性別:女性
所属:冒険者教会
得意武器:ナイフ
神の目:無し
主な受領任務:配達
備考:囁きの森で保護。記憶喪失?
「あ、久しぶり!元気にしてた?」
そう私に声をかけてくれたのは、共に鍛錬に励んでいたエリンだった。私たちは神の目を持たず、お互いに行き詰まった現状を変えるべく、より強くなろうと切磋琢磨していた時期があったのだ。
「やあ、エリン。そちらこそ元気にしてたかい?」
「もちろん!あ、そうそう。栄誉騎士のことは知ってる?貴女が璃月に行ってる間にモンドを助けてくれたんだよ!」
「噂程度はね」
「私にも剣術を教えてくれたり、親切な人だったよ。今は璃月に向かったみたいだから、君と入れ違いだね。」
「残念、一度会ってみたかったのに。」
「大丈夫、風花祭の時期にジン団長が招待状を送るってウワサだから、もうしばらくしたら会えるよ。」
「だといいけどねぇ。」
やはりモンド城では旅人の話題で盛り上がっているようだった。曰く神の目がなくても元素力を扱えるらしい。曰く免許取りたてにもかかわらず、風魔龍と空中戦を繰り広げた。曰く闇夜の英雄とタッグを組んでアビスの魔術師を撃退した。そのため諸々。
私とエリンはしばらく旅人の話で盛り上がり、小腹を満たしにキャッツテールで昼食を取ることにした。
猫と戯れながら昼食を済まし、ちょこんと座るディオナ嬢にチップを渡して解散したが、そこで私を呼び止める声がした。冒険者協会の敏腕受付嬢、キャサリンである。
「ファレノンさん、お時間よろしいですか?」
「ああ、大丈夫だとも。何か用事かい?」
「ファレノンさんにお仕事のご依頼です。依頼人はモンド騎士団のグランツーさんで、何やらドラゴンスパインの仮設キャンプまで届けて欲しい荷物があるのだとか。」
「ドラゴンスパインかぁ、最近なんだか様子がおかしいようだけど、その関係かな。」
「詳細は騎士団城門前詰所で話してくださるそうです。」
ドラゴンスパインといえば偽アルベドやドゥリンのイベントがあるため、あまり近寄りたくはないのだが、モンド編が終わった直後のこの時期なら、まだ表面していないはずだ。
それに、あの馬鹿でかい山を一眼見たいと思っていたのだ。
「了解、受諾します。」
「ありがとうございます!あ、遅れましたが、いつものを。」
そういえばそういうのがあったな。
「星と深淵を目指せ!いってらっしゃい、ファレノンさん!」
「ありがとう。行ってきます!」
やってきたのは城門を潜ってすぐの簡易詰所。門番たちの待機所だ。
「やあ、依頼を受けてやってきたよ。グランツーさんはいるかい?」
「私がグランツーだ。依頼を受けてくれてありがとう。」
「こちらこそ、ドラゴンスパインには興味があったんだ。」
「手短に話そう。この小包をドラゴンスパイン麓のキャンプに届けて欲しい。」
グランツーによると、風魔龍の影響でモンド周辺の魔物が活発化し、対策として騎士団の人員を哨戒に当てたため、雑務をこなす班が足りなくなってるらしい。
そのため一部簡単な依頼を冒険者に回しているとの事。栄誉騎士のおかげで安定化してきたとはいえ、アビスの残滓が未だ残っているため、そちらを優先したいのだろう。
「ところでこの中身は?」
「あー、私も詳しく知らないんだが、キャンプにいる錬金術師のための触媒だそうだ。何やらナタのアビスの素材の一部らしいが。」
「ふぅん」
ナタと交流がある事自体が驚きだが、騎士団の8割がナタに行っていることを考えれば素材が手に入ることも納得だ。あれ、でもガセネタだったらんじゃなかったか?
