『今日は雲一つない、晴天に恵まれました』
「雲あるやん、あっこに」
「ホンマやホンマや」
というわけで、本日は体育祭である。
平成に入ってからは行事の分散や受験への影響を考慮して春に開催する学校も増えたようだが、
内容としてもシンプルで、スポーツテストの成績によって赤と白の2つに分かれて競うものになっており、普段はクラスメートであっても今日は敵である。
それぞれの所属する色のハチマキを額に巻いており、例えば身近なところでは以下のようになっている。
まずは赤組。
桐崎
「今日は体育祭よ~!!」
「あいつ、やけにテンションが高いんだが」
「
次に白組。
橘
「ギリギリまで交渉しましたが、チーム替えならず、でしたわ」
「橘さんってホント、運が悪いというか縁がないというか」
「そもそも競技に参加できる体力が無いのだから、わざわざチーム替えをしなくてもいいのでは?」
やる気なく座り込んでいる
そして青組。
岬
「なにゆえもがき、生きるのか?」
「滅びこそ我が喜び」
「死にゆく者こそ美しい」
さあ我が腕の中で息絶えるがよい、とばかりに不敵な笑みを浮かべる
「話をややこしくするんじゃない」
最初に『赤と白の2つ』って言ったでしょ。るりの手によって青いハチマキは回収されてしまう。
さらに大将の
◆
「
「え~?」
拘束されている
柔らかくて気持ち良いのだが、周囲と話すには不便である。
すぐに喉をゴロゴロと鳴らしそうな表情になったので、機嫌は直ったようだ。
「で、組み分けと言えば、白組的にはそこに転がってる奴らはイイのか?」
中には白いハチマキの、もっと言うなら体育祭実行委員の、あえて言うなら個体名:舞子
一応この6人は運動が得意なグループなので、白組の得点源となるはずであった。
「ああ、例によって邪悪な
「…………またか」
今回は何やろうとしたんだよ、と
「なるほど、細かい部分を予行
例えばプログラム2番の男女混合2人3脚では、中間ポイントとして『抱きしめ風船割り』を追加する、といった感じである。
一部の男子には受けるのかもしれないが、見世物にされるほうとしては
「マイちゃんっ」
「お姉ちゃんっ」
被害を受ける立場にあった
「
「相変わらずの公開セクハラね」
「合コンでやればいいのに、なんで学校行事に組み込もうとするんでしょうね?」
るりと
思い人を全校生徒の前で
「
「オレはイヤだぞ」
こういった性癖の不一致は破局の原因になる事が多いので、注意が必要だ。
「女好きだけど、特定の個人を好きになったことが無いとこうなるのかな?」
自分の好きな人に対してこんなことをされたら、と考える想像力があればやらないだろう。
好きな人は独占したい
「………………なんか昔、
「え? そんなことがあったの?」
「好きな人が居てコレなの?」
「何だかもう救いようがない感じですねえ」
記憶に引っ掛かりを覚えた
そんなつもりは無かったのだが、きっと
遠い空に浮かぶ
「……そうだ、思い出した。1年生の子が
そこまで
あれ、これって
あれ、これって
『…………………………』
ここに居るものは過去の悪行を知っているため、そうなるのも当然であった。
「い、いや本当だって!」
プライバシーを配慮して詳細を語れないため説得力のない彼の発言だが、そんな嘘をつくような人間ではないという信頼と、また何か勘違いしている可能性もあるのではという信頼により、半信半疑くらいには持ち直す。
「ってゆーか宮本! お前が持ってきた話じゃねーか!」
「え?」
周りと同じく疑いの目を向けていたるりは、突然話を向けられてきょとんとした表情になる。
やがて首を
「…………………………………………………………………あっ」
「そこまでしないと思い出せないんかい」
普段の彼女が見せない、見た目通りの幼い仕草が可愛らしかったために待ち時間はそこまで気にならなかったが。
「そういえばそんな事もあったわね……」
事の発端は、水泳部の後輩が彼女に相談してきたことにある。
曰く、今度舞子先輩に告白しようと思っており、そのアドバイスが欲しい、と。
その後輩はるりと
当然そんな事は無いため、彼の幼馴染とウワサの
るりとしては良く知らない人物の事を聞かれても答えようが無いし、であれば恋愛絡みのプライベートな部分を聞くのは避けた方がいいだろうと、すべてを任せて席を外していたのだ。
そもそも記憶に残るはずがない。
「初対面の子と突然2人きりにされたオレの苦労を」
「あなたもこの短期間で忘れるくらいの苦労だったんだから、大丈夫よ」
手土産としてジュースを渡されたために退けなかったというのもあるが、そんな状態でも相談事に真摯に向き合うのは彼の美徳である。
「……まあほとんど
それは、とあるウワサの確認である。
舞子
「え、私??!」
あまりにも身に覚えのない、事実無根の、根も葉もない捏造による虚偽情報に、るりの表情が引きつる。
ふざけた発言をした
「い、いやオレじゃなくて、ウワサ! そういうウワサだって!」
必死に弁解し、後輩にはしっかり否定したことを伝えてようやく許される。
男女の機微に疎いと自覚のある彼だが、
るりはまだ怒りが
「そーいえば去年の林間学校のとき、似たようなウワサがあったわね」
「え? そんな昔からあったのか?」
懐かしーわー、と
そしてるりを取られてしまうと不安になった
今は手一杯の状態だ。
「……るりちゃん、ごめん。俺にもっと魅力があれば……」
もし彼がもっと周囲に『るりちゃんは俺のモノだ!』と示せていれば、こんな事にはならなかった。るりを墜とす障害にもならないと判断されてしまっているのだ。男として、これ以上の屈辱は無い。
……まあ正直、見た目の問題である。
彼女を
「こうなったら、もっとイチャイチャするしかないね」
「……え?!」
彼の打ち出した解決策を理解した途端、るりの顔は真っ赤に染まる。
怒りによって震えていた身体が、今度は期待と喜びに震える。
「あっ、え、その……、やさしくしてね?」
その破壊力は凄まじい。
「マイちゃん様、殿中でござる!」
いまだ背中に張り付いていた
とは言え明日は振り替え休日。つまり夜も運動会で問題ないのだ。実に楽しみである。