ポンコツ主と悪魔執事たちの現実   作:青瑠璃

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ロノと体重

 

「ロトー!」

 

 ある日のデビルズパレスの日。私はあることを真っ先に報告したくて、厨房へ向かった。

 

「お、こんにちは、主様!」そこにいた料理執事が朗らかに挨拶をしてくれた。「だけど惜しいですね、主様。オレの名前はロノですよ!」

 

「あ、そうだった……」

 

 相変わらず名前を覚えない病の私はロノのことも呼び間違えたみたいだ。ラトのことは間違えないのに、ロノのことをラトとか、ロトといったふうに名前を混ぜて呼んでしまうことが度々あった。

 

「ごめん、ロノ……」

 

「へへ、大丈夫ですよ! 大体オレのことだなって分かればいいんで!」

 

 ロノは全く気にする素振りなくそう言ってくれる。なんていい子……じゃなくて、いい人なんだ。ここにいる執事は皆成人しているようなのだが、特にロノの笑った顔が幼く見えるのでつい子ども扱いしそうになってしまうのは、私の中だけの秘め事だ。

 

「こんにちは、主様」

 

「あ、バスティン!」

 

 厨房には、仕込みの手伝いをしていたのだろうバスティンもいた。普段は燕尾服のバスティンも、厨房にいる時はコック服を身につけている。

 

「ロノ、バスティン、こんにちは。それで私、何か話があったような……」

 

 顔のいい彼らを眺めることについ集中してしまい、なぜ厨房に来たのか忘れてしまっていた。私のバカ。何しに来たのよ。

 

「えっと、何を言いに来たか忘れちゃったからまたあとで来るね……」

 

「はい、分かりました! 用事があったらいつでも会いに来て下さいね!」

 

 私の言葉にロノは明るくそう言ったが、バスティンは全く変わらない表情のままこう言ったのだ。

 

「わざわざロノのことを呼んでいたのだし、腹でも減っているんじゃないか?」

 

 と言われるものの、今はお昼がだいぶ経った時間。おやつの時間にしてはまだ早い気が……。

 

「あ、そうだった!」私は、ロノに何を言いに来たのか急に思い出した。「ロノにお礼を言いたくて来たの! さっき健康診断があったんだけど、体重が増えてたの! 一キロも!」

 

「おお、そうなんですか!」ロノは目を見開き、それから嬉しそうに笑った。「良かったですね、主様。体重が増えないことが悩みだって前言ってましたもんね!」

 

 ケンコウシンダンのことは分からねーけど、とは言っていたが、とにかく私の体重が増えたことは嬉しいことだった。

 

「ロノのおかげだよ〜、毎日ロノのご飯食べてるし! 体重が増えるなんてもう絶対無理かと思っててさ……」

 

 と話し続けてハッとする。そうだ。この話はバスティンは知らなかったんだ。

 

「主様。体重が増えることは、そんなに嬉しいことなのか?」案の定、バスティンにそう聞かれてしまった。「女性というのは、体重が増えることを気にするものだと思っていたが……主様は確かに、女性の中では細過ぎるような」

 

「そうなの。バスティンに前言われた通り、私体重が平均よりないんだよね」

 

 武器庫でバスティンに軽過ぎると言われたのは、私が平均体重もないからだ。毎日三食ちゃんと摂っているかと言われるとそうではない私が悪いのだが、最近はロノのご飯にお世話になることも増え、今日元の世界で測った体重計で、去年より体重が増えていたことが確認出来たのだ。

 

「そうだったのか……今度は俺も気に掛けて置くことにしよう」

 

 とバスティンが真面目にもメモを取り始めた。

 

「あ、ありがとう……?」

 

 メモを取る程でもないのにと思ったが、バスティンは真面目な性格だし、止める必要もないので私は許容することにした。

 

「よし、そうと分かったなら、よりもっと上手くて体重が増やせるレシピ、考えて置きますね!」

 

 ロノはというと、こんな感じでますますやる気を出したかのように袖まくりをする。気持ちは嬉しいが、このままだとロノのご飯以外食べられなくなりそう……とか贅沢な幸せで悩んでしまいそうだ。

 

「ふふ、でも、無理はしないでね?」

 

 ここの執事は頑張り過ぎるところがある。それはロノも同じだ。私のために苦労はかけたくないなとそう声を掛けても、ロノは楽しそうに笑うばかりだった。

 

「オレがそうしたいからそうしてるだけですよ! 主様のためならなんでも出来ますから!」

 

 とてもいい笑顔だ。

 

「主様のためなら、俺もなんでも出来る」

 

 そこにすかさずバスティンも割り込んできた。この流れはもしかして……。

 

「オレの方がもっともっと主様のためになんでも出来るし!」

 

「なら俺はもっともっともっと主様のために頑張る」

 

「だったらオレは……」

 

 相変わらずこの二人はなんでも張り合いたがる。

 

「はいはい、ケンカはここではしないの」私は二人の間に割り込んだ。「それより、今は夕食の準備をしているんだよね? 私も手伝いを……」

 

「大丈夫ですよ、主様は休んでて下さい!」

 

「大丈夫だ、主様は休んでてくれ」

 

 息ピッタリだ。

 

「ふふ、仲良しだね」

 

 思わず私が笑うと、二人は顔を見合って。

 

「「誰がコイツと……!」」

 

「「って真似するな!」」

 

「ほら、仲良しじゃない!」

 

 今日もデビルズパレスは、平和だ。

 

 おしまい

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