「鬼退治も終えたので、着替えてみました」
「これまたオーソドックスな巫女さんだな」
桃太郎卿が吉備団子で接客することが懸念されたため、お化け屋敷を出た
「で、なんで3人は岬に張り付いてんだ?」
更衣スペースから
「展開式増加装甲?」
「ステップ数を減らして、特攻を防がないと」
「被弾時のダメージも格段に減らせますしね」
アレは巫女装束ではなく、ただの白い胴衣に赤い袴である。
名前からしたら電子の巫女で、複座型のほうが近いだろうか。
まあそんな感じで着替えた
彼らのコスプレ喫茶は3つのシフトに分かれており、
全員の自由時間が重なる昼頃に一緒に食べ歩きしよう、とだけ予定を入れている。
なぜ彼らのシフトが別になっているのか。
それは客寄せのために目立つ生徒を分散させたかった、というような鬼畜な経営方針のせいではない。
そしてその3つ目に成り手が居なかったために
後のメンバーがそれぞれに付いていった結果である。
そんなこんなで
「………………暇だね~」
「お客さん、来ませんからねぇ」
「楽だからいいじゃない」
るりが手のひらの上にピックハンマーを立てて、バランスを取って遊びだすほど暇なのだ。
現在のところ、来客数は驚きの
それもそのはず、体育館では現在この文化祭の目玉でもある───────
『……えー、大変長らくお待たせいたしました、“ミス
『間もなく開催いたします!!』
ミスコンが行われているのである。
こちらにほぼ全校生徒が詰めかけているため、喫茶店に足を運ぶ者など居るわけがない。
『司会・解説を務めますのは
『よろしくお願いします』
実況席には
『ところで舞子さん、そのまるで数千年もの間、首都の防衛任務に就いたまま忘れ去られ、ついにはロケットを飛ばされそうな格好は何事ですか?』
『……我がクラスではコスプレ喫茶をやっておりまして、その一環です』
棍棒を携えた古代の戦士は語る。
今回のコスプレ喫茶の衣装はすべて彼が用意したのだが、その中に紛れ込ませておいたセクシー系衣装はすべてクジで回避され、結果として腰巻姿の自分のみ露出度が高いという、笑えない状況になったのだ。
もちろん誰かさんのせいである。
「そういえば、ミスコンやってるんだっけ」
なぜこのシフトの
それは皆がミスコンを見に行きたかったからである。
そしてこの客足も予想できていたため、結果としてシフトは4人だけという極端な構成になっている。
「でも、みんなミスコンに行ってるの? 1人もお客さんが来ないってあるのかな?」
ミスコンに人が集まることは
「ミスコンって、非日常の象徴なところがあるからね」
「非日常?」
小さなころから接してきた物語。マンガでもアニメでも、ドラマでも映画でも小説でもいい。その中に少なからず登場するミスコン。
小学校、中学校では開催されることはほぼ無く、高校であってもそこまで一般的ではない。
それが自分たちの学校で行われているのである。
物語の登場人物たちと同じ目線に立てるのだ。参加しないはずがない。
「単にカワイイ女の子が目当てじゃないの?」
「もちろん、それもあるよ」
大勢の可愛く着飾った女の子を見られるのだ。参加しないはずがない。
どこぞの大学は共学にも関わらず、ミスコンの参加資格が『男であること』だったりするのだが、それは例外である。
「その割には、昨年は盛り上がっていませんでしたよね?」
「そりゃあ、ねえ?」
というのも───────
『いや~今年もこの季節がやって参りましたね~!
今年はどんなコンテストになるのでしょうか!』
『昨年は演劇、バトル・オブ・ザ・ジュリエットが全部持ってっちゃいましたからね~』
『そして本コンテストの特別審査員として、当時のロミオ役である一条
『ロミオさん、いかがですか?』
『自分、今は武士なんで……』
『私はアリスです!』
「あれ? 私たちのせいだったのですか?」
「そりゃあそうでしょ」
ミスコンの参加者よりも可愛い女の子たちがそろっていた演劇である。
ジュリエットとして必要な知力・体力・時の運を競い、笑いあり涙あり、そしてジュリエット同士の愛情ありの一幕は、ミスコンよりもインパクトを残したのである。
「るりちゃん、私たちが
「マクベスじゃないわ」
「というわけで今年は気合入ってるから、お客さんはほとんどアッチに行ったはずだよ」
「一条君と
「話題作りというか客寄せというか、そういったものですかね」
「一条君が居れば橘さんも釣れるからお得ね」
「
「あー、うん、そう……だね」
「自爆してなければ、ですかねぇ」
「無理でしょうね、きっと」
今日も自爆芸が冴えていることだろう。見なくとも分かる。
「確かに橘さんも『
「しちえいゆう? 何それ」
「
「他にはお嬢と、最近では秦倉先生も入っています」
「マイちゃんとるりちゃんは?」
「私は目立たない一般生徒だから」
るりはそう言うが、可愛いうえに成績優秀、かつ水泳で全国大会にも出ている文武両道な才女である。一応それなりに人気はあるのだが、
というのも容姿を基準にしている、つまりは男子生徒の欲望によるもの、というわけで。顔もそうだが体つきも重要なポイントになっている。
その点でいうと見た目が小学生の彼女を推すことは、ちょっと危ない性癖の持ち主だと思われるリスクがあり、表立った票が集まらないのだ。
「マイちゃんは?」
「
「ああ、納得です」
「ちなみに
「七不思議とかもそんな感じよね」
後半になるにつれてあやふやになったり、数の増減があるのはお約束である。
『だいたい四人の公王』とか『
「なるほど。
変な称号を与えられた身だが、既に攻略されているため何処か他人事のように
となれば残る2人の枠に挙げられる者の中から優勝者が出るのだろうか。気になる所である。
「でも、私みたいにミスコン自体に興味が無い人もいるんじゃないの? その人たちがお客として来る可能性は?」
るりが言う通り、喧騒を避ける人も少数とはいえ居るのだが。
「あえてミスコンを避けるような人が、コスプレ喫茶に来ると思う?」
「確かに」
自分なら確実に静かなところに行くだろう。
コスプレ喫茶なるものは絶対に落ち着かないことが予想できるからだ。
「………………暇だね~」
「お客さん、来ませんからねぇ」
「楽だからいいじゃない」