調理実習からの数日間。
ようやくクラスに馴染むことができた
「いや~気分いいわ~。これぞ私の夢にまで見た高校生活……!」
いつもなら嫌々行う
「聞いてよ!! 私今度、学校の帰りにみんなでマックに行くのよ!!」
「そうか、オレもよく行くよ」
指を突き付けながら『うらやましいでしょ!』と自慢げに語る彼女に、
とはいえ
久しぶりに平和に過ごせる。
そう思っていたのだが。
「え、小野寺さんたちとお勉強会? あんただけズルい! 私も行く!!」
「え、宮本さんの部活の応援? あんただけズルい! 私も行く!!」
どーしてコイツは出しゃばってくるのだろうか。
いや、境遇を考えれば『お友達と○○する』ってシチュエーションに目が無いのは分かる。
それにラブラブカップルを装う以上、あまり単独で行動しないほうがいいのも分かる。
とはいえなぜ割り込んできてわざわざケンカ売ってくるのか。
「いやー、かつてないほど一条にストレスが溜まってるねー」
「うおっ?!! って岬か……」
放課後、屋内プールにて。
今日はるりの所属する水泳部が他校と練習試合を行うため、その応援に来ている友人たち。
ちなみに
「岬は出なくてもいいのか?」
「代わりに桐崎さんが出てるから大丈夫だよ」
本来は
「……なんかスマンな」
「気にしなくていいよ」
まあ練習試合といっても、弱小校同士の交流会のようなものである。
部の規模の割に大きくてキレイな屋内プール完備の
なので勝ち負けは二の次、楽しめればそれでいいので
それにそもそも
「桐崎さんが周りに合わせられるかは心配だけど」
「それは……確かに」
複数の意味で弱小校に居てはいけない人材なのだ。
そんな彼女はといえば、現在は
今のところは問題を起こしていない。
この数日で改めて面識を持った2人とも仲良くできている。
……だけど何か、すごくモヤモヤする。
「大丈夫だよ。一条から桐崎さんに乗り換えるとか、そーゆーのはあり得ないから。
「……えっ」
横から聞こえてきたセリフに身体が固まる。
内容が理解できなかったからではない。
なぜか自分がそのセリフを欲していたことを理解してしまったからだ。
「もう2年以上も友人として仲良くしている一条
桐崎
一条
彼にとっては中学時代に出会った3人が友人のすべてである。
……なるほど。
自分は、友人たちを桐崎
……オレはそんなにも顔に出やすかったのかという不安もあるが。
「ちょっとは落ち着いた?」
「……ああ、ありがとな」
ここ数日に渡って感じていたストレスから解放され、肩が軽くなった気がする。
「あとは桐崎さんとの
「そうそう、これがまた演技するのが大へぇぇえぇえっ?!!」
ついでに
「な、なっ、なんっ?!」
「さすがに気付くよ。金曜の放課後まで険悪だったのに、土曜にはラブラブカップルとしてデートとか無理矢理すぎるし」
それに加えて
そういった点を指摘されると何も言い返せない。
ちなみにそれとは別の茶髪メガネの不審者についてだが、今は
オープンであれば
忘れていなければ帰りに解放する予定である。
「
それは朗報である。
そんな天にも昇るような解放感が
多少愚痴っぽくなったかもしれないが。
「……とまあ、そんな感じでラブラブカップルじゃないとダメなんだよ」
「ふむ」
事前に
いやむしろ、この場合はいろいろな意味で『頭が悪い』と言った方がいいのかもしれない。
「それ、恐らくもう止められないね。しばらくはラブラブカップルを続けないと危ない」
「マヂか……」
この場合は今すぐにニセコイを解消したところで問題は起きない。それぞれの組織の
ラブコメ的に考えてこれくらい気楽なもので構わないし、本格的にくっついた後で『実は必須では無かったけど、面白そうだったから』というネタばらしというのもおいしい。
しかし今回の場合は『下っ端構成員が自主的に抗争を止めている』だけである。これではニセコイを続けていても抗争が起きる可能性は残り、ましてや解消すれば言わずもがな。そしてその抗争を止めるだけの権力が
さらにはこの状況に対して親としても組織の
「どーすんだよコレ……」
「んー、桐崎さんがまともな人であれば、いくつか打てる手はあるんだけど」
ヤクザ要素なんて『2人を無理矢理くっつけるための舞台装置』でしかないのだから、もっと軽いものでよかったのに。それこそ『強面たちが勝手に盛り上がって結婚や子供のことまで考えていて、期待が重くて今さらウソだなんて言えない』とか。ベビー服片手にソワソワと2人を見るゴツい人たちとか、漫画的にも絵になると思うのだが。
……本当はバトル物を描きたかった作者の思いが、コメディに振り切らせなかったとかなのだろうか。
「近いうちに何とかするから、とりあえず今は現状維持でお願い」
「スマン、助かる。……けど、桐崎がどうなるかは分かんねーぞ?」
中学生の頃からこういった自分の手には負えない事件のサポートをしてもらっていたため、その力量に疑いは無いのだが。
今回は桐崎
協力とまでは言わないが、こちらの言う事を受け入れるくらいはして欲しいところだが。
「桐崎さんに関しては転校してきたときの件で印象が悪いままだから、こちらとしても上手く付き合っていける自信が無いんだよね」
「いや、アイツにだって良いところが……………………あるといいなぁ」
出会ってからのいくつかのイベントを通して、見た目が良いというのは分かった。
しかし人間的な良さというのは………………
見た目に関しては漫画だから嫌でも目に付く部分なので、それだったら先に内面を描写しておいた方が良い気もするのだが。
特に対抗馬が
「……ところで桐崎のヤツ、あれだけボリュームのあった髪をどうやってまとめてんだ?」
「そこは気にしちゃダメだよ」
漫画的なお約束である。
えらく細いツインテールになって、あまつさえリボンを付けたまま泳ごうとしているが、漫画的なお約束なので問題ないのだ。