ペルソナ5 Next Generations 作:NGファントム
Prologue.NG
月夜が照らす中、一つの影が走り抜ける。
壁を伝い、陰に身を隠し、影を追う人々の隙間を縫って走る。
ライトアップされた博物館。
外気にさらされ揺れるシャンデリアに、その姿を一目見ようと押しかける観客たち。
観客たちが一目見ようと押しかけたのは展示物のためではない。
その展示物を狙う
ふと、観客に紛れ賊を追う黒服の一人が声を上げた。
その指先は紛れもなく、揺れるシャンデリアを指して。
「いたぞッ!!」
「
「追え! 追え追え追えぇッ!!!」
シャンデリアの上、博物館に訪れた観客たちがシャンデリアへと視線を向けると、そこには裾をボロボロにした黒コートの男が一人、白い仮面をつけてそこに立っていた。
男の登場にざわめき出す館内に、蠢き出す黒服の男たち。
その時、館内に轟く銃声。
黒服の一人がシャンデリアの上に立つ男へと向けて放ったのだ。
だが、男は軽い身のこなしでその銃弾を避けると、壁のほんの小さな足場を伝って走り出す。
その後を追う黒服たちを男は無視しながら、少し開けた場所に着地すると、耳に着けたインカムに触れ、機械の向こうにいる仲間に向けて口を開く。
「作戦通り、だな?」
『ん、アタッシュケースは……回収した』
『マスター、事前の打ち合わせ通りに』
『しかし、ここまで上手くいくとは思いませんでしたわ』
『そうだね。ここさえ突破すれば僕たちの勝ちだ』
『……ああ。必ず決め切るぞ』
『ちと不安だが、まぁ、なんとかなるだろ』
『必ず勝つためにも、頼んだわ。リーダー』
仲間たちの言葉を聞き届け、再度走り出そうとしたときだった。
男を取り囲むように黒服たちが姿を現す。
だがその姿は歪に膨らんだ体に、不可思議な仮面、まるで怪物のようにも見える姿をしていた。
「いたぞッ!」
「奴を殺せぇッ!!」
一人の黒服の掛け声に、男はぐるりと辺りを見渡すと、どこからともなくナイフを取り出し走り出す。
その動き、まるで閃光の如く。
真正面にいる黒服を通り抜けざまに斬りつけ、よろけたところに肩の上の登り、その仮面へと手をかける。
「正体を、見せてもらおうか!」
勢いのまま仮面を剥ぎ取り距離を取った。
その瞬間、仮面を剥ぎ取られた男の体が震えたかと思うと、突然膨張を始め腹を突き破り黒い影のようなものが溢れ出す。
その黒い影から、死線に舞う神兵が姿を現す。
「随分と仰々しい姿だな」
「オ、ォ……ォオオッ!!」
神兵は槍を手に飛翔すると、男は焦ることなく懐から取り出した銃を数発、神兵の額へと浴びせる。
そうして止めることもできずに、勢いのまま突っ込んできた神兵に向かい走り出す。
額を撃たれ視界を阻害された神兵の横を、通り過ぎざまにその体の一部をナイフで切り裂く。
だが神兵もまた狼狽えることなく止まり槍を構え直すと、その槍を乱暴に振り上げた。
すると槍の先端から光が放たれ、光は何本もの槍へと収縮していく。
男は舌打ちを一つし、神兵の周りを回るように走り出した。
そこに向けて生み出された光の槍が放たれるも、男は華麗な動きでその槍を避けきってみせる。
なんとか避けきった先で着地すると、銃を懐にしまってため息を一つ吐く。
「仕方ない。体力を使うわけにもいかないからな、とっとと決めてやる!」
そう言って自身のつけている仮面に触れる。
にやりと男が笑みを浮かべた瞬間、触れていた仮面が蒼い炎に包まれた。
それを掲げると、高らかに呼び起こす。
もう一人の
再度、飛びかかってくる神兵。
だが男は身動き一つ取ることなく笑みを浮かべたままで、接近する槍が男の体を貫く。
その瞬間、突然男の背後より現れた大男が、神兵の攻撃を片手で食い止めた。
そのままもう片手で持った大剣を振るうと、大剣をまともに受けた神兵は壁際まで吹き飛んでしまう。
