本当にせこい   作:七九六十

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原作:第40話ウソツキ~第45話モヤモヤ まで

・夏休み編。
・当店にはキムチも寝落ちもございません。
・キムチをやるのはいいけど、回をまたがずに次のページで拾うくらいじゃないと……
・難聴系をやるのはいいけど、不可抗力にしないと……寝落ちはさすがに……




05 - ウソツキ
05-01 夏休み 勉強会


 

 

 

 夏休み。

 今日はみんなで(らく)の家に集まって勉強会。

 

「私、友達の家で勉強会って初めてなのよね~」

 

 千棘(ちとげ)がわくわく、そわそわしている。

 以前は教室だったり図書室だったりで、誰かの家でというのは初めてである。

 

「わ~、広い玄関……」

 

 小咲(こさき)は初訪問のため、キョロキョロと辺りを見回している。彼女は(らく)と中学の頃からの付き合いがあるが、お宅訪問は初めてである。さすがに女子中学生をヤクザの家にというのは舞斗(まいと)(らく)に止められていたのだ。

 しかし今回は千棘(ちとげ)という恋人兼ギャングの娘が居ることと、高校生になったこと、参加人数が多いことでまあなんとか、という経緯があったりする。

 

「マイちゃんは手ぶらなのね」

「夏休みの課題は、夏休みに入る前に終わらせる派だからね」

「確かに早めに済ませておくに越した事はありませんが……」

 

 舞斗(まいと)はもうやることがないので、本日の目的を完全に無視している。

 るりも読書感想文のためだといって小説を持ってきているので、あまり他人のことを言えないが。

 (つぐみ)も何やら大きな機械を抱えており、コチラも他人の事を言えないが。

 

(らく)様ー!! お会いしたかったですわ~!!」

「おい、橘、くっつくなって!」

 

 万里花(まりか)はいつものように(らく)に飛び掛かり、千棘(ちとげ)の機嫌が少し悪くなった。

 

「……なぜ貴様がここに居る、舞子(しゅう)

「嫌だなぁ、水臭い」

 

 (しゅう)の顔には『面白いことは特等席で楽しまなきゃ』と大きく書かれている。

 (つぐみ)の機嫌が少し悪くなった。

 

 

 

 

「それで、今日はつぐみの発案で集まったわけだが……」

 

 そう言って(らく)は彼女に目を向ける。

 そろそろツッコミが必要だろう。

 

「明らかに勉強会にふさわしくない機械(そいつ)は何だ?」

 

 電子レンジほどの大きさの四角い箱。何やら『ガー』と音を出している。

 

「あれ、一条は知らないの? これは嘘発見器でね」

 

 そう言って舞斗(まいと)は機械から伸びるコードを掴む。

 

「こうやってセンサーを両手に握って嘘をつくと、『ビー!!』って音がなるんだよ」

 

 

『ビー!!』

 

 

「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」

 

「ほらね?」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

「えー、先ほどマイちゃん様から説明があったとおり、これは嘘発見器になります。

 嘘を検知すると音が鳴り、中央の針の振れ幅でその度合いを測ります」

 

 気を取り直(なかったことに)して。

 (つぐみ)は機械についての説明を行う。

 

 ちなみに舞斗(まいと)はこれ以上の混乱を起こさないよう、小咲(こさき)によって取り押さえ(抱きしめ)られている。

 

「……マイちゃん様、どうやったら左右にしか動かない針で、富嶽三十六景・神奈川沖浪裏を描けるんですか」

「練習したからね」

 

 既にもう1つ、ネタを仕込んでいたようだ。

 

「機械については分かったが、なんのために持ってきたんだ?」

「実はビーハイブ(ウチ)御二人の仲を疑う者(クロード)が居まして、嘘発見器(これ)で試してみようという流れになりました」

「流れになりました、って……」

 

 事情を知らない(察してはいる)万里花(まりか)が居るため、少しぼかしながら背景を説明をする。

 

「そういうのって、もっとバレないように使わせるものでは?」

「この見た目で、できるとでも?」

 

