年末までには載せたかったのですが、結局年を越してしまうとは…(--;)
こんなペースですが、何とか完結させたいので、気長にお付き合いいただければ幸いです。
◆珍しい客人 〜因幡てゐ〜
これでよし…!
今日の罠の出来はなかなかだね♪
最近は鈴仙も鋭くなってきたから、生半可な罠じゃ見破られるんだよねぇ。
昔は面白いように引っかかったのに…。
ま、あの子も成長してるってことなんだろうけど、このまま引き下がるのは私の沽券というか、アイデンティティーにも関わるので、鈴仙が帰ってきそうな道にたっぷりと罠を仕掛けてやった。
それもだいぶ念入りに、意地悪く。
クックックックッ…!かかった鈴仙が、「こ、孔明の罠か!?」と驚愕する顔が目に浮かぶウサ♪
と、誰か来た!?
鈴仙?いや、行商から戻るにはまだ少し早い…となると……妹紅かな?
目を凝らして竹藪の隙間を見てみれば、妹紅の長い銀髪と赤いリボンが見える。
そしてもう一人、初めて見る顔だけど、人間ではなさそうな女の子……。
まあ、自分で元気良く歩いているし、急患ではなさそう。
急患なら悪いなと思ったけど、ならば問題なし。
私の渾身の罠達。
まずは妹紅達に味わってもらおう!
◆迷いの竹林にて 〜フランドール・スカーレット〜
う〜…。永遠亭まだぁ〜…?
妹紅は永遠亭まで距離があるって言っていたけど、思ったより遠いのねぇ…。
普段は紅魔館に籠ってるか、出かけても飛んでっちゃうから、こんなに歩くことがない私にとってはなかなかにキツい。
一方、慣れてる妹紅は汗ひとつかいてない。
「大丈夫か?」
「大丈夫……へーきへーき…ってわたた!?」
言ってるそばから脚がもつれて転……ばなかった…。
「痛つつ…」
代わりに痛がっているのは妹紅。
妹紅が倒れそうだった私のクッションになって尻餅をついたのだ。
「あ、あの…ごめんなさい…」
「いいよ、それより怪我はない?」
私を抱き止めたまま、少しバツの悪そうな微笑みを浮かべる妹紅。
………なにこのイケメン…。
あわわ…ちょっとキュンってしちゃったじゃない。
あう〜…妹紅ってば自覚なさそうだけど…まさか天然ジゴロってやつ?
お姉様……私…落とされちゃうかも…。
「しかたないな…よっと…」
「うわわわわっ!?」
こともあろうに、今度はもこたんってば私をお姫様抱っこしちゃったよ!?
「な、何?何?何?何ぃっ!?」
「こっちのほうが速いからな。急患をおぶって走ることもあるから慣れてるし、落としもしないから安心しな」
いや、私としては別の意味で落ちそうだよ!?
そんなドキドキしちゃってる私の気持ちも知らずに、もこたんは一路永遠亭に駆け出すのであった…うひ〜…何か気恥ずかしいよぉ…。
◆幸運って… 〜因幡てゐ〜
あるぇ〜?
今、あの二人…罠を仕掛けた辺りを通ったよね?
うん、あの辺りには落とし穴やら頭上から網やら逆さ釣りやら仕掛けてある。
作りが甘かったかなぁ? え〜……っと確かこの辺り……どわぁぁぁぁっ!?
何てこった……自分で逆さ釣りの罠にかかるなんて……屈辱の極み!
しかしまぁ……上から見て呆気にとられたね。
妹紅とあの女の子の足跡、見事に罠を避けてんだもん。
私の罠を経験している妹紅はともかく、何であの女の子まで…二人して途中で転んでるのに、何でその拍子にネットのワイヤーを飛び越えてたり、尻餅をついたとこが落とし穴の10センチ右だったりするの? 幸運を運ぶ兎である私も皆目見当がつかないウサ…。
ともかく、こんなこと鈴仙に知られたら物笑いの種だし、私の気が収まらないので急いで跡を追おう。
そして、意地でもイタズラを成功させてやるわ!
