本当にせこい   作:七九六十

37 / 82
09-02 誕生日

 

 

 

「……いいか? そ~っとだぞ?」

「お嬢に気づかれねぇように……」

 

 夜の桐崎邸。ギャングたちがコソコソと作業を進めている。

 

「おーい、ケーキの予約取れたぜ!? 今年もスゲーのが……」

 

 まあそういう訳である。

 

 それを目撃してしまった千棘(ちとげ)

 毎年のことながらあんまりなサプライズ具合に、嬉しいけれど複雑な気分である。

 

 ……しかし、なぜ彼女は裸足で歩いているのだろうか。

 桐崎邸はアメリカ式なので、みな靴を履いて廊下を歩いている。

 自室で靴を脱いでいるのはまあ、そういう風にしているからで納得できる。よくカーペットの上で横になっているし。

 しかしそれもこのあと(らく)と一緒に靴のまま入室したり、さらに終盤に彼は靴のままカーペットを踏みしめていたりで、よく分からない状態である。

 

 閑話休題(それはともかく)

 

「……ねぇ、ちょっといい? (らく)

「あん?」

 

 翌朝の学校にて。千棘(ちとげ)は確認せざるを得なかった。

 

「今週末の日曜日ってさ、なんの日か覚えてる……?」

 

 今年の誕生パーティにも、(らく)に参加してほしい。

 しかしバレバレとはいえサプライズという形をとっているため、招待状を送ることはできない。

 だからせめて覚えていてくれたら、もしかしたら参加してくれるかもしれないという希望が持てる。

 

 そんな気持ちで確認したのだが……

 

「今週末……? なんの日って……」

 

 (らく)にしてみれば、分からないはずがない。

 というか事前にプレゼントを用意する、しかも今回は1年生組も参加することになっており、彼女たちは直前の週末に林間学校へと参加する都合上、少し前から計画的に動いていたのだ。

 そして今年も(つぐみ)の協力のもと、全員が参加する手はずになっている。

 

 とはいえ新顔が居るので、ここは一応サプライズとして───────

 

千棘(ちとげ)ちゃんには、これくらい分かりやすいサプライズのほうがいいのかもね』

『ん?』

『なんか、上手く隠してしまうと誤解して()ねてしまいそうだし』

『……なるほど』

 

 1年前の会話がよみがえり、(すんで)の所で考えを改める。

 

「ああ、もちろん覚えてるさ。お前の誕生日を忘れるわけねーだろ」

 

 変なことをせず、ここは素直に行くべきだろう。

 

「日曜のパーティにも参加する予定だしな」

「え?! あ、そっ、それならいいのよ、うん」

 

 彼のセリフに動揺を隠せない千棘(ちとげ)

 席に着いたばかりだというのに再び席を立って早足に教室を出ていく。

 

 その様子に呆気にとられた(らく)は、何かやってしまったかと不安になる。

 

「いやいや、大丈夫だよ。あれ、単に照れてるだけだから」

 

 角度的に顔が赤くなった千棘(ちとげ)の様子が見えていた舞斗(まいと)のフォローが入る。

 

「そっか、よかった……」

「でも個人的に、『今年は2人きりで祝おうな』ってのがあってもいいと思ったんだけど」

「んなセリフ、言えるわけねーだろ」

 

 フォロー以外に余計な一言が入り、ため息とともにツッコミを入れる羽目になったが。

 

 

 

 

 そんな平和なやり取りを行う2人は、知る(よし)もなかった。

 

 

 

 桐崎千棘(ちとげ)の誕生日は6月7日。今週末の()()()

 

 そしてとある日。

 ()()()()()にて、一条(らく)はこう尋ねた。

 

『小野寺の誕生日って、いつ?』

 

 小野寺小咲(こさき)、応えて曰く。

 

()()、なんだけど……』

 

 小咲(こさき)の誕生日は6月15日。つまりは()()()になる。

 

 これはつまり、日曜日に登校していたということだろうか。

 何かしらのイベントの日であればあり得なくはないが、だったらそれと分かる何かがあってもいいはずだ。

 それが見られないということは、ごく普通の日だったのだろう。

 

 もしくは一週間が7日ではないのだろうか。

 いやしかし第174話イルワヨにて登場した2015年1月のカレンダーでは、1週間が7日になっていた。

 ちなみに6月7日が日曜日の場合、このカレンダーとは一致しない。

 そのため今度は1年の日数という新しい謎が発生してしまうのだが。

 

 であれば小咲(こさき)の誕生日が間違っているのだろうか。

 これが一番可能性が高い。

 原作で誕生日が明示されているのは千棘(ちとげ)の6月7日と、まだ登場していない姉の1月8日だけである。

 それ以外の人物についてはプロフィールを載せるときに適当に決めたのだろう。

 

「私の誕生日って、何なんだろうね?」

 

 小咲(こさき)の誕生日というより(はる)とのイベントのための導入、口実としてたまたま選ばれたもの、という感じである。

 でなければわざわざダブルヒロインを(うた)っておきながら、こんな近い日付に設定して片方をスルーなんてことはしないだろう。

 まあ命題としてはダブルヒロイン自体が()なので、これから派生するモノもまた()なのだが。

 

 話題に出してもらえただけありがたいと思うべきか、こんな扱いになるなら話題にされない方が良かったというべきか。

 誕生日というのは実に奥深いものなのだ。

 

「私も12月24日なんてネタにしやすい日なのに、スルーされたわね」

「見た目がシンメトリーな宮本様はヒロイン枠じゃありませんからねえ」

 

 『(かぎ)』を所持していないとはいえ、ヒロイン枠の(つぐみ)もスルーされている。

 さらにはあの橘万里花(まりか)でさえ、自分の誕生日に(らく)と、なんてありがちなネタを許されなかったのだ。

 そういう意味では姉は特別だったのか、それともそれだけ彼女に関するネタに困っていたのか。

 

「橘さんと言えば、珍しく『描写されていないところでの横のつながり』があったわね」

「私の誕生日に、下剋上Tシャツをプレゼントしてくれたんだよね」

「全員参加型のイベントで、本筋そっちのけで(らく)様やってる彼女にしては本当に珍しいですよね」

 

 こういうサラッとでいいんで、横のつながりが分かるエピソードがあるとありがたい。

 

 何だかんだ言いながらも彼女たちは仲が良かったのだろうとか。

 万里花(まりか)小咲(こさき)に『下剋上』という言葉を送った意味は何だろうとか。

 いろいろと考える余地が生まれるのだ。

 

 

 

 ただまあ、この手のモノは積み重ねないと意味が無く。散発過ぎたせいで万里花(まりか)のエピソードに他のメンバーが絡むイメージが湧かず。そのためこのシリーズでは上手く組み込むことができず、かなり扱いが酷くなってしまったわけで……

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。