ポンコツ主と悪魔執事たちの現実   作:青瑠璃

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担当執事を選ぶ

 

 ということで。

 

 色んなことがあり、私がどうやら「悪魔執事の主」であることは避けられないということは分かっては来たのだが、また悩ましい難関にぶつかっていた。

 

「では主様。担当執事をお決めになってください」

 

「担当執事……?」

 

 まつ毛の長いベリなんとかが言うには、私の身の回りのお世話をしてくれる担当執事を決めないといけないらしい。それも、私が「悪魔執事の主」だからなのだが……。

 

「……執事、多くない?」

 

 私の目の前には、十何人かの男たちが並び、担当執事に選ばれるのを待っている。そのベリなんとかさんの話では……えーっと、やっぱり何人いるかは忘れちゃったけど、担当執事は途中で変えてもいいので、とりあえず今は一人を選んで欲しいとのこと。

 

「うーん、そうは言っても……」

 

 このまま黙っている訳にもいかなさそうだし、私は執事たちの前をゆっくり歩いて彼らをよく観察してみる。皆、個性的な髪の色と瞳の色をしていて、私と目が合うと逸らす執事もいれば、愛想よく会釈をする執事もいる。格好や仕草の一つ一つからも個性が出ているし、背丈だって皆まちまちだ。

 

「あの、ベルリアンさん」

 

「ベリアンでございます。敬称は必要ありません」

 

「あ、ごめんなさい……えっと、ベリアン」

 

 この世界がすごくよく出来た夢の中だとしても、私はどうも人の名前を間違えるらしい。

 だけどベリアンは私に対して不快そうな顔をするでもなく、嫌悪そうな声で応じることもなく穏やかだった。それを見て、私は心から思った。

 

(私、本当にここの主なんだ……)

 

 まだ夢見心地なところがあるのだが、だんだんとこの世界も現実なのだと思えてくる。

 と並んでいる執事たちに視線を戻す私だが。

 

(逆ハーな状況には変わらないんだけど)

 

 私がもう少し若かったらこの状況を楽しんでいたのだろうな、と私は思ったが、さすがに二十代後半にもなると突然の異世界も対応してくるもので……。

 

「主様? 何か聞きたいことでもあるのでしょうか?」

 

 ベリアンが訊いてきて、そうだった、私は彼に呼びかけたままだったと思い出す。私は疑問に思ったことを口にした。

 

「あのー、ベリアン。ここで私が選ばなかった執事は、処刑されちゃう……とかないよね?」

 

「えっ」

 

 私は、自分が珍発言をして誰かに笑われることはもう慣れていた。今目の前にいるベリアンは笑わずに驚いた顔を見せたが、そこに並んでいる何人かの執事は明らかに失笑していた。よし、笑った君たちはとりあえず今日の担当執事として選ばないことは決まった。

 

「ふふ、それが不安だったのですね」ベリアンはすぐには取り繕い、穏やかな顔になった。「安心して下さい、主様。彼らは主様の執事で、私たちの仲間ですから、そのようなことはございません」

 

「そう……それは良かった」

 

 ここがもしその悪役令嬢的な世界だったらそんなこともあるかな〜と、一割くらいは思っていた私はベリアンの回答に心から安堵していた。私、異世界ファンタジー小説の読み過ぎかしら? いやいや、そもそもこの世界がいきなり過ぎるし、私からしたらなんでも初めてなのだから、この質問くらいは許して欲しいものだ。

 

「ふむ……」

 

 私はベリアンから執事たちへ視線を戻す。名前は分からないけど、笑った執事は候補から外すとしよう。とはいえ今は真剣そうな目でこちらを見つめてくれているし、みんないい子そうなのよね……と、まるで保育士目線から子どもを眺めているような気持ちになりながら、私は端から執事を一人一人観察する。

 

(こうやって誰か一人を選ぶなんて、考えたことなかったな……)

 

 保育士をやっている私は、出来るだけ子どもたちの誰かに加担し過ぎないように、ヤキモチを妬かれないように、と気をつけて過ごしたものだった。だから本当はランダムで……それこそガチャみたいなシステムで誰が担当執事になろうとも私は誰でも愛せるのに、とつい成人男性たちを前に子どもを相手にしているような感覚になりながら、私はなんとか四人の候補に絞った。

 

 まず一人目は、私の珍発言で笑わなかった青い髪の彼。わずかに目を見開いて驚いているような顔はしていたけれど、すぐには真面目そうな顔つきになって整然とした態度でそこに立っていた。ただ気になるのは、ジーッと見つめていると顔を赤らめて目を逸らされることだ。私、ほぼ初対面の人に嫌われているのかな?

 

 二人目は、その青い髪の隣に立っている片眼鏡の執事だ。彼も私の珍発言に笑わなかったが、その大きめな目が分かりやすく更に大きく見開いて驚いていたのを私は見逃さなかった。パッと見、感情豊かそうな男性なのだ。彼も少し顔を赤らめることがあるけれど、仕草からして人見知りなのだろうということが分かるので気持ちは分かる気がした。

 

 そして三人目は、私の珍発言に笑うどころか驚きの表情もしなかった彼だ。口角はずっと下に向いていて、目は常に逸らされている、いわばクールキャラといった感じの男性。赤紫の宝石を思わせる瞳の奥から、優しさを感じるのは長く保育士をやっている私からしたら気のせいではないはずだ。何よりあまり動揺しなさそうな人物は色々と楽かもしれない、と私は思ったのだ。

 

 最後の候補の四人目は、私の珍発言にどう反応したかどうかではなく、完全に見た目が気になっている彼だ。彼の格好はバラのデザインがある服を身につけていて、時々見える口の奥から舌ピが見えるのが妙に目を惹く。それに、彼に近づくとバラの香りがするのだ。彼は園芸が趣味なのかもしれない。私も花が好きなので、話が合いそう、という感覚である。

 

「う〜ん……特に誰が嫌いとかじゃないんだけど……」

 

 私は非常に悩んだ。

 

「この人で、お願い出来ますか……?」

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