本当にせこい   作:七九六十

62 / 82
12-08 反省会

 

 

 

 楽しい修学旅行も終わりを迎える。

 3泊4日があっという間に過ぎ去ってしまった。

 

 帰りの新幹線でも予定通り大量の駅弁を買い込み、土産物と一緒に帰路につく。

 

 ちなみにポーラを預かってくれている小野寺家へのお土産として、漬物とお茶をセットで購入している。和菓子屋にお菓子系を持って行くわけにはいかないので、ちょっと渋めのチョイスになっている。

 まあ(はる)のために別枠でお菓子もいくつか購入してあるのだが。

 

「一条は木刀を買わなくてよかったの?」

「ウチにいくらでもあるからいらねーよ」

 

 土産物としてではなく実用品として所有している彼は、無難に和菓子系でまとめている。配る人数が多いため、個包装で分けやすいものが中心である。

 

「それにしても、今って何月なんだろうね」

「え? 突然どうしたの小咲(こさき)ちゃん」

 

 千棘(ちとげ)は何のことか分からなかったようだが、るりと(つぐみ)、そして本田は気付いたようだ。

 

「原作だとこの後は『週末に転校』騒ぎで、直後にクリスマスイブなのよね」

「でもこの修学旅行の初日、台風が上陸してましたよね?」

「いくら季節外れと言っても、12月半ばに台風ですともっと騒ぎになるような気がしますが」

 

 この作品では何故か、台風の進路・速度が急に変化するのだ。事前の備えとかがまったく意味をなさない厄介な災害である。

 

 そんなちょっとした謎が残ったが、楽しい修学旅行であった。

 

「家に帰るまでが修学旅行ですよ~」

 

 地元の凡矢理(ぼんやり)駅に到着し、担任の(ユイ)先生からありがたいお言葉をもらって解散した一行。

 

 今日くらいは家族と一緒にゆっくり過ごすと言って小咲(こさき)たちはそれぞれ自宅に戻り。

 そして翌日にはいつも通り舞斗(まいと)のマンションに集合するのであった。

 

「お~、これがウワサのアリンコサンド」

「美味しそう」

 

 (はる)とポーラに写真を見せながら旅行の思い出を語る。

 

 舞斗(まいと)の能力を使えば現物を用意できたのだが、こういうのはやはり現地で食べるからこそというのもあり、今回は買ってきていない。

 その代わりお土産として売っているものは大量に仕入れてきているのだが。

 

「出張帰りのお父さんと娘たち?」

「2人ともカワイイね」

「ここ数日会えなかったから、淋しかったんでしょうね」

 

 舞斗(まいと)の両サイドから腕に抱き着いて甘えている2人の様子に、保護者たちはニッコニコである。

 

「あ、これが映画村のヤツですか?」

 

 (はる)は一枚の写真に目を止める。彼女の大好きな和装での集合写真である。

 映画村では他に1人ずつの写真や、制服に戻っているがアトラクションを楽しむ姿なんかを撮影している。

 

「……(つぐみ)は町娘の着物じゃないの?」

「そうなのよ、残念なことに」

「ねー、つぐみちゃんも一緒にって誘ったんだけど」

「私にはそういうカワイイ系は似合いませんから」

 

 ポーラの疑問に乗る形で、るりと小咲(こさき)の視線が(つぐみ)へと向く。

 ここで強引に迫ると泣いちゃうので手加減しているが、小咲(こさき)たちとしては(つぐみ)に女物の服装を着せたいというアピールは欠かせない。もしかしたら押しに負けて、着てくれるかもしれないし。

 

(……ねえ、マイちゃん様)

(つぐみ)先輩って、この格好でもカワイイですよね?)

(それ本人に言っちゃダメだからね。気付かなければ、またカワイイ格好してくれるんだから)

 

 本人はカワイイものが似合わないというが、何を着てもカワイイ感じになってしまうのが(つぐみ)である。

 彼女の方向性的にはカッコイイとなるはずなのだが、何故なのだろうか。

 

 

 

 

 

 ちゃぶ台に山積みになった土産物を摘まみながら、一通りの写真を見終わる。

 

「それにしても岬先輩、今回はいつにも増してネタが古くないですか?」

「歴史ある京都に敬意を表して……」

「それだと(さかのぼ)り具合が足りてないような」

 

 小野寺姉妹からのツッコミが入る。

 

「投稿当時の流行を取り入れていた方が、人気が出るのよね」

「まあその場合は毎日投稿するぐらいの更新頻度も必要になりますが」

 

 るりと(つぐみ)の言う通り、ノリと勢いがある作品は人気が出る。媒体的に、特にネットスラングを多く含んでいるとさらに勢いが増す。

 その反対に古いネタというのは、読者層にマッチしない限りはマイナスになる事が多い。当たり前の話だが、知らない物は笑えない・楽しめないからだ。極稀に、そこから元ネタに興味を持ってもらえる場合もあるのだが。

