東方涙精潭   作:サラム

30 / 36
 実に4ヶ月も間が空いてしまった……。
 大変申し訳ありませんでしたぁぁぁっ!!m(__)m



第30話 〜フランのおつかい〜

◆フランのおつかい 〜レミリア・スカーレット〜

 

 

「はぁ…」

 

 日も落ち、徐々に満ちてゆく月の光に照らされながら茶をたしなむ一時。

 隣で控えていた咲夜が珍しくため息をついた。

 

「あら、どうしたの咲夜…貴女らしくもない…」

 

 咲夜は一瞬、何のことか理解できないという表情を浮かべたが、おそらく無意識でため息をついたのだろう。そのことに気づいて頭を下げた。

 

「何か悩みがあるなら言いなさい。傷に障らない程度なら私も動けるのだし…」

 

 以前、ヴァンパイアハンターから受けた傷はほとんど完治し、新しく再生された両腕、下半身ともに問題なく動く。

 あとは消耗した体力と魔力が回復すれば、以前と変わらぬ生活に戻れるだろう。

 今もこうして吸血鬼の力の根元たる月の光を浴び、回復に努めている次第だ。

 咲夜は少し考えたが、言葉を選ぶように口を開いた。

 

「はい……それが…カヒが……」

 

 カヒがどうした?

 まさか、咲夜の命の監視をしていることが気取られたか?

 

「地霊殿から帰って以来、再起不能で…」

 

「………はぁ?」

 

 ひとまず、監視がバレていないことは幸いだったが、再起不能というのはどういうことか?

 

「地霊殿の霊烏路空が送ってきたのですが…美鈴の話では、ここに帰ってきたときにはすでに心ここにあらずといった具合だったそうで…」

 

「お空は何か言ってたの?」

 

「美鈴が訊いたそうですが、要領を得ず…」

 

 まあ、お空はチルノといい勝負だし……色々と…。

 

「困りましたわ…まだ、招待状を届け終わってませんのに…」

 

「他の者ではダメなの?」

 

「パーティーの準備で手一杯ですし、今から妖精を増やしても作法を教え込まないと…」

 

 ふむ…となると、残念だが私にできることはないか…。

 養生している身で、日傘を差していても昼間出歩くのはキツい。

 それに、私の快気祝いなのに自分で招待しにいくのは格好がつかない。

 

「仕方ないわね…人が足りないなら、また天狗にでも頼んで…」

 

「ちょっと待ったぁぁぁぁっ!!」

 

 私の言葉を遮る声。

 その声に振り返ると、いつの間にそこにいたのか、フランが仁王立ちで私を見ていた。

 

「その役目……私がやるわ…」

 

 いったいその自信はどこから……と言いたくなるくらいのドヤ顔で言われても…。

 

「ダメよフラン。人里とは訳が違うのだから、貴女を行かせるわけにはいかないわ」

 

 フランには悪いけど、キッパリと断った。

 安全だった人里でさえ、先日のようなことがあったのだ。ただでさえ曲者だらけ……というか、曲者しかいない他勢力のところへ、フランのような世間知らずを行かせたらどうなるか…とんでもないことを吹き込まれでもしたら、厄介極まりない。

 しかし、フランは退かない。

 

「私だってお姉様の役に立ちたいもん!」

 

 唐突に何を言い出したかと思っていたが、その一言で合点がいった。

 フランはフランなりに罪悪感のようなものを感じているのだ。

 ヴァンパイアハンターに目をつけられ、戦いの時も美鈴に助けられたことを気にしているようだと、咲夜から聞いてはいたが…。

 それにしても、笑いながら命を奪っていたフランが罪悪感とは……やはり、成長しているのね…幻想郷に来て、本当に良かったと思うわ…。

 ならば、その成長を止める道理はない。

 

「わかったわ…フラン……貴女にお願いするわね…」

 

「お嬢様!?」

 

 私の判断を、意外と思ったのか、咲夜が声をあげた。

 構わず、私は言葉を続ける。

 

「貴女には、永遠亭へ行ってもらうわ。招待状は咲夜から貰って……行き方は……ちょっと待って…」

 

 私は咲夜に紙と封筒を持ってこさせ、手紙をしたためると、しっかり封をしてフランに渡す。

 

「人里から迷いの竹林へ向かえば、入り口に藤原妹紅という…前にフランも会ったことあるわね…その妹紅にこの手紙を渡してちょうだい。永遠亭に案内してもらえるわ…」

 

 フランは神妙な顔つきでその手紙を受け取ると、コクリと頷いた。

 

「まかせて!これくらい、訳ないわよ」

 

「ではフラン様…こちらが永遠亭の“蓬莱山輝夜”様宛の招待状でございます。どうぞ落としたりせぬようお願い致します」

 

「あの引きこもりが来るかどうかはわかんないけどね…」

 

 まあ、フランも紅霧異変がなければ、今も引きこもっていたかもしれないけど…。

 

「任せたわよ、フラン」

 

 それだけ言うと、フランは嬉しそうな表情を浮かべて、

 

「うんっ!」

 

 と、元気よく返事をして駆け出していった。

 

 

◆抜け目のない悪魔の妹(フランドール・スカーレット)

 

 フッフッフ〜…♪

 まんまと外に出る口実を手に入れたのだ!

