結局。
事態はさらに
「マイちゃん、本当にこのままで大丈夫かなぁ」
「家族水入らずの予定だからって断わったクリスマスパーティー、急に参加すると言ってるわ」
本日、
「一条は上手くやってるみたいだけど、母親の方が娘とのコミュニケーションに失敗して、萎縮しちゃったみたいで……」
昨夜、桐崎邸に張り込んでいた
娘が勇気を振り絞ってかけた電話に対する母親の回答は、イブは代わりに仕事を入れたから、である。
こんな状態でよく『毎年家族水入らずでクリスマス』なんて言えたな、という状況ではあるが、一応まだ望みはつながっている。
「一条がなんとか仕事を予定より早く切り上げさせて、
直接確認したくなった
というかプライベートに使える
「明日、母親と2人で会うことになりそうだけど、
「うーん、大丈夫だとは思うけど……」
「少なくとも、母親を拒絶するとかは無さそうね」
リボンの件も電話の件もあるが、彼女はまだ母親を求めている。
ダメだったらこの後、飛行機で移動中なんかの逃げられないタイミングで強制的に
◆
そして運命の12月24日。
この日は
「マイちゃん、今日はミニスカサンタなんだね」
「うん、トナカイの着ぐるみと2択でね」
ショートブーツと帽子がセットである。ひげは無い。
手に持っていた小袋から金平糖を取り出し、
「トナカイは170cm以上推奨だったんだよ。ちょっと足りなくてね」
「15cmはちょっとではないわね」
そこからさらに15cm低いるりがツッコむ。その
元々見た目のせいで男らしさが皆無のため本人も含めて誰も気にしていないが、男子高校生として考えると平均を大きく下回っている。
「マイちゃん様!」
「ん、おいし…… じゃなくて、一条様がそろそろコチラに着くそうです!」
「よかった、間に合ったか。雪が降りだしたから渋滞に巻き込まれてなんてことも考えてたけど、良かった良かった」
目論見通り仕事を前倒しにできて、時間が取れたというところまでは確認できていたが、ここに来て天候の悪化である。いざとなれば天候くらい書き換えられるが、これもドラマチックな演出のうちだと控えていたので少し心配だったのだ。
他に予想されていたのは『土壇場になって
そしてこの場に彼女が居ることはもちろん
「よし、あとは一条が
「マイちゃん、変なフラグ立てないで」
るりがフラグを強化する。スルーしておけばフラグと認識されなかったものを……
「いやいや、もしかしたら一条を見た橘さんが暴走して、
「はい! お任せください!」
これで準備は万端。手抜かりは無い。
「お、どうやら来たみたいだよ、たぶんアレでしょ」
窓から外を眺めていると、法定速度を無視して突っ込んでくる黒塗りの車が見えた。
実に良いタイミングである。
「
横滑りしながら店の前に止まった車から
驚いている
「説明してるヒマがねえ!! とにかく一緒に来てくれ!!」
「は!? ちょっと……」
「……ん? ヒマがない?」
確かに時間がたっぷりとあるわけではないが、そこまで急ぐ必要はないのでは?
あれ? そういえば車内に人影が見当らない……?
「誰だアレ…… ってもしかして一条?」
「え? 何? どうしたの?」
「キャ~~~!! 2人でイブにどこへ行こうと言うのですか!!?
どうせ連れてゆくのでしたら、この
「桐崎さん、どっか行くの?」
事態が把握できていないクラスメートたちに、ひと際大きな声で騒いでいる
「ちょっと待ってよ! そんな急に…… どこに行くのかくらい……!」
「ああ!? ええい、だからぁ……!!」
加えて
「高級ホテルのスイートルームだよ!!!」
「え……」
「え……?」
「ええええ~~~~!!?」
その場はパニックに包まれた。
「どーゆう事ですか!!! 今の発言は一体、どーゆー!!」
一番酷いのは当然橘
「あ、マイちゃんが頭抱えてる」
「珍しいわね」
一番脱力感に襲われているのは岬
「……なんでわざわざべつこうどうにしたん? じかんがないんだからさ、それにきがかわってにげないようにっていみでも、ふつうちょくせつつれてくるでしょ……」
限界に達してしまった
「マイちゃん、落ち着いて? 一度、中に入ろ?」
「
「小野寺様、次は私、私に代わってください!」
「
気が抜けて物理的に小さくなってしまった感のある
黒スーツに身を包んだ
そういうわけで彼女たちは2周ほど楽しむのだが、今回はるりだけ立場が逆転するなんてこともなく、平和に過ごせたようだ。
ちなみに彼女らのこの様子を外から見ると『一条のホテル発言にショックを受け落ち込んでいる岬とそれを励ます3人』と解釈されたようで、『つまり岬は、実は一条に惚れていたのでは』という疑惑がクラス内で持ち上がっていた。
それを聞いた
一方その頃、空港にて。
『……
『機長! 儀典長もとい
『クソ! ふざけるな!!』
なおこの時代、機内で携帯電話を利用していた場合は航空法違反により逮捕されたりもする。
VIPだからセーフなのかもしれないし、今回はそれどころではない問題を引き起こしているので何とも言えないが。
まあ、漫画的な演出というやつである。
◆
さて、本日のメインイベントはまだ終わっていない。
「るりちゃん、お誕生日おめでと~!」
「おめでとー!」
「おめでとうございます!」
「ありがとう、みんな」
12月24日は、るりの誕生日でもあるのだ。
「…………」
るりは少し、警戒していた。
自分の誕生日は
ただまあ、オチに自分が使われたのだけは納得いかなくて、まさか今回も……
「はい、プレゼントだよー」
しかし3人から渡されたのは、ごく普通の品物だった。
ポトラッチを防ぐため事前に決めた『高校生の小遣いの範囲で購入できるもの』という制限内の、本当に普通の品物だった。
「あ、ありがと」
良かった。『プレゼントはワタシ』作戦じゃなくて、本当に良かった。
「るりちゃん、安心して。そっちもちゃんと準備してるから」
「え?」
見れば
彼らがリボンを手に、じりじりと迫ってくる。
「ま、待って3人を同時にとか、体が持た、んっ」
「ふふっ、るりちゃんカワイイ」
どうやら明日の
セイなる夜は、まだ始まったばかりなのだから……
蜻蛉(はぁ…… やだやだ)
蜻蛉(人気投票で軽いファンが増えちゃって……)
蜻蛉「何ぃ? 人気投票1位だから
お前この前まで
付人「だ、だって、勝ち馬に乗るのは当然では……」
蜻蛉「バカかてめーはよ、都合のいい時だけコロコロと考え変えやがって。
そんなんだから、その程度の番付止まりなんだよ」
鬼丸「……今回は
鬼丸「
どの力士も
冴サン「……そこまで気にする必要はありませんよ」
冴サン「読者の数だけ様々な意見が出てきます。中には雑音に感じるものもあるでしょう。
そんな物にいちいち耳を傾ける必要はありません」
冴サン「よそ見せず、自分の推しだけを見てればいいんですよ」
蜻蛉(……)
蜻蛉(言うじゃない……)