とりあえず、ここから脱出しないと…。
仕掛けを作るにも道具は必要。だから、いつも簡単な工具は持ってるのよねぇ。
え〜…っと、たしかナイフが…。
◆行商の帰り道にて 〜鈴仙・優曇華院・イナバ〜
はぁ〜…疲れた…。
最近は人里だけじゃなく、幻想郷中に販路を広げようと、“師匠”が妙に躍起になっているものだから、当然出向く先が遠かったりする。
まあ、自分の薬の効能を知らしめ、暗に影響力を拡大させたいのだろうけど…って……ん?
道の真ん中に、何か罠が仕掛けられていた形跡がある。
もっとも、もう作動した罠だから危険性はないとは思うけど。
こんなことをするのは、てゐくらいね。
ふむ……形跡からして、逆さ釣りの罠か……。
てゐの罠に、運悪く掛かった犠牲者が、まだ上でぶら下がってたりして…。
そんなことを思って、ふと上を見上げた。
そんな私の目に映ったものは……
「……パンツ?」
正確に言うなら、パンツを穿いた誰かが降ってきた。
真下にいた私を押し潰して。
「ぐむぅぅっ!!?」
「ひっ!?いやぁぁぁぁっ!!?」
頭上の誰かが悲鳴をあげるけど、落ちてきたのはあんたでしょうがぁ!!
それにしても聞き覚えのある声…。
それを思い出す暇はなく、スカートの中に頭を突っ込んだまま体勢を崩した私は、転ぶまいと一歩足を踏み出して踏ん張ろうとしたが、そこで右足に違和感が…。
(ワイヤーが…!?)
その違和感が、ワイヤーを右足に引っかけたのだと気づいたときには遅かった。
《バサーーッ!!》
と、そんな音をたてながらネットが降ってきて、私と“私の顔に座ってる何者か”をがんじがらめにしてしまう。
「もがががっ!?」
もう視界なと無いに等しい。
下半身を顔に押し付けられて呼吸もまともにできないまま、意識が薄れてきた。
(まずい…酸素が……!)
もうこうなると手段は問わない。
無茶苦茶にもがいて何とかネットを…さらには私の顔に座ってる馬鹿者をひっぺがしてやる!
「ちょっ!?鈴仙!!あんま暴れないでぇ!!」
暴れるな?こっちは酸素が足りなくてまともに考えられないんだ!
それにしても、こいつ…私の名前を知ってる?
それにこの声…!
上の人物が何者か、ようやく理解したと同時に、今度は私の左足が落とし穴を踏み抜いた。
◆永遠亭のかぐや姫 〜フランドール・スカーレット〜
やっと着いたぁ〜…。
まあ、最後の方は妹紅に抱き上げられて来たんだけどさ…。
うう〜…恥ずかしかったよぉ〜…。
こんな思いをして来た永遠亭だけど、竹林に隠れ住んでいただけあって派手さはない。
むしろ地味。
敷地は広そうだけど、平屋だしね。
妹紅曰く、こういうのを“わびさび”というんだそうな。
う〜〜ん……わかんないや…。
「たのもぉ〜〜っ!!」
門前で妹紅がそう叫ぶが、反応はない。
「鈴仙!?てゐ!!?誰かいないのかぁ!!?」
妹紅は門を開けて呼び掛けるけど、誰も出てこない。
「あれぇ〜…?鈴仙やてゐはともかく…永琳とあのニートなら居そうなんだが…」
「ニート…?」
そう私がおうむ返しで訊いた時、
「誰がニートよ!誰が!!」
突然、背後から怒鳴られた。
驚きのあまり固まった私とは違って、妹紅は意地悪そうな笑みを浮かべる。
「じゃあ引きこもりと言った方が良いか?今日は珍しく外に出てるみたいだがな」
そんな妹紅の挑発に、大声を出した女の子は澄ました顔で、
「私には“輝夜”という美しい名があります。私を呼ぶときは“輝夜姫様”もしくは“姫様”と呼びなさい」
「うっさいわ!“ぐや”のくせに!!」
「まあっ!?ウチの兎たちが“ぐや様”なんて呼び始めたのはやっぱり貴女の仕業だったのね!!?」
「フンッ!最初にもこたんなんて言い出したのはお前だろうが!!」
「かわいいじゃないの。も・こ・た〜ん♪」
「てめぇ…燃やすぞ!?」
「燃えるより、萌えたいわぁ〜♪あ〜妹紅が男の子だったらからかい甲斐もあったのにねぇ〜」
私をよそに口論してる二人…。
う〜ん……そろそろ止めた方が良いのかなぁ…?
