「じき夏も終わるし、やっぱ海くらい行かねーとな!」
という
「それにしても、本田さんは暑くないんですか、その格好」
「鍛えてますので」
当の本人は汗一つかかず、涼し気な表情である。
片手でビーチパラソル2本の柄を持つという強者の風格まで
「マイちゃんも涼し気っていうか、実際にマイちゃんの周りだけ涼しいよね」
「身の回りにある気体の分子をより分けて、動きの遅いものだけを集めてるからね」
「エントロピーにケンカを売るんじゃない」
るりもその恩恵を受けている身ではあるが、ツッコまざるを得なかった。
「もちろん冗談だから安心して。本当は身の回りにある気体分子の動きを、いい感じに遅くしているだけだから」
「そうだったのね、それなら安心……んん?」
さて彼らが砂浜に降り立つと、当然のように周囲がどよめきだす。
「な、なんだあの美女軍団……」
「レベル高ぇ~……」
「芸能人? 見た事ないけど……」
「どこの雑誌の子だろ……」
それに構わず、シートとパラソルで陣を張る。
「美女、ねえ……」
「?」
何故か
「いや、みんながカワイイってのは同意するんだけど」
例えば
年齢の割にスタイルが良いのは分かるが、モデルと称するには童顔かつ身長が足りないのが合わさって、無理があるのではと思うのだ。
「みんな『美少女』であって、『美女』と言っていいのは本田さんだけだと思うんだ」
「恐れ入ります」
本田が一礼を返す。
「マイちゃん、よく考えて。
「……………………なるほど」
まあ年齢に合わせて顔を描き分けられる漫画家は少ないので、そこは仕方のないことだと割り切ろう。
「ん? 何かあったか?」
そこにシートを敷き終わった
「いや、周りの言う『美女軍団』に、一条と舞子は入るのかなって」
「入んねーよ!!」
入らないらしい。残念だ。
「ねぇねぇ
「ん?」
ビーチチェアに居る
余談だが彼女はいつもの
何気に本田の戦闘力も高かったりする。
「
ですからサンオイル、塗って頂けますか……?」
「は!!?」
お約束をこなそうとしている2人。
それを見ていた
「……日焼けしたくないから、サンオイル?」
「日焼けするとお肌が荒れるのは、当たり前だよね?」
日焼けしたいからサンオイルを使うのでは?
まあこの場で『日焼け止めを塗って欲しい』だと『先に塗って来いよ』になるので、サンオイルが正しいのかもしれないが。
「2人とも、甘いわね」
るりが腕組みして現れる。
「アレは鈍い一条君に対する、高度なツッコミ待ちなのよ。複数のボケを重ねることで、どれか1つには反応してくれるだろう、そういう期待を込めた、ね。
そして一条君はヘタレだから絶対に塗ってくれないけど、日焼け止め自体は着替えの時に塗ってあるから大丈夫という、セーフティも万全!」
「さすがはるりちゃん。読みが深い」
そうなるとこの一連の流れは、彼へのアピールではなく体を張ったボケになってしまうが。
彼女はどこを目指しているのだろうか。
「ただ、
何やら2人に塗ることは確定で、どちらを先にするかの戦いになっているようだ。
「日焼け止めとサンオイルの二層構造か……」
「少なくとも悪い日焼けはしないような気がするから、いいんじゃないかな?」
他に気にすることがあると思われるが、当事者たちは楽しそうだから良しとしよう。
「さて、そろそろ泳ぎに行こうか。るりちゃんが待ちきれずにソワソワしてる」
シュノーケルを装着したるりちゃんカワイイ。
「毎日のように部活で泳いでるのにね」
「海で泳ぐのは別腹よ」
「というか宮本様は、直前まで水泳の全国大会に参加していたのでは?」
女子400m自由形の代表である。
得意のドルフィンキックを生かし、飛び込みとターン時にタイムを縮めてきた結果だ。
その関係でるりは競泳水着だったりする。決して他の水着、例えば皆と一緒にビキニ、とかが嫌だったわけではない。戦闘力の差は関係ないのだ。
「まあ今年は予選落ちだったので、来年は決勝に残れるよう精進するわ」
「おお、るりちゃんが燃えている」
「るりちゃんガンバって!」
高校受験やら何やらによるブランクか、少しだけ届かなかった。
るりはリベンジを誓うのであった。
「というわけで
「うぅ…… はい」
恥ずかしくて服を着たままだった
まあとは言っても、今回は下に水着を着ているのだが。
「マイちゃん様……」
「よし、いい子だ」
羞恥に震え、腕に
水中であれば視線が届かないため、
「マイちゃん、なんで水の上に立っていられるの?」
「ん? 右足が沈む前に左足を、左足が沈む前に右足を、ってヤツだよ」
「仁王立ちして言うセリフじゃないわ」
腕につかまっていた
「もちろん冗談だから安心して。本当は高さ軸の調整に失敗しただけだから」
「
「分かりました」
「あ、私も手伝うよ」
足を引き腰を引き、そして最後にるりが背中に乗ることで
いつぞやのフルアーマー
そんなこんなで足の届かない深さまで来ると、るりと
3人がそれぞれに楽しんでいるのを眺めつつ、
じゃれついてくる
◆
夜は
「ねえ一条、なんでそんなにジャガイモを?」
「え? なんでって、そりゃあ………… え? なんでジャガイモ?」
なんてことはあったが、
ちなみにジャガイモはホイル焼きにしました。こういうときは皮がついていたほうがそれっぽいのだが、まあ良しとする。
料理のできる
そしてそれを止めつつも調理を進めるだけの腕がある
「うん、おいしいよ、一条君」
「お、おう」
『小野寺においしいって言われた!』と喜ぶ
「はい、
「ちょ、
横から突き出された串に
彼は順調にラブコメの王道を進んでいるようだ。
「うん、おいしいよ、一条くん」
「マイちゃん、なんだかニュアンスがおかしいよ?」
3人を見て楽しんでいる
こちらもラブラブしたかっただけで、余計なことを言わないように
「あれ? るりちゃん、ここにあった焼きそばは?」
「ん、
ふと見れば、大きめの鉄板に用意してあった焼きそばが影も形も無い。
「じゃあ追加を作っちゃおうか」
「あ、私も手伝います」
「るりちゃんはその間、ジャガイモを……って、もう食べてるか」
「ん」
同じ環境、同じ材料で作っても、微妙に味が変わるのが面白いところで。
今回は楽しむ前に食べつくされてしまったが。
そう、最大の障害となるのがるりの食欲である。再び食べつくされぬよう、調理が終わるまでに何とか彼女を鎮めなくてはならない。
「マイちゃん様、味見をお願いします」
「ん」
その味にOKを出し、さらに
「できたよー」
「完成です」
2人の声に待ってましたとばかりに駆け寄る一同。やはりソースの焼ける香ばしい匂いは人を惹きつけるものがある。るりは
もちろん味の方も文句なしに
それは
「ところで、なんで岬は宮本に腕を噛まれてんだ?」
「
お返しに首筋に噛みついてやろうか、などと考えているとは