本当にせこい   作:七九六十

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11-03 文化祭 ミスコン

 

 

 

「鬼退治も終えたので、着替えてみました」

「これまたオーソドックスな巫女さんだな」

 

 桃太郎卿が吉備団子で接客することが懸念されたため、お化け屋敷を出た舞斗(まいと)はすぐに教室に戻って別の衣装に着替えさせられたのだ。

 (らく)の言う通り巫女の衣装だが、コスプレ用の簡易版である。

 

「で、なんで3人は岬に張り付いてんだ?」

 

 更衣スペースから舞斗(まいと)が出てくるなり、小咲(こさき)にるり、(つぐみ)が拘束してしまった。

 

「展開式増加装甲?」

「ステップ数を減らして、特攻を防がないと」

「被弾時のダメージも格段に減らせますしね」

 

 アレは巫女装束ではなく、ただの白い胴衣に赤い袴である。

 名前からしたら電子の巫女で、複座型のほうが近いだろうか。

 

 まあそんな感じで着替えた舞斗(まいと)率いるご一行は再び文化祭を満喫すべく、仕事中の(らく)に別れを告げる。

 彼らのコスプレ喫茶は3つのシフトに分かれており、(らく)千棘(ちとげ)、おまけで万里花(まりか)が現在の1つ目、そして舞斗(まいと)たちは3つ目である。

 全員の自由時間が重なる昼頃に一緒に食べ歩きしよう、とだけ予定を入れている。

 

 

 

 なぜ彼らのシフトが別になっているのか。

 それは客寄せのために目立つ生徒を分散させたかった、というような鬼畜な経営方針のせいではない。

 

 (らく)千棘(ちとげ)は3つ目の時間帯に用事があるため、その準備を含めると1つ目にシフトを入れざるを得ず。

 そしてその3つ目に成り手が居なかったために小咲(こさき)が引き受け。

 後のメンバーがそれぞれに付いていった結果である。

 

 そんなこんなで小咲(こさき)たち4人は予定通り、最後のシフトに着いたのだが。

 

「………………暇だね~」

「お客さん、来ませんからねぇ」

「楽だからいいじゃない」

 

 小咲(こさき)(つぐみ)はお盆を構え、来客を待っているのだが。

 るりが手のひらの上にピックハンマーを立てて、バランスを取って遊びだすほど暇なのだ。

 

 現在のところ、来客数は驚きの(ゼロ)である。

 

 

 

 それもそのはず、体育館では現在この文化祭の目玉でもある───────

 

 

『……えー、大変長らくお待たせいたしました、“ミス凡矢理(ぼんやり)コンテスト”!!』

 

『間もなく開催いたします!!』

 

 

 ミスコンが行われているのである。

 こちらにほぼ全校生徒が詰めかけているため、喫茶店に足を運ぶ者など居るわけがない。

 

 

『司会・解説を務めますのは凡矢理(ぼんやり)男子の(ゆう)、女性評論家兼本コンテスト実行委員長の舞子(しゅう)さんです』

 

『よろしくお願いします』

 

 実況席には(しゅう)が座っており、開会に向けて挨拶を行っている。

 

『ところで舞子さん、そのまるで数千年もの間、首都の防衛任務に就いたまま忘れ去られ、ついにはロケットを飛ばされそうな格好は何事ですか?』

『……我がクラスではコスプレ喫茶をやっておりまして、その一環です』

 

 棍棒を携えた古代の戦士は語る。

 

 今回のコスプレ喫茶の衣装はすべて彼が用意したのだが、その中に紛れ込ませておいたセクシー系衣装はすべてクジで回避され、結果として腰巻姿の自分のみ露出度が高いという、笑えない状況になったのだ。

 もちろん誰かさんのせいである。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ミスコンやってるんだっけ」

 

 なぜこのシフトの人気(にんき)が無かったのか。

 それは皆がミスコンを見に行きたかったからである。

 

 そしてこの客足も予想できていたため、結果としてシフトは4人だけという極端な構成になっている。

 

「でも、みんなミスコンに行ってるの? 1人もお客さんが来ないってあるのかな?」

 

 ミスコンに人が集まることは小咲(こさき)も予想していたが、まさかここまでとは思っておらず、困ったときの舞斗(まいと)頼みである。

 

「ミスコンって、非日常の象徴なところがあるからね」

「非日常?」

 

 小さなころから接してきた物語。マンガでもアニメでも、ドラマでも映画でも小説でもいい。その中に少なからず登場するミスコン。

 小学校、中学校では開催されることはほぼ無く、高校であってもそこまで一般的ではない。

 

 それが自分たちの学校で行われているのである。

 物語の登場人物たちと同じ目線に立てるのだ。参加しないはずがない。

 

「単にカワイイ女の子が目当てじゃないの?」

「もちろん、それもあるよ」

 

 大勢の可愛く着飾った女の子を見られるのだ。参加しないはずがない。

 どこぞの大学は共学にも関わらず、ミスコンの参加資格が『男であること』だったりするのだが、それは例外である。

 

「その割には、昨年は盛り上がっていませんでしたよね?」

「そりゃあ、ねえ?」

 

 (つぐみ)の言う通り、昨年のミスコンはパッとしなかった。

 というのも───────

 

 

 

 

 

『いや~今年もこの季節がやって参りましたね~!