あれ?そういえば、“輝夜”って確か招待状の宛名が…。
そのとき、永遠亭の奥から声が聞こえてきた。
「姫様…?お帰りになられたのですか?」
そう言いながら永遠亭の暖簾をかき分け、ひょっこり顔を出したのは、赤と青のキャップを被った銀髪のお姉さん。
「あら、騒がしいと思ったら、妹紅も来ていたのね……それと……」
お姉さんが私を見て、妹紅に説明を求めるように視線を送る。
輝夜との口論も中断していた妹紅は、やれやれといった感じで簡単に説明してくれた。
「初めまして、紅魔館の主、レミリア・スカーレットの妹、フランドール・スカーレットよ」
「あら、レミリア嬢の?私は“八意永琳”ここで薬師をしているわ…。ところで、お姉さんの具合はいかがかしら?」
「身体は大丈夫みたい。後は消耗した魔力が回復すれば……と、今日はそのお姉様主宰で、パーティーしようってことになったから、その招待状を届けに来たの」
ポシェットから招待状を取り出すと、それを宛名の主である輝夜に差し出す。
「え?私…?」
「だって貴女宛だもの」
輝夜はだいぶめんどくさそうな表情だ。
「姫様、招待を受けるも受けないも、その態度はいかがかと思います」
永琳の諫言に、輝夜はさらにげんなりとした表情で招待状を受け取った。
「パーティー……つまりは宴よねぇ……面倒だわ…まだ新刊も仕上げてないのに……」
「「……新刊?」」
聞きなれない言葉に、妹紅と口を揃えて訊いたのは不味かった。
「フフッ!聞きたい?聞きたい!?そうよね聞きたいわよねぇ!!?」
な、何だろう?この食い付き方は…。
「お前のことだから、嫌な予感しかしないぞ?」
妹紅がバッサリと言い切るけど、輝夜は聞こえていないみたい。
「いや〜、実は私、作家デビューしちゃってねぇ〜。人里の女性読者を中心にウケちゃって、今日もサイン会に出たばかりなのよぉ〜あっ、これ今日出したばかりの新刊ね!」
あ〜…妙にテンション高めでべらべらと……美鈴が言ってたけど、こういう人をオタクって言うのよね…?
何か本をくれたけど…字ばかりの本じゃなくて、マンガよね…?
意外と絵がきれい……切れ長の目をした線の細い、長い銀髪に赤いズボンを穿いた男の人が……なんで必要以上にシャツをはだけているのかな?
何か、別の男の人と指を絡めてるし…いったい何をして……。
と、ここで妹紅が本を取り上げた。
「バ、バカ野郎!何てもんをいたいけな女の子に!?」
「あら?レミリアの妹でしょ?まさか見た目通りの歳じゃあるまいし…」
まあ、そりゃ495歳だけど?
「あーーっ!何でも良い!!フラン!!この本はお前にはまだ早い!!」
妹紅ってば、顔を真っ赤にしてすごい剣幕だ。
私もこれには圧倒させられた。
「あ、ちなみにその本の主人公、モデルは妹紅だから」
「てんめぇ〜〜〜〜っ!!」
ああ、よく見れば銀髪やら服装の配色やら、妹紅っぽいわ…妹紅が男の人だったらこんな感じ?
