東方涙精潭   作:サラム

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 年の瀬も押し迫り、年末の慌ただしさの中、何とか書けました。
 少しばかり展開が乱暴すぎたかしら…(・・;)
 


第34話 ~止まる手~

◆止まる手 ~藤原妹紅~

 

 

 

 輝夜に追い出され、行くあてもない私は、とりあえずフランについて行く。

 まあ、フランのお守りがレミリアからの依頼だったしな…。

 

「ねぇ、妹紅も見たことあるの?輝夜のコレクション…」

 

「ん?ああ、まあな…」

 

 といっても、きちんと通されて見せてもらったわけじゃなく、勝手に見て回っただけだが。

 勝手に入るなとキレられたし。

 

「色々あるよ。例えば…」

 

「ストーップ!!まだ見てないのにネタバレ禁止!!」

 

「おっと、こいつは悪かったな…と、ここだここだ」

 

 雅な襖に手をかける。と、そこへ…

 

「ちょ…ちょっと…待ったぁぁっ!!」

 

 な、なんだ?

 振り返れば、ゼェゼェと肩で息をしているてゐが…。

 

「お、おい…大丈夫か?てゐ…」

 

「ま、間に…あった……はぁ…はぁ…」

 

 いつもニヤニヤと、イタズラを仕掛けてはかかった者を眺めているてゐがここまで慌てる理由など、イタズラがバレて追われるときか、永琳の実験台にされそうなときくらいだが…。

 

「と、とにかく…そこの襖は開けないで…離れて…」

 

 呼吸も整わぬまま、てゐは襖とフランの間に割って入る。

 フランは少し頬を膨らませたが、それ以上文句を言うこともなく、てゐに場をあける。

 

「おいおい、何かあったのか?」

 

 そう訊いたとき、てゐの肩が僅かにピクッと動いたのを見逃さなかった。

 それと同時に、大体予想はついた。

 

「い、いや~…“前に”仕掛けた罠を外し忘れたもんでね~…」

 

 嘘だと思った。

 いや、正確には罠を仕掛けたのは確かだが、それはついさっき…それもフランを狙ってのものだろう。

 ところが、フランの正体をどこからか聞いて慌てて外しに来た…そんなところか…。

 

「そんなわけでちょいとゴメンよ。すぐ外すから」

 

 と、てゐが作業を始めようとしたとき…。

 

「姫様、まだ痺れが取れてないでしょうに…」

 

「うっさい!あんなマッサージ受けてたら、精神崩壊するわ!!痺れなんてその内取れるわよ!!」

 

 と、威勢のいい声とは裏腹に、ヨロヨロと壁に手を付きながら輝夜が追いついてきた。

 

「なんだよ?まだ痺れてんのか?見かけは変わんなくても、中身が年取ってるんじゃねぇか?」

 

「あんたと違って繊細なの!私は!!」

 

 そう言って強がる輝夜に、少しばかりイタズラ心がくすぐられた。

 

「ちょっと妹紅…なに考えてるのよ…」

 

 おっと、流石は長年の宿敵だ。もうすでに感づいたか…。

 

「いやなに、また輝夜の面白い姿を見たいな~ってな…」

 

「ば、バカじゃないの!?あんたなんかにこれ以上、あんな醜態晒すもんですか!!」

 

 強がってるが、足はプルプルと震えてて力が入っていない。

 じりじりとにじりよる私と距離を取りたいようだったが、思ったように足が動かせないらしく、フラフラと体を揺らすだけだ。

 

「フッフッフ…恨むなら、引きこもってた結果、血の巡りが悪くなった自分自身を恨むんだな!!」

 

 私は輝夜の足に手を伸ばすが、それより先に輝夜が飛び退いた。だが…。

 

「はうっ!!?」

 

 あ~あ…、そんな足で着地するから、盛大に痺れたっぽい。

 輝夜の身体が崩れ落ちる…が、そんな輝夜がてゐの肩を掴んだ。

 

「のあっ!?」

 

 釣られててゐも倒れそうに…が、てゐもまた、隣にいたフランの腕を引っ張って…。

 

「うわわっ!きゃああぁぁっ!!?」

 

《バタンッ!!ザバァァァッ!!》

 

 三人揃って襖を突き破って倒れこんだ。

 そこへてゐが仕掛けていた罠が……あ~あ、派手に水浸しにして…。

 

「お~い、三人とも大丈夫か~?」

 

 三人揃ってずぶ濡れだろうと、手を伸ばした…が、私はその手を止めた。

 止めざるを得なかった…。

 フランの身体が煙をあげ、背中が焼け爛れていた。

 あまりの光景に、私の思考は停止していた。その時間は永劫のように長く感じたが僅か数瞬のことだったと思う。

 現実に引き戻されたのは、耳をつんざく悲鳴によってだ。

 

 

 

◆アつイあツイイタいいタい… ~フランドール・スカーレット~

 

 

 熱いよ…熱いよ…痛いよ…痛いよ…。

 上から、何か降りかかった。

 それが水だとわかった瞬間、背中に痛みが走った。

 ただの痛みじゃない。

 焼けつく痛み、吸血鬼を滅ぼす痛みだというのが、本能的にわかった。

 それがわかった瞬間、私は叫んだ。

 自分じゃもうわからなかったけど、凄まじい悲鳴だったんだろう。

 背中の皮膚が蒸発してゆき、背骨がむき出しになっているのがわかる。

 その恐怖が、痛みが、熱さが、私を狂気に引きずり込む。

 

 あついあついアついあつイアツいアツイあつイアツいあついアついあツいアツいあついアついアツいイたいイタイいたいイタいいたいいたイイタイいたイイタいいタいイたイイタいイたいイたイ…!!!