「オーケー、じゃあ早速始めるよ」
「よろしく頼む」
小包を受け取って、いざ出発。
目的地はドラゴンスパインだ。
とはいったものの、実はモンド城からドラゴンスパインというのは、思ったよりも距離はない。風立ちの地からダウパパの谷方面に向かい、途中でドラゴンスパイン方面に進路変更するだけだ。
道中たまにヒルチャールに遭遇するが、関わるだけ危険なので、無視して通り抜ける。ゲームと違って発見即戦闘ではないのが、まだ救いなのだ。
景色を堪能することおよそ3時間。目的地に到着した。
ゲームの時でも殺風景だったキャンプが、本当にテントとタープ付きテーブル、竈、集積場程度しかないさらに簡素な拠点が出迎えてくれた。
一息ついていると、私に声をかけてくる人物がいた。
「ようこそ、雪山調査キャンプへ。旅行者かな?」
「貴方は…」
「僕はアルベド。西風騎士団調査小隊隊長だ。」
今回のドラスパ遠征で会いたくなかった筆頭の人物だ。喉元をチラリと見ると、菱形の痕がある。本物のアルベドだ。ならよし。
「はじめまして、ファレノンだよ。騎士団の依頼で配達に来たんだ。はいこれ。」
アルベドは少し面食らった様子で小包を受け取った。彼は丁寧に外装を剥がし、内容物を確認した。
「これは…アビスの素材だね。確かに僕が要求した代物だ。ありがとう、冒険者」
「んじゃ、サインをおくれ。」
頷くアルベドは魔力を駆使し、伝票にサインを刻印する。なんだそれ、私もやりたい。
「これでいいかな。」
「あっ、うん。これで依頼は完了だね。」
ちょうどいいのでドラスパ観光に関してアルベドに聞いてみることにする。言葉には出さないが、彼ならドゥリンや偽アルベドなど危険なスポットを知っているだろう。それは正しく的中し、彼はいろいろ教えてくれた。
「そうだな…巨大イノシシとか無相の氷とか、他にもいろいろあるけれど、巨大な骨の跡には近づかないほうがいい。安全に観光するなら、川の周りを散策するといい。あそこなら場が開けているから危険にも気付きやすいだろう。」
「そっか、ありがとう。」
「どういたしまして。ああ、それと…」
「何かあるの?」
「この山には人に化ける魔物がいるらしい。今日、僕はもう山を登らないしこのキャンプを出ないから、もし散策している時に僕に出逢ったら、それは僕じゃない可能性がある。」
それは、ホムンクルスやトリックフラワーのことだろう。事前に知っていることとはいえ、本人からそれが聞けるなら、もうこの周辺では彼らが現れていると見て間違いないだろう。
「なるほどね、わかったよ。」
「それじゃあ気をつけて。無理せず安全に。何かあったら狼煙をあげるといい。巡回している騎士団のメンバーが駆けつけるだろう。」
「ありがとう。」
アルベドと別れた私は、彼の忠告通り川の周りを散策していた。ゲーム上ではあまりにも寒くて長居できないエリアだったが、錬金ポーションを用意してきたので今回は大丈夫だ。某ゲームのホットドリンクとクーラードリンクのようなものを、偶然知り合った錬金術師のティマイオスに教えてもらった。
ゲーム内でファデュイのキャンプがあったあたり、つまり無相の氷の居城あたりまで歩いたところで、ふと、目につくものがあった。
「なんだ、これ」
それは、蝶の蛹のような、巨大な物体だった。薄紫に発光し、心臓の鼓動のように細動していた。
「蛹?こんなところにあるなんて…」
一見鉱石のような見た目だし、岩肌張り付いている。
普通だったら、こんなものあるはずがない。現代人の、ゲーマーとしての脳が警鐘を鳴らしている。
違和感は時として人を殺す。こんなもの、原神には存在しなかった。
ふと辺りを見渡すと、そこには目の前のものと似たようなものが辺り一面に点在していた。
「これは、流石に報告案件かな…」
退散を決め込んだ私だが、風を切る音がした。矢だ。
「…!」
幸い矢は足元に刺さった。
ヒルチャールが三匹。弓持ちが一、盾持ちが二だ。
今の私には集団戦を制する能力は無い。ゲーム内では雑魚敵だったが、一般人には十分すぎる難敵だ。
「さぁて、逃げますか…」
距離を詰めてくるヒルチャールたちを振り切るために、山の反対へと逃げ出した。
「まだ追ってくるのか!」
雪葬の都跡を通り抜け、璃月が見える所まで移動したが、しつこく奴らは追ってくる。なんか五匹に増えてるのは見なかったことにしたい。
「くらえ虎の子の閃光玉!」
後方へ閃光玉を転がして、迷わず走る。後ろから悲鳴が聞こえるが、無視して走る。走る。
「…伏せろ!」
その声に慌てて身を屈めると、上空から隕石が降ってきた。崖の上にはアルベドがいた。
「隕石ぃ!?うぉあ!?」
「止まらず走れ!」
アルベド(仮称)の援護により、更に奥へと逃走するのであった。
もしもあのキャンプを超えて山へ身を投げ出していなければ、このくそったれた世界ともおさらばできたはずなのに
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