「てめぇ…わ、私を男にしたあげく…何てことを…」
「今回の相手はオリジナルのイケメンにしたけど、リクエストはあるかしら?いつも炭を買ってくれるミスティア?それとも仲良しの慧音でも良いかしらね?」
輝夜はますます絶好調だ。
「おい、永琳!お前が保護者みたいなもんだろ!!何とかしろよ!!!」
妹紅の怒りの矛先は永琳に向いた。
永琳はため息をひとつ吐くと、輝夜を諫める。
「姫様…あんまりカップリングを増やすと収拾がつかなくなりますよ?」
「ちげぇよぉぉっ!言うべきところはそこじゃねぇだろぉぉっ!!」
妹紅はツッこむけど、永遠亭の二人はどこ吹く風といった感じ。
完全にからかわれてるよ…妹紅……。
◆私の矜持… 〜因幡てゐ〜
「うう……お嫁に行けないウサ…」
「はなっから嫁に行く気なんてないでしょうに」
鈴仙ってば冷たいわ〜。
「ついさっきまで、人のお股に顔突っ込んでたくせに〜」
「あ、あれはアンタが落ちてきたのが悪いんでしょ!?」
「でも、ちょっとはラッキーだと思ったんじゃない?この変態さんめ!」
「誰が変態か!」
《ゴッ!》
「ったぁ〜〜っ!?何もぶつことはないでしょ!!」
「鉄拳制裁です!」
あいたた〜…鈴仙のげんこつは何度か食らってるけど、食らう度に強力になってる気がする。
二人絡み合ったまま落ちた落とし穴から這い出して、私らは言い合いをしながら永遠亭まで戻ってきた。
「はぁ〜…もうシャワー浴びたい……全身土埃まみれだよぉ…」
「ほほぉ〜…シャワーですか…」
「……ちょっとてゐ……覗かないでよ?」
「いやいや、覗きはしないよ…撮影はするけどね…」
「もっとダメよ!」
そんな感じで話ながら、永遠亭の廊下を進んでいると、何やら奥から楽しげな声。
「あら?お客さんかしら?」
鈴仙と声のする部屋の前まで行き、鈴仙が声をかける。
「師匠、只今戻りました」
「あら、ウドンゲ?ちょうど良かったわ。来客中だから、お茶をお願いね?」
「客の茶は一人分で良いわよ〜?もこたんには勿体無いわ」
「お前な〜…」
この声は姫様…それと妹紅もいるのか……ってことは客は……。
「わかりました…ですが……せめて先に着替えさせていただいてよろしいでしょうか?土埃まみれなので…」
「何かあったの?」
おっと、永琳に捕まってお説教は食らいたくないからね…ここはトンズラしますか…。
「はい、てゐが仕掛けた罠に……って、てゐーーっ!!」
「わはははっ!さらばだ鈴仙くん!!」
と、お説教回避したは良いけど、このままではなんかすっきりしないのよね〜…。
やっぱりイタズラを成功させないと…イタズラっ子にはイタズラっ子の矜持があるのよね〜。
とはいえ、どうしようかしら…。
ん?何か箱が玄関に届いてる?
何かな何かな?
お菓子や果物なら少しばかり失敬するとこだけど…。
「……何だ…?小瓶に入った水がたくさん…」
薬品かなと思ったけど、一緒に入っていた添え書きには水としか書いていない。
ためしに少しだけ舐めてみる。
………ん〜…やっぱりただの水だ…それも結構上質な…。
たぶん、永琳の実験材料かな?
と、そうだ…せっかくこれだけ水があるんだし、ずぶ濡れウォータートラップっていうのもいいかもねぇ…さっそく試してみるかぁ♪
◆永遠亭の頭痛の種 〜八意永琳〜
「はい、粗茶ですが…」
ウドンゲがそう言いながらフランに出した茶は、粗茶と言いながらも最高品質の玉露だ。 容姿は幼いながらも、長命な…それも紅魔館の育ちのいいお嬢様だ。
子供と侮って安い茶を出してこちらの意図を見透かされるのは避けたいので、それなりの待遇はさせていただく。
「ウドンゲ、てゐはまだ見つからないの?」
「はい…」
てゐは兎の中ではかなり長命で、永遠亭では古参なのだが…イタズラ癖が酷すぎる。
イタズラすることを日課としており、狙った獲物を罠に陥れて成功させることに血道をあげているのだ。
別にそこまで強い悪意があるわけではない。
永く退屈な時間を過ごすにあたって、生き甲斐のような何かを持たなければ気が狂いそうになるのだ。
それは私にもよくわかるが、客人にまで手を出されて揉めるのは嫌なので、てゐは目の届くところに置いておきたい。 今のような姿が見えない状況は不安しかない。 一定の評価はしているが、同時にトラブルメーカーのあの兎は、私にとっては姫様に次ぐ頭痛の種なのだ。
「ただいま〜♪」
噂をすればなんとやら…てゐが悪びれもせずに帰ってきた。
「て〜〜ゐ〜〜あんたね〜」
鈴仙が恨めしそうな声で呟くが、客前なのでそれ以上は手が出せない。
もちろん、それは織り込み済みだからこそ、てゐも戻ってきたのだ。
「てゐ、お客様がいらっしゃっているのだから、おとなしくね…」
鈴仙は頬を膨らませながらそう言うに留めた。
本当は一話で終わらせたかったのですが、予想以上に長くなったので一度切ります(--;)
なんというノープラン(´Д`)