デザートまでしっかり食べて、食後のお茶を手に
「さて今回の騒動について、皆は橘さんを助けることを目的にしてたけど、俺は
「妖怪ババアをですか?」
それぞれの目的に対する構成人数を大きく盛っているが、わざわざ本当の事を言う必要も無いので友情パワーということにしておく。
当の本人は母親に対してヒドイ言い草をしているが、彼女たちの関係を考えれば仕方のない事である。ちなみに別の所では『ババァ妖怪クソバーバ』などと呼んでいたりする。
「助けるだけなら会社の人、お城の人たちでどうにかできたんだけど。問題は当人が助かる気が無かったというか、そんな事を考えられないほどに心を閉ざしていたことなんだ」
「だから助けを求められる状態まで持って行こうと思って、
橘さんを結婚式から助け出したのも、その一環だね」
「まあ確かに、式が予定通り進まない事にかなりイライラしてましたものね」
ざまーみろですわ、なんて考えている
「本命は、橘さんに『友達が助けに来た事』なんだ。『私のときは誰も助けてくれなかったのに』って相当ダメージになったと思うよ」
「…………え?」
自分が家のために結婚を
今さらながらに、その考えにたどり着いてしまう。
「しかも皮肉なことに、
「…………え?」
異なるのは、誰か特定の人物を追いかけてというわけではないところ。
そのため普通の学生生活を送り、友達ができて、毎日を楽しく過ごしていた。
そして同じように途中で体調を崩し、連れ戻されて結婚させられたのだ。
「……なあ、もしかして岬が制服姿なのって」
「これも小道具の1つだね。当時とデザインが変わってなくて良かったよ」
「同じように高校に通っていたのに、自分の友達は誰も助けに来てくれなかった。
「………………」
彼らが家まで来てくれたと知ったとき。
そして式場で助けてくれたとき。
そのときの喜びを、希望を感じることも無く、ただ絶望だけを感じて生きていくことになっていたら。
そんな最悪の結末を想像して、
「今から20年以上も前の事だからね。当時はまだ子供全員が個人で連絡手段を持つような時代じゃないから、引っ越したと言われたら連絡が取れなくなるのも当たり前だし。そして本田さんのように事情を教えてくれる人も居るとは限らない。
だから、ただの高校の友達が助けに来ることができなかったとしても、責めることなんてできない」
それでも娘にだけ助けが来たのを見たときに、自分のときにも助けが来て欲しかったという気持ちが湧いてしまったのだ。
「……で、ここからがまだ
「もうこの時点で気が重いんだが」
当事者ではない分、まだ
母親は自分の敵だと認識していたからこその今までの態度である。
それが事情を知ったうえで客観的に見てみると……
まあ彼女の立場を考えれば、そこまで気にするものでもないのだが。
「心配しなくてもいいよ。橘さんよりも、一条と
「それのどこが心配しなくてもいい、なんだよ」
「え? 私? それに
「なんだろ?」
「私もですか?」
当事者じゃないと思った矢先にこれである。
そんな身構える面々に対して、ある意味とんでもない事実が突き付けられる。
「助けに来なかった
「………………は???!」
一条家、桐崎家、橘家、そして小野寺家。
それぞれの母親は
もちろん全員初耳である。
「ちょっ、
「いや、ウチはそもそも高校に入ってから顔も見てないし……」
「私も似たようなモノだった!?」
母親とは別居中のニセコイカップルは役に立たないようだ。
となれば小野寺家に注目が集まるのだが。
「お姉ちゃん……?」
「私も聞いた事ないよ……」
「もしかして、
「え? こどものころ?」
「……ちょっと桐崎さん? あなたまさか忘れたとか……」
「え、えぇ? …………あ、も、もちろん覚えてるわよ!? 忘れるわけないじゃない!?!」
やーね
もちろん通用せず、コイツ忘れてやがったなという視線が返ってくるが。
そんな2人に隠れるように、やっべ忘れてたという顔の少年と、そーいえばそんなこと言ってたようなという顔の少女たちが居たりするのだが。
「……てっきり、父親の方からの繋がりだと思ってたんだけどな」
「もちろんそっちも関係してるよ」
自分はさも覚えてましたという風を装う
それを付けたのが
警視総監である
旧知の仲だと言っているので、そこまで外れてはいないはずだ。
…………もしかしたら、彼らも同じ高校の同級生という可能性も?
