保健室から教室に戻る途中、
「ねえ、マイちゃん。以前言ってた『助けたい女の子がいる』って、もしかして……」
その言葉に一行の足は止まり、視線は
「……その子の家庭は、とんでもない問題を抱えていてね。
誰もその子を助けようとしないのなら、俺が助けてやるって意気込んでいたんだけど」
特に隠すようなことではないため、
「その
「原因となっている家庭環境を強引に変えるって意味であれば、すぐにでも助けられるんだ。
でもそれだと根本的な解決にはならなくてね」
最大の問題は、彼女が今の環境を受け入れていることにある。
しかもそれが諦めによるものだというのが、解決を難しくしているのだ。
もしこのまま環境を変えてしまえば、次はそちらの環境をただ受け入れるだけになってしまう。
彼女に必要なのは、『自分の意思』なのだ。
「年内には下準備が終わって、いつでも助けられるようになる。あとは切っ掛けだけなんだ」
この特殊な家庭環境は、彼女の家が何百年と続く歴史を持っていることに基因している。
それだけ影響が根深く広範囲に達しているのだが、代わりに情報が集めやすい。
関わる人間が多い分、それぞれが持つ情報を比較して精査しやすいのだ。
そこから見えてくる『過去』と、そこから推測できる『未来』。
おそらく最大のチャンスが、もうすぐ訪れる。
「………………なあ、岬。オレに手伝えることってあるか?」
「え?」
「いや、いつも世話になってるからってわけじゃないけど、何か手伝えたらなって」
普段から助けられていることへの恩返しをしたいという気持ちはもちろんある。
それだけではなく、自分が役に立てるのかは分からないが、友人の
「お姉ちゃん、私も手伝う!」
「もちろん私も手伝うよ」
続いて
彼女たちも同じ気持ちなのだ。
自分だけで実行するより、皆が協力してくれたほうが大きな効果が見込めるのだ。
「……じゃあ、頼らせてもらおうかな。ただし、みんなが思うような形じゃないけど」
「いや、何させる気だよ」
「だって、一条って計画通りに人を助けるってできそうにないし。
絶対にその場の勢いで行動するし、しかもその方が上手くいきそうなのがまた」
だから事前に知らせずに、全員まとめていきなり巻き込む形で参加させてしまおうかと。
そう笑いながら告げられると、少し不安になってくる。
「……それで大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。フォローは完璧にやるから、絶対に成功させる」
その自信はどこから来るのかと問いたいが、まあ大丈夫なのだろう。
なんだかんだと今までの実績が証明している。
それぞれ付き合ってきた時間は違えど、全員が同じように信頼を寄せているのだ。
「期待してるよ?」
「……お手柔らかに頼む」
今は女性陣のように『がんばるぞー』と
どうせまだまだ先の話である。
「一条君は
「一条様は
「おいコラ、『良い意味で』と付ければ何言っても許されるわけじゃねーぞ」
るりと
「じゃあ『良い人なんだけど』だったら?」
「それはホントやめて」
そんなこんなで彼らは
◆
「あれ? 一条、何かあったの?」
翌日。
朝から全身で疲労困憊を主張する
「……昨日、放課後に橘を見舞いに行ったときに、そのまま家まで送っていくことになってな……」
「いきなり相手の家とか、展開早いね」
「しかも親父さんが居た……」
「わーお」
見た目がヤクザよりおっかない警視総監ってなんだよ……
ちょっと精神的疲労が漏れてしまう。
「ただまあ、
ちなみに
相手が覚えているかは別だが。
いや、おそらく覚えてはいないだろうが。
「2人とも、自分の娘のことを心配して、そして信じてた。その姿が、なんかカッコよかった。
それに比べて、ウチの親父のダメさ加減が、ちょっと……」
娘と息子の違いかも知れねーけど、もうちょっと、こう……
そう
『大丈夫。君等4人の母親も呆れるほど酷いから。俺の両親も同じくらい酷いから』
◆
「
「おめでとー」
「おめでとうございます」
「ありがとう、マイちゃん、るりちゃん、つぐみちゃん!」
当日は家族と過ごすので、その前後どちらかの週末に
今年からは
「~♪」
ご満悦の
『来年こそは一条を入れて4人になるのかな』
『無理ね』
『る、るりちゃんひどい!』
『それとも、ワタシ彼と2人きりで過ごすから、なんて言うのかしらね』
『うぅぅ』
同じ4人でも、意味合いが異なる。
「マイちゃん」
そんな彼の心情を察したのか、
「私、幸せだから」
無理をしているわけではなく、
自分は、新しい道を進んでいるから。
彼女はそう伝えてくる。
「そんな
「え?」
るりはそう言って
「名付けて『プレゼントはワタシ』作戦」
「わー、ありがとう、るりちゃん!」
「ほほう、そう来たか」
「あ、私のときもぜひお願いします」
いい仕事した、と言わんばかりの彼女だが。
その油断が命取り。
「まさか、ネタが被るとは」
「え?」
どこからともなく取り出されたリボンで、るりは後ろ手に拘束された。
「名付けて『プレゼントはワタシ』作戦」
「わー、ありがとう、マイちゃん!」
「え?」
「まあこうなりますよね」
あっという間に前方を
「ま、待って
「ふふっ、るりちゃんカワイイ」
るりちゃんも嬉しそうで何よりです。
鬼丸「『10年前に約束をしたこと、
鬼丸「ずっと待っていた展開なのに、どうも気が晴れん」
鬼丸「
そのせいでどうしてもワシの母ちゃんを思い出しちまって、
あれ以降
鬼丸「ワシはどっちを応援すれば……」
横綱「グダグダとうるせぇ野郎だな!」
横綱「何を迷う必要がある。両方かわいいで応援すればいいじゃないか。
確かに最終的に選ばれるのは1人だ。フラれた
横綱「だが大切なのは『課程』だ。
たとえフラれたとしても、描写次第では本命よりも魅せる事ができるからな」
横綱「だから無理に肩肘張るな」
横綱「俺たちはその『課程』を、推しを応援しつつ手の平大回転で楽しみゃいいんだよ」