年末ともなるとなかなか書く時間を確保するのも難しい(--;)
まあ、気長にお待ちいただけば助かります(^^;
◇門番は静かに眠りたい 〜紅美鈴〜
昼食を食べて、お腹いっぱい…しかも暖かな日の光を浴びながらする、最高に気持ちいいこととは……そう、昼寝です。
ああ……ほぉら……だんだん眠たく……。
「永久に眠ることになりたくなかったら、早く起きなさい?」
はい!よろこんで〜!!
このタイミングでそんな素敵なことを仰る方は幻想郷にただ一人。
「まったく…門番が寝てたら何にもならないでしょと、何度も言ってるでしょ?」
はい、我らがメイド長、十六夜咲夜さんの有難い御言葉を拝聴いたしまして恐悦至極に存じ上げ奉ります〜!
咲夜さんには頭が上がらない。恐らく紅魔館に、咲夜さんに敵う者などいないだろう。
お嬢様やフラン様ですら、叱られて「オヤツのプリンは無しにしますよ?」と咲夜さんに言われたときの狼狽ぶりときたら…。
「まあ、いいわ…それより美鈴、今日は例のお爺さんが来る日だけど…」
ここ紅魔館での食生活は、たまに私が中華を作るくらいで、基本は洋食が主である。
そこで必要となるのがクレソン、ローリエ、ズッキーニやエシャロットといった西洋野菜であるが、幻想郷は基本的に和食が主で、西洋野菜は手に入らない。
そこで、紅魔館に残っていた西洋野菜の種を、里の農家の方に渡して栽培してもらっている。 その野菜をいつも届けてもらっているわけだが…。
「今日は私は忙しくて、野菜の受け取りには立ち会えないわ。代わりにこの子をおいて行くから」
と、一歩前に進み出た妖精メイドを見る。
「なるほど、咲夜さんに補佐役のメイドがついたとは聞きましたが……!?」
この瞬間、“気を操る程度の能力”を持つ私は、目の前の妖精に流れる気に、違和感を覚えた。
外見は長い銀髪の、少し色白の肌をしたメイドが澄まし顔で立っているだけなのだが、流れる気が…その表情と裏腹に哀しいのだ。
そう思いながら見つめた瞳は、お嬢様方と同じ赤い瞳。
しかし、お嬢様方は強力な力を秘めた輝かしい紅なのに対し、このメイドの瞳は限りなく深い、まるでそのまま闇に落ちるかのような赤だった。
「それじゃ、カヒ…。後は頼んだわよ?」
「わかりました、メイド長」
カヒと呼ばれたメイドは元気良く返事をする。
その声に哀しみは微塵もない。
しかし、気は今にも泣き出さんばかりの哀しみを孕んでいる。
その違和感がどうにも気にかかった。
◇カヒと呼ばれる妖精 〜カヒライス〜
ウヘヘヘ…また、だらしない笑いで始まって申し訳ない。
だけど、これが笑わずにいられようか。
メイド長が私のことを“カヒ”と愛称で呼んでくれましたよ。
“カヒライス”が呼びにくいからというのもあるかもしれないけど、やっぱり親しい同僚達くらいしか呼ばない名前を、直属の尊敬すべき上司に呼ばれるのは、信頼されているようで気分がいい。
そんな私とメイド長を、紅魔館の居眠り門番、紅美鈴さんが見つめてる。
特に何か私の方を…。
な、なんだろう?
もしかして、私とメイド長の仲の良さに嫉妬!?
妬いちゃってる!!?