 今年はどんなコンテストになるのでしょうか!』

 

『昨年は演劇、バトル・オブ・ザ・ジュリエットが全部持ってっちゃいましたからね~』

 

『そして本コンテストの特別審査員として、当時のロミオ役である一条(らく)さんと最強のジュリエットこと桐崎千棘(ちとげ)さんにお越しいただいております』

 

『ロミオさん、いかがですか?』

 

『自分、今は武士なんで……』

『私はアリスです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? 私たちのせいだったのですか?」

「そりゃあそうでしょ」

 

 ミスコンの参加者よりも可愛い女の子たちがそろっていた演劇である。

 ジュリエットとして必要な知力・体力・時の運を競い、笑いあり涙あり、そしてジュリエット同士の愛情ありの一幕は、ミスコンよりもインパクトを残したのである。

 

「るりちゃん、私たちが()ったのって……」

「マクベスじゃないわ」

 

 小咲(こさき)は少々記憶が混乱しているようである。

 

「というわけで今年は気合入ってるから、お客さんはほとんどアッチに行ったはずだよ」

「一条君と千棘(ちとげ)ちゃんがゲストで呼ばれたのって、もしかして?」

「話題作りというか客寄せというか、そういったものですかね」

「一条君が居れば橘さんも釣れるからお得ね」

 

 (らく)にしかアピールしないだろうからミスコンとしてはどうかと思われるが、容姿に優れた彼女が参加すれば盛り上がるだろう。

 

万里花(まりか)ちゃんなら優勝しそうだけど」

「あー、うん、そう……だね」

「自爆してなければ、ですかねぇ」

「無理でしょうね、きっと」

 

 今日も自爆芸が冴えていることだろう。見なくとも分かる。

 

「確かに橘さんも『凡矢理七英雄(ぼんやりしちえいゆう)』の1人なんだから、まともにやれば優勝できるんだけど……」

「しちえいゆう? 何それ」

 

 凡矢理(ぼんやり)高校の中で特に秀でた才能や人気を持つ7名に送られる称号、となっているが、基本的に採用基準は容姿だったりする。

 

小咲(こさき)ちゃんと(つぐみ)ちゃんも入ってるよ」

「他にはお嬢と、最近では秦倉先生も入っています」

「マイちゃんとるりちゃんは?」

「私は目立たない一般生徒だから」

 

 るりはそう言うが、可愛いうえに成績優秀、かつ水泳で全国大会にも出ている文武両道な才女である。一応それなりに人気はあるのだが、七英雄(しちえいゆう)に名前があがることはない。

 

 というのも容姿を基準にしている、つまりは男子生徒の欲望によるもの、というわけで。顔もそうだが体つきも重要なポイントになっている。

 その点でいうと見た目が小学生の彼女を推すことは、ちょっと危ない性癖の持ち主だと思われるリスクがあり、表立った票が集まらないのだ。

 

「マイちゃんは?」

七英雄(しちえいゆう)をソロ攻略しそうなプレイヤーは対象外、らしいよ」

「ああ、納得です」

 

 小咲(こさき)ちゃんと(つぐみ)ちゃんの2人しか攻略してないし、する気も無いのに、とは本人の弁である。

 

「ちなみに小咲(こさき)ちゃんたち4人は確定で、最近5人目として秦倉先生の名前が上がって来ていて、後は曖昧(あいまい)って感じみたい」

「七不思議とかもそんな感じよね」

 

 後半になるにつれてあやふやになったり、数の増減があるのはお約束である。

 『だいたい四人の公王』とか『龍造寺(ごにんそろって)四天王』とか、枚挙に(いとま)がない。

 

「なるほど。七英雄(しちえいゆう)の誰がミスコンを制すかという点でも注目が集まっていると。だからお客さんが来ないんですね」

 

 変な称号を与えられた身だが、既に攻略されているため何処か他人事のように(つぐみ)は語る。

 

 七英雄(しちえいゆう)のうち2人はクラスの出し物に残り、1人は審査員、1人は教師なので不参加、1人は自爆。

 となれば残る2人の枠に挙げられる者の中から優勝者が出るのだろうか。気になる所である。

 

「でも、私みたいにミスコン自体に興味が無い人もいるんじゃないの? その人たちがお客として来る可能性は?」

 

 るりが言う通り、喧騒を避ける人も少数とはいえ居るのだが。

 

「あえてミスコンを避けるような人が、コスプレ喫茶に来ると思う?」

「確かに」

 

 自分なら確実に静かなところに行くだろう。

 コスプレ喫茶なるものは絶対に落ち着かないことが予想できるからだ。

 

「………………暇だね~」

「お客さん、来ませんからねぇ」

「楽だからいいじゃない」

 

 体育館(ミスコン)の盛り上がりとは対照的に、実に平和なひと時を過ごす4人であった。

 

 

 

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