・夏休み編。
・当店にはキムチも寝落ちもございません。
・キムチをやるのはいいけど、回をまたがずに次のページで拾うくらいじゃないと……
・難聴系をやるのはいいけど、不可抗力にしないと……寝落ちはさすがに……
05-01 夏休み 勉強会
夏休み。
今日はみんなで
「私、友達の家で勉強会って初めてなのよね~」
以前は教室だったり図書室だったりで、誰かの家でというのは初めてである。
「わ~、広い玄関……」
しかし今回は
「マイちゃんは手ぶらなのね」
「夏休みの課題は、夏休みに入る前に終わらせる派だからね」
「確かに早めに済ませておくに越した事はありませんが……」
るりも読書感想文のためだといって小説を持ってきているので、あまり他人のことを言えないが。
「
「おい、橘、くっつくなって!」
「……なぜ貴様がここに居る、舞子
「嫌だなぁ、水臭い」
「それで、今日はつぐみの発案で集まったわけだが……」
そう言って
そろそろツッコミが必要だろう。
「明らかに勉強会にふさわしくない
電子レンジほどの大きさの四角い箱。何やら『ガー』と音を出している。
「あれ、一条は知らないの? これは嘘発見器でね」
そう言って
「こうやってセンサーを両手に握って嘘をつくと、『ビー!!』って音がなるんだよ」
『ビー!!』
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「ほらね?」
◆
「えー、先ほどマイちゃん様から説明があったとおり、これは嘘発見器になります。
嘘を検知すると音が鳴り、中央の針の振れ幅でその度合いを測ります」
ちなみに
「……マイちゃん様、どうやったら左右にしか動かない針で、富嶽三十六景・神奈川沖浪裏を描けるんですか」
「練習したからね」
既にもう1つ、ネタを仕込んでいたようだ。
「機械については分かったが、なんのために持ってきたんだ?」
「実は
「流れになりました、って……」
事情を知らない(察してはいる)
「そういうのって、もっとバレないように使わせるものでは?」
「この見た目で、できるとでも?」
高さ50cmほどの金属製の箱で、あからさまなセンサーまで見えているのである。むしろこれが何かを知らせて、プレッシャーをかけた方が得策である。
「では、一条様からどうぞ」
「まあそういうことなら、やるしかないか……」
嘘発見器の見た目がただの箱にしか見えないことで油断したのと諦めの境地に達したのとが合わさって、もはや流れ作業の様だ。
「愛してるぜ、
機械はピクリともしない。
「ほれ」
「まあ、そうなるわよね」
今度は
「私も愛してるわ、
機械はピクリともしない。
「あ、そういう趣旨なんですね」
負けてられません、と
「愛してますわ!
機械はピクリともしない。
怒涛の三連撃に、周囲からは拍手と歓声が上がる。
「御三方はさすがですね」
「いやなに、当然の結果だよ」
「そうね、当然の結果よね」
「当然の結果ですわー!」
『嘘発見器、何するものぞ』と調子に乗ってキャラクターを見失いつつある
が、それも次のセリフを聞くまでだった。
「このビックリドッキリメカ、
「ん?」
「え?」
「当然の結果ですわー!」
的中率は驚異の98%を誇る、すごいヤツなんです。
「素晴らしいデータが取れました。これなら
「98…………マヂか」
「え、待って、つぐみ、え?!」
「当然の結果ですわー!」
ノルマ達成である。
「それはそれとして、次は誰がやります?」
「位置的に私かな?」
他にも何件かサンプルを取っておいた方が、結果の精度を見るときにありがたい。そのためこのまま続行することになり、今度は
両手を空けるために放流された
「え~と、じゃあ私は……」
「まあまあ、少し待ち
そこに、今まで沈黙を保ってきた
「君たち、嘘発見器の使い方がなっちゃいない。こういうのは自分で宣言するために使うもんじゃない、他人からの質問に答えるものだろ?」
まあ一理ある。
「そういうわけでオレからの質問をいこう!
ズバリ、小野寺のバストゥッ?!」
百害あったので、
彼は指を弾いただけで弾丸のような空圧を作れるのだ。主に危機感が足りないモノに使われる。
「勉強会が終わったら目が覚めるよう、調整しておいたから」
「さすがはマイちゃん様です」
今は拍手できない
ところで始まってもいない勉強会は、いつ終わるのだろうか。
「……まあ、
「あ、では
ハーイと
「小野寺さんは、
いきなりの
「もしかしたら昔、
真剣な表情で、彼女はそう問いかける。
「確かに
今は良い
何の気負いも焦りもなく、いつもの笑顔でそう言ってのける
機械はピクリともしない。
『良いお友達…… ちょっと残念だけど、ちょっと嬉しいかも……』
「じゃあ次は、つぐみちゃんかな?」
「私ですか?」
いやあ緊張しますねー、と
両手を空けるために放流された
「え、ちょっ、何で私だけ?!」
「そりゃあ両手を広げて待ってるんだから、こうなるよね」
るりが隙を見せたのが悪い。
「私から質問! つぐみは今、好きな人は居ますか!」
こうなりゃあんたも道連れよと意気込む
「え? あ、はい。マイちゃん様のことが好きですよ?」
あっさりと
機械はピクリともしない。
「くっ、腕を上げたわね。もう
「恐れ入ります」
居るか居ないかだけでよかったのに、この返しである。
「今度の私の誕生日にも」
「それ以上はいいから」
更なる追撃が来そうだったので
ちなみに
「では次は宮本様で」
「ん」
「特にいません」
間髪入れず、淡々と、表情を変えずに言い放つ。
この流れで来る質問は分かっている。ならば平静な状態のうちに答えてしまえばいい。
所詮は機械、質問の前後での変化を検知しているのだろう。であれば何の反応も読み取れまい。
彼女はそう、勝利を確信した。
『ビー!!』
機械からは音が鳴り、センサーはカタカタと震えている。
「え、ちょっ、何で私だけ?!」
「文科系硬派を気取って失敗した、るりちゃんの図」
「るりちゃんカワイイ」
すっかりオチ担当になってしまった、るりちゃんカワイイ。
余談だが、
「では
「え? 俺は?」
「マイちゃんはダメだよ」
「嘘発見器で一曲奏でるくらいはやりそうだからな」
そのあとはしっかりと勉強に励む一同であった。
◆
「クロード様、これが今回の報告書になります」
「うむ、ご苦労」
その日の夜。
今回の件の詳細な内容と分析結果をまとめた報告書を置いて、彼女は退室した。
「ふむ……」
報告書に目を通す。
そこには機器が正常に稼働した事と、各質問に対する回答と反応が記されていた。
どちらも嘘ではない。
「…………」
読み進めて、内容を理解して。
思っていたよりも自分の目が曇っていたことを自覚する。
背もたれに深く体を預け、天井を仰ぎ見る。
「……認めざるを得んか」
元々、自分の勘を根拠に
いや、私欲すら混じっているか。
自分が手塩にかけて育てた自慢の
自分が後継人となり
自分の目で、そして機械で確認して。これ以上はただの言い掛かりだ。自分自身だけでなく、
このままでは組織内に不和が生じ、何より大切なお嬢に害となる可能性すらある。
ならば、自分がこれからすべきことは……