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なので話を広げられなかったのだろうか。
・そしてやっと金関が出せる……
10-01
夏休みも終わり、いよいよ新学期である。
「今日からこのクラスの担任をする事になりました秦倉
それと同時に担任も決まった。前任者が5月末に寿退社して以来、ずっと空席だったのがようやく解消される。
……普通、副担が繰り上がって新任が副担という流れではないだろうか。
まあ漫画的なお約束ということで。
若い、というよりも若すぎる女性が壇上に立って自己紹介をしている。
「おお~、ようやくこのクラスも担任決定かあ~」
「ずっと副担が回してたもんね~」
「しかも美人!!」
「このクラス、ホントついてるよな~!!」
クラスメートからも好意的に受け取られている。
が、忘れていないだろうか。今までこの流れの後にどうなったかを。2度あることは3度あるのだ。
「ちょっ、ちょっと待て姉ちゃん!」
「でもオレたち、2つしか歳違わないハズじゃあ……!」
ざわついていた教室が静まり返る。
今の発言からすると……
「……も~、
男子生徒の祈りもむなしく、新任の教師からは親し気な空気が感じられる。
「今は教師と生徒なんだから、ちゃんと先生って呼ばなきゃダメだよ?」
◆
男子生徒による
「……つまり、この美人の秦倉先生と一条は、幼馴染である……と」
「……そういう事になるな」
3度目の正直ではなかった、ということである。
「いいかげんにしろよてめー!! なんだ幼なじみの美人教師って……」
「毎度毎度世の中ナメてんのか───!!?」
「知らん知らんオレは知らーん!!」
そんな大騒ぎの教室の一角で、騒ぎを遠巻きにしている者も居る。
「マイちゃん様、あの方は
「
「チャーシュー?」
「なんだか美味しそうな名前ね」
名前は美味しそうだが、中身は物騒である。
なんせ世界でも指折りの大組織であるチャイニーズマフィアなのだから。
「そういえば、クロードたちもなんか騒いでたわね」
とはいえ友好関係にあるため、特に警戒等はしていないが。
「一条君の幼馴染なのに、なんで秦倉先生は中国で偉い人になってるの?」
「ああそれなら、
どうやら男子生徒たちの興味は、同じく幼馴染であった
「
「マイちゃん、初代Diabloじゃないから大丈夫だよ」
「初心者が和製RPGの勇者感覚でWarriorを選んで、泣きを見るところね」
「いきなり弾幕シューティングになりますからね」
集団で現れて遠距離攻撃、しかも追うと凄い勢いで逃げていくという。
あれ以来、この手のゲームの初回はリソース管理の楽な遠距離キャラ、弓職を選ぶようにしている。
で、MP管理の目途と強いスキルの当たりが付いたら魔法職で本格的に攻略する、と。
近接? クリア後の縛りプレイ担当でしょ?
「まあそれはともかく……」
「
「出たな
笑顔でひらひらと手を振る彼とは違い、教室の窓近くの木の上には心底嫌そうな顔をする、中華風の服装をした小さな子供の姿がある。
「お姉ちゃん、その子は?」
「んー、
要は護衛兼お目付け役である。
担任である
「へー、こんな小さな子が……」
「……私の見た目と歳、少し違うよ」
「これでも
「ヒィ!!?」
その物騒な物言いに
「ちなみにマイちゃん様が相手なら?」
「……私は対人が専門ね。怪獣の相手は
遠い目をした彼女とは対照的に、
「……お前は何をやったんだよ」
「昔ちょっとね」
というのも当時すでに
正面から堂々と探ってくる
「今では仲良しだから大丈夫だよ」
「…………それ以外の選択肢なんて無いよ」
そもそも
なお精神的な疲労は考慮しないものとする。
「……一条君はヤクザで
こうして見ると、
るりが
「大丈夫、俺がついてるよ」
「マイちゃんっ」
ヒシと抱き合う
不幸の星のもとに生まれた地道な少女が勝ち取ったハッピーエンドである。
「私たちは傘を投げて祝えばいいんですかね?」
「やめなさい。何年かぶりに近隣住民からの苦情をうけることになるから」
それに2か月の間、流行語が猛威を振るってしまう。
愛は勝つのだ。
◆
そんな騒動のあった翌日。
「どしたの?」
「いや、昨日姉ちゃんが寝ぼけて人の布団にもぐり込んで来たんだよ……」
「そういえば一条の家に
「小さい頃のクセが、直ってなかったみたいでな……」
「気持ちよさそうに寝てるから起こすこともできず、部屋の隅に座ったままウトウトしてたらもう朝で……」
「ヘタレめ」
「まあ久しぶりに実家に帰ると親に甘える感じで精神年齢が下がるって言うし、小さい頃のクセが出たってことはそれだけリラックスしたってことじゃない?」
「そんなもんか?」
「飛び級して大学を出てマフィアの
「………………」
言われてみれば、この時の基準でまだ成人前である。『大きく成長して帰ってきた姉』だったため大人だと思っていたが、冷静に見ればはしゃいでいる子供のようでもある。
「ここで自然に甘えさせてあげられるのが、大人のみりきってヤツだよ」
「みりき?」
妖精さん、もとい
そんな話をしていると、
「甘えに来ました」
どうやら
「のりこめー」
「わぁい」
るりと
そんないつも通りじゃれ合っている4人を見て思う。
年齢を考えれば、
『それにしても、なんでわざわざ先生なんか?』
『一度やってみたかったのもあるけど、本当は
『もう少し早く日本に来れてたら、同じ生徒として編入できたんだけど。仕方ないから無理矢理先生になっちゃった』
昨夜、引っ越しの手伝いをしていたときに聞いた言葉。あれは、自分が考えているよりも重いものだったのではないだろうか。
「
「へえへえ」
そんな自分が、年上の
そんな弱気になった
『姉ちゃんはオレが守るって言ったろ?』
それは小学生の、まだ幼いころの自分の
同じく小学生の
『姉ちゃんは、大事な姉ちゃんだからな』
「………………そうだよな。オレの、大事な姉ちゃんだからな」
自分にやれるか、ではない。自分がやるのだ。
弟である、自分がやるのだ。
「頑張りなさいよ?」
「ああ」
「……………………」
「どうしたのマイちゃん? そんな『あちゃー』な顔して」
「んー、秦倉先生ごめんなさいというか、でも本人が勘違いしてるだけでこっちですよね的な……」
「?」