東方涙精潭   作:サラム

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 だいぶ間が空いてしまい、申し訳ないです(-_-;)
 なんか、毎回この書き出しだわぁ(´・ω・`)
 社会人ゆえにあまり時間が取れないのですが、少しずつ書いてはいますので、お暇なときにチラッと見る程度でお願いしますm(__)m


第35話 ~胸騒ぎ~

◆ 胸騒ぎ ~レミリア・スカーレット~

 

 

 香しい紅茶の香りを楽しんでいたティータイム。

 私のお気に入りである静かな時間も、一人の妖精メイドが飛び込んできて終焉を迎えた。

 

「メ゛イ゛ドぢょぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 いまにも泣き出さんばかりの顔で飛び込んできたのは、泣き妖精のカヒ…って、あんたが泣くと洒落にならないのだけど…まあ、泣いてないからセーフかしら…?

 そんな私の心中など知らぬカヒは、隣に控えていた咲夜にひしとしがみついた。

 

「あら?どうしたのカヒ…お嬢様の御前ですよ?」

 

 子供をあやすような咲夜の問いかけにも、カヒは離れようとしない。

 よほど怖い目にでも遭ったのだろうか?

 そういえば、塞ぎ込んでいたカヒの面倒を、パチェに頼んでいたけど……はて?

 

「やっと追いつきましたよこのメイド妖精!」

 

 ん?今度は小悪魔が、眼を血走らせてきたけど…何なのよいったい…。

 

「騒がしいわよこあ。お嬢様の前では控えてちょうだい」

 

 咲夜が諌めると、こあは頬を膨らませて明らかに不満そうだ。

 

「だって咲夜さん、その子ったらパチュリー様の顎を思い切り蹴りあげたんですよ!?」

 

 あらら、それはまた…。

 

「パチェはどうしたの?」

 

「図書館でノビたままです」

 

「いったい、何でそんなことになったのよ…」

 

「そりゃ……」

 

 そこまで言って、こあの眼が泳ぎ始めた。

 まあ、何となく察しはついたけど……。

 

「こあ~~……何がどうしたのかしら~~……?」

 

「あは…あははは…」

 

 冷や汗タラタラなこあ。

 こりゃ答えられそうにないわ。

 

「どうしたのカヒ…?パチュリー様と何かあったの?」

 

 今にも泣きそうなカヒライス。

 頼むから……お願いだから泣かないでちょうだい…。今しばらくは休んでいたいのだから…。

 

「うう…メイド長…」

 

「ん?」

 

 慈愛に満ちた笑顔で促す咲夜。

 

「私…無理矢理…パチュリー様にえっちぃことをされそうに…」

 

《ピシッ》

 

 何の音かって?私と咲夜が固まった音よ。

 そりゃ必死で逃げるわ…。

 

「こあ~……事情聴取……OK?」

 

 笑顔の咲夜は、正直私でもビビる殺気を放っている。

 そんな咲夜に、こあが抗せるはずもなく…。

 

「お…お……OK……」

 

 力なく、諦めたこあ。

 あとで聞いた話だが、こあはがっつり小一時間、パチェもこってり咲夜にお説教されたそうな…。

 咲夜に連行されるこあを見送り、ふと見上げれば、柱時計の時間はもうすぐ夕方だ。

 

「それにしても遅いわね…フランは…」

 

 まあ、吸血鬼にとっては夜がゴールデンタイムだ。遅くなって暗くなるのは良いが、何かまた面倒ごとに巻き込まれていると厄介だ。

 先日のヴァンパイアハンターの件もあるし…。

 何となく胸騒ぎがする…。

 ただ過保護なだけかもしれないけど…。

 

「ふむ…」

 

 傍らには、まだ泣きそうな顔をしているカヒライス。

 

「カヒ…」

 

「は、はい!?」

 

「もう加減は良いのでしょう?」

 

「え…ま、まあ…」

 

 何とも煮え切らない返事だが、ここで甘やかすとロクなことにならない。

 

「もう充分休んだのだから……しっかり働いてもらうわよ…?」

 

 拒否権などないわよと、言外に言っているのはさすがにわかるだろう。

 彼女に命じるのはただ一つ。

 

 永遠亭へ、フランの迎えだ。

 

 

◆ 規格外の吸血鬼 ~八意永琳~

 

 ゲストだったフランドール嬢が、誤りとはいえ、あのようなことになったのは私たちに非がある。

 故に手荒なことはしたくない。

 しかし、それでは彼女に文字通り命を握られているてゐの命はない。

 フランドール嬢が豹変してから、永遠亭の庭園、家屋の4分の1が瞬く間に吹き飛ばされた。

 幸い、今現在で永遠亭内で治療を受けている一般人もなく、私たちも含めて人的被害はない。

 美しいとしか表現しようがない、鮮やかなクリスタルを連ねた異形の翼を羽ばたかせ、永遠亭の瓦礫の上に浮かぶフランによって、てゐの命が奪われなければだが…。

 

