本当にせこい   作:七九六十

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原作:第150話ハンギメ~第168話ツウジタ まで

・146話から149話? なんのことやら……
・修学旅行。(らく)が班から外れるのはネタとしてはいいが、(しゅう)が男一人でヒロインたちの中にってラブコメとしてやっちゃいけないでしょ。
 しかも例によって班ごとの部屋割りってことは、男女同じ部屋の可能性があるし。
千棘(ちとげ)の転校騒動の見どころって、ポーラとクラスメートとの絡みだと思う。
 なんだかんだと仲良くやってたんだなというのが分かる、良いエピソードだった。




12 - ワカッタ
12-01 修学旅行 班決め


 

 

 

 高校生活で最大のイベントは?

 

 そう問われた場合、誰もがこう答えるだろう。

 

『もちろん、大学受験に決まっている』

 

 学生の本分は勉強である。

 

「ついに来たわ、修・学・旅行!!」

 

 高校で学んだことの集大成を今ここに、と言わんばかりのイベントなのだから、皆が納得するところである。

 この日のために一切の誘惑にも負けず、勉学に(いそ)しんできたのだ。

 

「高校生活の中でもトップオブトップの大イベント~!!」

 

 まあそれはともかく、見開きの扉絵にはいろいろとツッコミたい。

 

 千棘(ちとげ)はメインヒロインなのに正面からじゃないのか、とか。

 万里花(まりか)は本編でもこんな風に他の人に絡めばいいのに、とか。

 (ユイ)はこういうときに出てこないけど、本当にヒロイン枠なのだろうか、とか。

 小咲(こさき)は扱いとしては大きいけど、セーラー服がコンセプトなのに顔だけってどうよ、とか。

 るりだけなんでリュック背負ってるの、そのせいで普段よりも幼く見えてカワイイけど、とか。

 (つぐみ)を横から見たシルエットって良いよね、顔のバランスが崩れていなければもっと良かった、とか。

 

「私、生きてて良かった~!!」

 

 そんなお話である。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「行先は京都! 3泊4日で体験学習等を交え、集団行動を学びます」

 

 現在凡矢理(ぼんやり)高校2-Cの教室では、担任の(ユイ)による修学旅行の説明が行われている。生徒たちは勝手に盛り上がっており聞いてはいないのだが。一部は席を立って集まっているほどである。

 

 そんな一部の中には、るりも含まれる。

 

「宮本はどうしたんだ?」

「厄介なのから逃げてきただけよ」

 

 小咲(こさき)(つぐみ)に出迎えられ、ほっと一息ついている。

 彼女が逃げるような事態というと(らく)には心当たりが1つある。

 

「……また(しゅう)が何かやったのか」

 

 このメンバーは廊下側後方の座席に固まっているのだが、るりはその中でも中央寄りの端に座っている。

 で、その斜め前に(しゅう)が座っているので、事ある毎にちょっかいをかけられるのだ。

 

 ちなみに現在彼は男子生徒のグループに捕まっているので、こちらには来れていない。

 

「今回は何やったんだ?」

「……見てる方が恥ずかしかったけど、『ねぇねぇ、同じ班になったらどうする? どうする?』って」

「ああ……それはウザい」

 

 舞斗(まいと)が平坦な声で棒読みしてもかなりのものである。

 いつもの(しゅう)のテンションでやられると、それはもうとんでもない。

 

「せめて『同じ班になろう』くらい言えんのかと」

(ダーリン)も理由は違うけど、言えないわね」

「いや、いくらオレだって、今回くらいは言うぞ? 一生に一度の修学旅行だ。みんなと一緒に行きてーよ」

 

 まあ(それ)はともかく、今は修学旅行である。

 

「楽しみだね、婚前旅行」

「だから小咲(こさき)ちゃん、修学旅行だって」

 

 今は修学旅行である。

 

「にしても京都かぁ。海外とか沖縄とか行ってみたかったよな」

「海外? ……つまり一条は、千棘(ちとげ)ちゃんの実家にあいさつに行きたいと?」

(ちげ)ぇーよ! そーじゃねーよ!」

 

 力強い否定である。

 

「あれ? 千棘(ちとげ)ちゃんのお父さんは日本に居るから、いつでもアイサツに行けるよね?」

「確か母親の方は世界中を飛び回ってるとか言ってたわね」

「あ、それについてですが、現在アーデルト様(ちとげパパ)はアメリカに出張中です。奥様が仕事の都合で同じくアメリカに居るらしく、ついでにしばらく夫婦水入らずで過ごすとか」

 

 なんでも日本での仕事が予定より早く片付いたらしく、一度アメリカに戻ったらしい。

 現在はクロードが代理で責任者(ボス)をやっているそうな。

 

「……千棘(ちとげ)?」

 

 自分に関する話題のわりには静かだなと、(らく)が視線を向けた先には。

 なにやら暗い影を背負った千棘(ちとげ)の姿が。

 

