テディにまつわるメインストーリーのネタバレ含みます
なんでも大丈夫な方だけ、どうぞ
デビルズパレスには、ギャラリーと呼ばれる部屋がある。
「ここには色んな絵が飾ってるんですね〜」
「そうみたいだね」
そのギャラリーに、私はテディと一緒にやって来ていた。
「あ、こっちは主様が描いた絵が飾ってますよ!」
とテディが向かった壁には、丁寧に「主様展覧会」と書いてある一面があった。ギャラリーにはある一定期間で飾る絵や作品が変わっているが、私が描いた絵はどんどんと増える一方だった。
「こうして見ると、私沢山描いていたのね……」私は自分が描いた絵をしみじみと眺めた。「あまり描くと飾るところがなくなっちゃいそう……少し抑えた方がいいかな……」
と言うと、テディはそんなことないと返してくれる。
「もしここが主様の絵でいっぱいになったら、今度は廊下とかに飾ってもいいと思いますよ!」とテディは言う。「あ、もし主様が良ければってことなんですけど……嫌だったら、そうだな……うーん」
「ふふ、嫌ではないよ」私のために真剣に考えてくれるテディを思うと、自分の絵が廊下に飾られるのも悪くないなと思った。「もしここがいっぱいになったら、廊下に飾ることも考えとくね」
「はい!」
と元気よく返事をするテディを見ていると、私も自然と力を貰うみたいだ。
私は視線を飾られている絵に戻した。ここに飾って貰っている絵は私がタブレットで描いたものであり、それを向こうの世界で印刷して紙として張り出したものだ。この世界にはない画材で絵を描いているので雰囲気は合わないかなとも思ったのだが、そこはボスキの内装のおかげか、あまり浮いてはいなかった。
「あ、これは俺の似顔絵ですよね」
その内に、テディは私が描いた自分の似顔絵を見つけた。ここにある絵のほとんどは、私が執事たちの名前を覚えるために描いた彼らの似顔絵であった。私は頷いた。
「うん、そうだよ。似てるといいんだけど……」
と答えながら、私は似顔絵とテディを交互に見た。
「似てますよ! というか俺そのもので本当に驚きました!」
テディは真っ先にそう答えてくれたが、私には少し不安が残っていた。
あなたのお兄さんに似ているのだろうか、と。
テディは双子だった。あることで双子の兄を失ってしまい、色々ありながら今日を生きるテディの似顔絵を、本当は描いていいか迷ったところがあった。
テディの名前はすぐ覚えられたし、と描くのを辞めようとも思った日もあったが、私は執事たち誰かだけ贔屓にすることも心苦しかった。だからこうして、私は執事全員の似顔絵を描くことになったのだが、テディは特に不安だった。私がテディによく似たお兄さんの似顔絵を描いて、苦しい思いをさせてはいないだろうか、と。
「主様……?」
考え込み過ぎたのだろう。テディが心配そうにこちらの顔を覗き込んでいる。
「あ、ごめんごめん……なんの話だっけ?」
私は気を取り直し、テディに質問をする。テディはすぐにはニッコリと笑み、自分の似顔絵の隣にあるもう一つの絵を指した。
「こっちの絵の話をしていたんです。この絵は、俺に似せた主様の小説に登場するキャラクターなんですよね?」
そう、このギャラリーにある「主様展覧会」には、執事たちの似顔絵だけでなく、私の小説に登場するキャラクターたちの絵も飾られていた。自分の小説の挿し絵として使うついでに紙に印刷したものなので完全に私の手癖で描いたものだったが、それらも豪華そうな額縁に入れて飾ってくれているのだ。
「そうなの。前に、テディにもニックネームみたいなのが欲しいって言ってたでしょう? だから、テディそっくりのキャラクターを描いてみたんだよね」
といっても、茶髪の青年というキャラクターで、テディの見た目に似せてはいない。ただ、テディの明るさや一生懸命さは、小説の中ではよく似せているはずだ。
「さすがです、主様!」テディはニッコリと微笑んだ。「確か名前は、ベルアっていうんですよね? いつか俺もベルアと間違えられたいです!」
「え、え〜……さすがに名前はもう覚えたんだけどな……」
と私が困惑しながら言うと、テディはハッとした。
「す、すみません、主様。俺の気持ちばかり話してしまって……ただの俺の気持ちなんで、無理しなくて大丈夫ですからね?」
テディは慌てて謝ってきた。特に何も思ってはいなかったが、テディに曇りなき笑顔を見せられると期待に答えない訳にもいかず。
「えっと……ベルア?」
誤魔化しがあまり上手くない私はかなり言い方に違和感があっただろうが、テディはそんな呼び方でも嬉しそうにしてくれた。
「はい、主様!」
名前の呼び間違いから始まった私の異世界生活。まさか名前を間違えられたいと言われるなんて思ってもいなかったが、テディの笑顔を見ていると、自然も私も楽しくなっていて。
「ありがとう、テディ」
「え? 俺、何かしましたっけ……?」
きょとんとするテディに、今は何も答えないまま。
「なんとなく感謝を伝えたかったの。本当、いつも助けられてるなぁって」
「それを言うなら、俺の方ですよ!」
そうしてしばらく、私たちはギャラリーを眺めながら雑談して時を過ごした。テディの深い心境までは、分からないまま……。
おしまい