「この…てゐを放しなさい!!」

 

 ウドンゲが弾幕を放つと、フランはてゐに能力を行使しようとしていた手で、ウドンゲの弾幕をいとも容易く薙ぎ払った。

 

「そんな…」

 

 思わずウドンゲが呟くほど、なるほど規格外の吸血鬼だ。

 私が取り寄せたあの聖水は、外の世界で悪魔払いの儀式などに用いられる強力なもののはずだ。

 それを一瓶ならいざ知らず、たぶんてゐは全部使ってしまったのだろう。

 相当量を浴びて、すぐさま回復してしまうあたりは、異常な再生能力と言わざるを得ない。

 それでも、文字通り死ぬほど痛かったのだろう。

 普通の人間に例えれば、強酸性の薬品を浴びせられたようなものだ。致し方ない。

 その痛みと、攻撃されたという認識による精神的ショックは、彼女の正気を失わせるには充分だったのだろう。

 となれば、フランを攻撃して止めるのは下策だ。

 

「ウドンゲ、迂闊な攻撃をやめなさい!火に油を注ぐだけよ!!」

 

「くっ……しかし師匠!このままではてゐが!!」

 

 わかっている。

 吸血鬼の握力がどの程度かはデータはないが常人を遥かに凌駕しているのは明らかで、今はぐったりとしているが首を掴まれた直後、てゐは全身の力を使って振りほどこうとしていたが、フランはビクともしなかった。

 おそらく、今のてゐは血流圧迫と呼吸困難、そして僅かばかりでもフランの破壊の能力を受けたことによって気絶状態にあると推測する………あくまで楽観的に見てだが…。

 しかし、フランがあと少し……彼女にしたらほんの僅かに力を加えただけで…てゐの首の骨は粉砕される。

 下手をすれば首自体が破断…いや、フランの能力を考えれば…。

 ああ…考えがネガティブになるわね。

 それほど、フランの力を、吸血鬼の威圧感に圧倒されていた。

 認めざるをえないわ。吸血鬼を嘗めていた…安易に研究対象にすべきではなかったわ。

 

「ウドンゲ!フランの気を引き付けて!!彼女の能力に注意しなさい!!」

 

 何はともあれ、まずはてゐの救助だ。

 迂闊に近づけない以上、ウドンゲにフランの気を引き付けさせて、てゐを掴む手を狙撃するしかない。

 ウドンゲが弾幕で牽制攻撃を開始すると同時に、私は弓を引き絞った。

 

 

◆ チカラヲ… ~フランドール・スカーレット~

 

 

 痛いよ……痛いよお姉様…。

 目の前は血のような赤、赤、紅、アカ、赤、赤、紅、あか、赤、赤赤赤赤紅赤赤アカ赤紅赤赤赤紅赤赤あか赤紅赤赤…。

 その中で、黒い何かを見つけた。

 

『ソイツガ、オマエヲ、キズツケタ…』

 

「え…?」

 

 誰かの声が聞こえた気がした。

 とっても耳障りで、けど有無を言わせない…それでいて甘く囁いてくるような…そんな声…。

 

『ヤレ……』

 

「……?」

 

『ソレガオマエノテキダ……ヤレ…イノチヲ……トレ…!』

 

 最初は何のことかわからなかった。

 だけど、その声は繰り返し叫ぶ。

 目の前の黒い何かを…殺せって…。

 でも、私は…お姉様と約束してるから…。

 

「だめ……お姉様と約束してるから……私は能力を使わない…」

 

『オマエガコロサレルゾ…? ハンターニ…オソワレタコト…ワスレタカ?』

 

 忘れようがない…私が能力を使えなかったから…戦い方を知らなかったから…お姉様があんなことに…。

 

『イマナラ…ツカエルゾ…チカラヲ…!』

 

 そう…今はあの、能力を制限する魔法はない…力は使える…。

 でも……。

 

「お姉様と……約束…してるから…この力は…皆を守る時だけって……」

 

 何とも抗いがたい声を相手に、私は抗った。

 この能力を無闇に使うことは、身の破滅を呼ぶだけと、お姉様に教えられてきたから…。

 声が甘く囁いてきても私は頑なに拒んだ。

 だけど……。

 

『モウイイ……ワタシガ……ヤル!!」

 

 声がそう叫ぶと、私の身体は急に縛り付けられたのように硬直し、自由を奪われた…。

 だけど感覚は伝わってきて、私の意思と関係なく動く私の左手が、目の前の黒い何かを掴んだ。

 じたばたと暴れる感覚が伝わってくる。

 そんな何かに、“ワタシ”は右手を差し出し…弄ぶように、徐々に破壊の力を強め…そこで横合いから何かが飛んでくる気配を感じた。

 咄嗟に、破壊の力を使うのをやめて飛んできた何かを薙ぎ払う。

 多少の衝撃と熱を感じたけど、それだけだ。

 だけど、いったいどこから……いた…。

 もう暴れなくなった掴んでいるのとは別の…黒いのが、こっちに何かを飛ばしてきたんだ。

 そいつはしばらくピョンピョンと飛び跳ねていたけど、また何か、今度はたくさん飛ばしてきた。

 “ワタシ”は飛んできたものを、まるで虫を振り払うように叩き落とす。

 

 攻撃されている!

