そして放課後。
男たちにとっては委員会や部活動など、ラストチャンスの時である。
できるだけ長く学校に居れば、それだけチョコを
そんなはずはないのに。
一方そんなものとは無縁なためさっさと切り上げた
女子水泳部なだけに、バレンタインのようなイベント時にガッツリと活動する気は無かったようだ。
今は他の皆がそれぞれの用事で出払っているため、戻ってくるまで暇をつぶしている。
「…………」
るりはポッキーを手に取る。
自分で食べるだけでなく、横に座っている
「…………」
「ん?」
そして目を向けてみれば、ポッキーを
「ん」
「……んっ」
が、そこで驚く彼ではない。ためらいもなく食べ進み、ゴールにたどり着く。
どこぞの
「珍しいね、るりちゃんから仕掛けてくるなんて」
「……今日は、特別だから」
今になって自分の行いに恥ずかしさを感じたのか、るりの顔が少し赤い。
そんな彼女を膝の上に乗せ、
「じゃあ、もう一本欲しいな」
「……ん」
今日はバレンタインだから、特別なのである。
「あれ? るりちゃん1人? めずらしーねぇ」
呼び出しを受けた
「ねぇねぇ、ところでるりちゃんは誰かにチョコあげたりしないの?」
「生憎、そんな予定は無いわね」
るりは彼を相手にせず、読書を続けている。
「じゃあさ~、そこのポッキーで良いから
せっかくのバレンタインなんだし、と言って手を差し出す
「あれ? るりちゃんが珍しく素直に……」
と思ったが、箱の中は
もし中身が残っていたなら、もっとおもしろい反応が見られたかもしれないのに。
「つれないなー」
「あなたが欲しがったんでしょ、その
さて
というのも、
「……あ、マイちゃん様」
先に来ていた
「
「あの、これ、受け取ってください」
そう言ってハート形の包みを差し出す。
もちろん
「私も、日本のバレンタインをやってみたくなりまして……」
先ほどチョコを買いに出て、折角だからと服も着替えたのだという。
そんな彼女に得も言われぬ愛おしさを感じる
「……
「か、かわいくなんてないですよぅ……」
思わず
ただでさえ赤かった
「
「うぅ……」
恥ずかしがりながらも、抵抗は無い。
「ん? 岬とつぐみか」
「あ、一条と
「
そのあといろいろとあって、
彼らは飼育委員の活動の後、保健室に
それが今、彼女と一緒に居ないという事は、そういう事である。
「とりあえず本田さんが車に乗せてたが、まだうなされてたな……」
早く元気になって欲しいところである。
「でもこれで、来年は橘さんの形をしたチョコを
「不吉なこと言うなよ……」
「マイちゃん様、今の一条様の発言は、どちらに掛かっているのでしょう?」
「うーん、後者だったら面白かったんだけどね」
耳打ちしてくる
そんな話をしながら教室に戻った一行が目にしたのは、るりと
「え、
さて、状況を整理しよう。
放課後の教室、そこに居るのは前述の3人。
男が1人、女が2人。
そして男は2つのチョコを持っている。
「────っぉおおおかえり
嘘ではない。
るりからの『1つも
そこに偶然
本当に小野寺から
そう
「一条君、安心して。
「ちょっとるりちゃん?!! なんで含みのある言い方するの!!」
追い打ちであった。
まあ彼女が
「……………………」
しかも悪いことに、
ヤツを野放しにしてはマズイ!
ヤツなら2つのチョコを自分と小野寺からのものだと
どうにかして先手を打って、
「あ、マイちゃん」
がしかし、先に動いたのはなんと
彼女は
虚を突かれた
最悪なのは自分の側にいて、仲が良いのだと勘違いを後押しされること。
ならばこうやってすぐに自分の側から離れていくことは、逆にその程度の会話しかしていなかったとのアピールになる。
しかも
「マイちゃん。私ね、がんばったよ」
「ちょっと小野寺?!! なんで勇気を出してチョコ渡したよ的なノリなの?!!!」
あかん。コレはあかん。
もはや『お前を殺してもう一度殺す』的なレベルですやん……
このあと
状況が分からず首を
元凶である
彼女が頑張ったのは『委員会の仕事』だと判明するまで、とにかく頑張ったのだ。
「………………オレハ、
欠片も信じていない声色でそう返す
そして気が付けば下校の時刻である。とりあえず一行は教室を出ることにした。
いや、2名ほどこっそりとその輪から抜け出し、教室に留まっている。
「マイちゃん、これ……」
「
「ま、前のは忘れて欲しいなー?」
中学校に入学してすぐに、るりを含め仲良くなった3人。
1年目は
2年目は特訓の成果もあって、食べられるレベルになったことを喜んで。製菓だけに。
3年目は一条
振り返ってみれば、いろいろあったものだ。
「……まともにチョコを渡すのは、これが初めてなんだね」
「私の初めて、あげるね?」
「
そもそもそっちはとうの昔に
まあ、可愛いから問題ないが。
「ありがとね、
「…………ん」
彼女を抱き寄せ、お礼をする
さすがにこの場でこれ以上はできないので、あとは帰ってからのお楽しみである。
今は我慢して、皆と合流するために教室を出る2人であった。