更に追撃を加えるかのように強力な電撃が落とされると、神兵は黒い靄に包まれ消滅してしまう。
大男はそこで止まらず、周囲へ電撃を放ち続け周りにいた黒服を一人残らず消滅させてしまった。
男が息をつくと大男は消え、手元には仮面が戻る。
男が仮面をつけ直すと、耳に着けたインカムから再度仲間の声が聞こえてきた。
『流石です、マスター。戦闘支援は必要なさそうですね』
「あれば嬉しいんだが。まぁ、距離離れてるし難しいか」
『それよりもリーダー……早く逃げたほうが、いいよ……』
「っと、そうだな。案内頼む」
『お任せを』
無機質な少女の声に導かれ、男はまた走り出す。
黒服の男たちが追う中を避け、潜り抜け、的確な回避で外へと続く道を走る。
ワイヤーフックを用いて高く飛び、繊細な手解きで鍵を開ける。
その姿、まさに怪盗と言わざるを得ない。
それ以降、誰にも見つかることはなく。
必死の捜索も一人の男によって完全に撹乱されてしまった。
一安心だな、と男が一息つこうとしたところで、突然建物全体が大きく揺れる。
崩れ始める壁に、落ちる天井。
明らかに様子のおかしい博物館でインカムかな声が響く。
『マスター! 何やら様子が……こ、これはっ……!』
『もしや、薬か……!?』
『だとしたら、なかなかめんどうだぞ!』
『まずいですわ! こっちの道も崩れかけていますわよ!』
「切り上げだ! 後は俺一人でなんとかする!」
『……リーダー……任せたよ』
「ああ!」
これ以上、通信するわけにいかないとインカムを投げ捨てると、そのインカムに向けて銃を一発放ち、跡形もなく破壊する。
誰の助けもない中、男は走り出し遂に外へと辿り着く。
壁を伝い、降りて、ついに博物館の前へ。
だが男を安心させる間もないかのように、いきなり点灯したいくつものライトが男を取り囲む。
「…………」
ぐるりと見渡すも、警察の数は圧倒的。
男はにやりと一瞬笑みを浮かべるも、一切抵抗することなく両手を挙げる。
「さぁ、勝負どころだぜ」
そんな男の小さな囁きは誰に聞こえることもなく、男は一切抵抗することなく警察の手によって捕まるのだった。
ふと、目を覚ましたとき、そこは暗い部屋の中だった。
身体中が痛み、意識がはっきりとしない。
……直前までの記憶が曖昧だ。
確か、俺は……そうだ、オタカラを盗むために、奴の──
「目が覚めたか」
曖昧な思考の中で声のする方に目を向ける。
すると俺の座っている場所、そこから机を挟んで対面に座る男が一人、真面目な顔をしてそこに座っていた。
男の顔に見覚えがあるが、名前が出てこない。
俺にとって……いや、俺たちにとって重要な人物だったような気がする。
「君、名前はわかるかい?」
「お、れは……
「よし、自分の名前が分かるくらいには意識が戻ってきたね。無理言って時間作ってもらっているから、そう長く話せないのが残念だが……こうして一度、君と対話がしたかった」
「俺、と……?」
「ふむ……そうだね、一から話すとしよう」
男は机の横に置いたカバンから、いくつもの紙が挟まれたファイルを取り出し机の上に置く。
ファイルを開くと見覚えのある顔がいくつもの載っていた。
「ここには監視カメラはないから、私の言葉に間違いのないように答えてほしい。まず今年の初め辺り、突然一部の人々から物事に対する
「関、心……」
「人々は自分で考えることをやめ、何かに対して盲目的に動いていた。まるで人形のようにね。いや……私も同じか」
「それが、どうした……」
「そして四月のある日、君の学校である事件が起きた」
「…………」
事件。
それは自分もよく知っている。
いや……知っているどころではない。
当事者だ。
あの
「さぁ、思い出すんだ。君はあの時、学校で何をしていた?」
始まりは、始まり、は……。
全ては、あの日から始まったんだ。