本当にせこい   作:七九六十

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05-02 夏休み 夏祭り

 

 

 

 恋むすび 効能

 

 一.良縁に恵まれます

 二.片思いが実ります

 三.古来より恋むすびは

   男性が女性に渡すと

   求婚を意味します

 

 

「マイちゃん様、三番は効能ではないのでは?」

「客寄せ用の商品なんて、そんなもんだよ」

「しかも恋ですらないよね」

「明らかに付け足した感のある文章量よね」

 

 近所の縁日にやってきた(つぐみ)舞斗(まいと)小咲(こさき)、るり。

 4人は浴衣姿でのんびりと楽しんでいる。

 

 ここは祭りの夜だけ販売するスーパーウルトラ縁結びアイテム、“恋むすびのお守り”で有名である。毎年販売直後に売り切れるほどの人気であり、相応に効果が期待できる代物なのだが、如何せんこの4人には必要のないものだ。どうしても一歩引いた目線で見てしまう。

 

 ちなみにこの時、(らく)千棘(ちとげ)万里花(まりか)は恋むすびを買うために一緒に並んでいたりする。

 しかし人ごみのせいで万里花(まりか)は途中ではぐれてしまうし、購入できたのも1つだけ、そして(らく)は効能を知らなかったという事情が重なり、恋むすびを千棘(ちとげ)に手渡して効能三.が発動するという珍事が起きるのだが、今は関係ない。

 

「焼きそば、たこ焼き、お好み焼き。匂いに惹かれはするんですけどね」

「自分で作れるようになると、途端に買わなくなるよね」

「アレンジしやすいから、家でもよく作るしね」

「おいしいものが食べれて、余は満足じゃ」

 

 (つぐみ)舞斗(まいと)のマンションに部屋を借りているが実質同居のようなもので、るりは毎日のように遊びに来ており、また小咲(こさき)も週末だったり家に両親が居ないタイミングで泊まったりする。

 そのため食事を一緒にする機会が多く、味付けの好み等が段々と似てきているのだ。(つぐみ)小咲(こさき)の料理の師が舞斗(まいと)というのも影響しているのだろう。

 

 まあ縁日に来て何も買わないというのもアレなので、普段食べないものや変わり種の新商品をいくつか買ってはいる。

 

「マイちゃん様、あれは何ですか?」

「カタヌキだね」

 

 割れやすい素材でできた板から特定の図形を抜き出す遊びである。この板は食べることもでき、最近は美味しいものが増えてきた。

 

 ちなみに舞斗(まいと)たちはこの地域の屋台では出禁となっている。

 

「出禁って、何かしたんですか?」

小咲(こさき)ちゃんが最高難易度のものを次々クリアしちゃってね」

「マイちゃんが5枚重ねて一度にクリアしたせいだと思うよ?」

「どっちもどっちよ」

 

 店の利益を守る為には致し方ない処置である。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「今年もナンパ96連敗目……」

「おい舞子、そろそろ止めよーぜ……」

「う~む……」

 

 そこでふとクラスメートたちの姿を見かける一行。

 実に関わり合いになりたくない会話をしている。

 

「……いつもどこかに壁があって、バカやってる時でも常に冷静な自分がいて、どこか無気力だった」

「マイちゃん?」

 

 今年()ということは、少なくとも昨年もやってるわけで。

 

「中学3年の夏に、一夜で3桁近いナンパを冷静かつ無気力にやるって、凄いよね」

「なんですかそれは、狂人の話ですか?」

「もしこれで中学2年生のときもだったら、もっと凄いよね」

「1人だけ大人だから大丈夫よ」

 

 見つかると面倒なのでその場を離れる。

 

「にしても、今年も一条は誘わないんかね?」

「仕事があるからあえて誘わなかった、という可能性も無きにしも非ず……いえ、無いですね」

「一条君とは幼馴染なんだよね?」

「本当に友達なのかすら怪しいところね」

 

 ちなみに昨年は焼きそばの屋台で働いていた(らく)を、通りがかった小咲(こさき)たち3人で連れ出したりしている。

 まさか友だちと回れる日が来るなんて、とテンションが高かった彼の姿に、こっそりと涙したものである。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「あ、射的」

「やってみる?」

 

 オーソドックスなコルク銃を用いたものだ。

 興味を持った(つぐみ)が何度か挑戦するも、景品は取れない。いつも実銃を扱っているため、勝手が違うようだ。

 

「むう、集弾率もそうですが、威力が足りていません……」

(つぐみ)ちゃん、締め打ちはできないよ」

 

 もちろん火薬を使うのも禁止である。

 

「……小咲(こさき)ちゃん、俺のフランクフルト食べた?」

「んむ?」

 

 (つぐみ)とじゃれていたら、いつの間にか手に持っていたモノの先端がかじられている。

 (くち)をモグモグしている小咲(こさき)が犯人だろう。

 

「ん、いつもは歯を立てないようにしてるから、ちょっと新鮮」

「ほほう」

 

 (ほお)を赤く染めながら言うセリフではない。

 

「そしてるりちゃん、今のやり取りの間に残りを全部食べちゃった言い分を聞こうか」

「ん、共食いにならないように配慮した」

 

 ちょっと目を離した隙に、串だけになっている。

 

「そうなると私の分は……」

「視線を下に向けない。別なの買ってあげるから」

 

 仲のいい4人組は、この後もこんなノリで祭りを満喫するのであった。

 

 

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