「……あ、でもマイちゃん。私たちって三者面談で顔を合わせたけど、お母さんは何も反応して無かったよ?」
「確かにあの時は、ウチの親父も反応してなかったな」
「パパたちはなんとなく顔見知り感はあったけど、言われてみれば……」
今から5ヶ月ほど前であろうか。
「お姉ちゃん、たぶんお母さんは一条先輩のこと『商売敵のケーキ屋』としか見てないと思うよ?」
「知識として『友人の息子』とはあるけど、一条君を見てもそれが出てこないってこと?」
「卒業生のわりに校内の様子にも反応してませんでしたし、友人の夫にも子供にも同じように反応しない人なんですかね?」
「お母さんならあり得る……」
身内からも友人からも母親に対する評価がアレなことに頭の痛い
実は彼女たちは知らないが、原作ではキーアイテムとなっている
娘2人が気に入っている物の来歴くらい、とか。しかも友人が描いた物、くれた物なんだからとか。
いろいろと残念な人物である。
「というか、遠くに居た
「まあそこは、客商売やってるとこにヤクザが関わるのは不味いだろうって配慮したということで」
「一歩間違えれば幼馴染だったのに、残念ね」
ヤクザなんて設定が無ければ、ポーラが言うように
「秦倉先生と幼馴染でひとつ屋根の下、そこに
「これは刺されてもおかしくないわね。ヤクザだというのを除いても男友達は絶望的だわ」
「それは今も同じでは? 一条ハーレムとして学内では有名ですし」
「有名なのは、お前らが事あるごとにネタにするからだと思うんだが」
どうせ今と同じなら小野寺と幼馴染が良かったなぁ、なんて考えている
「ねえ、お姉ちゃん……」
「聞くのが怖いんだけど、私のママって
「もちろん知ってるよ。ただまあ、あまり興味は無いみたいで『昔の友人に娘と同年代の子供が居たのね』くらいの認識みたいだね」
「えぇ……」
「ちなみに一条のところも同じみたいだよ」
「ウチもかよ。いや、家を出て自分の好きな事やってる人だから、薄々そーじゃねーかなと思ってたけど」
「むしろ何故そんな人ばかりなのに、10年前に接点を持てたんでしょうね?」
「同窓会で久しぶりに顔を合わせて盛り上がったとか、そんなところかしら?」
定期的な交流ではなく、その場限りの集まりだったのが余計に謎である。
一条家と桐崎家は父親の仕事のため。
橘家は娘の療養のため。
ついでに
秦倉家が居たのが偶然でないとしたら、そこに橘父が療養だと娘を連れ出し、合わせて一条・桐崎家が仕事を名目に合流、でさらに小野寺家が観光か避暑目的に参加、といったところだろうか。
「……10年前、
「はい、母君様はあの場には……」
そして余計な事にも気付く。
「そういえばあなた、当時からまったく変わってませんわね」
「若さの秘訣は適度な運動と腹八分目だそうです」
ちょっとした現実逃避に対して、訳の分からない答えが返ってくる。
10年前に療養中だった
……よくよく考えれば、当主に仕える忍者『
なお
当時のそんな状況を聞かされた
「な、なあ、まさかとは思うが……」
「いやそのまさかでね。高校時代の友人たちが家族ぐるみで楽しんでいるのに、
これにはさすがの一同も、頭を抱えて
お気楽なラブコメのはずなのに、どうしてここまで悪意のあるシチュエーションが用意されているのだろうか。
「これをどうやって
「もぅマヂ無理」
外の世界に出れば、いずれ知ることになるだろう。
だったらせめて、
「……
「
その場限りの舞台装置として適当に用意したキャラが、今までの設定の積み重ねのせいで強キャラ化してしまっただけである。
娘や夫と違い左右対称の
そこには多くの人に囲まれ、戸惑いながらも幸せそうな
憑き物が落ちたというか、険の取れた彼女は自分と同年代の少女のようにしか見えず。
もしかしたら、悲劇性だけじゃなくてヒロインとしても負けてるんじゃ……
そんなトドメとなりそうな台詞を