 

「………………」

 

 ポーラはお菓子を食べるのに忙しいようだ。

 

「古いネタばかりだと、人気が落ちますよ?」

「その点は大丈夫。落ちるどころか、そもそも読まれてすらいないから」

 

 アクセス数が現実を突きつける。何の心配もいらないのだ。

 

「え? ……これ、原作は『ニセコイ』ですよ? 天下の週刊少年ジャンプで長期連載するくらい人気のあった」

「コミックスの累計発行部数が1200万部を超えて、アニメ化もゲーム化も、実写映画化もされてるね」

 

 原作は本当に人気作なのである。

 週刊少年ジャンプのラブコメ枠の中では連載期間と巻数が歴代1位となったほどに人気があるのだ。

 

「それだけ潜在的な読者の居る二次創作なら……」

「それだけ潜在的な読者の居る二次創作でも、ダメだったんだよ」

 

 現実は非常である。

 

「……『ニセコイ』の二次創作として見られてないとか?」

 

 お菓子を飲み込んだタイミングで、ポーラが(くち)を開く。

 

「オリキャラ乱舞でオリジナルエピソード、とかにはなっていないから、そこは大丈夫なはずよ」

「いわゆる『原作沿い』ってヤツですからね」

 

 るりの言う、むしろ開き直った路線のほうが読まれていたかもしれないが、如何せんオリジナリティが出せるほどの引き出しが無いのだ。

 

「じゃあ、原作の人気があった部分を台無しにしてるとか?」

 

 小咲(こさき)の指摘には説得力がある。

 なんせ清純派代表のような彼女が、ちょっと他所には出せない子になっているのだから。

 

「ふむ……、ちょっと検証してみようか」

 

 そう言って舞斗(まいと)は数枚のフリップボードを取り出す。

 小咲(こさき)たちがそれの正面になるよう座り直すと、説明を始める。

 

「原作ではこの時期、3周年記念としてエピソード投票ってのをやっててね」

「なるほど、原作で人気のあった話をしっかり押さえているか、という事ですね?」

「……なんかもう、オチが読めたんだけど」

「だ、だいじょうぶだよきっと……」

 

 いやまさか、こんな事になるとは……

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------

 

1位

 

原作:第97話 オネガイ  (単行本11巻)

 

 万里花(まりか)の九州時代の友人、篠原御影(みかげ)がやって来た。

 彼女に対して『婚約者である(らく)様とは超絶ラブラブウルトラハッピーに交際中だ』とウソをついていたため、話を合わせることになった(らく)万里花(まりか)は学校を抜け出して遊園地デートをすることに。

 

 途中万里花(まりか)関連のシリアスな部分が見え隠れしつつも、なんだかんだと良い雰囲気でデートを終えた2人。

 仕舞いには(ほお)とは言え万里花(まりか)にキスされてしまうなど、万里花(まりか)ファンからの票が集まるのも納得のエピソードである。

 ちなみにこの作品において、明確なキスシーンが描かれているのは万里花(まりか)だけなのではという疑いもある。

 

--------------------------------------------------------------

 

 

 

「へー、こんな話があったんだ」

「橘先輩って、人気があるんですね」

 

 万里花(まりか)と絡みのないポーラと(はる)としては、1位のエピソードとはいえその程度の感想しか出てこない。

 対して2年生組は……

 

「え、これは……」

「まさかこの話が1位だなんて」

「どうしましょう、最初から雲行きが怪しいですよ」

 

 表情が引きつっている。

 

 

 

--------------------------------------------------------------

 

本当にせこい:第9話 ナンノヒ

 

御影(みかげ)「おいは恥ずかしか! 生きておられんごっ!」

舞斗(まいと)「介錯しもす!」

るり「笑うたこと許せ」

ツグミ「合掌ばい!」

 

--------------------------------------------------------------

 

 

 

「…………え?」

「…………え?」

 

 地元の遊園地で接吻(せっぷん)のはずが、まさか那覇(なは)首里城(しゅりグスク)切腹(せっぷく)とは。

 現場を見ていなかった1年生組には理解できない流れである。

 

「マイちゃん……」

「巻末まで読んでなかったから、プロット作った時点ではこのランキングなんて知らなかったんだよ」

「というかこれ、この後の展開にも影響が出るんじゃない?」

「割と重要なキャラなのに、接点が無くなってますからねえ」

 

 本当にどうしたものか。

 その場の勢いに任せてこんな話にしてしまったが、大丈夫なのだろうか。

 

「……これ、総数5879票のうち1204票、だいたい20%を獲得した人気エピソードですよ?」

 

 (はる)の言う数字は票数であって、人数ではない。重複可能だし。

 とは言え、企画に投票するほどの原作ファンから人気のあるエピソードに対してこの仕打ちである。

 距離を置かれるのも納得である。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。