが…何の反応も……いえ、何やらブツブツと聞こえます。
「……死なんとすれば生き……生きんとすれば死すなり……」
………なんか怖いですよ…?
ほ、他に誰か……あ、そこでジャガイモを潰している方……?
「ふふふ……ふふふふ……ふふ……」
マッシャーでひたすらジャガイモを潰しながら笑っておられる…。
いったいキッチンメイドさん達に何が……やはり、西行寺幽々子さん絡みなのか!?
と、とりあえず、この常軌を逸した空間にいるのは危険と判断して、そうそうに退散させていただきました。
パーティーのごちそう……大丈夫かなぁ…。
さて、気を取り直して人里の市場に到着です。
本日は特売日のためか、たくさんの人で溢れかえってますが…果たしてこの中から、魂魄妖夢さんを見つけ出せるのでしょうか?
メイド長から教えていただいた妖夢さんの特徴は、2本の刀を持っていること、銀髪のおかっぱ頭、半霊という白い霊魂のようなものを連れていること…と、なかなかに特徴的ではありますが、この人妖入り交じり混雑した中から見つけ出すのは……ん?何やら騒がしい…。
「す、すげぇ…山が……山が動いている…」
近くにいた兄ちゃんがそんな呟きを漏らしましたが、まさか山が動くわけが……すげ〜……。
確かに山だ……厳密に言えば、市場の商品が積み上がった山だ。
離れてても見える巨大な山は、ゆっくりと市場の中を進んでいる。
何事かと、人混みを掻き分けて山に近づけば、その山の麓に一人の女の子の姿を見つけた。
銀髪のおかっぱ頭で、背中に2本の刀を背負った少女が、山のような荷物…ほとんどが食材…を、これまた巨大な台車に載せて引っ張っている。
鬼のような形相で…。
ん?銀髪のおかっぱ頭で、2本の刀……?
傍にはフヨフヨと、何か白い霊魂のようなものが……。
「ああぁーーーっ!!!」
思わず大声を出してしまいました。
周囲の人を驚かせてしまったようで、皆さん私を見てます…恥ずかちぃ…。
それは山のような荷物を引き摺る少女も同じだったようで、射るような視線を私に向けてます…。
こ、怖いですが…ちょうどいい機会です。
「あ、あの……魂魄妖夢さんですか…?」
まあ、ここまで特徴が合致する人なんてまずいないでしょうが、念のため尋ねる。
「そうですが……貴女は?」
少し苛立った口調で、訊き返す妖夢さんに、招待状を差し出す。
「紅魔館の使いの者です。この度、紅魔館にて宴を催しますので、白玉楼の西行寺幽々子様にもご出席いただければと……」
事情を説明すると、妖夢さんの眉間に寄っていたシワが消えた。
「宴……ということは……料理も出ます…?」
妖夢さんが、ポツリと呟くように尋ねてきた。
料理の出ない宴なんてまずないと思うけど……それこそ貧しい博麗神社でもない限り。
「え、ええ……すべて紅魔館で用意させていただきますが…?」
そう答えると、妖夢さんがガシッと私の手を掴んだ。
ひゃわっ!?
よ、妖夢さんってば、意外と積極的な方なのかしら?
あ…そ、そんな真っ直ぐな瞳で見つめないでください……。
なんて、おバカな妄想に要した時間は1秒にも満たない。
さすが私…妄想なら誰にも負けません。
「ぜ、是非…是非とも参加させていただきます!!」
あらまあ…そんなに目を輝かせて……というより、すがりつくような目で…そんなにパーティーを楽しみにしてくれているのでしょうか?
しかし……招待状を渡した後で、妖夢さんが「食費が浮く」とか、「休める」とか呟いているように聞こえたのですが…。
それにあの量の食材…。
白玉楼では今日、何かしらの宴でも開くのでしょうか?
あの量ですから、きっと盛大な宴なのですね!
我が紅魔館も負けてはいられません…。
白玉楼より、盛大なパーティーを開いてみせましょうかねぇ!?
◆束の間の休息 〜魂魄妖夢〜
紅魔館の妖精メイドが去り、再び膨大な荷を運ぶ。
しかし、先程と違って足取りは軽い。
紅魔館の宴に幽々子様が参加してくだされば、少なくともその間は…あの果てしない作業から解放されるのだ。
白玉楼に戻れば、息つく暇もなく取り掛からねばならないそれから、一時でも解放されるのは喜びに他ならず、私にとっては束の間の休息だ。
紅魔館の面々には悪いが、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。 話は紅魔館から振ってきたのだから、どうか恨まないでほしい。
幽々子様が宴に参加すれば、間違いなくそこは地獄と化すだろう。
紅魔館の面々に同情しつつ、私は家路を急いだ。
登場するキャラについて、出来るだけたくさん出したいのですが、東方シリーズで比較的新しいものに登場するキャラについては、一部割愛させていただきます。
私の資料不足と、話が長引いてしまうのを避けたい事情もあり、そのようにさせていただきますので、どうかご了承くださいませ(--;)