「………………(ダーリン)。私はアメリカになんて戻らないわ」

「お、おう」

 

 家族の話題だから、何か地雷を踏んだのかと少し焦る。

 

「……………………もうあんな食事には、耐えられない!!!」

 

 わっと涙を流して小咲(こさき)に泣きついてしまった。

 

「私は、私は小咲(こさき)ちゃんのゴハンが食べたいの!!!」

「いや、どーゆー流れなんだよ……」

 

 家族の話題だから、何か地雷を踏んだんじゃなかったのかと少し呆れる。

 

 そして食事の話題だからか、るりが喰いついた。

 

「アメリカの食事って、そんなに?」

「……砂糖と油をたっぷりと摂れますから、大きな満足感が得られますよ?」

 

 (つぐみ)はとてもキレイな笑顔を浮かべている。

 実に魅力的だが、今の流れで出てこられると困る。

 

「宮本様は海外留学に行きたいとか」

「ごめんなさい、今はちょっと考え直したいわ」

 

 (つぐみ)はとてもキレイな笑顔を浮かべている。

 実に魅力的だが、今の流れで出てこられると本当に困る。

 

 将来は英語文学の翻訳家になりたいと思う少女にとっても、食事は切実な問題なのだ。

 

 ちなみに。日本での千棘(ちとげ)宅の食事は、食材に関してはかなりのモノを使用しているので良い意味で満足度が高い。しかしアメリカではそういったものが簡単には手に入らないのに加え、じゃあ外食でどうにかしようと思ってもどうにもならない状況であるため、健啖家の身にはつらい環境になっている。

 

(らく)様ー! 修学旅行、絶対(わたくし)と回りましょうね!」

 

 順調に脱線していく彼らを救ったのは、ご存じ自爆少女万里花(まりか)である。

 果たして今回はどのような自爆を見せてくれるのだろうか。

 

「……背中に抱き着いているというのに、一条様は何の反応も見せませんね」

「悲しいくらいに脈が無いわね」

 

 万里花(まりか)はこれでも美少女である。

 この中では身長が2番目に低いというのに、とある部分のサイズは上から2番目であるくらいにスタイルも良い。

 そんな彼女が背中に抱き着いているというのに、(らく)のほうは若干の面倒臭さの混じる呆れた表情を浮かべるだけとは。

 

「では、宮本様はどうでしょうかね」

「えっ?」

 

 るりの背後に回り、(つぐみ)はその小さな身体を抱きしめる。

 徐々(じょじょ)に彼女の(ほお)は赤みを帯び、(つぐみ)に身を(ゆだ)ねるように重心が変化する。

 

「これは脈ありと見てもよろしいでしょうか」

「…………分かってるくせに」

 

 背後から覗き込む顔から逃げるように視線をそらし、小さな声でつぶやく。

 

 (つぐみ)だって、やればできるのだ。

 防御力がゼロなだけで、攻撃して墜とせるだけのスペックは十分に有している。

 

 そして余談だが、るりにも防御力はあるのだ。

 しかしその弱々しい防御がむしろ攻撃を誘っているのではという疑惑もあるのだが。

 

「…………ほぁあ~」

 

 珍しいものを見たとばかりに目を丸くしているのは千棘(ちとげ)である。

 小咲(こさき)に泣きついていた彼女は、滅多に無い出来事に目を丸くして驚いている。

 

 そんな隙を捕食者が見逃すはずが無い。

 

「ふふっ、じゃあ千棘(ちとげ)ちゃんはどうかな~?」

「えっ?」

 

 そっと顔に添えられた指先が、視線を誘導する。

 可愛らしく、それでいて蠱惑的に微笑む小咲(こさき)(せま)るにつれ、鼓動はどんどんと速くなり、体温が上昇する。今にも蒸気を噴出さんばかりに沸騰している頭は、もはや小咲(こさき)のことで一杯である。

 

 そして、小咲(こさき)はそんな彼女の耳元で(ささや)きかける。

 

「わたしのこと、すき?」

「大好きです!!」

 

 迷いなど一切ない、心からの叫びであった。

 今なら壺でも絵画でも連帯保証人でも、なんでも来いである。

 愛の前には些細なことなのだ。

 

 しかし一方で、恋人を奪われそうになっている一条(らく)の心中は穏やかではない。

 

「まったく、授業中だというのにケシカラン」

「一条、鼻の下が伸びてるよ」

(らく)様、(わたくし)のときよりも反応が良いのは何故ですか」

 

 そう、こんなやり取りをしているが、今は授業中である。その証拠に隣のクラスからは大きな悲鳴とブーイングが聞こえる。

 

「……え、ブーイング? 何があったんだ?」

「隣のB組からですわね」

 

 突然の出来事に(らく)たちだけでなく、クラス中が静まり返る。

 

「……あー、あのね、実は1つだけ悪いニュースがあってね」

 

 それを好機と見たか、教壇に立つ(ユイ)(くち)を開く。

 

