ポンコツ主と悪魔執事たちの現実   作:青瑠璃

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このお話はほとんどが主が登場しますが、ちょっとだけロノが登場します

良かったら読んで下さると幸いです













執事たちへのお礼

 

「よし、厨房には誰もいないね……?」

 

 ある日のデビルズパレス。私は、厨房を覗き込み、執事たちが誰もいないことを確認した。

 

(よし、次は食料庫を見に行こう)

 

 と片手にレシピの紙を見ながら食料庫へ向かう私。

 

 これから何をするって?

 

 

 ……もちろん、料理である!

 

 

 とはいえ、私はそこまで料理は上手でも好きでもなかった。でもこの前、夏バテ防止に執事たちから教わったレシピの中で、私でも出来そうなものがあった。

 

 

 その名も、冷たいおうどん!

 

 

 正式名称は忘れたが、とにかくそんな感じの料理を作ろうとしていた。うどんは、生地を捏ねて切るところから……というのは難しいので、自分の世界からうどんの乾麺を買って持ち込んできた。あとは食料庫で、うどんの材料を探すだけなのだが……。

 

「確かレシピには、カツオ節を入れるって書いていたな……」

 

 レシピと睨めっこしながら食料庫内を探していたのだが、途中であることに気がついた。この世界は、私の世界とかなり違うということに。

 

「これって……」

 

 見つけたのはカツオ節……ではなく、乾燥させたカツオの塊なのである。私の世界ではカツオ節のままお店に並んでいるが、こっちの世界には冷蔵庫がない。つまり食材の物持ちがよくないのだ。だから今から、このカツオの塊を削らないといけない。

 

「カツオなんて削ったことないんだけど……」

 

 カツオ節を削る機械だろうものは厨房にあった気がするが、私は現代社会の日本人。カツオを削ったことがない。

 

「こういうことなら、おばあちゃんにカツオの削り方を聞いて置けば良かったな」

 

 と呟いてもどうしようもない。なので私は、うどんにカツオ節を入れることを諦めた。

 

(私の家にもカツオ節は置いてないもんな……)

 

 そうして私は、ポンコツな自分でも使えるものはないかと食材を探して厨房に持ってくる。今日は屋敷にいる執事の数が少ないから、まだ誰も厨房にはいなかった。

 

「よし、作るぞ!」

 

 そして私はうどんを作り始めたのだが。

 

「わ、火力が強い……!」

 

「あれ、ちゃんと切れてない……?」

 

「ちょっと待って! 砂糖と塩、間違えてるじゃん!」

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜! 今日はオレがいなくて飯に困ってたんじゃ……って主様?」

 

 数時間後。私は、デビルズパレスの玄関で、依頼から帰ってくるロノを待っていた。

 

「ロノ〜、ごめんっ……!」

 

 私はしがみつく勢いでロノに全力謝罪をした。ロノはよく分からないなりに、とりあえず厨房へ見に行くと言ってくれたので、私もその現場へ連れて行った。

 

「な、なんですか、これ……!」

 

 厨房を見たロノは予想通りの反応を示した。

 

 それもそうだろう。なぜなら……。

 

「ごめん、ロノ……」私は言い訳を始める。「今日はロノがいないからって、夕食を作ろうと思ったの……みんなに感謝を伝えようと思って」

 

「だからって、こんなに……」

 

 ロノは言葉を詰まらせる。私に対して失礼だと思ったのだろう。だが、これは正直に言ってもいい。

 

「散らかしちゃってごめん……」

 

 食材の端材は床に散らばり、道具はいくつか割ってしまった。片付けようと出してきたホウキで液体物に突っ込んでしまい汚れが広がり……まぁ、これ以上は語らなくてもいいだろう。

 

「主様」けれど、ロノの声は明るかった。「オレたちに感謝を伝えたいって主様の気持ちは充分伝わりました! あとはオレがやって置くので、主様は休んでて下さい!」

 

「ロノ〜……」

 

 本当に、ここの執事たちは優しいな。

 

 私がそんなに酷い顔でもしているのか、安心させようとロノがニカリと笑う。ロノの笑顔は、本当に太陽みたいだ。

 

「あ、でもね」

 

「なんですか?」

 

「完成したうどんは、みんなに大好評だったの! 少し焦げちゃったんだけど……ロノも食べてくれる?」

 

 そう、うどんは完成したのだ。冷たいうどんではなく、温かいうどんを作った訳だが。

 

「もちろん、食べますよ! ありがとうございます、主様!」

 

 ロノはニッと笑った。ロノの翠玉色みたいな瞳がとても綺麗だ。

 

「ありがとう! じゃあ今用意す……」

 

 ズルッ……!

 

「きゃあ?!」

 

「おっと、大丈夫ですか? 主様!」

 

 汚れた床の上を走ったからだ。年甲斐もなく悲鳴をあげながら転びかけたところをロノが咄嗟に支えてくれた。

 

「大丈夫……ありがとう、ロノ」

 

 その後私たちは、一緒に温かいうどんを食べた。ネギしか乗せていないシンプルなうどんとなってしまったが、それはそれは、とても幸せな時間だった。

 

 

 おしまい

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