「助けてくれ……」
翌日、朝一で
もはや自分ではまとめきれない。情報を共有すれば、誰かがなんとかしてくれるだろう。
見上げる空が青い。
「まず一条と
「誰も覚えてないけどね」
るりの厳しいツッコミが入るが、事実なので反論できない。
「まあ1ヶ月程度だったらしいし、小さな子供の時だと、相手の名前じゃなくてあだ名で覚えていたりもするか」
「一条君が昔、『
「いや宮本、当事者じゃねーからってテキトーなこと言うなよ……」
可能性はあるが、チュパカブラではないらしい。思い当たる節が無い。
「で、実はそこに
「え?!」
当事者ではない
ちなみに可能性ではなく確実に居たのだが、彼女は『
「はい。時期的にお嬢とご一緒していた頃ですし、初こ」
「つぐみー?!!!」
幸いにも
「まあ
「日記……?」
「にっ、え?! 何で、え?!!」
なんで日記の話なんて、と首をひねる
なんで日記の話まで、とパニック寸前の
混乱の度合いは
「で、一条が探していた『約束の女の子』に条件が該当し、しかも『
さらに謎のキーワードを知っていたのが
「『
ザクシャなんて他で耳にしないから、何かの聞き間違いかも知んねーけど。
『人』の記憶が曖昧なので、『言葉』もその可能性があると
「ああ、ザクシャはポーランド語だよ。『Zawsze in love』でポーランド語と英語による造語」
「え?」
そう思っていた矢先に、この発言である。
「……なあ、岬。なんでそんなこと知ってるんだ? 普通、ポーランド語なんて気づかないだろ。それにさっきも……」
「覚えてないの?」
「本当に、覚えてないの? 10年前の事」
「……え?」
また1歩、距離が縮まる。
「思い出して、
眼前に顔が迫る。
鼓動が高まる。
彼より頭一つ分は低い位置から覗き込んでくる、その吸い込まれそうな瞳がトリガーとなって、1つの記憶を思い出す。
自分たち以外にも、もう1人いた。
『らっくん』
そして自分をそう呼ぶ、彼女は──────────
「悪質な記憶操作をするんじゃない。一条君も正気に戻りなさい」
「痛っ」
るりの
ちなみに
「……え?」
「今のはマイちゃんの出まかせよ」
どういうことだと目線を向ければ。
「いやぁ、ここに居る6人の内、4人が当事者っていう驚きの展開だったから。
今なら俺とるりちゃんを追加してもバレないかなー、なんて」
あっはっはー、とお気楽に笑っている。
もちろんすべてを知った上でネタに走っているだけである。
「あ、覚えてないとかじゃなくて、本当に居なかったから安心して。ちゃんとアリバイもあるから」
「アンタは何かの容疑者か」
今度の
「コ、コイツ……!」
「そっかー、お姉ちゃんは居なかったんだ……」
「…………………………ん?」
何か不穏なセリフが聞こえたような気がしてそちらを見やると、ちょっとがっかりした感じの
……いや、きっと気のせいだろう。
「それにしても何で『らっくん』なんだよ」
「いや小さい子供って、
チュパカブラとかじゃなくて。
「なるほど。そう呼んでくる女の子の姿がぼんやりと浮かんできたけど、言われてみれば小学校とかで一時期そんな呼ばれ方してたから、そっちの方か」
「…………まさか」
「私じゃないわよ」
「あれ? でも言われてみると『らっくん』って音に聞き覚えが……」
「
「…………まさか」
「私じゃないわよ」
「つまり、『らっくん』は実在した?」
「マイちゃん、実在したのは『らっくん』じゃなくて、『らっくんと呼んでいた女の子』だよ」
「いや小野寺、オレも実在してんだけど……」
「え、あ、ゴメンなさい!」
「『ひょうたん島からトラヒゲ』というか『嘘から愛と誠』というか、思わぬところでもう1人女の子がいることが分かりましたな」
「マイちゃん、ネタが苦しいうえに古いわよ」
ちなみに
「でも、それだけだと何の手掛かりにもならないのよね」
「
「そういえば今日、転入生が来るらしいですよ」
そういえば朝の
それどころか授業も始まっていることからは目を逸らす。
「……ねえ一条、
「ああ、そうだが。それがど…………まさか」
ここまで来たら、いくら何でも無関係なんてことは無いだろう。
「しかも
「オレと同じヤクザか?」
「じゃあ私も同じギャングに1票」
「マフィアじゃないの?」
「カモッラかもしれませんね」
「えーと……」
流れ的に自分の順番だとは分かっている
オロオロする彼女に、救いの手が差し出される。
「ほら
「変なことを教えない」
るりちゃんは厳しい。
「んー…………あ、警察」
辺りを見回し何かヒントが無いかと探していたときに、偶然にも奇妙な集団を見つける。
おそらく転入生の関係者だろう。
というか周囲に世界の犯罪組織に関するヒントがある学校とか、嫌過ぎる。
「警察関係者か、それとも政治家かしら」
「どっちも嫌だ……」
るりの予想に、
「つぐみ、ちゃんと隠しておきなさいよ?」
「はい、お嬢!」
いろいろと
「ねえ一条君。あなたの
「え? ああ、親父のニュアンスだと、そんな感じだったけど」
「そう……」
るりは彼の返答を受けて、しばし考え込む。
「ということは、相手は10年前の事を覚えている。
少なくとも一条君に関することは覚えていて、10年たった今でも結婚していいと思えるほどの事が過去にあった。
警察を動かせるので、一条君と
「なんか
TRIPのほうでもイケるのがすごいね、などと
「彼女が『10年前に約束した女の子』である可能性があるけど、一条君はその場合、どうするつもり?」
るりが残酷な問いかけを行う。
かつて
現在と過去、どちらを取るのか。
「…………オレは」
答えが出せない。
小野寺
「…………………………オレは」
こちらをまっすぐ見つめる瞳と、不安気に揺れる瞳。
それを見て覚悟が決まる。
「オレは、『10年前に結婚の約束をしたから』って理由では、今のその子を好きにはなれない」
目の前に居る2人は、どちらも『現在の』自分が好きな相手だ。
「でも、もし『過去のオレとはいえ、10年間も思い続けてくれた子』だったら、その子に対して強くは出れないと思う」
10年は決して軽いものではない。まして16歳の自分たちにとっては、物心ついてからの人生のほとんどと言っても過言ではない時間である。
1人分の人生を背負えるほど、今の一条
「だから
そう言って頭を下げる
「まあそこで毅然とした態度をとる
「だから頑張ってね、
「おう、任せろ
「あの2人、自分たちは
「るりちゃん、空気読んで。せっかくカッコよく締めたんだからさ」
「やっぱり、ヒロインは最初から
「それだと最後の流れは『