「班決めの方法なんだけど、なんと今年から完全なクジ引き制になっちゃって」

「ええ~~~!!?」

 

 なんでも毎年のように仲の良いグループが騒ぎすぎたり、班に(かたよ)りが出来るとかで、その対策として職員会議で決定したらしい。

 

 もちろんクラスからは悲鳴とブーイングの嵐である。

 

「ど、どーすんだよこれ?!」

「わわわ(わたくし)はクジ引きでも(らく)様と同じ班になれますわ!?!」

 

 (らく)たちも他人事ではない。せっかくの修学旅行が、行く前から台無しになるかもしれないのだ。

 そしてほぼ確実に万里花(まりか)は別の班になる流れである。

 

「マ、マイちゃんっ」

「お姉ちゃんっ」

「……引率さぼって酒飲んでる人たちに言われたくないなあ」

「しかもこれって、私たちのせいじゃなくて先輩たちのせいよね?」

「やり方完全に間違えてますよね」

 

 舞斗(まいと)としても、ちょっと受け入れられない。そもそもの理由に納得できないし、そして何よりこの学校は同じ班の男女をホテルで同室にするのだ。どう考えても待っているのは悲劇である。

 

 ただこれも正確なところは分からない。

 

 第151話(トラブル)での(らく)は『()()()()()()()()()が水もれで使えない』と言っている。その後の発言でも一室を班員6名で使用する予定だったことが分かる。

 

 第152話(グッスリ)千棘(ちとげ)は『桐崎さん昨日どこ行ってたの?』と女子生徒に声をかけられている。これは同室でないと出てこない発言であろう。男子がたまたま6人で固まった班があったから同室にしたというのであれば、女子が5人固まった千棘(ちとげ)の班を解体するだろうか。

 『()()()()()で寝てしまった』という発言は、男子部屋と女子部屋があるというのではなく、(らく)の部屋でと捉えるのが自然であろうか。

 

 第154話(ウレシイ)万里花(まりか)は部屋の中で1人スマホを(いじ)っているが、このとき同室に居るのは見知らぬ女子2人。メインキャラどころか同じクラスとして描かれるサブキャラでもないところを見ると、千棘(ちとげ)たちと万里花(まりか)は一緒では無い可能性が高い。普通なら策謀を巡らす場合、その対象の背後で行う描写のほうが効果的だからだ。

 彼女が部屋の隅に独りでいることについては、もはや何も言うまい。

 

 ……取り合えず今は『班員は同室』という前提で話を進める。

 なのでクジによる班決めをどうにかしなくてはならない。

 

「こうなったら班分けを完全無視で行動して、例年以上に、いや比べ物にならない規模の騒ぎを起こして、来年のクジ引きを阻止しないとダメだね」

 

 悪いことをしていないのに、そこから学ぶ物の無い罰を受ける者と。

 悪いことをしたのに、罰を与えられずに学ぶ機会の無かった者と。

 どちらが哀れだろうか。

 

 

 

「これは自分たちのためではない。後輩たちのために、全力で大暴れするぞ~!」

 

『おおー!!!』

 

 

 

 クラスの心が1つに合わさった瞬間である。

 まあこのように変な方に暴走するのもむべなるかな。大義名分を得た、と信じる者の行動は誰にも止められない。

 

「いや、岬が(あお)った結果だろうが」

「でもマイちゃん、気の弱い子だと、班から外れて行動するのは難しいと思うよ?」

 

 小咲(こさき)の心配も(もっと)もである。

 であればと、舞斗(まいと)はパチリと指を鳴らす。

 

「というわけで、クジに細工をしてみました。これで好きな人と班を組めるよ」

 

 今回は班分けをクジで行うと発動するトラップ式である。別のクラスでも、そして来年以降でも安心である。

 

「好きな人と組めるなら、クジのままでもいいんじゃ?」

「一条、甘いね。『無理矢理クジで決められた』という事実が大事なんだよ」

 

 クジ引きを無くすという大義名分は生きているのだ。つまり好きな人と班を組んだ上で大暴れできるということだ。

 

「なるほど………………なるほど???」

 

 (らく)も納得したところで、班決めのためのクジ引きを行う。教卓の上にある箱から班名の書かれた紙を引く。

 

 まあ結果として、ここに居る7名が全員同じ班になり、他のクラスも含めてほぼ希望通りになったようである。

 ほぼというのは、例えば10人とかで一緒の班になりたいと考えている者たちが、ホテルの部屋の都合で2つに分けられたりとかであるので問題ない。

 

「……え? あれ、オレは?」

 

 ほぼ希望通りであるので問題ない。どこの誰とは言わないが、彼は仲の良い男子生徒たちと同じグループになったようだ。

 るりを守るように小咲(こさき)(つぐみ)千棘(ちとげ)が囲んでいた効果はあったようだ。

 まあそもそも『一緒になったら~』程度の想いでは一緒になれないのだ。

 

 

 

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