 

 “ワタシ”もそう判断したのか、黒いものに向き直ると、たっぷりと殺意のこもった弾幕を容赦なく放った。

 黒いのは器用に飛び跳ね、弾幕をかわす。

 

『サカシイヤツダ…マアイイ…コノチカラデ…」

 

 “ワタシ”が能力を使おうと、空いている右手を黒いのに向け…そこで衝撃と痛みが走った。

 

『…ウ…ヌ…!?』

 

 見ると、左手には矢が刺さっていた。

 吸血鬼にとっては大したことはない。お姉様が受けたような、陽の気を封じ込めたような矢でない限りはね。

 でも、捕まえていた黒いのを取り落とさせるには十分な衝撃だった。

 そこをすかさず、“ワタシ”を引き付けていた方の黒いのがキャッチ。

 今や私の目でも境目がわからないほど渾然一体となった黒い塊は、脱兎のように逃げていった。

 

『フン……マアイイ…』

 

 私には、結局今の黒いのが何だったのか知るよしもなかったけど、“ワタシ”のほうも大したことではなかったようだ。

 左手に刺さった矢を引き抜くと、矢が飛んできたほうへと投げつける。

 

《ギィンッ!》

 

 鈍い音ともに、投げた矢が弾かれた。

 投げつけられた矢を、持っていた弓で弾いたのは、やはり黒い何か…さっきのとは違う奴みたいだけど…何となく雰囲気が落ち着いている。

 明らかに強い…そう感じられる奴だった。

 

 

◆ 憑き物 ~蓬莱山 輝夜~

 

 

「……良くないのが憑いてるわね…」

 

 そんな私の独り言を、隣にいた妹紅は耳聡く聞きつけた。

 

「どういう意味だ…」

 

 怪訝な顔をする妹紅だけど、妹紅もいわゆる、やんごとなき出自のはず…。

 彼女の家が全盛期を迎えているあたりは陰陽道とかも盛んで、大きな家なら多少なりとそういう呪いの類いを気にしたはずだけど…。

 

「まあ、貴女はそういうものを学ぶタマじゃないわよねぇ…」

 

 ププッと彼女の無学を笑ってあげたら、一瞬だけ妹紅の口元が引きつる。

 

「いいから…早く……言え!!」

 

 もこたんってば眼がマジなんだから…。

 

「今のフランが正気でないのはわかるわよね?」

 

「ああ、あんな見ていても痛々しい目に遭わされちゃ…」

 

 まあ、普通に考えれば痛みのあまりとか、攻撃を受けたって思い込んじゃったパターンなんだけど…。

 

「それだけじゃ無さそうなのよねぇ…」

 

「それだけじゃない?」

 

 相変わらず鈍感な妹紅に、更に説明を重ねる。

 

「何か悪いものが取り憑いてるのよ。いえ、元々憑いていたと言うべきかしら?」

 

 悪霊やら呪いやら、私や妹紅がいたところじゃ政治にすら影響を及ぼす。

 当時の妹紅は見た目相応の年齢だったからか、そうした事には疎かったのだろうか?

 

「元々憑いていた奴は、フランが正気を強く持っている間…フラン自身が周囲と信頼関係を持ち、幸福を実感できている間は抑えられていたけど…」

 

「…傷つけられ、痛みの中で混乱して、誰を信じればいいかわからなくなったところを、取り憑いていた奴に漬け込まれた…と…?」

 

「ご名答…その察しの良さを、もう少し普段でも活かせればねぇ…」

 

 妹紅は何のことだ?と首を傾げるけど、やっぱり鈍感ねぇ…。

 

「で、あの子を戻す方法だけど…」

 

 その方法を妹紅に説明すると、妹紅は顔を真っ赤にしながら疑いの視線を私に向ける。

 

「おい…本当にその方法で大丈夫なんだろうな…?」

 

 冗談じゃただじゃおかねぇと言わんばかりの妹紅の表情を楽しみながら、私は太鼓判を押す。

 

「大丈夫よ。私の見立てに狂いはないわ!」

 

 シャキーン!と効果音をつけていいくらいにサムズアップして見せたけど、妹紅はますます疑いの色を濃くするも……ため息を一つ吐いて歩き出した。

 

 

 

 




 フラン嬢を暴れさせるにあたり、少し趣向を変えてみた設定ですが、吉と出るか凶と出るか…(-_-;)
 では、また次回をお待ちくださいませ(´・ω・`)
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