 万里花(まりか)からもっともな質問が出るが、(つぐみ)からもっともな答えが返ってくる。

 高さ50cmほどの金属製の箱で、あからさまなセンサーまで見えているのである。むしろこれが何かを知らせて、プレッシャーをかけた方が得策である。

 

「では、一条様からどうぞ」

「まあそういうことなら、やるしかないか……」

 

 (らく)はそう言ってセンサーを握る。

 嘘発見器の見た目がただの箱にしか見えないことで油断したのと諦めの境地に達したのとが合わさって、もはや流れ作業の様だ。

 

「愛してるぜ、千棘(ハニー)

 

 機械はピクリともしない。

 

「ほれ」

「まあ、そうなるわよね」

 

 今度は千棘(ちとげ)が握る。

 

「私も愛してるわ、(ダーリン)

 

 機械はピクリともしない。

 

「あ、そういう趣旨なんですね」

 

 負けてられません、と万里花(まりか)が握る。

 

「愛してますわ! (らく)様!」

 

 機械はピクリともしない。

 

 怒涛の三連撃に、周囲からは拍手と歓声が上がる。

 

「御三方はさすがですね」

 

 (つぐみ)は結果を記録にしっかりと残す。

 

「いやなに、当然の結果だよ」

「そうね、当然の結果よね」

「当然の結果ですわー!」

 

 『嘘発見器、何するものぞ』と調子に乗ってキャラクターを見失いつつある(らく)がいる。

 が、それも次のセリフを聞くまでだった。

 

「このビックリドッキリメカ、ビーハイブ(うち)が尋問用に使っていた特注品なんですけどね」

「ん?」

「え?」

「当然の結果ですわー!」

 

 的中率は驚異の98%を誇る、すごいヤツなんです。

 

「素晴らしいデータが取れました。これなら依頼主(クロード)も納得するでしょう。ご協力ありがとうございました」

「98…………マヂか」

「え、待って、つぐみ、え?!」

「当然の結果ですわー!」

 

 ノルマ達成である。

 

「それはそれとして、次は誰がやります?」

「位置的に私かな?」

 

 他にも何件かサンプルを取っておいた方が、結果の精度を見るときにありがたい。そのためこのまま続行することになり、今度は小咲(こさき)がセンサーを握る。

 両手を空けるために放流された舞斗(まいと)は、今は(つぐみ)によって取り押さえ(抱きしめ)られている。

 

「え~と、じゃあ私は……」

「まあまあ、少し待ち(たま)へ」

 

 そこに、今まで沈黙を保ってきた(しゅう)が割り込む。

 

「君たち、嘘発見器の使い方がなっちゃいない。こういうのは自分で宣言するために使うもんじゃない、他人からの質問に答えるものだろ?」

 

 まあ一理ある。

 

「そういうわけでオレからの質問をいこう!

 ズバリ、小野寺のバストゥッ?!」

 

 百害あったので、舞斗(まいと)が指弾で黙らせる。

 彼は指を弾いただけで弾丸のような空圧を作れるのだ。主に危機感が足りないモノに使われる。

 

「勉強会が終わったら目が覚めるよう、調整しておいたから」

「さすがはマイちゃん様です」

 

 今は拍手できない(つぐみ)

 ところで始まってもいない勉強会は、いつ終わるのだろうか。

 

「……まあ、(しゅう)の自業自得だわな」

「あ、では(わたくし)から質問が」

 

 ハーイと万里花(まりか)が手を上げる。

 

「小野寺さんは、(らく)様の事をどう思ってらっしゃるのですか?」

 

 いきなりの修羅場・再び(シリアス)だった。

 

「もしかしたら昔、(らく)様と結婚の約束をしたかもしれない。あなたも(らく)様を?」

 

 真剣な表情で、彼女はそう問いかける。

 

「確かに()、そんな約束をしたのかもしれないけど。

 今は良い()()()だと思ってるよ」

 

 何の気負いも焦りもなく、いつもの笑顔でそう言ってのける小咲(こさき)

 機械はピクリともしない。

 

『良いお友達…… ちょっと残念だけど、ちょっと嬉しいかも……』

 

 (もだ)える(らく)に、千棘(ちとげ)万里花(まりか)視線(ビーム)が突き刺さる。

 

