しばらく経って。
さすがにこの状態を何とかしなければと、脳みそをフル回転する
「お前って、体が弱かったんじゃなかったか?」
「あら、そういえば」
ふと
小さな頃の彼女は病弱で、ほとんどベッドの上にいた記憶がある。
ハッとした表情の
「どうしましょう。興奮してしまったせいか目まいが……」
うるんだ瞳で見上げてくる。
「
ぜひ2人きりで、という発言を加味せずとも、胡散臭さが凄い。
「ん? ……そうだな」
しかし同時に、なんとなくそれだけではない。よく見ると少し呼吸が乱れていることに
「一条、どれ使う?」
「ん?」
担架。
まあ病人なのだから正しいが、少し大げさではないだろうか。
車椅子。
これも病人には使えるが、階段が少し厳しい。
背負子。
これなら段差も超えられるが、病人にはちょっと。
長めの棒とロープ、そして焚き火セット。
どこからともなくドンドコドンドコと太鼓の音が聞こえてくる。
「さ、さあ橘、早く行こう!」
「あっ、そんな強引な」
慌てて
続くキャスター付き拘束具は見なかったことにした。
「ありがとうございます、
「……そりゃどーも」
保健室のベッドに腰掛けた
『早く』と言いつつも、自分を気遣った速度で手を引いてくれたことに喜びを感じる。
「さあ
「あ、お構いなく」
関係者である
この中で後半の3人については問題ない。お茶を片手に静観の構えだ。茶請けに
ただ何でその中に本田も混ざっているのか。あなたは生徒じゃないから見えるところに居ちゃダメだし、そもそもコッチ側でしょうに。
最大の
いや、『
問題は……
「昔みたいに『ちとげおねーちゃん』って呼んでいいのよ?」
「そげなこつ、一度も言うたことは無か!」
実は『ちとげしゃん』と呼んでいた若かりし頃の自分を思い出し、動揺のあまり方言が飛び出す。
「……桐崎さん、あなた随分と変わりましたわね」
「よんどころない事情があってね」
「まあ、それはともかくとして」
コホンと咳ばらいを1つ。
「さあ
「式!? いやいやちょっとタンマタンマ!! いきなり何の式だよ、しかも2人きりじゃねーし!!」
勢いで押すことにした
「強いわねこの子……」
「見た目に反して
ちなみに
「いやですわ
なんせ
赤くなった
「……橘。いや、ほんとスマン。悪いのはウチの親父なんだが、それでもやっぱりスマン」
非常に申し訳ないことだが、と
「親父から
「……は?」
恨むならオレの親父を恨んでくれ。
確かに
しかしこの10年間、
「い、いえ、まだです! まだ
それは『
「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! われこそは九州は橘───」
「あんたまでボケ始めると収拾つかなくなるから止めなさい!」
本当に収拾がつかない。どうしたものか。
「と、とにかく!
これであと160話は戦えます! と息巻く
しかし戦い抜いた先に待っているのは、地獄である。
「な、なんで橘まで『
「え?」
まさか『
「コイツの『
橘と
10年前のあの場所に居た2人が持っているのだ。もしかしたら残りの2人、小野寺とつぐみも持っているのか?
そう思って
「……うん。持ってるよ」
「なっ?!」
胸元から小さなアクセサリが現れる。
「やっと、気付いてくれたんだね」
「なんで……」
先の2つとはデザインが異なる『
「なんで……なんで、岬が持ってんだよ?!」
「あれ? え?」
これには橘
「一条、よく思い出して。俺は『あの場所には居なかった』とは言ったけど、『結婚の約束をしていない』とか『
「た、たしかに……」
「まさか、お前も……」
その問いに、
場に、緊張が満ちる。
「まったく……」
るりが呆れた様子でため息を1つ、同時に
「え、おい」
突然の行動に、
皆に見えるよう『
なんと、先端が3色に光りだしたではないか! ピロピロと音まで出して!
「………………え?」
「今のはマイちゃんの出まかせよ」
どういうことだと目線を向ければ。
「いやぁ、林間学校で
近所の雑貨屋でそれっぽいヤツがあったから、仕込んでおいたんだよね」
あっはっはー、とお気楽に笑っている。
もちろんすべてを知った上でネタに走っているだけである。
「あ、『持っていないとは言っていない』けど、それは『持っている』ことにはならないから注意してね。ちゃんと言葉の意味を捉えないと危ないよ?」
「アンタは何かの詐欺師か」
今度の
「コ、コイツ……!」
「さすがはお姉ちゃん。参考になるなー」
「…………………………ん?」
何か二重の意味で不穏なセリフが聞こえたような気がしてそちらを見やると、ちょっと感心した様子の
……いや、きっと気のせいだろう。
「さて、橘…… 橘? おーい?」
「……ハッ?!」
ちょっと展開に振り回されている
咳払いなんてしつつ、可能な限り真面目な空気を作り出す。
「…………オレはこの10年で、いい意味でも悪い意味でも、変わってしまった」
10年間変わっていない、胸に下げたペンダントを握りしめる。
「新しい出会いがあって、その人たちに影響を受けて。
オレはもう、10年前に好きだと言ってもらえたオレじゃないんだ」
一条
10年も想い続けてくれた女の子に告げるには、酷なセリフである。
「だから橘も、10年前に『約束』したってだけで、オレなんかに……」
「
「10年前に『約束』したから好きなんじゃなくて、好きだから『約束』したんです。
そしてそれは今も変わらず、10年たっても好きなんです」
『約束』が心の支えになったのは確かだが、それだけでは10年も頑張れない。
「それに『変わった』というなら、
『出会い』と言うなら、今日
あの時から成長した、今の
「だからあなたのために素敵になった今の
「もう
そう言った
「……まったく、とんだ
笑顔で固まったまま、動かない。
「まりかー?」
「橘? ……え?」
すると突然、
「……お嬢様のお体が弱いのは確かですが、今回のは関係ありません。オーバーヒートしただけですね」
途中で限界を迎えていましたが、決め台詞が間に合って良かった。
彼女を診察した本田はこのままベッドで寝かせておけば大丈夫でしょうと周りに説明しつつ、そんな事を考えていた。
「……岬様。これからもお嬢様の事をよろしくお願いいたします」
そう言って頭を下げる彼女に、驚いた
「止めないんですか? おそらく、いや絶対に今回の原因はコイツですよ?」
「……体調に配慮していただけるのはありがたいですが、体調を理由に遠慮されるのは、淋しいですからね」
小さい頃から
「本田さん、