本当にせこい   作:七九六十

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03-04 林間学校 肝試し

 

 

 

 林間学校2日目の夜には毎年恒例の肝試しが行われる。

 クジで決められた男女のペアが()()()()()()()()参加しなければならない伝統行事である。

 

「じゃあ先生たちはここで一杯やってるんで、生徒の自主性を重んじて? 後はテキトーに上手くやってくれ」

 

 と言って既に出来上がっている教師の合図で始まる。

 

「スゲーな、このクジ……」

「…………」

 

 昨日のことをまだ整理できておらず、なんとなく気まずくて(らく)を避けていた千棘(ちとげ)であったが、クジを引いた結果、逃げられなくなった。

 都合良くというか悪くというか、運命に導かれるように2人はペアを組むことになった。

 

 少し赤い顔でうつむいている彼女にドキドキしつつ、それはそれとして小野寺はどうなったと辺りを見回す(らく)

 

「宮本と、つぐみ……?」

「そっとしておいてあげて」

 

 数人ほどオバケ役の方にまわっている都合で、男子の人数が不足しているらしい。そのため(つぐみ)が男子役になったと。

 落ち込んでいる彼女には悪いが、確かに適役だろう。

 

 強く生きてほしい、そう思いつつ小野寺探しを続行する。

 

「……小野寺は岬とか」

「あ、一条君は千棘(ちとげ)ちゃんとなんだね」

 

 ようやく見つけたと思ったら、いつもの組み合わせだった。

 変な男と組んでいたらと不安だったが、どうやら大丈夫だったようだと安心する。

 

「……にしても、都合よすぎないか?」

「くじって、いくらでも不正できるからね」

 

 舞斗(まいと)はニヤリと笑う。

 まあ別に、そこまであくどいことはしていない。それに引いた後にクジを交換するくらいのことは、(さと)い者なら早々に気付いている。

 

「怖がりの小咲(こさき)ちゃんと(つぐみ)ちゃんを、他の人には任せたくないからね」

「マイちゃん!」

「マイちゃん様!」

 

 飛びついてきた2人を抱きとめた舞斗(まいと)の言うように、彼女たちは極度の怖がりである。

 悲鳴をあげてへたり込み、泣いてしまう姿が容易に想像できたので、それを独占するために手を回したのだ。

 

「マイちゃん、私は?」

「るりちゃんは強い子だからなぁ」

「キャーコワイワー」

「はいはい、るりちゃんもおいで」

 

 じゃれ合う4人に和んでいた(らく)だが、隣にいる人物の様子がおかしいことに気付く。

 

「もしかしてお前……まさか」

「……苦手なだけよ」

 

 小さな頃のトラウマで、暗くて狭いところが怖くなった。

 千棘(ちとげ)はそう(つぶや)いた。

 

「ほら」

「え?」

 

 少し震えている彼女の手を握った。

 

「こうしてれば少しはマシだろ」

 

 それに、参加者は手をつなぐって決まりがあるしな。

 照れ隠しにそう言ってはいるが、顔の赤さは隠しようがない。

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの2人、どう見ても本物よね?」

「強力なライバルでも出ない限り、このまま順調に結婚まで行きそうだね」

 

 右腕に(つぐみ)、左腕に小咲(こさき)、そして背中にるりというフルアーマー状態の舞斗(まいと)

 彼ら4人は(らく)たちが良い雰囲気になったので、少し離れたところで見守っていた。

 

千棘(ちとげ)ちゃん、カワイイ」

「お嬢、カワイイです」

 

 強力なライバルになり得るポテンシャルを秘めた小咲(こさき)(つぐみ)は、この調子である。

 

 まあ彼女たちが居なくとも、まだ『(かぎ)』は2本残っている。

 つまりライバルは少なくとも2人は居るのだから、まだまだ波乱は起こるのだろう。

 

 

 がんばれ、一条(らく)

 

 負けるな、一条(らく)

 

 

 戦いの終わる、その日まで!

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 さて林間学校が無事に終わり、数日ほどが過ぎたころ。

 

「林間学校の写真が焼き上がって掲示板に張り出されてるから、各自欲しい写真の番号を書いて提出する事」

 

 朝のHR(ホームルーム)で案内があった通り、廊下には数百枚の写真が張り出されていた。

 連載時期を考慮しても、このやり方はちょっと古いような……

 

「わ~~! これ好きなの買っていいの?」

「……そーだけど、あんまり買いすぎんなよ?」

 

 そうは言った(らく)であったが、すぐさま考えを改めた。

 アレも欲しい、コレも欲しいと大はしゃぎの千棘(ちとげ)の様子を見て、まあ楽しそうだからいいか、と苦笑する。

 

「じゃあ、私たちも行こっか」

 

 小咲(こさき)に促され、自分たちも写真を眺める輪に加わる。

 学年全体だと200人を超えるため、知り合いが写っているかを探すだけでも一苦労だ。写っていたとしても見切れていたり、後ろ姿だったりと。

 まあそういう変な写り方をしていたほうが、見つけたときに楽しかったりするが。

 

「他には……ん?」

「…………」

 

 あれだけテンションの高かった千棘(ちとげ)が、何故かピクリとも動かなくなっている。

 何か変なものでも見つけたかと、その視線の先を見てみる。

 

「……おぉぅ」

 

 それは肝試しのときの2人の写真だった。

 顔を赤く染めて、手を握っている。

 

 ある程度は分かっていたつもりだったが、客観的な視点からの自分たちというのはインパクトが大きかった。

 

 

 

 2人はこの後、周囲から大量の微笑ましさたっぷりの視線を浴び、(もだ)えることになるのだが。

 

 購入リストにはこの写真をしっかりと含めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ。

 

「あれ? (しゅう)、どうしたんだ?」

 

 彼とは幼稚園からの付き合いがある(らく)であったが、まさに失意のどん底にいます、という姿は初めて見た。

 

「オレの…… オレの写真が…… バックアップまで……」

 

 うわ言のように(つぶや)いているのが聞こえるが、まあ関わらないほうが無難だろう。(らく)はそう判断した。

 コイツの写真がまともなはずがない、そういう信頼がある。

 一部の男子が周囲で心底無念そうな表情を浮かべているのが、それを後押しする。

 

 バックアップまでどうのというのなら、カメラが壊れて撮れていなかったとかではなく、その場その場で撮れていることは確認できていたのに、何かの拍子にすべて消えたとでもいうのであろうか。

 

 

 

 まさか───────

 

 そう思って振り向いた(らく)の視線に気付いたのか、舞斗(まいと)がこちらを見やる。

 そして(しゅう)と一緒に居たことで状況を察したのか、ウィンクを返してきた。

 

 

 ──────────────うん、まあ、平和なのは良いことだ。

 

 現実からの逃避を試みる(らく)であった。

 

 

 





>まだ『(かぎ)』は2本残っている。


『1人の人間に2つの(かぎ)

『この途方もない例外の意味を推し量れるか!?』

『与えざるを得なかったのだよ。その圧倒的な偉才を前に!!』




『マリー・ザ・TRI(トライ)-(パニッシャー) OF(オブ) DEATH(デス)


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