 まあ、お姉様に罪悪感……というのもあるけど……それはきちんとお使いをすることで許してもらおう…。

 バルコニーで咲夜の話を立ち聞きして、咄嗟に閃いたけど、案外上手くいくものだね。

 

「フラン様、お忘れ物はございませんか?」

 

 咲夜が心配そうに訊いてくるけど、ぬかりはない。

 

 日傘よ〜し!日焼け止めよ〜し!お財布よ〜し!おやつのクッキーよ〜し!紅茶入りの水筒よ〜し!

 

「あの……フラン様…こちらがまだ……」

 

 とと、いけない…肝心の招待状を置いてくとこだった。 

「よしっ!今度こそ完璧!!」

 

 日傘を差して外に出ると、雲ひとつない良い天気…吸血鬼にとっては最悪の日だけどね。

 日傘と日焼け止めが無かったら、私もあっという間に焦げちゃいそう…。

 

「ではフラン様…くれぐれも…くれぐれもお気をつけて…」

 

 居眠りしていた美鈴の脳天にナイフを突き立てながら、咲夜は念を押すように言ってくる。

 まったく…心配性だなぁ咲夜は。

 

「うん、行ってくる。お姉様のこと、よろしくね」

 

「はい、それは必ず…」

 

 深々と頭を下げる咲夜に背を向けて、私は地を蹴って舞い上がる。

 

「帰りにお土産でも買ってくるからね〜♪」

 

「はい、楽しみにお待ちしております」

 

 咲夜の笑顔に見送られながら、私はさらに空高く上昇する。

 

 

◆ショック療法 〜パチュリー・ノーレッジ〜

 

 

 はあ……と、思わずため息が漏れる。

 

「あは…あは…あははは……」

 

 この大図書館の隅っこで、ただでさえ小柄な身体を丸めるように座り込んでいる妖精は、気味の悪い、小さな乾いた笑い声を上げながら塞ぎこんでいた。

 

「ねぇ…貴女どうしちゃったのよ……貴女がそんなんじゃ、咲夜の傍には誰がつくの?」

 

 咲夜の命を監視させるにも、こんな調子では使い物にならない。

 咲夜も、仕事ができない妖精を補佐につけられることを不審に思うかもしれない。

 私はカウンセラーではないのだけど……致し方がない…。

 

「地霊殿で何があったかは知らないけど、そろそろ立ち直ってくれないかしら?」

 

 すると、カヒが小さな声で何か呻いた。

 

「何…? 何が言いたいの?」

 

 耳を近づけて訊くと、またも消え入りそうな声で、

 

「私……もうお嫁にいけない……」

 

 と、呟いたのが聞こえた。

 これは驚きだ。

 妖精に「お嫁にいく」とか「結婚する」という概念があったとは…。

 いや、今はそういう話ではないわね。

 さて、「お嫁にいけない」なんてワードが出てくる要因はだいたい想像がつく。

 地霊殿から帰ってきてからこんな状態になったことといい、地霊殿には古明地さとりがいることも考えれば…。

 

「恥ずかしい心の内でも読まれちゃったかしら?」

 

“グサッ!”

 

 別に、実際に音がしたわけでも、誰かが刺されたわけでもないけど、そんな音が聞こえた気がした。

 

「あら…図星かしら?」

 

 羞恥心で顔を真っ赤にして、咎めるような視線を送ってくるカヒ。

 どうやら見事的中したらしい。

 

「呆れた……そんなこと、悩むほどじゃないじゃない…」

 

 ため息まじりにそう呟くと、カヒは頬を膨らませ、

 

「パチュリー様には、複雑な乙女心なんてわかりませんよーだ!」

 

 と、なかなか威勢よく言ってくれる。

 まあ、乙女と言うには経験や知識を積みすぎたのは否定できないけど…少しカチンときたので、ここはショック療法といきましょうか…。

 

「……こあ!!」

 

「イエスマム!!」

 

 文字通り飛んできたこあに、カヒを羽交い締めにするよう命じる。

 

「へ?へぇえぇぇっ!?」

 

 

 当のカヒは状況が理解できていないみたいだけど…。

 

「そんなちっぽけな羞恥心…吹き飛ばしてしまうには、この手に限るわね…」

 

 カヒのメイド服のブラウスの胸元、そこを留めるボタンを一つ一つ、ゆっくりと外してゆく。

 

「ひっ!?ひあわわわっ!!?パ、パチュリー様!!?」

 

「ウフフ…白くてきれいな肌ね…怯えなくても大丈夫よ……すぐに快楽の虜にしてあげる…!!」

 

「ひぃっ!?」

 

 私の意図を察したカヒがジタバタと暴れるが、こあはしっかり押さえて放さない。

 

「大丈夫よカヒ♪ そんな羞恥心、忘れてしまえるわ……私の手にかかれば…!」

 

「あわわわわっ!?こ、こあさん!放してぇっ!!」

 

「いいなぁ……私もパチュリー様に……」

 

「頬を赤らめてよだれ垂らさないでください!この変態主従!!」

 

「フフフ……さあ、覚悟なさい!」

 

「い、いやぁぁぁぁぁっ!!!」

 

《ガツッ!!》

 

 カヒの悲鳴と共に鈍い音を聞いた。

 だが、それが何の音かを探るより先に、私の意識が途切れてしまったのだった。

 

 

 

 

 




 いや、もう言い訳はすまい(--;)
 ブラック企業の社畜である以上、なかなか書けないのは辛いところですわ;
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。