さて、朝から10人近い来客のあった一条家。
本日は組員旅行ということで
理由はともあれ、せっかく集まったのだからガッツリ遊びたいと思うのは高校生の
旅館の宴会場かと思うほどの畳敷きの広間に座り、まずはある程度の予定を立てようとなったのだが。
「もちろん今日は泊まっていきますわ!! 2人きりになどさせるものですか!!」
極一部からの強い要望により1泊、というより徹夜で遊び倒すことになった。
大人数で遊べるカードゲームやボードゲームの
「まあ橘さんだけ泊まるよりも、みんなで時間を忘れて遊んでました、って方がいいでしょ?」
「確かに……って、なんで岬はサイコロとツボを構えてんだよ」
「え?」
「チンチロリンのほうが良かった?」
「そうじゃねーよ、もっと健全なものにしてくれ」
場所が場所だけによく似合っているのだが。
そしてツボを開くと、サイコロの上にもう片方のサイコロが乗っていた。
「なんでだよ」
サイコロは見事4個に増え、タワーを形成していた。
「おいコラ」
サイコロは見事8個に増え、タワーを形成していた。
「ちょっと待て」
サイコロは見事16個に増え、タワーを形成していた。
「いや、明らかにツボのサイズと合わないだろ」
「えー?」
32個のタワーを作った
「ほら、万国旗を出す手品と一緒だよ。何でこんな大量に、って思わせたら勝ちってヤツ」
「なるほど………………なるほど?」
「これだけの人数だと、お昼ご飯の準備も先にしておいた方がいいわね」
そういって彼女は部屋を出ようとする。
「え、別に出前かなんかでも……」
「いいよ、私が作るから」
にこやかにそう告げられると
彼女は上機嫌に台所へと向かっていった。
「……ところで
「あ? そういや知らねぇな」
近づいてきた
脳裏に現在の女子メンバーの料理の腕を思い浮かべる。
まずは料理の出来る組。
小野寺に岬、つぐみ、橘、そして
「本田さんと
「おおサンキュー」
……ナチュラルに考えを読まれたが、今さら
次に料理の出来ない組。
「宮本は?」
「私は食べる専門よ」
納得の答えが返ってきた。
「ポーラは?」
「私は食べる専門よ」
納得の答えが返ってきた。
つまり、料理の出来ない組は
……『出来ない』と『出来るけどやる気がない』を同列にしていいかは、この際気にしない。
さて、この結果を踏まえると
「順当にいけば出来ない組だよね」
「不吉なことを言うな」
まあ悩んでいても答えは出ない。気になったのなら見に行けばいい、ということで皆で台所へと向かう。そもそもこの人数の昼食を作るのは大変だろうから、そのヘルプの意味もある。
いや、人数以上に
「あれ?
「ちょっと手伝いに来たんだよ」
偵察に来たとは言えない。
そっと周囲を
「私と
「いや、たぶん量的に大丈夫じゃないと思うから」
「?」
「で、何を作ろうとしてるんだ?」
「餃子だよ」
とすると粉を混ぜているのは、皮から手作りする気なのだろう。
その手際の良さと材料の選び方を見るに、料理の腕には問題が無いようだ。
「焼き餃子に水餃子、揚げ餃子に梅餃子、チーズ餃子……」
「……ん?」
彼女が列挙する品と、用意されている素材の量。
「もしかして……」
「いやぁ私、餃子以外は作れなくって」
照れながらそう告げてくる
「にしても、餃子か……」
さて餃子だけを食べる場合、一人前とはいくつなのだろうかと
行きつけのラーメン店では一口サイズのものが5~6個で出てくるが、あれは付け合わせポジションだ。メインとして考えると全然足りていない。
食べ盛りの男子高校生である自分と
それを基準にしても数倍は食べる
この時点で400、いや500は必要か?
残りのメンバーは小食だとしても人数が多いから、最低600?
「餃子か~、よくチャレンジ系でジャンボ餃子とか食べるのよね」
「私もそうね。ただ近場のは顔を覚えられてるから、もう賞金の
……足りないかもしれない。
材料は問題ないだろう。
問題は作る方である。
餃子は皮を丸く成形するのもそうだが、包むのにも時間と手間がかかる。それを数百回も繰り返すのだ。めまいがする。
「大丈夫だよ一条」
そこに声を掛けられ振りむけば、いつの間にやら完成させた生地の塊を手にした
彼は幅150cmほどの台の上に打粉をするとそこに生地を乗せ、麺棒で広げていく。
そして包丁で格子状に切り分け、それぞれの中央に餡を乗せていく。
ここまでわずか数秒の出来事である。
「餃子の皮って、棒状にした生地を切り分けて、それから丸めて潰してって流れだったはずじゃ……」
実際に作ったことは無いが、TVなどで作業風景を見た記憶はある。
そんな
「では仕上げを」
そうして
その衝撃は凄まじく、生地がすべて台から空中へと浮き上がってしまった。
「えっ、な?!!」
驚く
左右の手がそれぞれ別の生地を握り、今にも『カカカカカカ──ッッ』と笑い出しそうな勢いで餃子を完成させてしまった!
「岬先輩すごい!」
「マイちゃん様すごい!」
「えー……?」
「さすがはマイちゃん様。見事な『にぎり』です」
「まさか生で見られるなんて……お姉ちゃん凄い!」
「私も
「
「いやちょっと待て、なんだよ『にぎり』って。餃子作るのになんで必殺技っぽいのが出てくるんだよ」
さすがにこれは流せず、
ちなみに
そのため包んだ後に台の上にキレイに並べて配置する、という工程を加えているのだ。
まあそのせいでオリジナルより腕を動かす速度と正確性が倍以上必要になるという、使い手を選ぶ技になってしまったが。
「一条先輩、私もギョーザ作ってみたいです!」
「ん?」
右手をあげて主張してくる
子供たちにも楽しんでもらいたいし。
「というわけで
「うん、いいよー!」
そして
そこに集まった参加者は以下の通り。
純粋に餃子作りをやってみたい
本場の技を間近で体験したい
そしてライバル意識と
おまけとして
「宮本は?」
「味見なら任せて」
「……そうか」
2人の調理補助として役立っているので文句は無いが。