そんな感じの3人だが、手を動かすことも忘れてはいない。
そして翌朝の仕込みを終わらせる頃にはすっかり夜も更けていた。
3人はまだ未成年、高校生である。
これまではある程度の時間で帰宅できるように働いていたのだが、今回は厨房を担当したことで遅い時間になってしまった。今から帰宅させようにもバスは無くなっており、タクシーで帰るには料金が高くつく。そもそも未成年をこんな時間に出歩かせるのは問題だというのもある。
ということで今日はこのままお泊りである。
「マイちゃんマイちゃん、お風呂行こ?」
当旅館の目玉である露天風呂はすでに宿泊客の利用できない時間帯になっており、
「何気にココのお風呂は初めてです」
何度か手伝いとして訪れていた姉妹であるが、利用はもちろん風呂周りの仕事も担当したことが無いため、どのようなものなのか興味があるようだ。
姉妹が温泉を楽しみにしている以上、
ゆっくりと疲れを癒したいので
昔ながらの
タオル片手に乗り込んだ3人は入り口で足を止め、周囲を見回す。
「へー、こんな風になってたんだ……」
あちらとの違いは湯舟に大きな岩がいくつもあるところだろうか。それもあって少し狭く感じる。
そしてあちらと同じく旅館から見下ろせる配置になっているのだが、すでに
「わー……あ?」
それは木製の看板、いやこの場合は立札というべきか。
『ここは
「いや、それは内じゃなくて外に書くべきじゃないかな?」
ラブコメのお約束ではあるのだが、
姉妹が風呂場担当にならないのも納得である。
「……今後も利用することは無いかなー」
「ねー」
通常の時間帯、宿泊客として利用することもそうだが、従業員用の時間帯であっても利用は無理だろう。
今回のように
「身体を洗ったら出よっか」
「うん……」
別に潔癖症というわけではないが、こういった他人の性衝動の産物には忌避感を抱くものである。
いくら混浴でもそれは無いと思いつつも、もしかしたら他人がハッスルしていたかもしれない湯は、年頃の少女たちにとっては受け入れられないものなのだ。
「温泉……」
楽しみにしていたところにコレである。
気落ちした
そんな彼女をよしよしと撫でつつ、
「んー、じゃあ家のお風呂をリフォームしちゃおうか。天然温泉引っ張ってきて、露天風呂にもなるようにとか」
帰りに別の温泉に行くことも考えたが、3人でゆっくり、とはいかないだろう。
ならばいっそ自宅に設置してしまえば、好きな時に好きなだけ入れるではないか。
「いいの?」
「拡張するためのスペースは余ってるし、それにちょうど今のお風呂が手狭に感じてきたところだったから、問題ないよ」
中学への入学を機に現在のマンションへと移り住んだ
最初は彼のみであったため、広大なフロアを男子大学生のワンルーム的な使い方しかしていなかった。
やがて
特にるりは母親が出産直後で弟を連れて実家に戻っていたこともあり、ほとんど
バレンタインの惨劇のあとは
そして全寮制の中学に行った
高校に上がり、例の事件の後は
さらには転校してきた
これまでも
当然風呂場もそれに合わせて広げてきた。今回もその一環である。
「確かに、湯舟はともかく洗い場と脱衣所はもう少し広い方がいいかも」
小野寺姉妹とるりは自室がマンションとつながってはいるが、それぞれの家族と夕食を共にすることが多い。
そのためそれぞれのタイミングで入浴することになり、全員で入浴することはそれほど多くは無く、なんとなく今のままでいいかなと放置していたのだが。
なのでこれを機に、10人くらいが一度に利用できるサイズに拡張するのもいいだろう。
「ところでマイちゃん、温泉の効能って何にするの? 子宝に恵まれるとか?」
「そこは美肌とかにしとこうよ」
「温泉……」
先ほどの沈んだものとは違い、
ついでに
「
いくら外気温を操作して暖かくしているとはいえ、いつまでも裸でタオル片手に立ち話しをするわけにもいかない。
そういうわけで3人で連れ立って洗い場へと向かう。
さくっと髪を洗った後にはこういう時のお約束として、お互いに背中を流すことになるのだが。
「お姉ちゃんの背中は私が!」
「じゃあ私はマイちゃんを」
「ならば
「どうやって洗うんですか? 三角形に並ぶのは……」
「もちろん、こうやって」
「ぅひゃうっ?!」
当然の疑問を
慌てて振り返ってみれば、背後には
さらには2人の陰に自分の後頭部も見える。
「んー?」
前に向き直ってみれば、
さらには2人の陰に自分の後頭部も見える。
「んー??」
よく分からない状況である。
「単に空間をつなげただけだよ」
「なるほど……便利ですね」
凝った髪型にするときとかに使いたい。
そんなことを考えながら姉の背中を流す。
特に技法なんかがあるわけではないので、すぐに終わってしまって物足りない。
「じゃあ前も洗いましょうね~」
「ぅひゃうっ?!!」
突然
気が付けば全身泡まみれである。むしろ泡の中に埋もれている感じになっている。
「おお~?」
ふわふわとした感触が実に心地良い。
「マイちゃんマイちゃん、私も」
「はいはい」
それが終われば手早く自分の身体も洗う。
「あ、マイちゃんダメだよ」
「そうですズルいです。次は私たちの番です」
「いや、2人に任せると洗ってキレイになるどころか汚れるじゃないか」
それに後片付けもあるから早く上がらないと、と彼は続けるが。
前に
「さっき時間を止めてるって言ったよね?」
「ふっふっふ~、逃がしませんよ~?」
メインである温泉に入れなくとも、十分に楽しんだ3人であった。