さて、今回の騒動はこれで終わりではない。
そもそもの始まりは
「治療に耐えられる体力があるうちに、ってことか?」
「まあそんな感じだね」
大量の薬でごまかすのは身体に悪いので、さっさと病院に叩き込んでしまえ、というわけである。
治療できるのは世界でただ一ヶ所、アメリカのペンシルベニア州ピッツバーグにある特別病院だけということになっている。
「なっている?」
「当主の命に係わる病気の治療をできるのが国外のただ一ヶ所だけ、なんてことには普通しないでしょ」
なんのための経営権だというのか。
橘家として治療法は押さえてあるので、何なら地元のかかりつけの病院でも治療は可能なのだ。これくらいのリスク管理は当然である。
「え、じゃあなんでわざわざアメリカまで行くの?」
「治療に専念させるためとか、俗世への未練を断つためとか、そんな意味があったみたい」
入院は2年ほど必要になる。
子供が遠い異国の地でそれだけの期間を過ごすのだ。いろいろと諦めるには十分である。
「橘さんの性格なら、日本に居たら事あるごとに脱走して来そうね」
「なんなら、アメリカからでも抜けだしてくるのでは?」
「……
ただでさえ2年もかかって病院側も大変だというのに、患者が非協力的だとさらに大きな負担となってしまう。
本田の監視のもと、アメリカで大人しく治療に専念させた方がいいだろう。
というわけで
余談だが。
行きの飛行機にて
偶然にも帰りの飛行機も同じ
彼は一体何者なのか、この数日に何があったのか。
様々な憶測が飛び交い、彼らのウワサはしばらく航空業界を
◆
「たった2年ですよ。
いよいよお別れだというのに、いつも通りの
「……ですから、そろそろ泣き止んで下さいませんか、秦倉先生?」
「いやぁ、私もアメリカで独りだったし、気持ち分かるなぁ……と」
空港にて合流した
彼女は飛び級を繰り返した結果、アメリカで孤独なキャンパスライフを送ったという経験がある。それを思い出して、涙が止まらないのだ。
……決して、原作では仲良かったのに別れのシーンに登場すらできなかったことを悲しんでいるのではない。
「…………」
「どうしたの、
「いや、なんか学校に居る時と似たような視線が突き刺さる感触が……」
「本田さん、
「はい、お任せください。絶対に逃がしませんから」
「あ、そっちなんだ」
小野寺姉妹と話している本田も、継続して
縁もゆかりも無い異国の地に行くのであれば、同行者は気心の知れた相手の方が良いだろう、ということになったのだ。
それに加えて常日頃から
「アメリカの病院食って、どうなの?」
「……聞きたいですか?」
「……………………」
「ポーラちゃん、落ち着いて」
るりの何気ない一言に
アメリカの病院食はそこまで不味いというわけではない。病人、怪我人への配慮が無く、いつものジャンクフードがいつもの量で出てくることが多いくらいか。多数の民族が集まるだけあって、稀に当たりもあることだし。
今の食事が
その手の話はむしろヨーロッパ側の方が……
「……………………」
「大丈夫だよ。橘さんが行く病院は橘家の手が入ってるから、ちゃんと日本人向けの病院食が出るから」
会話が聞こえていたのだろう。
まあ橘家当主、次期当主のための病院である。ちゃんと味と量はまともなものになっているのだ。
……決して、そのために経営権を握ったわけではない、はず。
「そ、それは良かったですわ。アメリカナイズされてしまったら、2年後に戻ってくる計画が狂ってしまうところでした」
「ん?」
計画とは。まだ何か企んでいるのだろうか。
「あら、何か疑問ですか?
瞳に闘志を燃やして宣言する
「1回? たしか子供の頃にもフラれたんじゃなかったかしら」
「なんでも女の子らしい方が好みだからって、
「ということは、2回目だから諦めるって事ですかね?」
「ちーがーいーまーすー!」
るりが余計な事に気付いてしまったが、そうではないようだ。
ちなみに当時はその
「入院中だろうと
「……橘、言いにくいんだが。2年後にはオレたち、みんな卒業してるんだ……」
「
「私も教職は来年までだし……」
「そもそも
「ちーがーいーまーすー! そーじゃありませんー!!」
そうなると、どこに戻ってくるつもりなのだろうか。
父親ももうすぐ退官だろうし、天下り先次第では関東に残るのかもしれないが。
「
「ちょ、本田、離しなさい! この人たちには一度ぎゃふんと言わせないと!!?」
本田が袖口から取り出したロープによって拘束され、
何やら『あいるびーばっく!』やら『りめんばー・ぱーるはーばー!』と聞こえてくるが、気にしてはいけない。
「本田さんって、検査通れるの?」
「大丈夫だよ。装置をごまかす手段なんていくらでもあるし」
「何が大丈夫なんだよ」
たとえ止められたとしても、職業が忍者だと言えば通してくれる。
「……私が言うのもなんですが、ココはもっと感動的な別れのシーンだったのでは?」
橘母(誰か助けて……)
橘父「手伝うから自分でやれ。もうお前を守る