 

「フランっ!!」

 

 私の名前を呼ぶ声。

 誰かが隣に…。

 ああ…妹紅か…。

 血相を変えた妹紅が私の顔を覗きこんだところで、私の意識は途絶えた。

 

 

◆狂気の妹君 ~蓬莱山輝夜~

 

 

 まったく、何でこんなところで水浸しに…!?

 ちょっと、てゐ!貴女でしょ!!

 そう声をあげたかった。でもそれより先に、悲痛な、凄まじい悲鳴があがった。

 思わず縮みあがってそちらを見れば、煙の中で誰かがのたうち回っていた。

 煙はどこから…いや、のたうち回っている誰かの身体が煙を上げているんだ。

 その煙の中に、金色の髪が見える。

 それで、苦しんでいるのが誰なのか悟った。

 

「フランっ!!」

 

 妹紅がその名を呼んだ。

 そう、あれは今日の永遠亭のゲスト。

 あの愛らしいフランドール・スカーレット……だった子だ。

 今はもう、その面影はない。

 焼け爛れた姿で苦しんでいた。

 

「て…てゐ……あんた…何を……何をしたの!!?」

 

 私は震えた声で、てゐにそう問いただすのが精一杯だった。

 

「た、ただの水だと…まさか聖水だなんて思わなくって…」

 

 てゐは涙ぐみながら、そう言った。

 長い間てゐと暮らしてきたが、ここまで泣く彼女は見たことない。

 本当に想定外なことだったのだろう。

 

「と、とにかく早く永琳を…」

 

 情けないけど、永琳に頼るしかない私がそう言いかけた時…。

 ゆらぁ…っとフランの身体が浮き上がった。

 

「お、おい…」

 

 妹紅が思わず声をあげるほど、フランの身体は自身の身体を浮き上がらせる事ができる状態ではなかった。

 それでも、フランは浮いていた。

 あの可愛らしかった姿は、ほぼ半身を聖水に焼かれて惨たらしいという形容しかできない。

 そんな彼女の唇が僅かに動いた。

 

 ………聞き取れない…。

 

 何ごとか、同じことを繰り返しているようだ。うわ言だろうか?

 

「妹紅……聞き取れる?」

 

 すぐそこにいた妹紅に訊くと、普段は反抗的な彼女もこのときばかりは素直だ。

 すぐにフランの口元で耳を澄ました。

 

「……ろす…」

 

 妹紅が聞き取ったらしい言葉を口にする。

 

「え……?」

 

 思わず聞き返した。

 

「コ……ろす………ころ……す……こ……す……コロ……す…………ころす…!」

 

 もう妹紅の口を介さずとも、フランの声が聞こえた。

 先程までの愛らしい声じゃない。

 魔術を帯びた禍々しい声だ。

 そして、次の瞬間、彼女の身体から膨大な魔力が爆発のように炸裂した。

 

 そう、まさに炸裂だった。

 

 永遠亭の一角が吹き飛び、私たちは木の葉のごとく空を舞った。

 

「姫様!」

 

 鈴仙が私の身体を抱き止め、地面との激突を防いでくれた。

 

「ありがとう鈴仙…」

 

「いえ、それよりも…」

 

 鈴仙が苦々しく視線を向ける先…。

 そこには、先程までの痛々しい姿ではなく、完全に再生しきったフランの姿があった。

 だが、その眼に光はなく、口元には…まるでナイフで切れ込みでも入れたかのような笑みを浮かべていた。

 そして、その片手は、こともあろうにてゐの首を締め上げていた。

 

「てゐ!!」

 

 私の叫びに、フランが反応した。

 くるりと、緩慢な仕草でこちらを見ると、空いている片手をてゐに向け、僅かに動かした。

 

「うぎ……ぎぎぎ…っ!!!?」

 

 てゐの身体が不自然に締め上げられ、てゐが苦悶の声をあげる。

 聞いたことがある。フランドールは“あらゆるものを破壊する程度”の能力持ちであることを。

 

「やめてぇぇぇぇぇっ!!」

 

 フランは、あの罠を誰が仕掛け、誰を狙ったものなのか、本能的に悟ったのだろう。

 故に、フランはてゐを“破壊する”つもりなのだ。

 

「殺す殺す殺す殺すころす殺す殺すコロす殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺ス殺す殺す殺す殺すコロス殺す殺すコロす殺す殺す殺す殺す殺すころす殺す殺す……」

 

 フランは完全に壊れていた。

 

 “スカーレットの妹君は気が触れている”

 

 その噂は決して噂ではなく、現実の脅威として目の前に顕現したのだ。

 

 

 




 フランちゃんが本気で狂ったところが書きたかったかなぁ…まだまだ足りない気がする(´・ω・`)
 とはいえ、年内の投稿はこれが最後かな…来年こそはもっと良い文章が書きたいですなぁ…( TДT)
 では、皆様良いお年を~(* ̄∇ ̄)ノ
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