ポンコツ主と悪魔執事たちの現実   作:青瑠璃

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テディとコーヒー

 

「あ、あそこでボスキさんがサボってますよ」

 

 ある日のデビルズパレス。別邸の縁側でのんびりしていると、隣にいるテディが庭に見えた白い靴を目で指して言った。

 

「ふふ、またサボってるのね」

 

 茂みに隠れて全身までは見えないが、いつも寝転がっている人物といえばハナマル以外にはボスキしか思いつかない。ラムリは、どちらかというと掃除用具室にいるイメージがあるが……まぁ彼も、庭で寝転がることはあるかもな。

 

「はい、どうぞ、主様。コーヒーをお持ちしました」

 

「ありがとう、テディ」私はテディからコーヒーを受け取る。「ボスキ見てるとコーヒーが飲みたくなるからとてもありがたいよ」

 

「え、ボスキさんを見ると……ですか?」

 

 テディに不思議そうな顔をされ、そうか、私の世界とこっちの世界では色々違うんだったなと思い出す。

 

「私の世界でね、ボスナって会社がコーヒーを作ってて。テレビでもCMでボスナのコーヒー飲みたいの〜♪ って音楽も流れてるんだよね」

 

 それでつい、ボスキのことをボスナと呼び間違えてしまうんだと私はテディの顔を見やった。こっちの世界にはテレビとかCMという言葉自体ないので伝わりにくかったかな、と不安に思った私だったが、そこにあったのはテディのキラキラした顔だった。

 

「さっきの歌、主様の世界の歌ですか?」テディはなんだか楽しそうに話を続ける。「主様、歌お上手なんですね! もう一回聴きたいです!」

 

「え……っと、ただのCMの歌で……こっちの世界で言うと、宣伝ソングみたいな……」

 

「主様の世界の歌ならなんでも聴きたいです!」

 

 それでもテディはCMソングを聴きたいと言い、なんならいつものメモに使っているノートまで取り出してきた。何気なく歌ったものだが、そこまでキラキラした目で言われると恥ずかしくなってくる。

 

(というか、テディにこういう目されるとなんでもしたくなっちゃうんだよな……)

 

 純粋な心を持ったまま成人する人なんてそんなにいない。とはいえテディの場合、時が経つにつれそういう性格になったのかもしれないが……。

 

「主様……? もしかして、歌うのが本当は嫌でしたか? だったらそこまで無理しなくても……」

 

 私が黙っていたからか、テディは不安そうにこちらの顔を伺った。私は慌てて首を振った。

 

「ううん、違うの! ただ、歌が上手だなんて褒められたことなかったから驚いただけで……」私はよく流れるテレビのCMソングをよく思い出そうとした。「じゃあ、私が分かるところだけ歌ってみるね?」

 

 歌に自信がある訳ではないのだけれど……と私が言っても、テディはそんなことないと笑顔を見せてくれるばかり。私は別邸の縁側で、テディにボスナのCMソングを歌ってみることにした。

 

「ボスナのコーヒー飲みたいの〜♪」

 

 そうして私は、テディの隣でコーヒーのCMソングを歌うという、あまり風情のないことをしてしまった。こんな音痴な歌でごめん……と私は申し訳ない気持ちになっていたが、短い歌を歌い終えるとテディは盛大に拍手をしてくれてにこやかに笑ったのだ。

 

「俺のために歌ってくれた感じがして、とても嬉しかったです!」

 

 それに俺、コーヒー好きですから、と付け足すテディに私はますます恥ずかしくなった。けれど……。

 

「歌ってくれてありがとうございます、主様!」

 

 嬉しそうなテディの顔を見ていたら、私もだんだん、歌って良かったなと思えるようになっていた。

 

「……あれ? ボスキさんのところに、もう一人誰かいません?」

 

 ボスキがサボっていたところに誰かの足が並んでいた。どうやらまた別の人物がサボっているらしい。

 

「あの足は……ハナマルかな?」

 

 と私が言うと、唐突に後ろの障子が開いた。

 

「ハナマルさん、そこにいるのですか?」

 

「ユーハン!」

 

「ユーハンさん!」

 

 そう、ユーハンだ。

 

 間もなく、ユーハンはサボり魔のところに駆けて行き、ハナマルのついでにボスキも説教をされていることを、私たちは呆れながら見守るのだった。

 

 きっとこんな日常も、幸せな一瞬だと思いながら。

 

 おしまい

 

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