いや〜まいったな〜照れますなぁ〜ウヘヘヘ…。
あんまり真剣な顔をして見つめるから、危うく恋に落ちるとこでしたよ〜。 などと、色々妄想していたら、紅魔館へ続く道の向こうから、一台の荷馬車がゆっくりとこちらに向かってきているのが見えた。
「お爺さんの他に……誰か乗ってますねぇ」
遠目が利く美鈴さんがそう呟くが、私には馬車に人が乗っているのかすら判別できない。
流石は警戒要員として紅魔館に仕えるだけのことはある。
居眠りさえなきゃね……。
やがて、馬車は段々と近づき、私の眼も馬車に乗る二人の姿を捉えた。
◆その涙の理由は? 〜紅美鈴〜
「ルーミアちゃん!?」
到着した荷馬車に、それはそれは美味しそうにリンゴを頬張る、顔見知りの妖怪を見つけ、私は驚く。
何しろこの“ルーミア”は、幼さの残る少女の姿をしているが、お腹が空けば人でも食らう人食い妖怪だからだ。
それが、いつも野菜を届けてくれるお爺さんと一緒に、仲良く荷馬車に乗る姿など、まるで祖父と孫娘のようだ。 襲われ、食われるかもしれないなんて考えは、最初から無いかのように。
「どうしたんですか!?」
思わずお爺さんに訊ねると、お爺さんは仙人のように延びた白髭を撫でながら
「なぁに、お腹を空かせて襲ってきたのでな、こんな老体の肉など旨くはないぞ…こっちのたわわに実った果実の方がよほど旨いと、目の前で食って見せただけじゃよ」
と、笑って答えた。
見ると、荷馬車には紅魔館へ届ける野菜の他にも、甘い匂いのする数種類の果実が山盛りで籠に入っていた。
ルーミアはリンゴを食べ終えると、また荷台をゴソゴソ物色している。
驚いたことにこの御老体、人食いと恐れられたルーミアを、完全に餌付けしてしまったようだ。
「お前さん方もどうじゃ?」
お爺さんはルーミアが食べていたような、赤々と熟したリンゴを二つ、差し出してきた。
「あ、すいません、いただきます。ほら、えーっと…カヒさんでしたっけ?貴女もどうです?」
後ろにいるはずの妖精メイドに、リンゴを渡そうと振り向いた。
でも、渡せなかった。
何故なら、彼女は私たちに背を向け、肩を震わせていたから。
「どうかしましたか?」
俯く彼女の肩に触れる。
同時に、私の中を凄まじい哀しみの感情が走り抜けた。
なんだ?今のは…。
妖精メイド…カヒの顔を覗き込む。
彼女は泣いていた。
しかし、何か哀しいことがあって泣いているという感じではない。
むしろ、止まらない涙に戸惑っているかのようだ。
「おやおや、お嬢ちゃんはリンゴがお嫌いかな?」
お爺さんがカヒの頭を撫でながら優しく話しかけた。
「なら、来週来るときは、もっと良いものを持ってこよう…。なぁに、紅魔館の魔法使いのお嬢ちゃんのお陰で、ハウス栽培なんてのもできたしの…、大抵の果物が季節を問わずに栽培できる…。今は…桃がそろそろ熟してくる頃じゃの…では、来週はその桃でも、手土産にするかのぉ…」
お爺さんは朗らかに笑うが、カヒは顔をあげない。
お爺さんは少し肩をすくめ、紅魔館宛の荷物を下ろすと、まだ俯いたままのカヒから代金を受け取る。
「じゃあ、また来週」
柔らかな笑みを浮かべ、お爺さんはルーミアと一緒に来た道を戻っていき、やがて姿が見えなくなった。
「さて……」
私が再びカヒに目を転ずると、彼女はもう泣いてなかった。
「先程の涙のわけ、聞かせてもらえます?」
◇涙のわけは… 〜カヒライス〜
まずい……まさかこんなタイミングで…。
最初にあのお爺さんの姿を見た瞬間、背筋を悪寒が走り抜け、眼の辺りが急に熱くなるのを感じた。
今まで何度も経験したその感覚。
あれは……
死の気配だ。
少しず〜つ展開してますが、思ったより遅くなりそう(--;)
かといって薄い話にしたくはないので、しばらく様子を見てくださいませ(^^;