そして2日目。
一行は今日も海を満喫している。
「え? 砂に埋まってみたい?」
「うん。昨日やってる人が楽しそうだったから、私もやってみたくて」
「土遁・
「えっ、ちょ、なんでオレまで!」
「あ、縦じゃなくて横なんだ」
「うん。さすがに縦だと情緒が無いと思って」
「みんなで協力して砂に埋める、っていう情緒は台無しよ」
「~♪」
「
「…………」
「おや? 宮本様の様子が」
「……タルタルソースがかかってたら危なかったわ」
るりはギリギリで踏みとどまったようだ。
「それで、
「…………」
彼女は唯一動かせる首を左右に振り、何やら具合を確かめている。
「思ってたより、楽しくない……」
「だろうね」
アクティブな
「一条は?」
「いや、オレはそもそもやりたいとは思ってなかったから、早く出してほしいんだが」
「まったく、もう少しわびさびを楽しむ心のゆとりというものを……あ、いいものがあった」
まあこの2人だとそうなるかと受け入れた
彼は海の家に置いてある大きなシャベルを借りてきた。
「じゃあ2人とも、いくよ」
どんっ! と凄まじい音を立ててシャベルを浜辺へ突き立てる。
「非業の魂ども!
「マイちゃん、いつの間に<
「ネタがマイナーすぎるわ」
「あのシャベルはやはり
借り物のプラスチックシャベルである。
「え、なんで今ので立てるようになるんだよ……」
「さすがお姉ちゃん」
立ち上がった2人には何故か砂がまったくついてなかったりするが気にしてはいけない。
「他に誰か、埋まりたい人いる? もしくは誰かを埋めて欲しい人でもいいけど」
「あ、では……」
「なんでオレの方を見てるのかな、誠士郎ちゃん?」
なお厳正なる協議の結果、『
◆
そしてこのイベントのラストを飾るのは花火である。
「
「やっぱり『
「マイちゃん、何がやっぱりなのか分からないよ」
「せめて豊橋祇園祭の手筒花火くらいにしておきなさい」
「3尺だと、人間花火になりますね」
アホな会話をよそに、無事に火を付けられたようだ。
キャーっと悲鳴を上げながら慌てているが、本田が付いているので問題は無いだろう。
「じゃあ、私はコレ!」
「初手から線香花火とは、やるね
「アメリカにはありませんでしたからね」
花火と言えば祝日に大騒ぎするための小道具、という認識では、風情を楽しむという発想は出てこない。
いわんや
「これが線香花火……」
パチパチと火花を散らす様子を眺め、ぽつりと
「……ケーキの上のやつとは別物ね」
「え? ケーキ?」
海外のケーキの上でえらくバチバチと火花を散らしているアレである。
「昔は線香の名前の通り灰の上に立てていたから、似たようなモノだったよ」
「へー」
こちらはススキ花火のようで、長い火花が飛び散る。途中で色や勢いが変わるタイプのオーソドックスなものである。
「
「やめろ岬、風情が台無しになるっ!」
炎色反応の覚え方にはいくつかパターンがあるが、基本的にK村にリアカーは無い。
「るりちゃん、ロケット花火を人に向けちゃダメだよ」
「
「なるほど」
「え? 小野寺、なんで納得……って誠士郎ちゃんまで!」
「なるほど」
今回は適当に買った花火セットのため、この人数で割るとそれほどの数は無い。
それぞれが思い思いに楽しんだ後、1つだけ入っていた打ち上げ型で締める。
「あー、楽しかった! またみんなで来ようね!」
「おう」
「いや、一条。そこは『次は2人きりでな』とか」
「い、言えるわけねーだろ!」
言えない、ねえ。
彼の言葉のニュアンスに気付いた者は、生温かい視線を送るのであった。
◆
「ただいま」
「おかえり」
8月の末。帰省していたるりが戻ってきた。彼女は曾祖父の三回忌に出席していたのだ。
『わしは百まで、いや、るりの花嫁姿を見るまで死なんぞ!』
そうは言っていたのだが、90代後半、大往生だろう。
友人ができたと言って
「ん……」
出迎えてくれた
あれからもう2年が経つ。
歳も歳なので覚悟はしていたし、後を引くような別れをしたわけではない。
だから悲しいわけではない。
ただ、変わっていく自分を見ていてほしかった。
自分の性格のせいで心配をかけていたのは分かっていた。
だから、そんな自分にも親友と呼べる存在ができて。
それ以上の関係になって。
これからの自分がどんな人間になっていくかを、見ていてほしかった。
「るりちゃん、これ」
るりをソファーに座らせた
「これは……」
「あの後、秘蔵のコレクションとやらを譲り受けててね」
るりの小さい頃の写真が収められたアルバム。
これは彼女の曾祖父の所持していたものだった。
「タイミングを見て、るりちゃんに渡そうと思ってたんだ」
そこには更に、中学生のときの写真が追加されている。
放課後の何気ない日常から運動会、文化祭、遠足、そして卒業式。
もちろん高校生になってからの写真もある。
入学式、林間学校、そして先日の海に行った時のものまで。
自分1人のモノもあれば、
「…………」
これを見れば、おじいちゃんは安心してくれるだろうか。
私は大切な人たちと、大切にしてくれる人たちと一緒に居ると、安心してくれるだろうか。
「これからも、どんどん増やしていこうね」
「……うん」
「……ところでマイちゃん、この写真はどこから? 明らかにおかしな位置から撮られたモノもあるようだけど」
「ああ、それなら念写しただけだよ」
「は?」
ほらこうやって、と
るりと
「……百歩譲って、念写はいいわ。でもなんで、
「愛の力が起こした奇跡、ってやつだよ」
だからこんなこともできる、とさらにもう1枚、写真を取り出す。
「……え、ちょっ、な、何よこれ!」
るりちゃん(肌色成分多め、極一部にピンク色)の写真である。
「私、こんな
「えー?」
「し、してない! したことない!」
「えー?」
るりは顔を真っ赤に染めながら必死に否定する。
「ふむ、ならば確かめてみようか」
「え?」
彼女を抱きあげて膝の上に乗せ、
「実際に確かめてみれば分かるでしょ、本当はどうだったか。
るりちゃんはこんな
「え、ええ、もちろんよ」
自信をもってそう言い切る彼女に笑みを浮かべつつ、
横綱「女の子を泣かすような悪い男は」
横綱「