「じゃあ次は、つぐみちゃんかな?」

「私ですか?」

 

 いやあ緊張しますねー、と(つぐみ)

 両手を空けるために放流された舞斗(まいと)は、今はるりを取り押さえ(抱きしめ)ている。

 

「え、ちょっ、何で私だけ?!」

「そりゃあ両手を広げて待ってるんだから、こうなるよね」

 

 るりが隙を見せたのが悪い。

 

「私から質問! つぐみは今、好きな人は居ますか!」

 

 こうなりゃあんたも道連れよと意気込む千棘(ちとげ)

 

「え? あ、はい。マイちゃん様のことが好きですよ?」

 

 あっさりと()なされた。

 機械はピクリともしない。

 

「くっ、腕を上げたわね。もう(原作)のつぐみと思って油断してはダメね……」

「恐れ入ります」

 

 居るか居ないかだけでよかったのに、この返しである。

 

「今度の私の誕生日にも」

「それ以上はいいから」

 

 更なる追撃が来そうだったので(さえぎ)っておく。

 ちなみに(つぐみ)の誕生日は7月30日である。孤児のため実際の誕生日が分からず、千棘(ちとげ)の発案で彼女たちが初めて出会った日を設定しているようだ。

 

「では次は宮本様で」

「ん」

 

 舞斗(まいと)取り押さえ(抱きしめ)られているものの両手は自由なので、るりはそのまま受け取る。

 

「特にいません」

 

 間髪入れず、淡々と、表情を変えずに言い放つ。

 

 この流れで来る質問は分かっている。ならば平静な状態のうちに答えてしまえばいい。

 所詮は機械、質問の前後での変化を検知しているのだろう。であれば何の反応も読み取れまい。

 

 彼女はそう、勝利を確信した。

 

 

 

 

 

『ビー!!』

 

 機械からは音が鳴り、センサーはカタカタと震えている。

 

「え、ちょっ、何で私だけ?!」

「文科系硬派を気取って失敗した、るりちゃんの図」

「るりちゃんカワイイ」

 

 すっかりオチ担当になってしまった、るりちゃんカワイイ。

 余談だが、舞斗(まいと)は人体を通してでも機械を操作できるのだ。

 

「では一回(ひとまわ)りしましたので、勉強会のほうに移りましょうか」

「え? 俺は?」

「マイちゃんはダメだよ」

「嘘発見器で一曲奏でるくらいはやりそうだからな」

 

 (らく)がそうボヤキながら機械を脇にどける。

 そのあとはしっかりと勉強に励む一同であった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「クロード様、これが今回の報告書になります」

「うむ、ご苦労」

 

 その日の夜。(つぐみ)上司(クロード)に任務の完了を伝えた。

 今回の件の詳細な内容と分析結果をまとめた報告書を置いて、彼女は退室した。

 

「ふむ……」

 

 報告書に目を通す。

 

 そこには機器が正常に稼働した事と、各質問に対する回答と反応が記されていた。

 (らく)千棘(ちとげ)を愛していること。

 千棘(ちとげ)(らく)を愛していること。

 どちらも嘘ではない。

 

「…………」

 

 読み進めて、内容を理解して。

 思っていたよりも自分の目が曇っていたことを自覚する。

 

 背もたれに深く体を預け、天井を仰ぎ見る。

 

「……認めざるを得んか」

 

 元々、自分の勘を根拠にアーデルト(ボス)の言葉を疑っているだけであった。

 

 いや、私欲すら混じっているか。

 自分が手塩にかけて育てた自慢の()()ともいえる(つぐみ)誠士郎。実力・名声ともに問題なく、組織からの信頼も厚い。

 自分が後継人となり()とお嬢でビーハイブを更に盛り立てていく。そんな夢を見てしまったが故に、目が曇ったのか。

 

 自分の目で、そして機械で確認して。これ以上はただの言い掛かりだ。自分自身だけでなく、組織(ビーハイブ)の否定にもつながってしまう。

 

 このままでは組織内に不和が生じ、何より大切なお嬢に害となる可能性すらある。

 

 ならば、自分がこれからすべきことは……

 

 

 

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