おかげで自分で思ったより早く書けちゃいました(^^;
◇貴女は真っ直ぐすぎて 〜カヒライス〜
困りました。
いや、私が泣き妖精であることや、メイド長の死期の監視役として傍に置かれていることなど、他言無用とレミリアお嬢様とパチュリー様にきつく言われているのだ。
恐らくはメイド長に心配をかけまいとする配慮なのだろうが、そうなると目の前で私を問い詰める門番さんに理由を話すわけにはいかないのだ。
何故なら、美鈴さんは真っ直ぐすぎるから。
元々嘘は好まず、その性分ゆえに自分の嘘も隠し通せない美鈴さんが、あのメイド長相手に嘘をつき続けられるわけがない。
美鈴さんは、紅魔館に訪れたゲストを前にして泣いていた私の態度が、メイドとして問題あると思って言っているのだろうが、真相を知ったらどんな顔をするだろうか? とても言えるわけがないのだ。
あのお爺さんは、もうすぐ死にますなどとは…。
◆貴女は優しすぎて 〜紅美鈴〜
困りました。
いや、いきなり泣き出して、お爺さんへの対応がおざなりなものになってしまったことは、紅魔館のメイドとしてはあまり良くない。
まあ普段、居眠りの多い私が言うのは何ですが…。
それでも、まともに訪ねてくる方々は気配でわかるので、そんな方々への対応で問題になったことはない。
問題なのは、“霧雨魔理沙”のような、気配を消して紅魔館に侵入してくる輩だ。
魔理沙など、もはや手並みが、職業は魔法使いではなく盗賊ではないか?と思えるほど鮮やかなレベルに達している。
……話を戻そう。
とにかく、咲夜さんがこの事を知ったら何と言うか……。
私からもフォローを入れるためにも、せめて涙のわけを知りたいのだが…。
「……」
黙ったままのカヒ。
信念があって黙っているというより、どう答えるべきか迷っているようだ。
恐らくは誤魔化したいのだろう。
とはいえ、そこまで狼狽えては、これから嘘をつくことがバレバレである。
泣いているときの彼女の気の流れも気になる。
ちょっときつく問い詰めるべきか?
私がそう思案し始めたとき、紅魔館の門扉が開いた。
「あら、お爺さんはもう帰ってしまったの?ご挨拶くらいはしたかったのに」
忙しいはずの咲夜さんが現れた。
「今日は忙しいはずじゃ?」
つい聞いてしまったが、咲夜さんが仕事を放り出してここに来るはずがない。
「思ったより早く片付いたから、様子を見にね…。それより、どうかしたの?」
ピリピリとした空気を感じ取ったのか、咲夜さんは少し怪訝な顔をする。
カヒをフォローする言い訳のひとつでも考えておきたかったが…仕方がない。
私はすべて咲夜さんに話した。
隠しだてすることもできなかったし、もう私ではどうしようもなかったからだ。
お爺さんの前でカヒが泣いたことを話すと、咲夜さんが少し、悲しそうな表情をしたのが印象的だった。
「わかりました。私の指導と配慮不足ということにしておきます」
さらりと咲夜さんは言うが、正直甘い気がする。 せめて、カヒが何で泣いたかくらいは問うべきでは?
「咲夜さん…貴女は優しすぎて…」
なおも抗弁しようとする私の鼻先に、咲夜さんが指を突きつけてきた。
「女の子が泣くわけを詮索するのは、瀟洒とは言えないわ」
………ええ〜…。
いや、まあ…瀟洒ではないですが…そんな得意気な顔で仰られても…。
咲夜さんを表現する上で、これ以上無い言葉が“完全で瀟洒な従者”ですけど、瀟洒じゃないから問い詰めないって、瀟洒の使いどころを間違えてません?
たぶん、私はかなり呆れた表情をしていたのだろう。
咲夜さんは少しむくれた顔をした。
「なぁに?私が甘いと思ってる?」
そう聞かれたので、正直に頷く。
「あっそ、なら今度から、美鈴を起こすときはスペルカードを使うわね。厳しいのがお好みならね…」
「すいませんでしたぁぁぁぁぁっ!!」
いやね、いくら私でも“殺人ドール”だの“ルナクロック”だのを寝る度に受けてたら身がもちませんて。
「そもそも、毎日毎日居眠りしては怒られてる貴女が、メイドの一回のミスを咎める資格はありません〜」
「ひゅ、ひゅいまへん〜!」
完全にやぶ蛇だった。
咲夜さんに口を横に引っ張られながらそう思う。
我ながら真面目なことを言ったつもりが、すべて自分に返ってきてしまった。
普段の行いが悪い故に仕方がないが、一抹の理不尽さを感じながら、咲夜さんのお説教はその後小一時間続いたのだった。
◇瀟洒であることとは… 〜カヒライス〜
長いお説教の末、ぐったりとしてしまった美鈴さんに心の中で謝りつつ、野菜の入った籠を担いで門を後にした。
「メイド長…」
籠を担ぎながらも姿勢を崩さずに前を歩くメイド長に、恐る恐る声をかける。 美鈴さんにはあんなことを言って無理を通したが、内心ではかなり怒っていると思ったからだ。
「カヒ……」
咲夜さんは振り向かず、静かに言った。
「はい……」
次の瞬間には冷たい言葉が飛んでくるのか、それとも怒号なのか、平手が飛んできても仕方がないと思っていた。
だが予想に反して、振り向いたメイド長の顔は優しい笑顔だ。
「言えなかったんでしょ?泣いたわけ…」
その通りですが……メイド長には一番言ってはならない理由なので、返答に困る。
「いいわ…理由は聞かないでおいてあげる」
まるで、私の心など見透かしているかのように、メイド長の方から私が求めていた言葉をかけてくれた。
「いいんですか?」
あんまりにもあっさりした対応に、聞き返してしまった。
「秘密の1つや2つあったほうが、女の子は魅力的よ?」
と、おどけたように言うメイド長。
「だけどね…」
そう言葉を続けると、私の前に歩み寄り、私の身長に合わせて身を屈めると、そのまま自分のおでこを私のおでこにくっつけた。
「メ、メイド長?」
「もし貴女のその秘密が、貴女の苦しみになるのなら、その時は言いなさい?」
至近距離で見るメイド長の瞳はとても綺麗で、吸い込まれそうだ。
「わかった?」
「はい…」
「よろしい」
短いやり取りだが、メイド長はにっこりと笑った。
「さてと…」
メイド長の声色が、優しげなものから、いつもの声色に戻る。
「さあ、今日の夕食はちょっと贅沢にするから、手伝ってもらうわよ〜!」
と、野菜を担いだまま小走りで行ってしまう我らがメイド長。
「ちょ、ま…待ってくださいメイド長〜!」
先程までの暗い気持ちが、嘘のように晴れているのを感じつつ、私も走り出した。
今回の話の一番の被害者……それは紅美鈴さんです(--;)
いや、本当はすごく良い娘だというのはわかってるんですが、真面目ゆえに融通が利かない感じになっちゃって、職場だったら完全に嫌煙されそうな娘になっちゃった(--;)
次はもっと可愛く、そして頼れる姉御っぽく……書けるかなぁ〜(--;)